辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票は、2月14日の告示まで1カ月を切った。

 県は16日、各市町村の担当者を集め、事務説明会を開いたが、現時点でも宮古島、沖縄、宜野湾、石垣、うるまの5市の保守系市長は不参加の方針を変えていない。

 全市町村の参加は極めて厳しい状況だ。

 このまま県民投票を実施することになれば、県内の有権者のおよそ3割に当たる約36万3千人が投票の機会を奪われることになる。

 民主主義と地方自治にとって極めて由々しい事態だ。

 投票権は、民主主義を支える最も重要な政治的権利である。県や市町村は、憲法、地方自治法、条例によって付与された住民の投票権を保障する役割を担っている。

 投票の選択肢が4択にならなかったからといって、それを理由に、一般住民の投票する権利まで奪い取るというのは、いくらなんでも度が過ぎる。

 どちらの主張が県民の理解を得られるか-正当性を巡る県議会与野党の駆け引きは、激しくなる一方だ。

 時間は限られているが、県議会を召集し、与野党が「全県実施」に向け緊急に協議して欲しい。

 それぞれの主張をもう一度整理し、なぜ相手側の主張に反対するか、歩み寄る余地はないのかどうか、あらためて住民の前で説明を尽くしてもらいたい。

 不参加を表明している市長は、住民との対話集会を早急に実現し、なぜ県民投票ができないかを説明すべきだ。

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 「辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さん(27)が宜野湾市役所前で実施しているハンガーストライキは、18日で4日目を迎えた。

 元山さんのやむにやまれぬ行動は、県内外で大きな反響を呼び、激励のため訪れる人が後を絶たない。

 「県民投票をきっかけに多くの県民が議論し、悩んで、納得のいく一票を入れて欲しい。その過程を経れば対立や分断は必ず乗り越えられる」と元山さんは強調する。

 元山さんのその主張を大事にしたい。5市で県民投票が実施されなければ、宜野湾市に住んでいる元山さん自身も投票できなくなる。

 県議会与党の中には、4月の衆院補選、夏の参院選を念頭に「(5市が)参加しなくてもそのままやればいい。参加しない方が悪い」との声がある。

 突き放したような不用意な発言を重ねれば、全県実施を求める県民の批判は、与党にも向けられるだろう。

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 沖縄県民は戦後27年間、日本の主権の及ばない米軍統治の下に置かれた。

 今の県知事にあたる行政主席を公選で選ぶようになったのは、本土よりも大幅に遅れ、1968年になってからである。復帰後も基地の維持が優先され、地方自治はさまざまな制約を受けた。

 投票権(参政権)なくして民主主義なし。県民投票の投票権を求める住民の主張は、県民にとって歴史に根ざした要求という性格を帯びており、その意味は重い。