(21日・両国国技館)
心掛けたのは、待ったをしないことだけ。余裕たっぷりの電車道だった。貴景勝が低く重たい当たりから錦木を突き起こし、一方的に押し出し。新関脇での勝ち越しに王手をかけた。
1横綱2大関を破り、序盤戦を盛り上げた相手を寄せ付けなかった厳しい攻め。それでも、「ボチボチ。普通っすね」と支度部屋ではニコリともしなかった。「小結の7勝2敗と関脇の7勝2敗は、全く違う」と表現したように、対戦の流れがガラッと変わることを意識していた。
小結で初優勝した昨年の九州場所は初日でいきなり横綱稀勢の里を撃破して勢いに乗り、先頭をひた走った。一方、新関脇の今場所は平幕相手との滑り出し。慣例では横綱、大関陣とは終盤に組まれることが多い。一番一番の重みや緊迫感が増す中、大関候補としての真価は今後に問われる。全勝の白鵬を追うが「2敗じゃ話にならない。優勝争いのことを言う資格はない。良い意味で投げやりで、身の程をわきまえてやりたい」と、ひたすら無心。10日目は過去2勝5敗と分が悪い大関高安に挑戦する。終盤戦の盛り上げに、先場所V力士の踏ん張りは欠かせない。 (志村拓)