ぼっちは魔法科高校へ〜魔法の一雫〜   作:裂猫
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裂猫です。

思ったより多くの方に見てもらってて驚いています。
やっぱり皆雫好きだよね!

雫のSS増えないのはどうしてなのでしょう?

なにはともあれ、UA15000超え、お気に入り300件ありがとうございます!

さてさて今回は達也達と八幡の過去に何があったか。
そんなお話です。

それでは本編どうぞ。


忘れていたこと。

「それじゃ、もうひとつ真面目な話をしましょうか。」

 

 

そう言って話を切り出すお袋。

 

 

「達也君、深雪ちゃん、八幡、それに小町。まず最初に謝っておくわ。ごめんなさい。」

「「「「え?」」」」

 

 

唐突に頭を下げて謝ってくるお袋に俺たちは困惑した。

しかしこのままだと話が進まない。

 

 

「……お袋顔を上げてくれ。全然話がわからん。」

「そうね。なんの事かわからないわね。」

「は、はい。」

「深雪。」

 

 

すこし緊張した顔の深雪が返事をすると、その横の達也が手を握る。

…え?なに?恋人なのん?すごい自然な動作だったけど?深雪めっちゃ嬉しそう…

とまぁ、そろそろお袋が話を始めるか。

 

 

「さっき深雪ちゃんと達也君が言ってた『八幡と会ったことがある様に思える』っていうやつね、その通りなの。さらに言えば小町も一緒でね。皆とても仲の良い兄弟のようだったわ。」

「……は?」

「小町も?」

「やはり……」

「なんとなく、そんな気はしていました。」

 

 

疑問しかない俺と小町と、それとは反対の反応をする2人。

 

 

「しかし、どうしてなにも思い出せないのでしょう?

未だに私たちは八幡さんと小町ちゃんに関しては今日が初対面である、という事実が頭にあるのですが……」

 

 

もっともな疑問だ。

仮に昔会っていた事があったとして、『小町も一緒に』、

そう表現するという事は一応小町も覚えていられる年になっているはず……俺はともかく、その事実を伝えられて小町がなお思い出せないという事には甚だ疑問しか生まれない。

 

 

「……そうね。なにも思い出せないのは無理もないわ。

《そういう風》に処理されたから。」

「処理?おいおい、穏やかじゃない響きだな。」

「ほんとにね……」

「それで……処理の内容とは?」

 

 

達也の質問にお袋は一瞬顔を歪めたが、すぐに戻る。

 

「ええ、伝えるわ。

まず達也君と深雪ちゃんには、八幡に関する記憶の抹消、その空白の補完。」

「っ……」

「……なんで「それは後でね。」……分かった。」

 

渋々了解し、2人の顔を見ると深雪には驚きの色が見えたが、達也はやはり、と言った風に何かを察していたような顔をしている。

続いて、

 

 

「次は八幡。」

「お、おぅ。」

 

 

小町を最後に回すのか……少し嫌な予感がする。

 

 

「八幡には同じように達也君、深雪ちゃんに関する記憶の抹消、補完。並びにとある事象以前の小町との思い出の抹消、補完。」

「っ!?小町との記憶もか!?」

「えぇ……」

「なんで…いや、まだいい。話を聞いてからにする。小町も残ってるしな。」

 

 

そう、たぶんこの流れで行くと小町への処理が一番……

 

 

「そうして頂戴。最後に小町だけど……」

「う、うん……」

「小町…」

「お、お兄ちゃん」

 

 

小町がとても不安そうな顔をしていて、流石に見ていられなくなった俺は小町の手を握った。

なるほど達也が手を握ったのはこういうことか……

 

 

「ごめんなさい。小町には一番嫌な役目を押し付けたわ。」

「嫌な…………役目?」

「はい。さっきまでの3人の記憶処理の実行。そして小町の3人に関する記憶処理を受けること。この2つです。」

「っ………私が?私がお兄ちゃんたちの記憶を…?」

「小町、落ち着け。大丈夫だ。」

「何が!?何が大丈夫なの!?私の所為で皆の思い出がなくなってるんだよ!?」

「いいから、一旦落ち着け。まだお袋の話は終わってない。

そうだろ?」

「ええ。何故そんな事になったのか、それを話すわ。」

「………わかった。」

 

 

そう、そこだ。どうして俺たちの記憶が消されることになったのか。

達也と深雪は疑問は残るにしろ何かは察しているような節がある。

つまり、司波兄妹の家関係である可能性が高い。

 

「けど、その前にひとつやる事があるわ。」

「やること?」

 

 

するとお袋は、ひとつの腕輪型の機械を取り出す。

 

「……CAD……ですね。」

「CADだな……」

「ええ、このCADには小町の記憶処理を解く術式が入っているわ。」

「「えっ!?」」

「「なぜ?」」

 

 

俺と小町は声を上げて驚くが、司波兄妹は何故そんなものがあるのか分からない、そんな雰囲気だ。

 

 

「これに連なる記憶処理は元々、貴方達4人を守るために施されたものなの。」

「守る?何から…?」

「………貴方達はとある事があって心に深い傷を負ったわ。」

「深い傷……?」

「そう。だけど、色々とすれ違いがあって…私たちは深夜達と会えなくなった。その時よ。

深夜が貴方達の辛い記憶を眠らせたの。」

「すれ違い……ね。」

 

 

一体どこまですれ違いを拗らせれば親しい相手と会えなくなるんだろう?

 

 

「けれど今ならそのすれ違いも無く記憶を戻せる。

そう思って、これを取り出したの。

小町、これから私はこの術を使って小町の記憶を取り戻すわ。」

「………うん。わかった。」

「その時きっと混乱するとは思う。けどまずは八幡達の記憶改竄を解いて。」

「え…さっきも思ったけど私魔法なんて使えないよ?」

「いえ、使えたのよ。記憶を処理する際、八幡と小町の魔法に関する記憶も一緒に改竄したの。

小町はそういう処理が得意だったから、魔法の記憶が残っていると気づかれてしまう可能性があるから。」

「そ、そうなんだ……うん、やってみる。」

「ちょ、ちょっと待て、俺の魔法の記憶って俺も魔法を使えたのか?」

「えぇ、でもまぁ思い出しながらの方が早いから。説明は一旦後回しにするわ。」

「あ、あぁ。」

 

 

なんて事だ…俺も魔法が使えるのか…

小町の魔法の記憶を掘り返さないための措置としての可能性が大きいが、もしそうじゃないとしたらやばい魔法とか使える可能性が……嫌だなぁ…怖いなぁ…

 

 

「それじゃあ小町、やるわね。」

「うん。お願い。」

 

 

お袋は慣れた手つきでCADを操作して、魔法を行使する。

何も見えないが……達也達が驚いているのを見るに、何かが行われているのだろう。

ていうか…お袋魔法使えたのね……

 

 

「はい。終わったわ。小町どう?」

「ん………ごめんちょっとまだ整理しきれない。でも、うん。

取り敢えずお兄ちゃん達の記憶改竄を解除するね。」

「多分知識は戻ったけど記憶は色々混濁してるのかしら。

取り敢えずお願い。これ…小町のCADよ。」

「ありがと、お母さん。じゃあやるよお兄ちゃん、達也お兄ちゃん、深雪お姉ちゃん。」

「あぁ、たの……は?」

「お、お兄ちゃん?」

「お姉ちゃん…………?」

 

 

俺たちのささやかな疑問を解消するより前に小町はCADを操作する。

小町がこちらに手を向けた瞬間、頭の中に凄まじい量の情報が入ってくる。目を開けていられない。

つい頭を抑えてしまうほどの情報を処理しようとするが、整理できない。

 

 

「とりあえず、記憶改竄の解除はしたけど……この量を一気に処理するのは多分、無理だと思う。」

「……そうだな。」

「それで、皆昔からの付き合いだっていうのは思い出した?」

「あぁ。」「うん。」「「はい。」」

 

 

うん、とりあえずそれは思い出せる。けど色々とぐちゃぐちゃになってて何があったかとかがよく分からん……いや…ある程度は分かるんだが。

 

 

「そうね……じゃあ私が分かる範囲で貴方達の身に起こった事を整理して話していくわ。」

「頼むわ。」

「そうしてくれるとありがたいよ…」

「「お願いします。」」

「じゃあまずは貴方達のが何故会うようになったのか、そこから話しましょうか。」

 

出会い………

 

 

「まず、達也君と深雪ちゃんの実家。つまり四葉の本家と私たち比企谷家の繋がり。そこから話すわね。」

「あぁ。」

「さっき駅のホームで言ったけど私と深夜、真夜は学友、みたいなものなの。」

「クラスメート、ですか?」

「いえ、二人と、それに七草のとこの弘一さんを合わせた4人で九島のおじさまに魔法を教わっていたの。」

「九島閣下に?」

「えぇ、そこで初めてあの子達と出会って、細かいことは省くけど仲良くなったの。その流れで四葉の家に行ったこともあるしね。」

「……先程自分はそんな大した人物ではない、そう仰っていましたが……」

「えぇ、私は名前を残しているような魔法師ではないし。

事実そんな大した魔法は使えないわ。」

「い、いえ…そもそもあの2人と親しげにやっているという時点で大したことしか無いのですが。」

「ふふっ、2人とも個性的だものね。

まぁ話を戻すわね、そんなとこで仲良くしてた私と深夜なのだけど、そんな間柄なら子供を引き合わせるのも普通の流れでしょう?だから会わせたの。」

「なるほど。」

「普通ですね。」

 

 

まぁ親ぐるみの関係で出会いから特殊な事なんてそうそう無いだろう。

………もっとも達也達の場合そうそうあるかもしれない家柄なのだが。

 

 

「なんのことはなく、貴方達はそんな風に出会ってそこから打ち解けていったわ。」

「はい。とりあえずそこが整理できたことで、日常的な記憶は整理できたみたいです。」

「そう?ならまぁその辺の話はまた今度、という事で。」

「そうだな、それで本題は?」

「小町達が記憶を失う原因になった事、ここら辺の記憶がすごく曖昧なんだけど。」

「私もそのあたり、というより沖縄での出来事がうまく思い出せないの。」

「小町と深雪もか?」

「"も"ということはお兄様も?」

「あぁ。」

「俺もだな。」

 

 

4人とも思い出せない。

という事は沖縄での出来事がきっかけになってる可能性は高いな。

 

「お袋、教えてくれ。」

「……そうね。そのために記憶を戻したのだし。」

「じゃあ…お願い。」

「分かったわ。

 

まず沖縄での事件は覚えてる?」

「なんとなくは…確か穂波さんと深夜さん、

それと深雪と小町が撃たれて、達也が《再生》で直したんだろ。」

「あぁ」

「そう、私はその時別の場所にいたから実際には見ていないけどそう聞いてるわ。

じゃあ、その後達也君がどうしたのかは?」

「俺は…確か深雪が撃たれたのを怒っていて、敵勢力の殲滅のために志願して戦いに行った筈です。」

「そう、達也君が雲散霧消で敵艦を消しとばしたのだけど、その際達也君の補助に穂波さんと八幡が付いたのよ。」

「すみません、穂波さんがいたのは覚えてるんですが…八幡が居たか覚えていません。」

「いや、確か俺も付いていった。覚えてる。」

「うん、小町も覚えてるよ。」

「まぁ、そこで達也君が魔法を発動するまで敵艦の攻撃を穂波さんと八幡が防いでいたのだけど、穂波さんが魔法の乱用で弱ってしまってね、その結果達也君に敵艦の攻撃が被弾したのね。

普通ならそこで達也君の自己修復術式が発動するのだけど、

その時不可解なことが起きたの。」

「自己修復術式の不発…もしくは発動遅延によって再生が見られなかったんだ。」

「八幡?」

「あぁ、その時のことは思い出した。そう、達也の自己修復術式が発動せずに、動かなかった。」

「そんなことが……だが八幡、だとしたらなんで俺は生きている?」

「……………」

 

 

俺はお袋に目配せをした。

それに合わせてお袋も頷いてきた。

 

 

「……俺が、《再生》を使ったからだ……」

「《再生》だと?八幡が?」

「あぁ…」

「どうやって!?」

「……比企谷家にはさ、とある術式が伝えられてるんだ。」

「……それで?」

「その術式の内容っていうのが、魔法のコピーみたいなものなんだ。」

「コピーだと?それで《再生》をコピーしたとでも?」

「まぁ、簡潔に言えばそうなんだが……まぁなんの制限もなくコピー出来るわけじゃないんだ。この魔法は2段階の過程があるんだが、まずコピーしたい術式を使っている術者とその付近の情報を精密に記憶しておく必要があるんだが、これに関しては普通は専用の術式を使って写真のようにその情報を記録しておくんだ。その記録を使って魔法を復元するんだ。」

「……細かい仕組みはよくわからんが、流れは理解した。

つまりそのコピー術式を使うために、多分…直前の小町達に向けて使った《再生》の情報を置いていたんだろう。」

「いや…あの時は情報を取ってなかったんだ。」

「……?それではコピーが発動しないだろ?」

「あぁ、正常には発動しない。」

「……何か含みのある言い方だな。」

「俺はあの時、情報を記憶から無理やり読み出してコピー術式を発動したんだ。結果、情報が不十分で《再生》は発動しなかった。代わりに、別の術式が発動したんだ。」

「別の術式だと?」

「どこをどう間違えたらこうなるのか、そもそも間違えたからこうなったのか、それすらもわからないほど別物の術式だ。」

「つまり、八幡は俺が死んだのを見てコピー術式を使って《再生》を使用する。

だが発動したのは別の術式だったが、結果俺は一命を取り留めた、と?」

「そうなるな……」

 

 

自分で言ってて意味わかんねえ……なんだったんだろうな、あれ。

でも……

 

 

「まぁそれで達也君が雲散霧消で敵艦を消しとばして、おしまい。

なんだけど……達也君の魔法が発動したのを見届けた八幡が倒れたの。」

「………あぁ。それは思い出しました。そうか……そうだった。

雲散霧消を使用した後八幡を連れて戻ろう、そう思って立ち上がったんだが、後ろを見たら八幡が倒れていたんだ。

急いで駆け寄って状態を確認すると呼吸をしていない、心肺停止。

そんな状態だった。」

「そこで達也君は迷わず《再生》を使用したのよね。」

「はい。もちろんです。助かる可能性が0じゃないなら蘇生できる。そういう術式ですから。」

「ならここで話は終わりではないですか?聞く限り記憶を消す必要なんてありませんでしたが……」

「いや……違うんだ、《再生》は発動した。だがエイドスから読み取れない部分があったんだ。その結果蘇生されなかった。それで俺は八幡が死んだと思って……その後八幡を皆のところに運んだんだ。」

「え、ぁ……そういえば…」

「……えぇ……お兄様が八幡さんを運んできて全員で死んでいることを確認しましたね…思い出しました。」

「そう、そこから……何も考えられなくなって俺たちは……」

 

 

そうか……これがすれ違いの原因か…

 

 

「多分そういうことだろう、八幡。」

「え、なに、なんで俺の考えてることわかったの。エスパー?」

「違う。お前が理解したような顔をしたからだ。」

「え?なに、どーゆーこと?お兄ちゃん。」

「お兄様?どういうことでしょうか?」

「あぁ、まず八幡が《再生》を使用、その時無理やり発動したことによって、なんらかの副作用のようなものが出ていたんだろう。結果、八幡は倒れていたんだ。

そして俺たちが八幡の死亡を確認した後に、原因はわからないが八幡が息を吹き返した。その後俺たちは精神的に危ない状態になっており、八幡の生存を知らなかった。そんな俺たちの様子を見て、母さんがこういう措置を取ったんだろう。」

「えぇ、正解よ。それで八幡、私にもわからないことが一つあるんだけど。いいかしら?」

 

 

はぁ、ま、聞いてくるわな。

分かってたことだけどな。

 

 

「だいたい予想つくけど……なに?」

「八幡が息を吹き返したのは何故?」




いかがでしたでしょうか?(定型文)

本当はもっと長かったのですが書き終わったあと文字数おばけみたいになってたので分けてから整理しました。

連投、の様になるかもです。

とりあえず今回はここまでです!

それではまた次回。





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