松江で広まりつつある新ご当地グルメ「おどん」の全貌を明かせ!

特集

歴史に思いをはせながら、島根グルメに舌鼓

2018/01/07

松江で広まりつつある新ご当地グルメ「おどん」の全貌を明かせ!

島根県松江の食と言えばシジミ、そば、カニ、ノドグロ……と思っているそこのあなた! 松江市は人口に対して「おでん」を扱う店舗数が全国でも有数の、言わば「おでんの都」ですよ! そして徐々に浸透しつつある新ご当地グルメ「おどん」をご存知だろうか? 今回はこの「おどん」の秘密に迫ります!

Yahoo!ライフマガジン編集部

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「おでん」+「うどん」で「おどん」。も、もしかしてそれは……

松江市イチオシの新ご当地グルメ「おどん」の全貌を明かすため、やってきたのは現在「おどん」を提供している7店舗のうちのひとつ、「Dining+Bar 粋都(スイート)」
未知の食べ物「おどん」の味、見た目(だいたい見当はつくが……)、誕生秘話などを確かめるためご協力いただいた。
粋都さんは、松江市を流れる大橋川の辺りにある和風創作ダイニングバー。この日は無理を言って昼間に入らせていただいた。

\私が行ってきました/

藤井

藤井

フリーライター&エディター

飲み歩き大好き! シメはうどん派
「おどん」の案内人、松江商工会議所青年部の竹内さん(左)と粋都店長の三島さん(右)

入口から階段を上り、2階が実際の店舗。ここで出迎えてくださったのは、「おどん」の生みの親である松江商工会議所青年部所属の竹内さんと、粋都の店長三島さん。
お二人の自慢げな笑顔から「おどん」に対する絶対の自信が感じられる。
さっそく聞いてみようじゃないか、「おどん」誕生の感動ストーリーを!

店の中に入ると、松江商工会議所青年部のみなさんがすでにスタンバイ。
口々に「おどん」に対する熱い想いを語っていた。……かどうかは知らないが、みなさん「おどん」で松江を活性化させたいという情熱で集まってくださったようだ。

まるで高校の文化祭前のように「おどん」で盛り上がる松江商工会議所青年部のみなさん。熱い、熱いぞ!

「おどん」についてと尋ねると、およそ想像した通りの答えが返ってきた。

竹内さん
竹内さん
おでんの中にうどんの麺を入れた食べ物です」

……だと思っていました。「あの……なぜうどんを入れたんですか?」恐る恐る尋ねてみる。

竹内さん
竹内さん
「実は松江は『おでんの街』なんです。『おでんの街』としてもっと認知度を高めたい、おでんを食べにもっと多くの観光客に来てほしい、市民にも『おでんの街』であることを知ってもらいたい、といういろんな思いから、7年前に『全国おでんサミット』を開催しました。
そこで、私たち松江商工会議所青年部も屋台を出していたのですが、具材がなくなってきたんですね……」

奇跡が生み出した一杯、それが「おどん」

ではここで一旦調理の様子を見てみよう。おお、なるほど、土鍋におでんが入っている。
うん、見た目は本当に普通のおでんだ……。

竹内さん
竹内さん
「何か具材に入れるものがないかと探したとき、島根だからそばを入れてみたんです。これが微妙で……」

と竹内さんは続ける。
ふむふむ、なんだか見えてきたけど、結末が。

竹内さん
竹内さん
「そんなとき、うどんを入れてみたらこれがおいしくて!」

ビンゴ! やはりそうでしたか……といった感想ではあったが、いやいや、みなさん、これは奇跡の出会いですよ。

火を入れて最後の仕上げ前の「おどん」。あれ? 普通のおでんに見えるけど……

だって、具材がなくならなければ、そばで美味しければ、このグルメは誕生しなかったんですから!

再び厨房に戻ると、ゴロゴロと牛スジ煮込みを入れる場面に遭遇した。

肉料理が自慢の粋都ならではのトッピング、牛すじ煮込みをオン!

牛スジ煮込みが入るんですね」、そういった私に竹内さんが間髪入れずに説明を始めた。

竹内さん
竹内さん
「すべての『おどん』に入るわけではありません! 『おどん』には定義がありますが、店によって入れる具材は異なり、それぞれに個性があるんです」。

その「おどん」の定義とは……、
1.アゴ出汁を使用していること
2.地元の食材を一品以上使用していること
3.葉物野菜を使用していること


さっきの誕生秘話からは想像できない、しっかりとした定義に驚いた。
島根県が制定した県の魚であるトビウオ(島根ではアゴという)を使ったダシへのこだわりをはじめ、地元の食材や地元の葉物野菜の使用が必須など、まさに「丸ごと松江」なグルメではないか!

ついに完成! 粋都の 「おどん」が登場

バーン!……やはり鍋に入ったおでん(笑)

ラーメンやうどんの器に盛られて提供される店もあるそうだが、ここ粋都の「おどん」(780円)は土鍋にて登場。
熱々の蓋を開けるとふんわりと漂う香ばしく甘いアゴダシのスープが食欲をそそる。
ゴロゴロと入ったおでんの具材に、添えられた葉物野菜の水菜。そして、この店ならではの牛スジ煮込み。うどんはきっと具材の下に隠れているのだろう。

意を決して箸を入れると、出てきた! 具材の下からまぎれもないうどんが!
なんというか、ごく当たり前といった風に普通に入っている。
いや、合わないはずがないよね……。おでんのスープって普通に和風で美味しいから。
食べる前から想像がつく美味しさだ。

ついに出た! おでんの具材の下からうどんが登場!
おでんの具材の代表選手、しっかり煮込んで味がしみてそうな大根。味は果たしてどうなのか?

食す前にみなさんにお見せしよう。大根です。おでんのまんまの大根です。細かくなったりとか、食べやすくカットしたりとかの加工は一切なし。本気のおでんです。

今までにない衝撃的なビジュアルに思わず記念撮影。だってパッと見おでんだから……

「早く食べて味を伝えろ!」と言わないで……。先に記念撮影を。だって今まで見たことのない光景です。おでんの中に、うどんですよ。変化球ではなく、どストレートのインです。ただ入っているんです!

そしてついに実食!
「味がおでんそのまんまなんて、多分ない。きっとうどんに寄せたおでんだよ。いや、おでんに寄せたうどんなのか……?」そう思いながら口に運ぶと衝撃が走った。

実食! まずはうどんからいってみた。おお……これは……まさにうどんinおでん

「……お、おでんそのまんま!?」

松江商工会議所青年部の狙いは、この親しみやすい新グルメ「おどん」で人々の心をつかむこと、私はそう理解した。
だって家庭的で食べやすくてとっても身近な味。「家のおでんにもうどん入れよ〜」って思う素朴な美味しさなのだから。

自宅でおでんをした際にうどんの玉を入れた場合、それは「おでんにうどん」ではなく、「おどん」だ。松江の新ご当地グルメなのだということを胸に、ぜひ味わってほしい。そして本場の「おどん」を堪能しに、ぜひ松江を訪れて!

取材メモ/「おどん」、それは単なる「うどん入れちゃった〜」なグルメではない。松江を愛し、松江のためを思う若者が知恵を出し合ってたどり着いた青春のグルメなのだ。


取材・文=藤井香織 撮影=長谷川涼太

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