Breakfast(朝食)は断食を破ること?ー朝食Breakfast)あれこれ

英語で朝食のことはBreakfastといいますが、これは断食(fast)を破る(break)という意味になります。では朝食が何故断食を破ることなんでしょうか?
ここでいう断食とは、前の晩から食を断っていることを言い、睡眠時間は「断食時間」であるといえます。一日の始まりに断食(fast)を断って(break)取る食事だからBreakfastなったのです。フランス語でも朝食は同様な意味があるようです。

さて朝食のことですが、日本では、ご飯に味噌汁、焼き魚、お新香、海苔など出るのが定番ですね。しかし今の日本ではこのような朝食を実際とっている家庭は少ないようです。パン食だったり、ご飯でも違うおかずが増えているそうです。

海外旅行に行くと欧米では、アメリカン・ブレックファースト、コンチネンタル・ブレックファースト、イングリッシュ・ブレックファーストの言葉をよく聞きます。ではこの違いは何でしょうか?


・アメリカン・ブレックファースト(American breakfast)

アメリカ風の朝食のことです。コーヒー、紅茶、ジュースなどの飲み物と、パン、卵料理、ベーコンやハム、ソーセージなどの肉料理、フルーツなどを組み合わせるものです。パンの代わりにパンケーキやワッフルが出ることもあります。

アメリカン・ブレックファースト(American breakfast)




・コンチネンタル・ブレックファースト (continental breakfast)

コンチネンタルはヨーロッパ大陸のことで、コーヒー、紅茶などの飲み物と、バターなどを添えたパンを中心とする簡単な朝食です。卵料理、肉料理などあたたかいものはつきません。

コンチネンタル・ブレックファースト (continental breakfast)




・イングリッシュ・ブレックファースト (English breakfast)

イギリス風の朝食のことです。紅茶、コーヒー、ジュースなどの飲み物とパン、一皿にソーセージ・ベーコンなどの肉料理、オムレツ、スクランブルエッグなどの卵料理、焼いたトマトやマッシュルーム、いんげん豆の煮込みなどをとりあわせて盛ったもののセットをさします。パンも何種類かあります。ソーセージはイギリス特有の朝食用のものです。

イングリッシュ・ブレックファースト (English breakfast)
1枚のお皿に目玉焼き・ソーセージ・マッシュルーム・ベイクドビーンズ・ハッシュドポテト・トマト・ベーコン・トーストが乗せてありボリューム感たっぷり



イングリッシュ・ブレックファースト:これは私がイギリスで実際に食べた朝食です。他の種類のものもあります。



ここで疑問があります。どうしてコンティネンタル・ブレックファーストは簡単になったのでしょうか?これでは普通の大人はお腹が空きますね。

ヨーロッパ大陸の人たち、特にイタリア、フランス、スペインなどラテン系の人たちは考え方、生活態度が享楽的と言われます。「働くための食べる」のがイギリス人で、「食べるために働く」のが大陸系ヨーロッパ人と言われます。一日、一生懸命働いて、その代わり夕食にはじっくりと美味しい食事をしなければという態度です。タップリ食べ、タップリ飲み、しかもタップリ時間をかけます。おしゃべりもたっぷりします。そしてそのままベッドに入りぐっすり寝る。

このような彼らの朝は、散々はしごして飲んだくれたサラリーマンの朝のようなものです。朝起きても昨晩、飲んで食べたものがまだ消化しきれないで残っていて、ムネヤケ状態です。こんなときに欲しいものと言えば、砂糖が入ったコーヒーなどです。そして重い食べ物は食べれないから、パン、クロワッサンなど軽くお腹に入れて済まします。どうせあと何時間すれば昼食になるので、軽く行こうということです。日本での朝食抜きや、非常に簡単な朝食のサラリーマンが結構いるそうですね。それに近い感じです。というようなことでコンチネンタルブレックファストが出来たと言われます。これは貧しいから食べないのではなくて、豊かな食生活をするため自然になったのです。昔のヨーロッパの貴族たちも、前の晩、ざんざん飲み食いして、朝起きるのが遅くなり、昼食まで食べないのも何だからと、軽い朝食をとって済ませたとの話もあります。ただしこれは、あくまでまずまずの生活ができる階層の人たちの話で、貧民についてはこんな生活はできません。

ではイングリッシュ・ブレックファーストでは、どうしてあんなにたくさん食べるようになったのでしようか? よく言われることですが、「イギリス料理で一番美味しい料理」として朝食が挙げられます。イングリッシュ・ブレックファーストについて、作家のサマセット・モームは、「イギリスで美味しい食事がしたければ、1日に3回朝食を取ればいい」という言葉が引き合いに出されます。それだけ昼食・夕食はあまり良くないとの皮肉でもあります。しかし非常に簡単なコンチネンタル・ブレックファストよりも量と栄養に優れており、イギリス以外でもドイツ、オランダ、北欧三国でも取り入れられているそうです。

英国では家族の団らんを大切にしています。朝食は家族でなるべく一緒に食卓を囲むようにします。また、ブレックファーストは、断食(ファスト)を破る(ブレイク)ということであり、一晩の断食の後の大切な食事と考えられています。したがって、英国の朝食はとても多く、バラエティに富んでいます。断食の後、一晩休んで体力を養った体に、十分な料理と紅茶でたっぷり体に栄養を付け、これから始まる1日に備えます。英国人にとって朝食は、そんな充実感のある食事とお茶の時間です。しかし、最近では、英国人でも忙しい平日は朝からいろいろ料理するする余裕が無くなってきて、もっと簡単に済ませる人も多くなっているようです。それは紅茶、ジュース、パン・ジャムにシリアルかフルーツが付くくらいのもです。しかし休日の朝ともなるとイングリッシュ・ブレックファーストに近いものを楽しんでいます。

イングリッシュ・ブレックファーストには呼び方があります。フル・ブレックファスト(Full breakfast)は、イギリスの伝統的な朝食のことです。英国の地域ごとに、イングリッシュ・ブレックファスト(English breakfast、イングランド)、スコティッシュ・ブレックファスト(Scotish breakfast、スコットランド)、ウェルシュ・ブレックファスト(Welsh breakfast、ウェールズ)、アイリッシュ・ブレックファスト(Irish breakfast、アイルランド)のように呼び名違います。

私もスコットランドで経験しましたが、スコティッシュ・ブレックファストは特に朝食が豊かです。こんな言葉があります。「食通なら誰でも、世界中のどこで夕食をとっても朝食はスコットランドで取るだろう」と文学者サミュエル・ジョンソンが絶賛した言葉です。フル・ブレックファストは、特にスコットランドの食習慣から受けたと思われる影響があります。その理由は、スコットランド人は、イングランド、ウェールズ、アイルランドなど他の地域の人よりも多い量の朝食を食べ、紅茶を何倍も飲む習慣がありました。朝食用のソーセージは初めてスコットランドのアバディーンという北部の町で作られました。ドイツのソーセージとはちょっと違います。トーストに添えられるマーマレード(Marmalade)の発祥地とされるダンディーもスコットランドの町です。


ダンディのキラー(Keiller)のマーマレード誕生秘話(下記URL)

http://w1.avis.ne.jp/~saloon/ff/18.htm

ダンディのキラー社のマーマレード(DUNDEE MARMALADE)



さて歴史的に見ると、さらにクイーンメアリ・スタイルと呼ばれる朝食があります。18世紀ごろまでイギリスの朝食の内容はとても重く、英国の王室では8コースの朝食が用意されていたそうです。この膨大な朝食メニューを1904年に、キング・ジョージ5世の妻、クイーンメアリが「無駄な8コースの朝食」として整理し、今日のブレックファーストの基本となるものを定めたそうです。その内容は、ベーコンやソーセージを焼いた物、卵焼きやスクランブルエッグ、ベイクドマッシュルームやトマト、羊の燻製やにしんの燻製などの盛り合わせ、場合によってはヨーグルトやフルーツ。そしてパンは前もってカリカリに焼いておいた薄焼きトーストやマフィン、バンズなど。飲み物は紅茶とジュースなどです。これでもすごい量です。このスタイルは20世紀初めから一般市民にも広まりました。これがイングリッシュ・ブレックファーストの原型です。

さてアメリカン・ブレックファーストはどうでしょうか?アメリカンブレックファーストいってもアメリカの朝食という意味ではありません。アメリカは各地から来た移民の国であるので、いろいろな形態の朝食があります。それぞれが出身国の伝統的な朝食をとっている場合も多く、かつその後、アメリカの土地で生み出された新たな形態も加えられています。大まかに、イギリス系の朝食的な形態がアメリカンブレックファーストに似ています。イングリッシュ・ブレックファーストとアメリカンブレックファーストと内容に大差はありません。ただ本格的なイングリッシュ・ブレックファーストならば、アメリカンブレックファーストに加えてオートミール、ポテト料理、野菜料理、豆料理、魚料理などさまざまなメニューが加わることもあります。

最近では世界的にいわゆるバイキング形式(Buffet Breakfast)の朝食を出すホテルが多くなっています。そうなると、上記の上記の朝食の形態違いなどなくなってしまいます。好きな料理や飲み物を、好きなだけ飲食すればいいので、朝食の世界平準化とも言えます。ただホテルで部屋に朝食を頼むときはどういう形態かが問われます。これはあくまで旅行中やホテル、レストランの話であって、日常生活で家で取る実際の朝食は、今や従来の慣習的な形態の内容から、ずいぶん変わって自由になってきています。中国などでは一部の人は、朝食は路上の屋台で食べるところもあります。私も中国では何回か朝食を屋台で食べました。欧米流の朝食だけでなく、世界には様々な朝食があります。

バイキング形式(Buffet Breakfast)の朝食が増えてきました。




中国の朝食:朝粥、揚げパンなど。朝、屋台でも食べる人たちがいます。



日本の典型的な和朝食:現在の実生活では相当に変わっています。



さてここで、欧米でのBreakfast以外の昼食、夕食の区分けを書いておきます。

Lunch=Luncheonの省略で「昼間の飲み物」という意味から来ていそうです。英国のイングリッシュ・ブレックファーストを食べた場合は、当然昼食は簡単になります。Dinnerは本来は〔朝食〕のちに食べる〔昼食〕の意味です。18世紀頃では昼食は「ディナー/dinner」と呼ばれており、一日のメイン・ミール(正餐:一番中心になる食事)がdinnerでした。これが時代とともに、昼食から夕方の食事へと移っていったのです。ヨーロッパでは今でも一日の正餐(中心)は本来は昼食と言われます。イギリスでも、今でも、ディナーとは、一番大事な食事の意味になります。クリスマスディナーと言えば、クリスマスの昼間、ランチから早い午後にかけて始まる家族を囲んで食べる食事です。昔は、Breakfast, Dinner and Supperと言っていて、lunchは比較的新しい言葉です。Supperは、今では、一日の終わりの夕食、あるいは、早い夕方のディナーのあとに取る軽い食事でことを指します。

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世界には様々な食事があり、食べ方や時間、その食事に対する考え方の違いがあります。海外旅行や出張のおりには、その国の食事に積極的にトライしてみてはいかがでしょうか。
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コメント (2)
海外旅行をするとき気になるのは朝食です。いつも、コンチネンタル、イングリッシュ、アメリカン、どのブレックファストかなとチェックします。コンチネンタルと聞くとがっかりしたものです。シンプルな朝食でなぜそうなのか考えたこともなかったです。今日初めてわかりました、それぞれの生活スタイルがバックグラウンドにあったのですね。日本で言うところのバイキングスタイルが海外でも、国内でも増えていますね、日本の旅館でも良く経験します、人件費削減に貢献できても無駄が多いのでは心配してしまいますが、旅行客の好みの集計をとったうえで実施しているんでしょうね。それにしても、年齢が高くなるに連れて個人的にサービスを好む人々がいて、ホテルや、旅館も対応が難しいのではと想像しています。どんな朝食にしろ美味しくいただける事に感謝しないといけないですね。食欲をそそられる写真の数々、お腹が減っていたら大変でした。
Anne
Anneさん
確かに海外旅行でコンティネンタルと聞くがっかりですね。でも日本人は各国の食事に対応しているほうであって、大体はどこもアメリカン・ブレックファースト的な朝食を食べています。しかし考えてみると、欧米人がほとんど日本、中国などアジアに来ても食べる朝食は欧米流というのはちょっと変ですね。それだけ対応力がないというか、頑固に自己流を守っているのかはわかりません。

Anneさんはご存知ですか?世界で最も食事に対応力のない旅行者の一つは中国人だそうです。他の国の料理をあまり食べれないのです。なんでも食べるのは、あくまで中華料理のようなものの範囲内のことです。したがって、中国の旅行社はヨーロッパで中華料理が食べれるところを探し、そこで泊まったり、昼食をとっています。中国の旅行者が増えて、この問題で各国の関係者は困っているそうです。ただ最近の若い人たちは次第に各国の料理も食べているようで、慣れてくれば食事への対応力が増えてくると思われます。

旅行中の食事って、国内外を問わずその旅行の印象にかなり影響を与えますね。
Jack
Jack

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