さぁ!運命のお時間ですっ!
こんにちは。
「てりん」と申します。(ツィッターアカウント:てりん2)
今回は、JRの規則の中でも特に(もっとも?)ややこしい
「選択乗車」について書いていきます。
人生はT字路、Y字路の繰り返し。
致命的な間違いをしてこなかった人も、
「あー、あの時勇気出してあっちに進んでおけばよかったなー」
なんて、小さな後悔の一つや二つはあるというもの。
「人生の選択を誤ってしまった・・・もう取りかえしがつかない・・・」
暗い、くらーい部屋でそんな風に嘆いているあなたも、
せめて、鉄道の「選択乗車」くらいは間違えないでしましょうね。
と、いう
あんまり意味のない前振りが終わったところで、さっそく本題へ参りましょう。
選択乗車とは何か?!
まずはこの記事で、比較的シンプルな内容である
●在来線同士の選択乗車
の話をした後、かなりスパイシーな内容である
●在来線と新幹線の選択乗車
の話に移ります。(新幹線の方は次の記事にて)
まずは、選択乗車のルールの根拠となる営業規則の文言を参考がてら載せます。
はじめはテキトーに斜め読みでいいですよ!
JR旅客営業規則 第157条
旅客は、次の各号に掲げる各駅相互間(略図中の〓線区間以遠の駅と━線区間以遠の駅若しくは◎印駅相互間)を、普通乗車券又は普通回数乗車券(いずれも併用となるものを含む。)によって旅行する場合は、その所持する乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、各号の末尾に記載した同一かっこ内の区間又は経路のいずれか一方を選択して乗車することができる。ただし、2枚以上の普通乗車券又は普通回数乗車券を併用して使用する場合は、他方の経路の乗車中においては途中下車をすることができない。
※JR東日本ホームページより抜粋
簡単にいうと
「特定の区間で、ルートが2つに分かれているところは、乗車券に書かれているルートがどっちであったとしても、どっちか好きな方を選択して通っていいですよ!」
ということ。
いくつかの分岐点が指定されていますが
具体例としてひとつ、
山陽本線と赤穂線という二つのJR路線が走っている、兵庫の相生駅〜東岡山駅間の場合を見てみましょう。
ちょうどこの前、
岡山〜大阪間を旅行した時の帰り、新幹線で帰る時にこんな乗車券を使いました。
●岡山→万富(まんとみ)の乗車券
●万富→大阪・新大阪の乗車券
●岡山→新大阪の特急券
普通なら、乗車券は
岡山→大阪・新大阪の通しの乗車券一枚だけになるはずですが、
わざわざ万富で区切って2枚にしたのは、このようにしてかった方が安くなるからです。
いわゆる、「乗車券の分割」というやつですね。
万富というのは、在来線の山陽本線の
岡山と相生の間にある駅です。
つまり、この2枚の乗車券は、
「在来線の山陽本線を経由する」乗車券になります。(乗車券にも”経由:山陽”と思いっきり書いてありますね)
さて、以下の図は鉄道営業規則の選択乗車の項に書かれているものです。
東岡山から相生の間にある、JRの二つの路線の略図になっていて、
上の「和気(わけ)」と書いてある方が、山側を走る山陽本線
下の「坂越(さこし)」と書いてある方は、瀬戸内海沿いを走る赤穂線
という二つの路線を表しています。
選択乗車では、
「持っている乗車券が山陽本線経由だろうが赤穂線経由だろうが、
東岡山(と、それより西)から
相生(と、それより東)の間を通って旅行する時には、どっちの路線を通ってもいいよ!
ということを定めているわけです。
さらに、距離が101キロ以上あるなど、途中下車の条件を満たしている乗車券(「下車前途無効」「途中下車できません」などの言葉が書かれていない乗車券)なら、
どっちのルートでも途中下車ができます。
つまり、今回の旅行で使った、この
万富(山陽本線)を経由する乗車券を手に持ったまま
赤穂線に乗って、のんびり瀬戸内海を眺めながら帰ってもいいですよー、ということなのですね。
回数券でも、もちろんOKです。
ちなみに、
先ほどの旅客営業規則の最後に、こんなことが書いてあります。
“ただし、2枚以上の普通乗車券又は普通回数乗車券を併用して使用する場合は、他方の経路の乗車中においては途中下車をすることができない。”
今回の乗車券のように、
分割をしてきっぷ代を安くすることで、
選択乗車できる区間の部分のきっぷが2枚、あるいはそれ以上になっている場合
他方の路線(この場合は赤穂線)では
途中下車は一切できない、ということになります。赤穂線で相生までどの駅にも降りずに
一気に乗り通すことは問題ありませんよ。
もし、岡山から大阪まで
1枚の通しの乗車券になっているのなら、赤穂線で途中下車しても問題ありません。
余談ですが、今回の万富で区切った2枚の乗車券の場合、
岡山→万富間は100キロに満たない乗車券なのでそもそも途中下車不可能、
万富→大阪・新大阪の間の駅は途中下車ができるという仕組みです。
選択乗車は、
今の山陽本線と赤穂線の例のように、
まったく違う路線同士だけとは限りません。
在来線と新幹線の間でも
選択乗車は存在します。
「「もしかして私たち、
入れ替わってる〜っ?!」」
男女の入れ替わりの方法はわかりませんが、
JRの選択乗車で、新幹線と在来線、進むルートを途中で入れ替えることができるよ!
次のページはそんなお話。
具体的な話に入って行く前に、まずは大前提のお話をします。
基本的には
“並行在来線と新幹線は、きっぷのルール上は同じ路線として扱う”ことがそもそも根本的な決まりとなっています。
並行在来線というのは、つまり
東海道新幹線に対しての東海道本線
山陽新幹線に対しての山陽本線
(ただし、新下関〜博多間は、新幹線と在来線は全く別の路線扱い)
東北新幹線に対しての東北本線、
などなど、ということ。
なので、例えば
東京から品川まで移動する場合、
新幹線に乗ろうと、在来線に乗ろうと同一の路線扱いなので、
乗車券に経由地がどう書いてあろうとどちらに乗っても構わないわけです。
「選んでもいいよー」ではなく
「そもそも同じ路線扱いだから、選ぶもへったくれもないよー」
と考えるので、これは選択乗車ではありません。
「でも、どう考えても同じ路線扱いと言うにはちょっと苦しい区間もあるのでは・・・?」
その通り。
代表的なのは「あいだに、新幹線しか停まらない駅がある区間」。
たとえば、東海道新幹線の
三島〜静岡間(間にある駅は新幹線は新富士駅。これは在来線の富士駅から2キロ弱離れている)
山陽新幹線の新大阪〜西明石間
(間にあるのは新神戸駅。在来線の三ノ宮駅や神戸駅とは数キロ離れている)
それと、在来線も停まるとはいえ横浜線に属する新横浜駅を通る品川〜小田原間など、
同一路線と言うにはちょっと厳しい?区間もあります。
そのため、こういった区間は
特例として在来線とは別路線として扱われているのです。
「じゃあ、こういった区間は
在来線を使うのか新幹線を使うのか、ちゃんと乗車券に書いてある方を使わないといけないの?」
いえいえ、
これらの区間は、選択乗車のルールが適用されるので、
結局どちらに乗っても問題ありませんよ。
つまり、実際に電車に乗る上ではなんも変わらない、ということになるんですよね。
ちなみに、東日本や北陸、北海道の新幹線は
在来線が第3セクターとなり、JRではなくなっていることも多いので、
その場合は会社が違うわけですから選択も何もあったもんじゃありません。きちんと乗車券に書かれている通りに乗りましょうね。
さて、やっとここからが本題。
今回は、新大阪〜西明石間の選択乗車を例に、話をしてみましょう。
まずは、もう一度先ほどの赤穂線・山陽本線の図を載せます。
この略図には、次のような条文が添えられています。
「相生以遠(竜野方面)の各駅と
東岡山以遠(高島方面)の各駅との相互間 (山陽本線経由、赤穂線経由) 」
このように書かれています。
つまり、最後の( )内に書かれている路線、すなわち山陽本線を経由するか、赤穂線を経由するかを選択することができますよ、と読み取れます。
次に、新大阪〜西明石間の選択乗車の略図を見てみましょう。
この区間は新神戸経由の山陽新幹線と
三ノ宮、神戸経由の山陽本線(在来線)と2通りのルートに分かれているので、新大阪より東(東淀川、高槻、京都方面)から、西明石より西(大久保、加古川、姫路方面)へ抜けて旅行する場合(あるいはその逆ルートの場合も)どっちの路線を選んでもいいですよ、という意味合いになります。
そのへんは、さっきの山陽本線と赤穂線の話とおんなじ。
なのですが、
実は、条文の形が、最後の部分がちょっと違うのです。
見てみると
「新大阪以遠(東淀川方面)の各駅と西明石以遠(大久保方面)の各駅との相互間(新大阪・三ノ宮又は神戸間、新大阪・新神戸間)(西明石・神戸又は三ノ宮間、西明石・新神戸)」
あれ?
なんか、最後の方の言い回しがさっきと違いますね。
ざっくりと、
(山陽新幹線経由、東海道・山陽本線経由)
と書いてあれば、さっきの山陽本線と赤穂線と同じように見えるのに。
※在来線の新大阪~神戸間は東海道本線、神戸~西明石間は山陽本線
ここが、
在来線同士の選択乗車と違うところ。
いったいなぜ、言い回しが違うのでしょうか。
在来線同士の場合
路線を選ぶことができるという意味合いで書かれているので、
先ほどの赤穂線の例でいくと
「相生から赤穂線を選んだら、そのまま東岡山まで赤穂線で行ってね。
あるいは相生から山陽本線を選んだら、そのまま山陽本線で進んでね」
という意味合いになります。
ところが、在来線と新幹線との選択乗車の場合、
路線ごとで区切られているのではなく
2つの駅の区間ごとに区切られているのです。
先ほどの新大阪〜西明石間の条文の最後の( )部分を噛み砕いて解釈すると
「在来線の新大阪駅と神戸駅(三ノ宮駅と元町駅も同じ駅として考える)の間と、新幹線の新大阪と新神戸は選択乗車できる区間ですよ。
さらに、在来線の神戸(三ノ宮・元町)と西明石の間と、新幹線の新神戸と西明石の間も選択乗車できる区間ですよ」という意味合いとなります。
だんだん自分でも何言ってるか分からなくなってきた気がするけど大丈夫かな?だめかな?
まあいいや。
一回、図にしてみましょう。
赤い路線がAゾーン、
緑の路線がBゾーンとします。
そして、それぞれ赤い(または緑)同士のゾーンの路線が、選択乗車に対応している。
AゾーンとBゾーンは独立したグループなので、仮にAゾーンで在来線を選び、Bゾーンで新幹線経由を選んでもOK、となるわけです。
もし新大阪〜西明石間が新幹線経由である乗車券を持っていたとしても、
まず、新幹線で新神戸まで行ってから、新神戸で地下鉄などに乗り換え、(この区間の運賃は追加で払う)三ノ宮、元町または神戸駅に着いたらそこから西明石方面への在来線の電車に乗ってもいいよ。
あるいは三ノ宮や神戸までは在来線で移動して、そこから地下鉄などで新神戸に移動して、新幹線に乗り換えてもいいよ、となるわけです。
もちろん、在来線経由の乗車券を持っていたとしても同じ事。
つまり
「新幹線の新神戸駅と、在来線の神戸駅、三ノ宮駅、そしてその間にある元町駅の3つの駅、全てを一心同体、同じ駅として扱う。この3つの駅を接点として、途中で在来線と新幹線、ルートを変えてもOK」
という解釈ができます。
同じような取り扱いをする区間はたくさんあります。
これはまた機会があれば紹介しようと思ってます。
さて、これでおしまい・・・
じゃないのが、選択乗車の恐ろしいところ。
次回は、こんな選択乗車のルールを解説します。
話は変わって。
ある、知恵袋的な相談サイトで、ある質問を見かけました。
簡単にまとめると、
広島から、兵庫県の西宮駅に行こうとしている人が
広島〜(新幹線経由)〜新神戸〜(地下鉄)〜三ノ宮〜(在来線のJR神戸線)西宮
というルートで行きたいのでこのルートで行ける広島から西宮までの乗車券が欲しい、と旅行代理店に頼んだところ
「このルートでは、広島から西宮まではJRで繋がっていないので、乗車券を発行できません。広島から新神戸までの乗車券を買って、新神戸から三ノ宮までは地下鉄の乗車券を現地で買って、三ノ宮から西宮のJRの乗車券は300円なのでこれも現地で買って乗ってください」
と言われたと。
(あるいはいったん新大阪まで行って、新大阪から在来線で西宮まで西側に引き返すように行くルート。結構割高になる)
これって正しいの?
という主旨の質問です。
実は、この旅行代理店のいう通り
このようなルートの乗車券は機械では発行できません。
なぜなら、新神戸でJRの路線は一旦途切れるので、そこで乗車券は打ち切りにならざるを得ないのです。
ということは
●広島〜新神戸までの乗車券 5400円
●新神戸〜三ノ宮の地下鉄の乗車券
210円
●三ノ宮〜西宮までの乗車券 300円
合計 5910円
を払うことになりますね。
(新幹線の特急券は別途支払いますが今回は関係ないので触れません)
念のために、乗り換え案内で乗車券の値段を確認しましょうね。
あれ?
あれれ?
5830円?
この金額には、地下鉄の運賃も含まれていますよ。
あれ?
5910円じゃないのん?
80円安いのん??
地下鉄で、乗り継ぎ割引でも適用されたんでしょうか?
あなたはこのミステリー、わかりますか?
そこで出てくるのが、さきほどもご紹介した
こんな変なカタチの選択乗車の略図。
この謎のカタチ・・・
どういうことっちゃ?!
この、謎のカタチの選択乗車の条文を読んでみましょう。
“西明石以遠(大久保方面)の各駅と、新神戸又は神
戸以遠(元町方面)の各駅との相互間
(西明石・神戸間、西明石・新神戸間)”
前回の記事で紹介したひし形の選択乗車と、どこが違うわかりますか?
前回の選択乗車は、
西明石より西の駅から来て、新大阪よりも東の駅へ抜けて旅行する場合の話でした。
ところが、西宮というのは
新大阪よりも西にある駅。
神戸駅と、新大阪駅の間にある駅のため、前回紹介したひし形の選択乗車のルールは適用されません。
※西宮はこんな所にある
そのために作られた選択乗車が
今回ご紹介した、この変なカタチのものなのです。
この条文を解釈すると
西明石より西の駅(今回の質問者だと広島)から来た場合、
西明石〜新神戸(神戸)間は、新幹線でも在来線でも選べる、ということになり、そこから元町より西の駅(つまり西宮駅も含む。新大阪のひとつ手前である大阪駅まで)は在来線で進むことができる、ということが言えるのです。
なお、この略図
図の上、新幹線ルートの方は新神戸でプツンと切れていますが
これは、新幹線には新神戸と新大阪に駅が無いので、西宮などに対応する駅がないためにここでプツンと切れているわけですね。
さて、冒頭の質問の答え合わせをしましょうね。
まずは広島から、西宮までの
在来線経由の乗車券を購入します。
広島から西宮までずっと在来線経由ということにすると、乗車券の運賃は5620円。
選択乗車可能なので、新神戸までは新幹線に乗ります。
そして、新神戸から三ノ宮までは地下鉄で移動。この運賃210円は別途支払います。
そして、三ノ宮から西宮までは
引き続き5620円の乗車券を使えばOKとなり、
合計の運賃は5830円となる、
というカラクリ。
5830円・・・
あ!乗り換え案内の結果とぴったり!
すげー!乗り換え案内頭いいーー!
ちゃんと、こうした重箱の隅を突いたような規則も使っているのですねえ。
(ちなみに今回の質問の場合、
広島から新神戸までの乗車券を普通に買うと、
広島市内から 神戸市内までの乗車券となるので、これで新神戸まで新幹線で行き、地下鉄経由で三ノ宮へ。そこから在来線に乗り、神戸市内の一番端っこの甲南山手から西宮まで乗り越す、という方法が一番安くなるのですが、それはまた、別の記事にて・・・)
なお、逆に新大阪より東からやってきて、
西明石駅よりひとつ手前(新大阪寄り)の明石駅に行く場合なども、こういった逆向きの選択乗車があるので、同じ考え方で選択ができます。
なお、この場合の選択乗車の接続駅、つまり
在来線と新幹線の架け橋となる駅はあくまでも神戸駅のみです。
三ノ宮駅は対象外となり、
新大阪から新幹線で新神戸まで来た場合は
すでに神戸駅まで来たのと同じことになるため、このまま三ノ宮まで地下鉄で行ってから在来線に乗ると、
三ノ宮〜神戸間が複乗(2回乗ること)となり
この区間の運賃120円を追加で払う必要があります。
(ちなみに先ほどの西宮の場合も、三ノ宮駅は接続駅ではありませんが、JRの神戸から三ノ宮までの区間をすっ飛ばして地下鉄経由で三ノ宮まで来た、という扱いとなり方向的には複乗とはならないので問題ありません)。
あー、
ややこしい。
なんで、なんでこんなにややこしいの?
選択乗車、ほんとうに・・・
この4日間ほど、ずっと選択乗車の事で頭がいっぱいだったので、
美味しいスイーツを食べてリフレッシュしたら、今度は品川〜新横浜〜小田原間の選択乗車についても書こうと思います。
これもまた、なかなか手強いぞ〜。
関連記事:(結局書いたのは半年後でした)
運命のお時間ですっ!どっち選ぶ?新横浜・横浜選択乗車について