北山雫の幼馴染(エンジニア兼婚約者)な劣等生 作:魂魄木綿季
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放課後 風紀委員室
摩利「今年もこのバカ騒ぎの1週間がやってきた。
魔法の撃ち合い、強制勧誘による被害の拡張、etc...」
グッと涙を飲むように言う。他の風紀委員達も同じ顔だ
摩利「だが喜べ!幸運にも卒業生分の補充が間に合った。立て。」
摩利の合図で達也と水波が立ち上がる
風紀委員「おいおい。二科だぜ」
発言には反応することすらなく続ける
摩利「1‐Cの桜井水波と1‐Eの北山達也だ。2人とも今日から巡回に入ってもらう」
風紀委員「戦力になるんですか?」
辰巳「大丈夫だよ。姉さん自ら入るように頼み込んだ相手だぜ?
戦力にならないわけねえって」
沢木「気になるなら模擬戦でもしてみたらどうだい?」
風紀委員「いや、委員長が頼み込む程の人材だ。確認の必要性はないよ。」
達也(割と差別意識がないんだな)
摩利「話は纏まったようだな。孝太郎は少し残れ。
それでは出動!!」
摩利の合図で右手の握り拳を左胸の前に当てる
何処ぞの巨人駆逐漫画の敬礼の手の平が上verと言ったところだ
摩利「2人にはこれを渡しておく。」
先日借りたビデオレコーダーと風紀委員の腕章を渡される
摩利「腕章は常に身につけること。ビデオレコーダーは胸ポケットに入れろ。
丁度レンズの部分が出る仕組みになっている。
問題行動を見つけたら即座に端末横のボタンを押せ。
ただし、撮影を意識する必要は無い。
風紀委員の証言は基本的に証拠として採用されるからな。」
達也「なるほど。証拠としてよりも保険としての役割の方が大きいわけですね。」
摩利「その通りだ。
次にCADだが、風紀委員はCADの学内携行を許可されている。
使用についても誰かに許可を求める必要も無い。
だが、不正使用が発覚した場合は一般生徒よりも重い罰が課せられるから覚悟しろ。
去年はいないが一昨年はそれで退学になったやつもいる」
達也「質問があります。」
摩利「許可する」
達也「CADは委員会の備品を使用しても構わないでしょうか?」
摩利「それは構わないが。あれは旧式だぞ?」
達也「旧式と言ってもエキスパート仕様の高級品ですよ。
・・・そうですね、中条先輩なら詳しく教えてくれると思いますが?」
摩利「いや、勘弁しておくよ。桜井はどうする?」
脳裏の一部にヒートアップしたあずさの姿が映るが、話を元に戻す。
水波「私は自分のCADを使わせていただきます。」
制服の裾をまくり腕につけているCADを見せる
摩利「了解だ。ただし、1度生徒会室に寄れ。
CADを登録しなければならない。
この部屋でもできるんだが私はメカメカしい物は苦手でね。」
水波「分かりました。」
摩利「それじゃああとは聞きたいことはあるか?
よし、それでは行ってこい!」
達也達の顔色から質問がない事を確認すると達也達を送り出す
辰巳「北山、桜井。ガンバな!」
と、手をだし達也とはハイタッチを水波とは握手を交わす
その後、風紀委員室を出たタイミングで辰巳の「イッテェ!!!!」という叫びと
バカーンッという打撃系の音が廊下に響いた
風紀委員室を出た後、水波のデバイス登録をするために生徒会室に来ると
丁度服部が出てきたところだった。
達也「先輩。昨日ぶりですね。また何処かへ行くんですか?」
隣の水波もペコリと頭を下げる
服部「あぁ。生徒会の仕事をしたいところなんだが部活連の十文字先輩に呼ばれていてな。
俺の分の仕事は中条が片してくれてるからいいんだが。」
ハァ。とため息とともに肩を落とす
達也「大変ですね。先輩も」
服部「まったくだ。今度食事でも奢ってやるくらいじゃなきゃ頭が上がらんよ
それよりお前らがここに居るって事は。・・・デバイス登録か。」
達也「はい。俺は風紀委員室に置いてあったのを使用するのですが
水波は自分のを使用するので。」
服部「へぇ。風紀委員室にそんなものがあったのか。
あぁ、桜井。中条には気をつけろよ。」
水波「それは、どうゆう事ですか?」
服部「なに、入ればわかるさ。」
と言って達也たちの横を通って行く
水波「どういう意味合いでしょうか?」
と小首を傾げる
達也「予想は着くけどな。」
と、肩を落しつつノックをして扉を開けた
生徒会室
室内には他の生徒会メンバーは居らず、あずさのみが書類の整理などをしていた
あずさ「あ、北山君、水波さん。生徒会に何か御用ですか?」
達也「俺は無いんですけど水波のCADのデバイス登録をしろと渡辺先輩に言われたので」
あずさ「あぁ。なるほど。少し待ってくださいね。」
と、検査機を棚から取り机の上に配置する
達也(FLT社製の小型検査機か。)
あれを作るのには苦労したな。と設計工程を思い出しすこし微笑む
あずさ「それでは桜井さん、CADを出してもらえますか?
あ、一度外してから、検査機の上にお願いします。」
水波は腕輪型CADを外し検査機の乗せる
するとあずさが画面に向けていた目を水波のCADに視線変更する
あずさ「え!?これってシルバーモデルじゃないですか!しかもこのカラーリングは
わずか数台しか作られていない限定モデル!!」
ものすごい勢いで水波に詰め寄るがCADを作り、プレゼントしてきたのは達也なのだ
水波は「私に言われても困りますぅ」という表情しかできない
達也「(服部先輩が言っていたのはこういう事か。まぁ予想はしていたが)」
と苦笑い気味に言われた意味を今になって理解した。
すると二つの視線が自分に向けられている事に気付く。もちろん水波とあずさだ
達也「な、なんでしょうか?」
あずさ「水波さんの視線が北山君に向いていたのであのCADをプレゼントしたのは
北山君だと推理しました!あれはどこで手に入れたんですか!?デザインから見て
あれは数年前に発売された最新作ですよね!!それから・・・」
キラキラと好奇心満載の視線でズンズンと達也に詰め寄る
達也がふいに視線を泳がせ水波を見ると「申し訳有りません」と目で謝っていた
達也「(勘弁してくれ。)」
心の中で思いっきり深いため息をついた
その後あずさの話から解放されたのはさらに10分以上後だった
水波のデバイス登録が終わりあずさのトークからも解放された2人が
巡回のために校舎外に出るとその場は間違いなく、『お祭り騒ぎ』だ
しかも、中心辺りに見知った赤髪の美少女を見つけてしまった
達也「さっそく仕事のようだな。水波、走るルートを先導してくれ。」
はぁ。とため息をつくと水波に指示をする。水波は頷きテント裏を進んでゆく。
水波も美少女だが風紀委員の腕章を見ると勧誘する事が出来ないらしい
近づいた部活関係者はほぼ全員回れ右をして戻ってゆく
エリカ「ちょっ、や、やめてください!」
バレー部員 「この子可愛い!」
バトミントン部員「ねぇねぇウチでマネージャーやらない?」
柔道部員 「お前ら!その手を離せ!彼女は柔道部が貰っていく!」
これ以上はいけない。と咄嗟に判断し魔法を発動させる
エリカを中心に少し地面を揺らす程度の振動系魔法。
もともと雫の得意分野の魔法だ。範囲指定方法など、全て雫の直伝である
よろけかけたエリカの手を握り「走れ」と言うとエリカも共に走り出す。
その後は水波に先導してもらい、校舎裏に一時避難した
校舎裏
達也「ここまで逃げれば大丈夫だろう。エリカ大丈夫...か。」
僅かに乱れた息を整えエリカに向き合う。が絶句してしまった
エリカ「もう、大丈夫な、わけ。・・・ッ見るな!!!!////」
先ほどの囲まれていた時だろう。制服が乱れ、下着が見えてしまっていたのだ
水波「・・・」
静かにCADに指を走らせ、小さな障壁を達也の頭上に配置する。
そして静かに障壁を達也の脳天に向けて......落とした。
ゴンッ!
鈍い音が響くと同時に達也は膝から崩れ落ち、頭を抑える
達也「...ォォォオオォ!」
言葉にならない叫びが達也の口から漏れる
水波「エリカ、今の内に。」
と、身なりをなおすように言う
エリカ「あの、障壁って結構硬いよね?そんなの食らって達也君大丈夫なの?」
服をなおしながら聞きたかった質問をする。
水波「オシオキだからいいの。」
エリカ「そ、そうなんだ。」
パパッと制服をなおしてゆく
第一高校 第2小体育館
パンッ!
竹刀と竹刀の打ち合う音と、素足で床を動く音のみが響く
あの後、痛みから開放された達也がエリカに謝ると、「ちょっと付き合いなさいよ」
と、色々な場所を引っ張り回されていた
『現在は、剣道部の演舞の時間です』と、出入口などの電子パネルに表示される
入る前は少し楽しそうにしていたエリカだが。
達也「...お気に召さなかったみたいだな。」
エリカ「だってつまらないじゃん。見栄えだけを意識した予定通りの1本なんてさ」
水波「それは仕方ないことでは?」
視線を演舞の方へ戻す
達也「そうだな。武術の真剣勝負は殺し合いだ。
あまり人に見せられるものじゃない。」
エリカ「クールなのね。」
達也「思い入れの違いだろ。」
すると、
水波「達也兄様。」
水波に呼ばれ視線を演舞の方へ戻す。
達也「トラブルか。」
また仕事か。とすこし心の中でゲンナリする
壬生「まだ剣術部の時間じゃないわよ!なんで待てないの!」
桐原「心外だなぁ壬生。あんなヤツら相手じゃあ実力が発揮できねぇだろうと思って
協力してやろうと思ったんだがなぁ。」
壬生「勝手に乱入してきて協力が聞いて呆れるわ。」
桐原「先に手を出してきたのはソッチだぜ?」
壬生「桐原くんが挑発したからじゃない!」
エリカ「面白い組み合わせ(カード)ね。」
水波「あの2人を知っているのですか?」
エリカ「女子の方は壬生紗耶香。
一昨年の中等部剣道大会女子部の全国2位よ。
男子の方は桐原武明。
一昨年の関東剣術大会中等部のチャンピオン。
おっと、始まるわよ」
3人の視線が中央の壬生と桐原に向く。
達也「水波。俺が止めるのはやるから撮影を頼む。
お前が危ないと判断したら障壁を。」
水波「・・・」
コクン。と頷き胸ポケットの端末の撮影ボタンを押す
桐原「心配するなよ壬生。剣道部のデモだ。
魔法は使わないでおいてやるよ」
壬生「魔法に頼りきった桐原君が、純粋に剣技だけに磨きをかけた剣道部の
私に勝てると思っているの?」
桐原「剣技だけに磨きをかけた、か。
大きく出たなぁ壬生。だったら見せてやるよ。身体能力の限界を超えた
次元で競い合う剣術の剣技をな!」
桐原が踏み出すと共に壬生も踏み出す
パンッ
桐原の竹刀は壬生の左腕に、壬生の竹刀は桐原の右肩に触れている
エリカ「相打ち、かしら?」
達也「いや、互角じゃないな。」
達也の言葉にエリカが目を凝らすと、桐原の竹刀は触れているだけだが
壬生の竹刀は切っ先が肩口に少しめり込んでいる
桐原「なッ、に!?」
桐原の竹刀を払い
壬生「真剣なら致命傷よ。素直に負けを認めなさい。」
桐原「・・・真剣なら?。ガッカリだぜ。壬生、お前真剣勝負がお望みか?
ならお望み通り、真剣で相手をしてやるよ!」
瞬時に腕にまいたCADに指を走らせ魔法を発動させる
達也(振動系、近接戦闘魔法。)
『高周波ブレード』
黒板を引っ掻くような音を桐原の竹刀が放つ。
桐原「オオオォォ!!」
下から払うように竹刀を振る
壬生「ッ!」
すんのところで避けたが胴着には掠ったようで真ん中が少し切れている
桐原「どうだ、壬生?これが真剣だ!」
先ほどと同じく踏み込む
壬生「クッ......」
竹刀と竹刀なら払えば済む。だがあっちは真剣に等しい切れ味を持っているのだ
竹刀を当てたところで竹刀は真っ二つだ。
などと考えてる間に目の前に高周波ブレードの切っ先が見える
回避は不可能だ
エリカ「マズイ!!」
エリカが叫んだのと横を達也が通り過ぎるのはほぼ同時だった
達也「(高周波ブレードは振動系魔法。なら!)」
手のひらに魔法で振動を発生させ、桐原の竹刀を。
素手で掴んだ。高周波ブレードの振動を手のひらの振動系魔法で相殺したのだ
手が切れないのを確認すると同時に桐原の手首と胴着の襟を掴み
背後から地面に押し倒す。
反撃が出来ないように膝で肩口を抑えるのも忘れない。
桐原「ぐォ!」
突然の痛みに反応し、魔法は効果を失い元の竹刀になった
おいおい、ウィードだぜ
いや、でも腕章が
ウィードが風紀委員だと!?
野次馬がうるさいが気にすることなくポケットから
委員会の連絡用通信機を取り出す
達也「こちら、風紀委員。第2小体育館で乱闘発生。
負傷者がいるので担架をお願いします。」
「お前がやったんだろ。」という周りの視線は気にしない
エリカ「え、いったい。何が達也くんは何をしたの。!?」