ぼっちは魔法科高校へ〜魔法の一雫〜   作:裂猫
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はい。裂猫と申すものです。

この度、アカウントを開設し、この小説を書き始めました。
八幡と雫をイチャイチャさせたい、二人の絡みを見たい。そう思ってssを探してみたものの、まぁクロスオーバーで自分の好みのカップリングを見つけるのが難しいこと。

と言うわけで自分で書きます。

では、どうぞ。


やはり比企谷八幡はまちがっていた

「ーーーー!ーーん!八幡!」

 

可愛げのある、変声期がまだ訪れていない少年のような声が耳に届き、目を開ける。

 

「ん〜〜〜!!!お、なんだ戸塚?」

 

眠気を少し取るために、伸びをしながら唯一の友達である戸塚を視界に収める。

 

「やっと起きた、もう放課後だよ?部活行かなくていいの?由比ヶ浜さんもう行っちゃったよ?」

「あーー、もうそんな時間か……悪いな戸塚、そっちも部活あるだろうに起こしてもらってサンキュな。」

「んーん、大丈夫だよ。八幡の方こそ学校でこんなにぐっすり眠っちゃうなんて、そんなに疲れてるの?だったら部活行かずに家で休んだ方がいいよ?」

「いやいや、そこまでじゃなくて単に数学の授業が退屈だったから寝てただけだからだいじょぶだ。俺もそろそろ部活行くから、戸塚も行ってくれ。あんまり遅れちゃアレだろ。」

「数学って……昼の最初の授業じゃない。ちゃんと受けなきゃダメだよ。今度ノート貸してあげるから復習しときなよ?じゃあ僕は行くね、八幡、また明日ね!」

「おぅ、また明日、な。」

 

別れの言葉を交わすと、戸塚は少し急ぎ足でテニス部へ向かっていく。

 

「………ふぅ、部活、か。仕方ない、行くか。」

 

誰に言うわけでもなく、そう呟き、部室のある特別棟へ歩を進める。

しばらく歩くとやがて一番奥の教室から馴染みのある2人の話し声が聞こえてくる。

その教室のドアへ手をかけ、横へ開きながら小さく短い挨拶をする。

いつも通りの風景ーーーー

 

「……うす。」

「………………こんにちは。」

「………………ヒッキー…」

 

ーーーーとは言えない空気に包まれる3人。

修学旅行の一件以来、奉仕部の関係、というより俺と雪ノ下、由比ヶ浜の二人の関係が少しぎくしゃくしている。

そんなふうに思いながら定位置に着席する。

何も聞こえない空間で少しの時間が過ぎる。

そんな中雪ノ下雪乃が一番に口を開く。

 

「……まだここに来るのね、比企谷君。貴方は自分のしたことがどんな事か分かっているの?分かっていてここに来れるのなら無神経にも程があるわね。まぁ、貴方に任せた私も私だけれど、一つ言えるのはアレは最低最悪の手段よ。」

「ッ!………いきなりだな、分かってる。すまん。」

 

アレ、とはつまり海老名さんと戸部、もとい葉山の依頼に板挟みになった俺がとった「嘘告白」という手段の事だろう。

確かに、あの方法では海老名姫菜は救えたであろう。しかし戸部翔の内心は穏やかではなかったはずだ。それに、ここ数日の様子を見るにこの二人、雪ノ下と由比ヶ浜にも何か思うところがあったのだろう。

 

「ヒッキー…ほんとに分かってる?あーゆー方法は、確かに効率はいいかもしれないけど……でも、どうやっても傷つく人が出てきちゃうよ…」

「あぁ、それも分かってる。」

「分かってるならどうしてあんなことしたの!」

「ッ…………………」

 

きっと俺はあの時頼るべきだったのだろう、この二人を。

二人を傷つけまいというこの感情は間違いではないのだろうが、それはあくまでお互いがそう思えばこそ、正しい感情になり得るのだと、終わってみて気がついた。

一人が二人を守るのではなく、三人が三人を守る。そんな関係を目指すべきだったかもしれない。そんな仮定の話をしても、もう意味はないが。

 

「もう、貴方が何を考えているのか、分からない……分かりたくもないわ。あんな不誠実なことをする輩の考えなんて…」

「あれから色々考えてみたけど、今はもうヒッキーに奉仕部にきて欲しくなくなっちゃったよ…だからもう、帰って。」

「……………分かった。悪かったな……不快な思いをさせたみたいで。じゃあな。」

「「……………」」

 

告げた別れの言葉に返事もないまま、部室を後にする。

ここにきてまだ10分と経っていない。が、来て欲しくない。そう言われると流石にそこには居られない。

「………あぁそうだ、平塚先生に辞めるって言わないとな…」

 

どこか現実味の薄れた感覚を持ちつつ、重たい足を動かして職員室に向かう。

 

「…失礼します、平塚先生。」

「ん、比企谷か…ってどうした!?顔色が悪いぞ?」

「いえ、大丈夫です……少し、話いいですか?」

「む……なかなかに深刻な話みたいだな、奉仕部絡みか。」

「えぇ、まぁ、今日をもって奉仕部を抜けさせてもらおうかと……」

「ふむ……一応、理由は聞いてもいいか?」

「……意外ですね、止めないんですか。」

「まぁ…君の顔から察するに、部活が面倒だから嫌になった、とかそんなふざけた理由では無いだろうからな。辞めること自体はとやかく言わん。」

「……そうですね。理由は…少なくとも、今の奉仕部には俺は居ない方が良い。そう判断したからです。」

「そうか……」

 

平塚先生は少し考える仕草を見せ、こう言った。

 

「うむ、わかった。比企谷、君の奉仕部への所属を解任する。」

「ありがとうございます。では失礼します。」

「あぁ、気をつけて帰れよ。」

 

この状態の俺を長居させるのもどうかと思ったのだろう。平塚先生は短くそんな言葉を俺の背中に投げかけながら仕事に戻っていく。

特にすることもないので、家への道を歩いていく。

 

なぜが校門を出た辺りで、急に不安感に襲われた。

普段は奉仕部に居るこの時間帯に、既に下校を始めているこの事実が、奉仕部に居られなくなってしまった自分の現状をより強く意識させたのだろうか。そんな心境に影響されたのか、足早になっていくのがわかる。

不安感は徐々に増していき、自分ではもう思考を抑えられなくなっていた。

 

遂に、言われてしまった。自分はもうここには必要のない存在だと、邪魔な存在だと。

十数年間生きてきてようやく家族以外に出来た自分の居場所が崩れていくのがわかる。いや、もしかしたら初めからそんなもの無かったのかもしれない…だとしたら俺は、何を守ろうとしてあんなことを繰り返したのだろう。

一度崩れだした自分の中の何かはもう止まらない。思考もだんだんと崩れていく。何も考えられなくなる。

 

「ぁ………?」

 

不意に視界が霞む。それと同時に意識すらも飛びそうになる。思考もままならない中、自分の体が前に倒れそうになるのがわかる。目の前には線路が見える。あれこれと考えているうちに駅のホームまでたどり着いていたようだ。

ダメだ、これ以上意識を保っていられない。

このまま倒れると間違いなくホームから転落してしまうだろう。その結果どうなるかなんて考えずともわかる。

その時だったーー

 

「お兄様ッ!」

「あぁ。」

 

どこか知っているような声とそれに返事をする低く優しい心地の良い声。

それらが近くから聞こえてきた時には既に俺の意識はなかった。




いかがでしたでしょうか?

まだプロローグ的な部分ですので今回だけでは何も始まってすらいないのですが、もう少しこの茶番に付き合ってください。

ではまた、次回。





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