ぼっちは魔法科高校へ〜魔法の一雫〜   作:裂猫
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はい。裂猫です。

出来るだけ早く投稿しようとしても結局週に1本になってしまってますね。

ともあれUA1万超えとお気に入り200超えありがとうございます!

入学編まであと3話くらいかかりそうな……そして文字数のバラツキが酷い。

とりあえず本編どうぞ。


こうして司波兄妹は比企谷八幡を知る。

〜八幡side〜

 

雪ノ下さんに話を聞きたいと言われ、司波兄妹含め4人で喫茶店へ行く事になった。

 

 

「…しょっと。準備できました。」

「ん、じゃあ行こうか、達也くんたちも。」

「「はい。」」

 

駅に着いてから色々とあった為、俺の荷物や服装がアレな感じになっていたので色々と整えてから出発する。

行く場所を知らないので雪ノ下さんを先頭に駅を出ようとしたところで、ふと振り返ると見知った女性が息を切らしながら駅の奥から走ってくるのが見えた。

 

「……ん?お袋?」

「「「え?」」」

「はぁっ、は、はちま、はぁっ……」

「ちょ…いったん落ち着けって、お袋。」

 

乗降口からここまで走ってきたのだろう、息を切らして話しかけてくるが一旦落ち着かせる。

 

「はぁ…はぁ…ふぅ………よし。落ち着いた。」

 

それにしても仕事人間のお袋が何故こんなところにいるのだろう?

今日は平日のはずだが……まぁいいか。

先ほどの様子から見て俺に用があるのだろう。

………仕事を中断してまで急いでるなら電話すれば…いや、総武側に来るってことは学校に向かってるんだ、つまり誰かからお袋に連絡がいったのだ。

平塚先生…だな。

……まったくあの先生は、どこまでお節介焼きなのだ。

いい人…なんだけどな。

 

 

「それでお袋、何の用事だ?」

「さっき平塚先生から連絡があってね。」

「やっぱりか……」

「うん。それで急いで八幡を探しに……あら?」

 

理由を説明しながらお袋は俺の周りを見て、少し驚いたような顔をする。

恐らく雪ノ下さんが原因だろう。

入学式の日の事故、多分それで面識があるはず。

……そう思っていたがお袋の視線は、その後ろの司波兄妹へと向かっているようだ。

そして……

 

「達也くん……深雪ちゃん……?どうして八幡と…?」

「「…え?」」

「……?」

 

お袋の口ぶりからどうやら司波兄妹の事を知っているらしい。

のだが、本人達はまったく身に覚えがないのか?すげえ素っ頓狂な声を出している。

まぁ、かく言う俺も意味がわからなくて何も言えないのだが。

と、そこで司波兄もとい、司波達也が喋り出す。

 

 

「……失礼ですが、どこかでお会いしましたか?比企谷君本人とも今日が初対面なのでその親御さんと面識があるとは思えませんし。そもそも自分たちには全く見覚えが無いのですが。」

 

 

やはり面識がある、というよりお袋が司波達のことを一方的に知っている。

そんな雰囲気だ。

 

 

「………そう…深夜の施したモノはきちんと機能しているのね……」

「「「!!?!?」」」

 

 

お袋が少し悲しそうな表情でそう呟いた瞬間、俺以外の3人の顔が驚愕に染まる。

 

 

(深夜……?誰だ?)

「………どうして……どうしてお母様の名前を……」

 

 

……なるほど、お袋は司波母と知り合いだったのか、その流れで子供であるこの2人の事も知った。

そういう事だろう、多分、きっと。

だが…「施したモノ」とはなんだ。

明らかに司波兄の発言に対する反応だった。

だとすれば……俺、もしくはお袋とこの2人は面識があった…のか?

いや……やめよう。こんな事いくら考えても意味はない。

 

そんな思考に耽っていると、お袋が口を開く。

 

 

「私と深夜、つまり貴方達2人のお母さんは一種の学友…みたいなものだっのよ。」

「お母様の…ご友人……ですか?」

「……えぇ、私はあの子のこと、その妹も含めて家族のように思っているわ。」

「叔母さままで……」

 

 

そんなに仲良かったのか…なら何度か家に訪れた事があってもおかしくない。

母親同士ならば、互いの子供を遊ばせるために家族ぐるみで遊びに行くのもあり得る。

だが俺にはその記憶はない。

先の話に聞き覚えがない様子の2人も同じだろう。

と、そこで今まで黙っていた雪ノ下さんが動いた。

 

 

「お久しぶりです比企谷さん。雪ノ下陽乃です。」

「貴方は…あぁ、あの時の。」

「はい。少しお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「えぇ、何かしら?」

「失礼ですが、お名前の方、お聞きしてもよろしいですか?」

 

 

事故の時名前聞かなかったんだな。

 

 

「いいわ、私は《比企谷深白(ひきがやみしろ)》。比企谷八幡の母です。よろしくね。」

「比企谷深白……やはり聞き覚えはないですね。」

「まぁ、そうでしょうね。名前を残すほど大した人間じゃないもの。」

「……それでは何故、達也くん達のお母様と親しく出来ていたのでしょう?」

「………?」

 

 

俺にはその質問の意味がまるでわからなかった。

大した人間ではない、そう言ったお袋に対して「何故」司波母と親しく出来ていたかを問う。

それはつまり司波母という人物は何かあるのだろうが、事情を知らない俺は何もわからない。

 

 

「………そうね。少し待ってちょうだい。」

「え?は、はい。」

「お袋…?」

 

 

そう言って少し離れた場所に行き、何処かへ電話をかけている。

話はすぐに終わったようでものの十数秒でお袋はこちらは帰ってきた。

 

 

「今達也くん達の叔母さんに連絡を取ったわ。」

「「!?」」

 

 

再び驚愕に満ちる2人の顔。

 

「うん。八幡の話もあるし、達也くん達も私に聞きたいことがあるでしょう。

取り敢えずうちに来なさい。」

 

 

そう言うと、お袋は俺達の手を引いていつのまに呼んでいたのか、親父の車に乗りこむ。

 

 

「え、ちょ、なに、痛い痛い!お袋!乗るから!乗るから離して!」

「お兄様……」

「あぁ…行こう。」

「もちろん、私も行くよ。比企谷くんのお話も聞かないといけないし。」

 

 

 

〜〜比企谷家〜〜

 

車の中では特に話す事もなかったが、雪ノ下さんはずっと何かを考えている様子で、司波兄妹はお袋を見続けていた。

そんなこんなでよくわからん空気のまましばらく経ち、家に着いた。

 

 

「さ、入って。」

「「…ただいま。」」

「「「お邪魔します。」」」

(こんなに大人数うちに来たことがないから何か気持ち悪いな……)

 

 

そんなことを思いつつ、靴を脱ぎリビングに続く廊下に登る。

そこでリビングから見慣れた顔がひょこっと現れる。

 

 

「およ?お兄ちゃん、早いね。奉仕部は?ってかお母さん、お父さんもいっしょ?それに陽乃さんと………」

「あぁ、はじめまして。司波達也だ。」

「同じくはじめまして。司波深雪です。」

「これはどーもー、私はお兄ちゃんの妹の、比企谷小町です!

よろしくお願いしますね!」

 

 

挨拶するのもいいが、今日この日に限ってはそんな明るい雰囲気じゃない。取り敢えずここら辺で。

 

 

「小町、俺たちは大事な話がある。一旦部屋に戻って「八幡、小町にもいてもらったほうがいいわ。」……わかった。」

 

 

小町も関係するのか…?

まぁ俺と小町は3年しか離れてないし、関係ない理由もないか…

 

 

「ん?なにやら深刻そうな雰囲気だね。」

「えぇ、取り敢えずみんな、お茶入れるからリビングに入って。」

「あぁ、手伝う。」

「そ?ありがとね。」

「小町達は座っててくれ。」

「はーい。」「分かった。」「分かりました。」

 

 

そう言いながら俺とお袋は、リビングに入りお茶の準備を始める。

準備が出来たところで、小町がカップを取りに来る。

よく出来たやつだ。

一通りならべ終わり、話す準備が整う。

 

 

「それじゃ、話しましょうか。まずは……八幡の話から聞きましょうか?」

「いいのか?司波さん達はどちらかといえば…」

「いや、いい。元よりそちらの方を聞くために集まったんだ。」

「そうですね。」

「……そうか、じゃあ話すぞ。少し長くなるがーーーーー」

 

 

〜〜1時間後〜〜

 

 

「ーーーーー、っていうことで、さっき……追い出され…たんだ。そこから、どうやってか、駅まで行って……気がついたら、その、陽乃さんに…」

「………お兄ちゃん…」

「…それでさっきあんなに弱ってたんだね。」

「「比企谷(さん)………」」

「……そう、そんなことが……私がついた時にはもう陽乃さんに慰められたあとだったのね。平塚先生が『八幡君の状態に気を配ってあげてください。』なんて言ってた理由がやっと分かったわ。」

「それにしても……雪乃ちゃんは…本当につまらないことをするんだね……」

「それを言うなら結衣さんだってそうですよ!今回のことだって、自分で依頼を受けたのに何もすることがないままお兄ちゃんに全部任せっきりにして、その挙句どうしてそんな言葉が出てくるのか……」

「いや、待ってください雪ノ下さん、小町も。

今回のことは俺も悪かっただろ?」

 

 

嘘告白の件は結局俺の取った方法は最低で最悪なものだった。

その事で雪ノ下や由比ヶ浜が責められるのは違うと思い、止めたのだが、予想外の方向から言葉が飛んでくる。

 

 

「比企谷さん。いえ、八幡さんとお呼びします。」

「し、司波さん?」

 

 

司波妹に名前で呼ばれ少し焦る。

 

 

「深雪で結構です。お兄様と被ってしまいますから。お兄様のことも達也、とお呼びしてください。それで、なんですが。」

 

 

流れ的に名前呼びを否定するタイミングを逃したな……

 

 

「……なんだ?」

「たしかに修学旅行での依頼に関して、貴方がとった方法は最低なものでした。けれど、それを責められるのは精々、依頼人である2人と、一緒に依頼をこなそうとした人たちだけです。」

「……そうだな、だから雪ノ下と由比ヶ浜も「違いますよ。」…?」

「雪ノ下さん、えと、雪乃さんと由比ヶ浜さん、この2人はその件で何もしていないでしょう?だから比企谷さんが責められるのはおかしいですよ。」

 

 

雪乃さん?あぁ、雪ノ下さんと混ざるのを回避したのか。

いやそんな事別にどうでもいいな…

 

 

「いやでもな……俺の方法があいつらを傷つけたみたいだし…」

「それこそ依頼とは無関係ではないですか。そんな風に依頼とは関係ない部分で人の仕事にダメ出しだけをするような事、おかしいんですよ。」

「…いやしかし………」

「どうして八幡さんはそんなに自分を責めようとするのですか?」

「どうしてって、そりゃぁ……俺が悪い部分が大きいから…」

「そんなことはありません!

少なくとも依頼の為に行動を起こしたのは貴方だけです。

それを何もしていない人間が責めていい理由はありません。

そんなふうに自分で否定しないでください…」

「………自分で否定しない、か。そんなの無理だ…」

「どうして?」

「それは………っ!」

 

どうして……か、どうしてなんだろう。

いつから……自分で自分を肯定できなくなっていたのだろう。

いつから……「自分が悪い」と自分の事を否定するように………

いつから…………

 

深雪からの問いかけで自身への否定感と肯定感が混ざり合う。

そのまま思考の海に沈んでいきそうになったときふと、頭に温もりを感じた。

 

 

「………え?」

「八幡さんは、頑張りました。

それでいいんです。

少なくとも、今は。

自分で頑張ったことまで、否定しないでください。」

「あ、頭…撫でるのやめ…「辞めません。頑張った子にはご褒美が必要です。そのご褒美をずっと、ずっと受け取って来なかった様な悪い頑張り屋さんには、おしおきとして、もっとご褒美が必要です。なので、やめません。」っ!頑張っ…てなんか……俺は、ただ、あいつらとの過ごす時間が好きで……そんな奴らに…悪い噂がたたないように…」

 

 

頭に感じる温もりが一つ増える。

達也の方も俺の頭を撫で始めたようだ。

 

 

「なん…で、お前まで…」

「どうしてだろうな……自分でも驚いている。

俺が、深雪以外にこんなにも良い感情を持つことがあるとはな…」

「!?お兄様っ…!!そうなのです。八幡さんとはずっと昔から知り合いだったかのような…そんな感覚があるのです。」

「あぁ。比企谷、お前は頑張りすぎだ、優しすぎだ。少し休んだほうがいい。」

 

周りを見ると、お袋と親父、小町に雪ノ下さんまで俺のことを温かい目で見ている。

なんだこれ、目が熱い…胸が苦しい……でも…嫌じゃない。

「八幡。」

ふと、お袋に呼ばれる。

視界にはお袋、親父、小町、雪ノ下さん、達也、深雪。

それぞれがとても優しく感じられる笑顔で、こう言った。

 

 

「「「「頑張ったな(ね)」」」」」

 

「……ぁ…」

 

 

子供を慰めるような言葉で、いや多分、そんな言葉だから余計直接的に俺に響いた。

目から一粒、涙が溢れるのが分かった。

一度そのことを認識したら、止まらない、止め処なく涙は溢れてくる。

少しの間声を押し殺しながら涙を流していると、珍しく親父が口を開く。

 

「八幡。」

「…親父?」

 

 

若干涙声になりつつ親父の言葉に耳を傾ける。

 

 

「お前は大事なものを守ろうとしたんだ。それは人として、とかそんな事じゃなく、男として誇っていい事だ。

お前の行動は正しいものではなかったかもしれないが、お前が胸を張ってそう言う限り、その事実は誇るべきものだと。そう思う。」

「っ!!……あぁ、ありがとな、親父。」

 

 

……なんだよ…親父かっこいいじゃねえか…

 

 

一通り話が終わり、俺の心の内には下校の時のようなめちゃくちゃな感情は無くなっていた。

結局のところ、俺にも、奉仕部の2人にも、葉山のグループにも全員に少なからず問題はあった。

そんな事は分かりきっていたのに、俺は自分で自分を責めすぎていたんだな。

いつか……あいつらも気づいたりするのだろうか……時間が空いて、自分の行いを顧みた時、本当に自分に悪いところがなかったと言えない。

それにあいつらが気づいたなら。

その時にまだ「やり直したい」という気持ちがお互いにあるのなら、きっとやり直せるはず。

けれどこれは俺達他人が言ったところで火に油を注ぐだけだ。

自分で気づいてもらうしか手段がない。

俺はまだあいつらの事を気に入っている。

だから少なくともこの気持ちがある間は、待っていることにしようと思う。

 

 

「さて、八幡の話の方は落ち着いたわね。」

「あぁ、その、なんだ、助かった。ありがとう。」

「………八幡気持ち悪いぞ。素直に礼を言うなんて。」

「……うるせーな、親父がカッコいい事言ってる方が気持ち悪い。」

「なっ!?この…」

「はいはい、2人とも落ち着きなさい。」

 

 

茶々を入れられた俺が若干不機嫌になるのを嗜めるようにお袋は話を遮る。

そしてこう切り出した。

 

 

「それじゃあもう一つ、真面目なお話をしましょう。」




はい。

いかがでしたでしょうか?
むぅ、今回も全く進みませんでしたね。
四葉の情報云々の扱いは難しいですよね。

ちなみに八幡の母親に関しては完全にオリキャラですね。はい。

と言うわけで次回は八幡と司波兄妹の過去のお話。

ではまた次回、お会いしましょう。





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