八幡は魔法科高校ではぼっちでは居られない 作:sinobun
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国立魔法大学付属第一高等学校入学式当日、八幡が校門をくぐると聞いたことのある少女の声が聞こえてきた。
「納得できません!」
「まだ言っているのか深雪」
八幡はそれが深雪だとわかると、内心ヤバいと思い見つからない様に通り過ぎようとした。
「どーしてお兄様が補欠なのですか!それどころか本来のお兄様の力をもってすれば新入生総代も私などではなく・・・」
「深雪っ!」
口に出してはならない事を口にしようとした深雪を達也は止める。
「それは言ってもしょうがない事だってわかってるだろ?」
「申し訳ございません」
そこで達也は八幡の存在に気が付いて悪い笑みを浮かべた。
「それに俺は楽しみなんだよ」
「楽しみ・・ですか?」
「ああ、お前に見つからないように通り過ぎようとしている八幡がどんな言い訳をするのかな。」
「えっ???」
それを聞いた深雪は、達也の目線を辿るように後ろに振り向いた。
そこには今まさに深雪の後ろをカバンで顔を隠しながら通り過ぎようとする八幡が居た。
それを見た深雪は
「は・ち・ま・ん~~~」
その周りだけ五度は気温が下がったと思わせるような、笑っているのに寒気しかしない笑顔で八幡の名を呼んだのだった。
「達也、テメー裏切ったな!」
「なんのことだ八幡?そもそも手を組んだ覚えがないんだが」
「八幡っ!!!」
達也に抗議している八幡に深雪が笑顔で呼びかける。
「ひゃっ、ひゃいっ!」
「聞きたいことは分かってますよね?さぁ、納得いく説明をお願いします!」
そう深雪に問い詰められて、追い詰められた八幡は
「おっ、俺の自慢のいとk・・・可愛い深雪が新入生総代として挨拶している姿が見たかったんだ!」
深雪の容姿の事もあり、先ほどから遠巻きではあるが周りにはこの三人のやり取りを見聞きしている者たちがいたため、八幡は達也と深雪が四葉の関係者だとバレるのはマズイとギリギリの所で気が付き「従妹」の部分を言わずに済んだ。だがそれが仇となり、字面だけみるとまるで深雪を自分の物宣言しているかの様なセリフを吐いてしまった。
それを聞いた深雪は顔を真っ赤にして
「なっ、なななななっ、何を言っているのよ八幡っ!俺の深雪だなんて・・・」
「えっ?あっ、すっ、すまんつい・・・」
「とっ、とにかくそろそろ時間なので私はいきます。お兄様、また後程。はっ、八幡もまだ許したわけではありませんからね!」
2人にそう言うと、深雪は速足で入学式が行われる講堂へと入って行ったのだった。
「なぁ達也」
「なんだ八幡?」
「俺深雪に殺されないかな?あんなに顔を真っ赤にして怒ってたし・・」
「それは大丈夫だろ、あれは怒っていたんじゃなくむしろ・・」
そこまで言いかけて達也はやめた。
「とにかく大丈夫だ(下手な事をいうと俺に矛先が来そうだからな)」
入学式までにはまだ時間があったので、達也と別れた八幡は一人で中庭にあるベンチで時間を潰す事にした。
(母さんには一高に入学さえすればある程度は好きにしていいって言われてるからな。おかげで総代は回避できたとはいえ、やっぱり俺が四葉だと知られたら目立っちゃうんだろ~なぁ~、嫌だなぁ~、小町、水波助けてくれぇぇ~~~。)
心の中で二人の義妹に助けを求めていると、不意に横から懐かしい声が聞こえてきた
「ヒッキー」
「比企谷君」
声のした方に振り向くと、そこには懐かしい二人の美少女が居た。
「由比ヶ浜、雪ノ下・・・」
八幡がそう呼んだと同時に、二人は泣きながら八幡に抱き着いた。
「やっと会えた。ヒッキーのバカ、ボケナス、八幡」
「何も言わずに私達の前から居なくなるなんて許さないわよ。バカ、ボケナス、八幡」
「お前らな、最後のは悪口じゃないからな・・・でも、すまなかった」
二人に謝ったあと、何故急に居なくなったかを説明した。
「・・・・・と言うわけだ」
「ヒッキーが四葉・・・」
「理由を言えなかった事については納得したわ。もう一つ聞きたい事は・・あなたは私達とは二度と会わないつもりでいたの?」
「ああ、そうだ」
結・雪「っ!!」
「怖かったんだよ・・俺が四葉の人間だと知られたら、お前たちに怖がられて拒絶されるんじゃないかってな」
「ヒッキーのバカ、ヒッキーが怖いなんて思うわけないじゃん」
「ええ、そうね。私達の気持ちを勝手に決めつけないでもらえるかしら比企谷菌、いえ四葉菌?」
「あっ、そっか。もうヒッキーじゃないんだ!ヨッキー?」
「いやいや、由比ヶ浜のはそのままでいーぞ。雪ノ下は出来れば四葉か八幡て呼んでもらえると助かる。」
「じゃぁヒッキーで」
「四葉君・・・八幡君・・・・八幡君にするわ」
「ところで、お前らは一高に俺が入学するって知ってたのか?」
「ええ、あなたが居なくなった時に小町さんにこう言われたのよ、「もしお兄ちゃんにまた会いたいと本気で思うなら一高に行けば会えます。でもその時に会うお兄ちゃんは今までとは違うかもしれません。どんな事が会ってもお兄ちゃんを拒絶したりしないって誓えるのであれば会いに行ってください」ってね」
「小町ちゃんの言ってた意味がやっと分かったよ」
「小町の奴そんな事を・・・」
「とにかく、これからもよろしくね八幡君」
「よろしくねヒッキー」
「ああ、こちらこそよろしくな」
こうして結衣と雪乃と再会した八幡は、そろそろ式が始まる時間だと気が付いたので三人で講堂へと向かった。
三人が揃って講堂へと向かっていると、式の開始が近い事もあり他の生徒の姿も見えてきた。
すると、八幡達三人を見てある女生徒達からこんな会話が聞こえてきた。
「ねぇ、あれ見て」
「なんでウィードとブルームが一緒にいるのかしら?」
八幡達を見て発せられた言葉「花冠=ブルーム」「雑草=ウィード」とは本来学園側も禁止している差別用語である。一科生を
八幡はそんな事気にしていなかったので気が付かなかったが、よく見ると八幡と雪乃の制服には例のエンブレムがあるが結衣にはなかった。
この会話を聞いていた結衣は八幡と雪乃に対してバツが悪そうにこう言った。
「えへへ、私魔法実技がそんなに得意じゃなかったから、せめて筆記だけでもって思ってゆきのんに教えて貰いながら猛勉強してなんとかこの学校にも合格できたんだ。差別がある話は噂で知ってたけど、やっぱり本当にあるんだね。二人にも嫌な思いさせちゃ悪いし私先に行ってるね」
目に涙を溜めながらそう言って走って行こうとした結衣の肩を八幡は掴んで制した。
「ヒッキー・・?」
今にも泣き出してしまいそうな結衣に対して、八幡は小町に対してする様に優しく頭を撫でながらこう言った。
「ありがとうな。そんなに一生懸命に勉強してまで俺に会う為にこの学校に来てくれて」
「あっ・・・」
そう言われた結衣の目からは今度は本当に涙がポロポロ落ちていた。
「それに俺達が誰といようが周りにとやかく言われる筋合いはない!だよな?雪ノ下?」
「ええ、そのとおりよ!」
八幡と雪乃はわざと周りに聞こえるようにそう言った。
それを聞いて先ほど差別発言をしていた女生徒達は
「なっ、なによ!バカみたい、もぉ行きましょっ!」
「ええっ、そうね!」
と言いながら講堂へと入って行った。
「さっ、俺達も行こうぜ。遅刻しちまう。」
「ええ、そうしましょう」
そう言う二人に対して結衣は嬉しそうに
「えへへ、二人ともありがとう!私一高に合格できて本当によかった」
二人の腕を掴みながらそう言った。
「ばっ、ばか、腕を掴むな!色々当たって・・・」
「あっ、暑苦しいから離れてもらえるかしら」
八幡達が講堂の中に入ると席が半分以上埋まっていた。空いている席を探していると、前半分が一科生、後ろ半分が二科生で綺麗に分かれている事に気が付いた。
そんな光景を見て八幡は内心溜め息を吐きつつ
「ここに居る全員差別肯定派なのか?」
「さすがにそれはないと思うけれど、ここまできれいにはっきり分かれていると、自分だけ違う行動を取る勇気が持てずに流されているのもあると思うわよ」
「あ~、確かにそれはありそうだな。」
そんな会話をしていた八幡だったが、丁度空いている席の近くに見知った顔を見つけた。
達也の後ろの席に座りつつ八幡は達也に話しかけた。
「よう、達也。ナンパか?」
達也の横の席には二人の女子生徒が座っていた。
「そんなわけあるか!たまたま席が隣になっただけだよ。おまえこそ深雪にあんな事を言っておいてナンパか?」
「なっ!だっ、だからあれはアレがアレで間違えただけだ!」
八幡が達也をからかうつもりがカウンターを食らっていると、達也の隣に座っていた二人と結衣達も会話に参加してきた。
「なになに、司波君の知り合い?」
「ヒッキー私達の事も紹介してよ!」
ここで問題なのが、達也達が四葉と関係があるとバレないようにする事なのだが・・・八幡がどーしようか悩んでいると達也が悪い顔をしながら
「こっちの二人は千葉エリカさんと柴田美月さんだ。そしてこっちは四葉八幡。去年俺の妹をナンパしてきて以来の腐れ縁だ」
「「「「えっ????」」」」
達也と八幡以外の四人が呆けていると、八幡が小声で達也に抗議した
「(おい達也!何デタラメ言ってるんだよ)」
「(俺達と四葉の関係を隠す為だ、すまない)」
そのことを引き合いに出されると八幡は何も言えなくなってしまう。
「何をコソコソ話しているのかしら八幡君?それとナンパってどーゆー事かしら?」
「そーだし!ヒッキーマジきもい。私達の前から消えてナンパしてたとか!」
放心状態から復帰した雪乃と結衣が、こめかみに青筋をたてながら八幡にそう言った。
「ちょっと待てお前ら!こいつとはあれだ。総武から転校した先で知り合ったんだ。確かに妹も知り合いだがナンパなんてしてないから!こいつのいつもの冗談だ!」
最初からこう言えばよかったと八幡は後悔した。
「総武?じゃあこの二人がお前が話してた部活仲間の二人か?」
前に八幡から雪乃と結衣の話を聞いていた達也は「総武」という言葉から、この二人がそうなのかと八幡に尋ねた。
「ああ、そうだ。俺が二年生の冬まで通っていた中学で同じ部活に所属していた二人がこいつらだ」
八幡がそう紹介した為二人も自己紹介する。
「初めまして。雪ノ下雪乃です。よろしくお願いします」
「初めまして由比ヶ浜結衣です。よろしくね」
なんとか二人の紹介も済み、八幡がホッとしていると今度はエリカと美月が焦った様子で会話に入ってきた。
「よっ、四葉ってあの四葉?」
「・・・・・・・」
エリカがそう言い、隣の美月はどこか緊張したような雰囲気でいる。
それに対して八幡は
「あ~、まぁたぶんその四葉で合ってると思うぞ!」
「二人ともそんなに警戒しなくても大丈夫だ。一緒に居ればそのうち分かると思うが、八幡は本当にあの噂の四葉の人間かって思うくらい普通だ。それに、目立ちたくないのと面倒くさいって理由で本来新入生総代になる実力があるのに手を抜くような奴だしな。」
「普通で悪かったな!それとなんで知ってるかは知らないが、手を抜いた理由は深雪には言わないで下さい!お願いします!お兄様!!!」
そんな二人の様子を見ていたエリカと美月は
「あははは。なんか普通って言った意味が少しだけ分かったかも!変に構えちゃってごめんね。これからよろしくね!」
「私もすいませんでした。よろしくお願いします」
「慣れてるから気にしてない。こちらこそよろしく。」
「でも四葉君、目立ちたくないのにここに座っててもいいの?」
一科と二科で完全に分かれてるこの状況で八幡と雪乃がここにいるのは確かに浮いていた。
しかし八幡は先ほどの結衣の事もあり、この差別意識に対して酷く嫌悪感があった為こう答えた。
「関係ない。俺は同じ人間を、ましてや大事な仲間を差別する気なんてないからな!」
そう言った八幡だったが、いつまでたっても反応がないので周りを見てみると、生暖かい眼差しで自分が見られている事に気が付き、今自分がけっこークサい事言ったなーと後悔した。
「気に入った!!!四葉君、いや、私も八幡って呼ばせてもらうね。私の事もエリカでいーから」
「八幡さん、とても尊敬します!あっ、私も美月でいーです」
「おっおう?」
エリカがそう言い、大人締めな印象の美月までもがキラキラした目で八幡の手を握りながらそう言ってきた為八幡は拒否する事もできなかった。
「むむむむむ」
「あなたって人は次から次へと・・・」
最初は八幡の言ったことに感動していた雪乃と結衣だったが、エリカと美月の行動に頬を膨らましていた。
「これより、国立魔法大学付属第一高校入学式を始めます」
八幡達がそんなやりとりをしている中、式を開始するアナウンスが聞こえた。
全然話が進みません(;'∀')俺ガイル寄りのオリジナルな部分を入れてしまうとよけいに進まない。なので少しずつ原作部分を省いて話を進めて行こうと思います。
なぜか達也が八幡を弄る感じになってしまう・・・