ロックマンDASH 鋼の冒険心
【ろっくまんだっしゅ はがねのぼうけんしん】
ジャンル | フリーランニングRPG | 高解像度で見る 裏を見る |
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対応機種 | プレイステーション ニンテンドウ64 Windows プレイステーション・ポータブル |
発売・開発元 | カプコン |
発売日 | 【PS】1997年12月18日 【N64】2000年11月22日 【Win】2001年2月23日 【PSP】2005年8月4日 【PSP(DL版)】2009年12月16日 |
定価 | 【PS】6,090円 【N64】7,140円 【Win】2,079円 【PSP】3,990円 【PSP(DL版)】700円 |
判定 | 良作 |
ロックマンシリーズリンク |
ストーリー
大陸のほとんどが海に沈んだ、はるか未来。人々は点在する島々で独自の文化を形成し、生活を営んでいた。
過去の文明は忘れ去られ、世界各地に点在する遺跡を残すのみとなっていた。
遺跡は「リーバード」と呼ばれる機械生命体が生息し、侵入者を襲う危険な場所であったが、そこには古代の超文明の遺産や「ディフレクター」と呼ばれるエネルギー資源も眠っており、
これらの発掘を生業とする「ディグアウター」と呼ばれる人々も数多く存在した。
そのディグアウター達が追い求めるものが「大いなる遺産」と呼ばれる伝説の存在である。
ディグアウターの少年「ロック・ヴォルナット」は、パートナーの「ロール・キャスケット」、謎のサル型ロボット「データ」、
ロールの祖父で育ての親である「バレル・キャスケット」と共に「大いなる遺産」を探して旅をしていた。
ある日、ディグアウトを終えて遺跡を脱出したロック達だったが、彼らの乗る飛行船・フラッター号がエンジントラブルを起こし、
止む無く近くにあった「カトルオックス島」に不時着する。
バレルの元助手のアメリア市長の協力を得て、フラッター号の修理の為にしばらくカトルオックス島に滞在する事になったロック達。
その時、空賊「ボーン一家」が市街地を襲撃する。彼らは島の遺跡に眠るものを宝として狙っていた。
街を守る為にボーン一家を撃退したロックだが、彼らは諦める事なく宝を狙って幾度もロックに戦いを挑んでくる。
ロックはボーン一家と戦いながら遺跡調査を進め、やがて島の秘密に迫っていくが、それは自身に秘められた謎にも関わっていた。
概要
ロックマン派生シリーズの一つ。
シリーズ初の3Dアクションゲームとなっており、敵から資金を回収し、アイテムを買って成長させたり、街の人と会話してイベントをこなしていくといったRPG要素も含まれている。
世界観
- シリーズ派生作ではあるが過去のロックマンシリーズの世界観や雰囲気はほぼ継承されていないため、公式には別世界と表記される。
- 一方で、舞台の裏設定としては「DASHの地球は"ロックマンシリーズの地球でもあるし、Xシリーズの地球でもある"」こと、「DASHシリーズがXシリーズの数千年後の未来を舞台としている」ことが後に発表されている。
- シリーズ全体の時空列で最後(未来)と言われる事があったり、一方で『ロックマンX5』の分岐エンディングから連なるパラレルワールドの未来などと解釈されたりなどしているが、詳細な時系列についてはぼかされており、どれが正史であるかは公式には明言されていない。
評価点
- 3Dフィールドを走り・跳ぶと言う非常に単純な動作が心地良い。
- これは主人公の移動速度とジャンプの高さのバランスから来る。
- 街中でやれることが多く、一種の遊び場として自由な楽しみ方ができる。ゴミ箱を漁ったり自販機でオロナミンCを買ったり、自販機を蹴ってみたり、車に飛び乗れば移動手段になったり、車に轢かれてみたり、屋根の上を飛び回ってみたりと、3D空間の街中を駆け回ること自体が楽しい。
- 3D空間での戦闘の面白さ。
- 高低差のあるマップを駆け回り、飛び回りながらバスターを連射して敵を倒すという、当時としては新鮮な3Dアクションの戦闘を楽しめる。
- 通常攻撃手段であるバスターは使い勝手が良い飛び道具であり、ある程度の自動照準になっているので、3Dアクション初心者にも優しい。ロックオンボタンを押し続けていればその敵を真正面に捉えることもできる。
- 市街地で戦う場面では、家などの建物の上によじ登って戦うもよし、建物の裏に隠れて敵の攻撃をやり過ごすもよし、しかし建物は敵の攻撃を受けすぎると壊れてしまう(一部施設も利用できなくなる)など、作り込みが凝っており、幅広い戦い方が可能。
- 街や施設を守りきれなくとも、後で復興費を寄付すれば再建する事が出来る為、苦手な人でも安心である。
- 一部の敵の上には飛び乗ることもでき、敵の体に乗って戦うことが有効な攻略法となる場合もある。
- 様々な特殊武器。
- 今作の特殊武器は従来のシリーズとは大きく仕様が異なり、開発に必要なアイテムを各地で手に入れ、ロールに開発してもらうことで使用可能となる。一度に持っていける特殊武器は1種まで。
- 特殊武器の数は全12種類。地雷を設置したり、強力な砲弾を発射したり、ブレードで近接攻撃をしたりと、いずれも個性的な性能を持っており、様々な戦い方が可能。
- ボスごとの弱点武器といった概念は無いが、例えば敵の移動ルートや突進攻撃に合わせて地雷を設置しておくなど、特定の特殊武器が非常に役立つ場面はあり、そういった上手い攻略法を見つけ出すのも楽しさの一つ。
- 難しすぎず簡単すぎず適度な難易度。RPGなので時間をかければ強くなれる。
- クリア後には敵が強化された難易度「むずかしい」が出現し、より歯ごたえのあるプレイができる。また、条件を満たす事で最初から最強性能のバスターが使える「かんたん」がプレイ可能に。
- 魅力的な世界観とキャラクター。
- 主人公ロックのみならず、ヒロインのロール、ヒールのトロンにその部下コブンとキャラクター人気も高い。
- また、イベントシーンはフルボイスであり、ロック役の田中真弓、ロール役のよこざわけい子を始め、大谷育江、緒方賢一、玄田哲章、飯塚雅弓、横山智佐と言った有名声優がキャラに命を吹き込んでいる。いずれもハマり役で好評。
- 主役2人の配役はかの名作冒険活劇アニメ『天空の城ラピュタ』と同じであり、設定や雰囲気にも同作をどことなく想起させる部分がある。
- 主にサブイベントで、今作の舞台であるカトルオックス島の住人との交流も描かれる。特に車椅子の少女アイラはサブキャラながら比較的人気が高い。
- ある場所にはワイリーという人物まで登場している。外見も世界征服を何度も企んでいるあの博士によく似ているが、性格は全くの正反対で温厚な人物である。
- メインのストーリーは短めだが、イベント・隠しアイテム等が豊富で、やりこみ要素とまでは行かずとも何度も遊べるようになっている。
- ミニゲームが楽しめるテレビ局、集めた骨董品を展示出来る美術館などの施設も存在する。CDショップでは様々なジャンルの曲が聴ける他、CMソングの『another sun』もフルで聴く事が出来る。
- 魅力的なキャラクターとは上述したが、それは街を歩くモブキャラも例外ではない。町の人々の台詞はストーリー進行に応じて頻繁に変化するので、モブキャラにもつい愛着が湧いてしまう。パッケージの帯に「出会った人の顔、おぼえてますか?」と書くだけの事はある。
- クリアしたイベントに応じてエンディングの人々の台詞が変化するという仕掛けがあり、その冒険における人々との交流を実感できる演出となっている。また、コンプリートを目指す楽しみもある。
- それでいてサブイベントに期間限定のものは無く、いつでも好きなタイミングで楽しめるようになっている。
問題点
- 高速移動できるダッシュパーツはあると無いとで移動の快適性が全然違うのだが、入手できるのは後半になってから。別に序盤に手に入っても何の問題も無いゲームバランスなのだが。
- ちなみにある条件を満たしてクリアすると開放されるモードでは最初から持っている。また、序盤のロールを追い掛けるシーンにて、ダッシュでロールに追いつくと「ロック、ごめ~ん」の一言と共に弾き飛ばされるという小ネタがあったりする。
- デュアルショックに対応しておらず、視点変更は慣れが必要。右スティックで視点変更、というのに慣れている最近のプレイヤーにはちょっと難しい。
- 今でこそ右スティックで視点変更が当たり前だが、当時はデュアルショック及び、その前身のアナログコントローラーが発売して間もない時期であり、対応しているゲーム自体が少数。対応していてもそのような視点変更操作を搭載しているゲームなど皆無に等しかった。
- 特殊武器周りのバランスにやや難あり。
- 特殊武器を改造(強化)するための費用が全体的にかなり高め。
- とある特殊武器の弾数無限化には990000ゼニーもの大金が必要(ただし弾数の強化はその手前の段階でも十分であり、必ずしも無限化の必要に迫られるわけではない。そしてこの特殊武器は便利ではあるが最強の攻撃力を持つ武器ではない。)
- ユーザーから「ピンハネしてるんじゃないか」と噂されたこのネタは、後に『DASH2』の作中でネタにされた。
- 特殊武器によって強さの差が大きく、好きな特殊武器を最後まで使い続けるということは難しい。従来のロックマンと違って、特殊武器は補助道具的な意味合いが強い。
- 序盤や中盤から使用可能な特殊武器は改造費が安く改造しやすいものの、終盤になると火力不足などで使われなくなる(使い捨てのような扱いになる)場合が多い。
- 特殊武器には個性的なものが多いが、中盤や終盤で初めて入手できる特殊武器は、それ以前の戦闘で使用できないのがある意味勿体無い。
- 一方、戦闘に特化された特殊武器はあり得ない程強い。攻撃を最大に上げた「シャイニングレーザー」は、ラスボスの各形態が数秒で倒せてしまう程である。その分ロールちゃんの改造費もべらぼうに高いのだが。
- 特殊武器を引き継いで最初から始められるような要素が有れば、より遊びの幅が広がったと思われる。
- 一部の戦闘が荒削り。
- ボートや飛行船に乗って敵を迎撃し続ける水上戦、空中戦となるミッションでは自由な移動がほとんどできず、長射程のバスターや特殊武器がほぼ必須であるなど、攻略の自由度は低め。そういうミッションなのだと言ってしまえばそれまでだが…。
- 終盤のボスであるテオドール・ブルーノ戦は、「多くの建物がある旧市街地での巨大メカとの戦闘」という一見面白そうなシチュエーションだが、他の建物は簡単に壊れる一方、スタート地点のすぐ近くにある「遺跡への入り口」は絶対に壊れることがない。これを盾に利用するのが最も有効な攻略法となっており、戦闘が単調になってしまう。
- 旧市街地はこれと言ってサブイベントも無く、この戦闘が唯一にして最大のイベントなのだが、これに気付いてしまうとせっかくの広いマップや建造物を活かす必要が無くなるのは勿体ない。
- ゲームオーバー画面が妙に怖い。
- 真っ暗な画面中央に赤文字で GAME OVER と表示され、かなり陰鬱なBGMが流れるので人によってはトラウマになりかねない部分がある。
- また上述の水上戦、空中戦のミッションはそれぞれボートと飛行船の耐久値が尽きてもゲームオーバーとなるが、その際にはロールの生々しい悲鳴が響き渡る為そちらがトラウマになった人も。
- ストーリーが未完。
- 一つのストーリーとしてはまとまっているが、作中で提示された謎の殆どが明かされないまま「To be continued」で終わり、続編に持ち越しとなる。その為、本作だけでは消化不良感が否めない。
- 終盤には更に多数の伏線が張られるが、それが回収されるのも次回作になってからである。
総評
『ロックマン』、『ロックマンX』に続く第三のロックマンとして登場した『ロックマンDASH』。
フリーランニングRPGという新たな境地を開拓する事で、無印ともXとも異なるゲーム性、世界観を構築し、
キャラ、ストーリー、アクション面、RPG面と様々な面で好評を博した。
本作に登場するロボット“コブン”も、以降カプコンの看板キャラクターとして様々な場所に登場するなど、その評価の高さが伺える。
PSP版
2005年8月4日には、ワイドスクリーン対応、デモに字幕を追加などをしたPSP版が発売。実在の店名などのタイアップ要素の消去やアイテム「エロ本」が「マンガ本」に変更などもされている。PS1版からの移植と思われる。
内部的にほとんどベタ移植らしく、PS1でよくあるキャラクターのモーション時のガクガクやテクスチャのちらつき、テクスチャや3Dモデルなどがほとんどそのままである。最初の海のシーンにおいて遠景まで海のテクスチャを張れず、画面内に海のテクスチャの端が見えることからもわかる。
しかし、解像度がPS1の256 × 224(?)から480×272になったおかげでキャラクターの表情などがわかりやすくなるなどの恩恵はある。
また、イベントシーンに字幕が追加された。これによって聞き取り辛かったセリフや専門用語も理解しやすくなったが、平仮名・片仮名ばかりなので読み辛い所も。
現在ではPS Vitaでもプレイ可能なDL版が700円という格安価格で続編『2』と共に販売されている。今からプレイするならこちらを『2』とセットで購入するのがお勧めである。
続編
- 1999年7月22日にスピンオフ作品『トロンにコブン』が発売。
- ジャンルはアクションバラエティというもの。DASHのような3Dアクションも可能だが、毛色の異なる様々なシステムを有している。
- ロックマンDASH2の体験版である「エピソード1~ロールちゃん危機一髪!~」のCDが1枚付属している。
- 2000年4月20日に直接の続編『ロックマンDASH2 エピソード2 大いなる遺産』が発売された。
- 物語の核心に迫る内容となっており、本作で残った謎の多くが明かされる事実上の完結編となっている。
- 2008年2月1日に携帯ゲーム『ロックマンDASH 5つの島の大冒険!』が配信。
- 対応機種はDoCoMo FOMA903、703以降。
余談
- 本作にはライフシールドというゲームシステムがある。
- ロックのライフは通常はシールドに守られており、ダメージを受けてもシールドによってダメージがある程度軽減される。しかし一度でもダメージを受けるとシールドが一時的に機能停止し(ライフゲージの枠が赤色になる)、シールドが復旧するまでの間は大ダメージを受ける危険性が高まる。
- 特定の攻撃を食らったり、シールドの機能停止中に何度もダメージを受けるとシールドが破壊されてしまう。破壊されたシールドは、特定の回復アイテムを使ったり補給を受けるなどしなければ直せない。
- アクションのシステムとしては悪くない試みなのだが、いかんせんシールドの影響力を実感しにくいゲームバランスであり、シールドの存在を意識してもしなくてもゲームプレイはあまり変わらないという、半ば空気のようなシステムとなっている。
- シールドの有無に関わらずダメージを一定割合分軽減する「アーマー」系防具の存在も、シールドの空気化に拍車を掛けている。
- 改善の余地はあるものの、結局以降のシリーズには引き継がれず、本作のみの要素となっている。
- 本作ではロックマンに悪行をさせることが出来、これを重ねるとロックの色が黒くなっていき、やがて「黒ロックマン」になる。
- 例を挙げると、自販機を蹴って金を払わずジュースを手に入れる。パン屋に空き缶を蹴り入れる。など。
- また、ごく一部には一瞬で真っ黒になってしまうような犯罪行為すらも存在する。
- ストーリーの進行に影響はないものの、住民からの風当たりが強くなる。
- 逆にサブイベントをクリアするなどで善行を積むと「白ロックマン」になり、住民の評判も上々になる。
- 海外版・64版・PSP版では規制などで差し替えられた要素がある。一部はPS版発売当時のタイアップ要素でもある。版権や海外での知名度の問題だろうか?
- 交換用アイテム「エロ本」(漫画本に差し替えられた)。(海外版・PSP版)
- レイクサイドパークに存在する代々木アニメーション学院(ただの料理教室に変更)。(海外版・PSP版)
- 自販機や飛行船の冷蔵庫にライフが全回復するオロナミンC(ドリンクかジュースに変更)。(海外版・64版・PSP版)
- 64版では容量の関係で主題歌などの曲がいくつか削られ(ある場所でできるさまざまな曲の視聴もできなくなっている)、表示が粗い上にマップも狭くなっているがロックオンの設定にかかわらず視点変更できる利点もあり頑張った移植となっている。
- またコブンの口が赤くなっている。
- PS版と64版の比較画像はこちら。
- 設定や雰囲気は『タイムボカンシリーズ』や『天空の城ラピュタ』に近いものがある。
- 上述した通りロックとパズー、ロールとシータは中の人が同じであり、開始からラピュタを意識したものと思われる。
- ディスクにキズや汚れがあると病院やTV局がらみのイベントでフリーズすることがある。これによって一部の強化パーツが入手不可能に。
- ↑にある様に、PS通常版のパッケージは黒地にボーン一家のマークとタイトルのみと思い切ったデザインをしている。良く言えば渋いが、悪く言えば地味。
- BEST版ではN64版と同じデザインになっている。
- シリーズ通してとにもかくにも売れなかった。その完成度の高さと評価に反して心底売れなかった。
- 『BIOHAZARD』の様に口コミで広がる事も無かったのである。
- PS通常版のパッケージが地味でロックマンだと分かり辛かった事なども原因と見られている。
- 「良作でも売れるとは限らない事を体現した」と言えよう。もっと宣伝に力を入れていれば結果は変わっていたかもしれない。
- 因みにPS版は中古価格が安価にもかかわらず入手困難である。
- 海外での売り上げが多く、国内販売数12万に対して北アメリカで39万本、ヨーロッパで26万本を売り上げている。全世界トータルの売り上げでは無印やXシリーズなどと比較してもかなりの上位に入る。実際、海外のDASHファンは多い。
- テレビ番組『勇者ああああ』にて『DASH』が良作として紹介された。