「引退も覚悟した」ASKAが語る覚せい剤に手を染めてから復帰までの道のり
- 執行猶予期間が明けての復帰コンサートは40年の音楽人生が詰まった曲目
- ASKAに聞きたかった「薬をやめられる人とやめられない人」の違い
- デビュー40周年…『CHAGE and ASKA』の復活は?
2014年5月に覚せい剤取締法違反で逮捕され、その後2018年に活動を再開させたASKA。
1月17日放送の「直撃!シンソウ坂上」(フジテレビ系)では、執行猶予が明けたASKAの5年ぶりのコンサートに密着。さらに、番組MCの坂上忍がASKAに直撃した。
数々のヒット作を連発する中での逮捕…
福岡出身の2人がチャゲ&飛鳥を結成、1979年に『ひとり咲き』でデビューを果たし、翌1980年には『万里の河』が50万枚を超えるほどヒットした。
その後、葛城ユキの「ボヘミアン」をはじめ多くのアーティストに楽曲を提供。さらに、ソロアーティストとしても活躍した。
トレンディドラマの代表作『101回目のプロポーズ』の主題歌『SAY YES』が280万枚を超える大ヒット、織田裕二さん主演ドラマ『振り返れば奴がいる』の主題歌『YAH YAH YAH』は240万枚以上を売り上げた。
数々のヒット作を連発し、ミリオン、ダブルミリオンを含むトータルセールスは、3000万枚以上…しかし、2014年、ASKAは覚せい剤取締法違反で逮捕され、懲役3年執行猶予4年の判決を受けた。
あれから4年が経ち、執行猶予期間が明けた2018年の暮れにASKAは初のコンサートを行った。コンサートツアーのタイトルは「ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018 ―THE PRIDE―」。
このツアーはバンドではなく、東京フィルハーモニー交響楽団など、国内のトップクラスのオーケストラの演奏で歌うシンフォニックコンサート。
なぜ、このスタイルになったのか。ASKAはその理由を語った。
「執行猶予期間が明けてのツアーは、バンドツアーにしたかったんです。会館も貸してくれることになっていたんですが、『執行猶予期間が明ける前のプロモーションはやめてくれ』と。ということは、できないということなんです。
そんな話を繰り返しながら、今度はビルボードクラシックスというアメリカの企業が公演を行うということで、そのゲストボーカルがASKAという扱いでやれることになったんです。もう僕は、本当に人生ラッキーでできているんです。ビルボードクラシックスじゃなければ、執行猶予期間が明けたと同時にこんな活動はできませんでした」
「堂々としていなきゃと思っています」
復帰後の初コンサートは、自ら主催するものではなく、ゲストボーカルでの出演。
コンサート当日、「ちゃんと観てくれる人に応えようという気持ちが出てきてます」と意気込んでいたASKAだが、リハーサルで歌手・ASKAの生命線の一つでもある高音が出ないという問題を抱えていた。
リハーサル中に咳をしては飲み物を飲んでいたASKA。実は、ツアー初日後に風邪を引いたことで、喉の調子が整っていなかったという。
約5年ぶりのコンサート。ASKAの姿を見るために、大勢の客が訪れ、客席は埋まった。
コンサートの曲目は、デビュー間もない頃の曲からソロ曲、CHAGE and ASKAの代表曲、事件後に発表した『FUKUOKA』まで、40年間の音楽人生が詰まった構成となった。
発表当時、時期尚早との批判も含めて大きな反響を呼んだ『FUKUOKA』は、ASKAのある思いが込められているという。
「(2017年に)『Too many people』というアルバムを出したとき、もうスタジオを使わせてもらえなかったんです。その時、『東京が使えないなら戻って来ればいいじゃんか』って、福岡に呼んでくれた。福岡は特別なところだと思っています。この曲を歌うときは、そんな気持ちになるんです」
さらにコンサート中に、ASKAは武田鉄矢さんのモノマネをするなど、たびたび坂上を驚かせた。
ASKAの意外な姿に坂上は「テレビだけ拝見していると、そんな一面は見られなかったので…」と話すと、ASKAは「昔から結構やっています。お客さんの間では『またやっているよ』って感じで」と明かした。
そんなASKAは、坂上に驚きのホンネをこぼした。
「こういう活動をしていると『反省してないんじゃないか』とか、『何で堂々としていられるんだ?』という声も飛び込んできます。でも、『何で堂々としているんだ』と映っているならそれは本望です。“堂々としていなきゃ”と思っていますし、“やるんだ”と決めたら、しっかり歌わなきゃいけないので。
この言葉を使うのは適切じゃないとよく分かっていますが、今まで僕のことを知らなかった人たちが、事件によって音楽を聴くようになってくれて、そういう人たちが会場に来てくれていて。今、すごく風が吹いているのを感じていて、だから動けているんです。失ったものを取り返すために動いているんじゃないんです」
なぜ、薬物に手を染めた?
そして、坂上はいよいよ本題に切り込んでいく。
まず、1つ目は薬物に手を染めた瞬間について。
ライブに招待されてイギリス・ロンドンへ行ったとき、外国人スタッフに「今夜クラブで盛り上がりましょう」と言われ、そこで知らない男に「(薬を)いらない?」と声を掛けられた。ASKAがもらった錠剤を半分に割って、水とともに一気に流し込むと、何かが突然変わったという。
「僕は今“出会ってしまった人”という言い方をしていますが、“それ”が“それ”だっていうのは知らなかった。別のものだと理解していたので。“それ”だって聞いたときには、どこかで観念したところもあるんじゃないかな…」
薬物に手を出したときを振り返るASKAに「この4年間で一番きつかったこと」について坂上が聞くと、「正直に言うと、いろいろなことを妄想扱いされたこと。本当に辛かった」と打ち明けた。
保釈中、ASKAが訴えた盗聴と盗撮被害。「何者かに盗聴・盗撮されている」と自ら110番し騒動となった。だが、世間ではASKAの妄想では?との憶測も飛び交った。
さらに、逮捕当時、過熱する報道の中には、身に覚えのない事柄もあったという。
「ニューハーフと付き合っていないし、もうやめてくれよって。“ニューハーフと1年半同棲”していない。“ナツキ”って知らないから。でも、言われるから」と報道を否定した。
薬を「やめられる人、やめられない人」の差は?
次に坂上が聞きたかったことは、逮捕時に引退の覚悟を決めたASKAを思いとどめたもの。
「一度は音楽を辞めようと思って。記者会見も用意してもらえるようになっていたんです。堂々とできないですし、堂々と歌えない歌は届かないと思ったから。音楽の仕事はしていたいと思ったので、裏方として何かはやるだろうけど、表に出ることは辞めようと。
そんなときに、仲間に『世話になった。長いことやれて満足』と電話して回っていたら、『何言ってるんですか』と。そういう言葉を掛けてくれる人が何人か続いて、最初は『そう言ってくれるけど』と思っていたけれど、それが続くと気持ちも少しずつ変わってくるもので、それからちょっとして『やろう』と決めて。
でも、活動できることになった時に、“頭を下げたまま始めるのか”と、いつまでもそれなら出ない方がいいのではないかと思って、やるんだったらドンと顔を見せて前に進んでいくのが一番、形として“自分らしく”という言葉は使いたくないけれど、そうあるべきではないかと。お叱りの言葉も頂きましたが、それはもう分かっていたこと。受け止めて、振り切って行くしかないんです」
最後に坂上は、ASKAにどうしても聞きたかったこと、「もうクスリはやっていないですよね?やめられる人とやめられない人の差は何ですか?」と尋ねた。
少し考えたASKAは「やる人はやる、やらない人はやらないだけ」と答えた。
「僕は“川を越えちゃった人”という言い方をしています。境界線があって、やらない側にいる人には何も分からない。何かの弾みで向こうに行っちゃった人は、その人だけが知る世界があって、いつでも戻ってこれると思っている。だけど、戻ってこさせてくれない空気が世の中にあり、自分はいつでも(薬を)辞められるという気持ちがどこかにある、そういった状態が続くんです」
そう語るASKAは、薬物依存症という病気から回復して社会復帰を目指すための民間のリハビリ施設のダルクに入っていた。
ASKAの場合は、2か月間、群馬県のダルクでリハビリをした。当時の週刊誌には、その施設から脱走したと書かれていたが、実際はどうだったのか。
「最初は体験入寮でした。3日間だけ行ってみて、『それで決めてください』と。ダルクにいる人たちとの生活を経験するのも長い人生において経験になるんじゃないかと、入寮しました。最初から正月は自宅で迎えたかったので、『1月1日まで体験させてください』と言って、週刊誌には“逃げ出した”と書かれましたが、最初から日程は決まっていたんです。
(ダルクに入寮している人たちも)珍しい人が来たと喜んでくれて、いろいろな人がたくさん話し掛けてくれたんです。僕も普通にお話ししました。その中で感じたのは、“みんな笑顔で苦しんでいる”と。なぜなら、社会から閉ざされてしまったことを痛切に感じて、その中での生活を余儀なくされているから。薬をやる人とやらない人は、やめようって思ったらやめられる人、やっちゃう人はやっちゃう、これだけの違い」
デビュー40周年、復活はあるのか…
執行猶予期間が明けてのコンサートでASKAが歌った、CHAGE and ASKAの10周年記念アルバムのタイトルにもなっている『PRIDE』。さらに今年は、デビュー40周年という節目の年でもある。
現在活動休止中のCHAGE and ASKA復活への思いをASKAは「確認できているのは、『CHAGE and ASKA』に対しての愛情はお互いに持ち合わせている、これが確認できただけで十分」と話した。
2月からツアーも始まるというASKA。2月で61歳になる自分を見つめ直し、今後についてこう語った。
「50歳の時に、失礼なことを言ったことがあって『男、50歳になると自分がどんな生き方をしてきたかの輪郭と人生の尻尾が見える』と。僕自身は50歳から60歳の間でいろいろなことがありました。
常々思っていることは、もうダメだと思ったらダメだから、目の前に見上げるような道が出てきた時は、『こんなのただの坂道じゃないか』という気持ちでいようと思っている」
「直撃!シンソウ坂上」毎週木曜 夜9:00~9:54