ラスクのシベールが民事再生 ブーム去り資金繰り難

サービス・食品
北海道・東北
2019/1/18 7:00
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洋菓子製造のシベールが経営に行き詰まり、17日に山形地裁に民事再生手続きの開始を申し立てた。バブル崩壊後、お手ごろ価格でボリューム感のあるラスクが「ママ友への手土産」としてブームになり、2005年にはジャスダック上場を果たした。ただ、その後は競合が相次ぐなかで次の一手を打ち出せず、近年は販売政策の混乱も拍車をかけた。

民事再生手続きの申し立てについて説明するシベールの黒木誠司社長(17日、山形市)

民事再生手続きの申し立てについて説明するシベールの黒木誠司社長(17日、山形市)

17日午後7時から、山形市内のホテルで記者会見を開いた黒木誠司社長は経営破綻に到った背景を説明。「ラスクで先頭を切って上場まで到達した。しかし、その後、贈答の習慣が変わり、ライバルが出現しても成功体験から抜け出せなかった」と語った。ライバルとして自ら名前を挙げたのが「ハラダ」だ。

ハラダは群馬県高崎市に本社のある「原田・ガトーフェスタ ハラダ」を指す。シンプルな味わいが中心のシベールのラスクに対し、ハラダはホワイトチョコレートをコーティングしたラスクなど様々な商品を投入。豪華なイメージで人気となった。

長年親しまれた「麦工房」ブランドを廃止し、シベールに一本化するてこ入れ策も混乱を招いた(2000年当時の製品)

長年親しまれた「麦工房」ブランドを廃止し、シベールに一本化するてこ入れ策も混乱を招いた(2000年当時の製品)

シベールの黒木社長がライバルとして自ら名前を挙げた「原田・ガトーフェスタ ハラダ」の製品

シベールの黒木社長がライバルとして自ら名前を挙げた「原田・ガトーフェスタ ハラダ」の製品


シベールの黒木社長は「後発メーカーにはメリットがある。先発の欠点を補い特色を打ち出したが、先駆者である我々はシベールが選ばれると考え、流れに適応できなかった」と説明した。ギフト需要も落ち込むなか、売上高は08年8月期の44億円をピークに、18年8月期は26億円まで落ち込み、前期まで3期連続で最終赤字となった。

ここ数年は、通信販売で長年親しまれた「麦工房」のブランドを廃止し、シベールに一本化するてこ入れ策も混乱を招いた。そこで、18年9月に販促策を一新、月次売上高が16カ月ぶりにプラスに転じるなど回復の兆しもあったが、すでに資金繰りは逼迫。今月18日に支払期限が到来する債務返済の手当がつかなかったという。

15年に就任した黒木社長はメインバンクの山形銀行出身で、その後、山形銀出身の取締役が加わった。ただ「出身者として強く支援を依頼してきたが、3期連続赤字で先の見通しがたてにくく、他の銀行からも支援を得られない状況に到った」としながらも、「山形銀には最後まで支援いただいた」と述べた。

今後は雇用を維持しながら営業を続け、スポンサーを求めて再建を目指す。申立人代理人の粟沢方智弁護士は「現時点で有力な候補が1社あり、具体的な協議中」と説明。ファンドではなく食品関係の「類似性がある会社」といい、一世を風靡した地方企業の再建を託す考えだ。

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