電力会社は6社になる 東京理科大学大学院・橘川武郎教授
電力会社の再編の起点は2つ。西日本は中国電力が台風の目だ。関西電力、四国電力、九州電力に囲まれている。この3社の共通点は原発問題が大体片付いたこと。中国電は石炭火力に強い。石炭に弱い関電は、大飯原発(福井県おおい町)が再稼働してキャッシュが回り出した今、発電ポートフォリオを充実させたいと考える。原発と石炭をそろえれば盤石という観点から、石炭に強い中国電を狙うのは自然だろう。四国電、九電も同様だ。
中国電にとって石炭に強いのは弱点でもある。電力会社は2030年度までにkWhあたりの二酸化炭素排出量を0.37kgにしないといけないからだ。島根原発(松江市)を動かしても達成できない。だからこそ、上関原発(山口県上関町)の新設にこだわるわけだが、新規立地は誰が考えても無理だ。中国電から見ても合併しかない。関電に飲み込まれるのが嫌ならば、自社より小さい四国電と一緒になる可能性がある。中国と四国が一緒になれば九電が乗ってくるかもしれない。
北陸電力も石炭が強い。だが、北陸電は関電に飲み込まれるのを食い止めてきた歴史があるので関電と一緒になることは考えづらい。中部電に頼る可能性はある。中部電は原発に弱いので、志賀第二原発(石川県志賀町)が動けば中部電にとって北陸電は魅力的だ。
原発については、日本原子力発電を中心とした原発運営企業ができる可能性がある。東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原発は改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)で、設備が優れている。6、7号機は動かすべきだと思う。だが、持ち主が東電のままでは動かない。福島の復興費は必ず国民負担になるから、東電が優良な原発である柏崎刈羽を持ち、動かすのは世論が許さない。柏崎刈羽は売却すべきという議論になる。
買い手の候補として新潟がおひざ元である東北電力があがるだろうが、キャッシュがないので、国は日本原子力発電を使うと思われる。原電は(直下に活断層があるとされる)敦賀原発も、東海第二も稼働は難しい。原発なき原電が生き残る道は、オペレーションの会社という道だけだ。
10年先になるかもしれないが、東京電力と東北電力が一緒になる可能性はある。北海道は地理的にそのままだろう。東北・東京、中部・北陸、中国・四国・九州という組み合わせが考えられる。関電、北海道、沖縄で計6電力になる。競争を突き詰めるとこうなると予測している。
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