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【芸能・社会】

市原悦子さん通夜に600人 ミッキー吉野、弔辞に代え追悼曲

2019年1月18日 紙面から

多くの花や植物で飾られた市原悦子さんの祭壇=東京・青山葬儀所で(高嶋ちぐさ撮影)

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 心不全のため12日に82歳で亡くなった女優市原悦子さんの通夜が17日、東京都港区の青山葬儀所でしめやかに営まれ、俳優の竹中直人(62)、阿部寛(54)やタレント布川敏和(53)、川上麻衣子(52)ら600人が参列。60年余りにわたって舞台やドラマ、映画で幅広く活躍した名優をしのんだ。

 笑顔の祭壇に花を手向ける参列者の長い列が続いた。祭壇は緑の植物で飾られた。生前、「葬儀は緑の中でやって」と話していた故人の遺志をくんだものだった。棺(ひつぎ)は自著や写真集、手鏡、愛用していたメガネなどが納められた。

 テレビ朝日系ドラマ「家政婦は見た!」など、市原さんの足跡をたどる代表作の名シーンの映像が紹介された。市原さんの舞台の音響を担当した友人が弔辞を読んだ。

通夜でピアノを演奏するミッキー吉野

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 親交があったロックバンド「ゴダイゴ」のリーダーのミッキー吉野(67)は弔辞に代え、追悼曲をピアノと歌で披露した。オリジナル曲の「夢とごはんの木 美は乱調にあり」と、舞台「三文オペラ」の劇中曲でジャズのスタンダードナンバーとして親しまれている「マック・ザ・ナイフ」。ともに市原さんのお気に入りの曲だった。

 市原さんとは、1970年代に市原さんが出演したテレビドラマの音楽を担当したのをきっかけに、家族ぐるみで交際していた。2012年からは2人で音楽劇「二人だけの舞踏会」を各地で上演した。ミッキーは「愛と表現に生きた人です。女性としてとってもチャーミングな人でした」と話した。

 さまざまなアドバイスも市原さんから受けたという。「お客さまにこびを売ってはダメだ、といつも言われていました。自分の音楽、自分の歌を貫け、と。その言葉を自ら実践した方でした」

 アップテンポの「夢とごはんの木-」は、14年に亡くなった夫で演出家の塩見哲さんが音楽劇のテーマ曲として作詞し、ミッキーが作曲した。歌が大好きだった市原さんが最も愛した曲だった。ミッキーの歌と演奏に乗って女性ダンサーが踊ってみせた。

 塩見さんが亡くなってからは、正月は塩見さんが眠る関東近郊に墓参りに行くのが恒例になっていたという。今年はかなわなかった。最後に会ったのは亡くなる前日の1月11日。病床に眠る市原さんから笑顔が返ってくることはなかったが、7日に見舞いに行った際には「愛してるわよ!」といつもの笑顔でジョークも飛ばしていたという。

 ミッキーは「塩見さんと市原さんの再会を思いながら演奏しました。市原さんはいつも塩見さんに会いたい、会いたい、と言っていました。今ごろはきっと、2人で会っていると思います」と涙ぐんだ。告別式は18日午前11時から同所で執り行われる。

◆竹中直人 かあちゃんと呼んでいた

 竹中直人は主演を務めたNHK大河ドラマ「秀吉」(1996年)で市原さんと最初で最後の共演をした。竹中が演じる秀吉の母・なか役で「かあちゃんと呼んでいた。とても優しく、見守ってくれて1年間を乗り切ることができた」と感謝を口にした。踊る場面では「テンションを上げれば上げるほど一緒に踊ってくれた。楽しくなっちゃってね。遠い昔の話ですけどね」と述懐した。

 市原さんが出演した映画「青春の殺人者」(76年)の大ファンだったといい、「仕事で一緒になっても照れくさくて言えなかった。憧れていた映画の役者と共演できるのは夢でした。ナマの市原さんに触れられたのは僕にとって大切な宝物ですね」としみじみと話した。

◆布川敏和 アドリブ返すのに四苦八苦

 布川敏和は29歳の時にドラマ「おばさんデカ 桜乙女の事件帖」で初共演した。「本番だけアドリブされて。一生懸命返すのですが、いつ出てくるか分からない。監督のOKが出ると市原さんの笑い声で『どんなアドリブするのか見たかったのよ。ワハハ』と言われた」と名女優との思い出を振り返った。

 「役者としても人間としてもたくさん学びました。まだまだご一緒させていただきたいなと思って…残念でさみしくて仕方がありません」。目頭を押さえる場面もあった。また、「29歳でお会いした時から2015年の秋まで姿を見させてもらった。お世話になりました。お疲れさまでした」と言葉を詰まらせた。

◆川上麻衣子 16歳の時励ましてくれた

 川上麻衣子は「3年前にパーティーでお会いしたのが最後になりました。お元気でしたのに」と涙ながらに語った。市原さんとの最初の出会いは川上が16歳の時。映画での共演だった。役作りに悩む川上に「素晴らしい役をもらって恵まれているわね」と励ましてくれたという。

 以来、2時間ドラマなど数々の作品で共演した。「2人とも丸顔なので親子役も多かったです」と泣き笑いした。

 「おっとりしているというより、活動的でシャキシャキした印象がありました。本番の撮影に入られると、空気がいっぺんに変わって…。私もすごく刺激を受けました」と話した。

◆小野武彦 マージャン好きで一緒に

 市原さんの俳優座時代の後輩の小野武彦(76)も故人との思い出を語った。

 小野は「井上ひさしさんの舞台でもご一緒しました。旅公演に行くと、意外にもマージャンが好きでよく一緒に遊びました」と市原さんの意外な一面を明かした。

 さらに「芝居の話をすると止まらなかった。先入観をひっくり返す発想の持ち主で、勉強になりました。『ありがとうございました』の言葉しかないですね」としのんだ。

<主な参列者> ミッキー吉野、野村昭子、川上麻衣子、布川敏和、阿部寛、井川遥、石橋蓮司、竹中直人、宮藤官九郎、小野武彦 (順不同)

 

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