LORD Meets LORD(更新凍結)   作:まつもり
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第十三話 前線都市

エ・ランテルは、リ・エスティーゼ王国の都市の中で最もバハルス帝国との国境に近い。

 

街を取り囲む三重の壁に守られたこの都市は、軍事拠点として利用されてきた歴史があり、例年の帝国との戦争の際には兵の駐屯地として使用される。

そのため食糧や武器の需要が高く、それらを取り扱う商人達が大きな影響力を持つという特徴があった。

 

バハルス帝国との緊張は今に始まったことでは無く王国の歴史を紐解けば、カッツェ平野にて幾度となく帝国との戦争が繰り返されてきた。

その際に問題になるのは、戦死者の埋葬場所である。

 

この世界では、弔われることもなく放置された遺体はアンデッド化することが多いとされている。

戦時中であっても遺体の回収と埋葬に関しては、敵味方関係なく邪魔をするべきでは無いという暗黙の了解があり、王国ではカッツェ平野で回収した戦死者の遺体を最寄りの都市であるエ・ランテルの外周部の壁内にある広大な墓地に埋葬することが慣習となっていた。

 

わざわざ都市内部に墓地を作っているのには理由がある。

戦争で殺されるなど無念の死を迎えた者の遺体は、例え丁重に弔われたとしてもアンデッド化する可能性は通常よりも高い。

 

発生したアンデッドを放置しておくと、それに誘発され更に強いアンデッドが発生する現象が起きてしまうため、発生したアンデッドが弱いうちにこまめに討伐する必要がある。

その為には常に目の行き届きやすい、都市内部に墓地を作った方が都合がいいのだ。

 

もっとも最近の帝国との戦争は、とある事情から本格的な衝突は起こっておらず、王国側に死者が発生しても比較的少数。エ・ランテルの墓地は、かなり空きがある状態だった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

モモンガたちを乗せた馬車は、エ・ランテルに近づきつつある。

馬車自体は、カルネ村の住人が薬草の行商の際に使用していた幌もついていない簡素なものだが、それを引いている二頭と予備として連れている一頭の馬は、見事な筋肉と毛並みをしており、軍馬としても十分通用しそうだ。

 

この馬達は、モモンガが召喚した騎乗用の傭兵モンスターである。

とは言ってもナザリックの図書館の中では、最もレベルの低い騎乗モンスターであり、体のつくりも普通の馬と変わらない。 レベルにして5レベルという、モモンガにしてみれば走るしか能のない"ただの馬"であるが、この世界においては一般市民の年収でも到底手が届かない名馬に分類されるものだった。

 

朝起きたエンリとネムに、森に繋いでおいた馬だと、この三頭を紹介したときのエンリの驚きようにはモモンガも面食らってしまった。

 

魔法や武器の善し悪しは、ただの村娘では判断がつかない。

しかしエンリも馬には接したことがあるだけに、その価値が理解出来る。

エンリはこの三人について、名のある戦士か高貴な出自なのかも知れない、と予想していた。

 

「あれが、エ・ランテルか。 近くで見るとでかいな・・・」

 

モモンガは思わず感嘆の声を漏らした。

 

「そうですね・・・。 実は私も去年、父の行商についていったとき、始めてエ・ランテルに行ったんです。 ンフィーレアは、いつも自分で村の周辺に薬草を取りに来ますし」

 

「しかし、この広い都市の中で、そのンフィーレアというご友人を見つけることは出来るのですか?」

 

いつもの執事服ではなく、黒いレザーシャツとズボンを着たセバスが尋ねた。

ちなみに、この服装は旅人の中に一人執事が紛れ込んでいたら浮いてしまうかも知れない、と危惧したモモンガが着替えさせたものだ。

 

モモンガは、この世界の装備や道具のレベルを測るには、まだ情報が足りなすぎると判断していた。その為、セバスが着用している装備は、目立たないようにとナザリック基準では低レベルの装備・・・、聖遺物級(レリック)遺産級(レガシー)の装備で揃えている。

アルベドも、姿を隠すための鎧は仕方がないとして、武器のハルバードは聖遺物級(レリック)のものを装備していた。

 

そして念には念を入れ三人とも、魔法による探知を妨害する指輪をつけている。

 

「あ、はい! セバスさん。 ンフィーレアは、おばあさんとバレアレ薬品店っていうお店を経営しているんです。 おばあさんはエ・ランテルでも有名な薬師だって言っていましたから、人に聞けばお店の場所が分かると思います」

 

「なるほど、それなら安心ですね」

 

一同を乗せた馬車は都市の門に近づいて行く。

 

「アインズさん。 あの門で検問を受ければ中に入れたはずです」

 

「検問? それは・・・、どんなことをするんだ?」

 

「えーと、確か去年お父さんと来た時は、エ・ランテルに来た目的と危険物を持っていないかを調べてから、足税を払っていました。 でも、もしかしたらアインズさん達のように武器を持っていたり、魔法を使えたりする場合は、更に詳しく調べるかもしれません」

 

「そうか・・・」

 

(この世界の技術や魔法はまだ未知数だからな・・・。 対策できないような方法で情報を抜き取られなければいいが)

 

一抹の不安を覚えながらも、アインズ達は検問の列の最後尾に並んだ。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「よし、次の者」

 

検問の任務にあたる兵士の彼の前に、変わった一行が現れた。

その五人は、幌もついていない粗末な馬車に乗っていたが、その馬車を引く馬は見事なものだ。

 

馬、というものは農作業用の馬、騎乗用の馬、そして騎乗用の中でも特に優れた軍馬などに分類することができるが、これはどう見ても軍馬にしか見えない。

これほどの馬を購入するには、平民では手が届かないような大金が必要だった筈だが、ならば馬車が粗末なのはどういうわけだろう。

 

また、その者達の風体を変わっていた。

村娘と思われる二人の少女と、革製のシャツの上からでも鍛え抜かれた体格が伺える老人はまあいい。

問題は、悪魔を連想させる禍々しいデザインの全身鎧を来た人物と、古びたローブを纏い、顔には悲しみとも怒りとも取れる不思議な表情をした仮面、手には手袋を装着した人物。

性別どころか、年齢すらもはっきりしない。

 

――不審にも程があるな。

兵士は自分の当番の時に、このような厄介そうな一行が訪れた不運に内心ため息をつきながらも、仕事を始めることにした。

 

「えー、まずエ・ランテルに来た目的は何だ?」

 

十代半ばと思われる金髪の少女が質問に答えた。

 

「私はカルネ村出身のエンリ・エモット。 こっちは妹のネムっていいます。 あの、実は・・・、私達の村が盗賊に襲われてしまって、生き残ったのは私達二人だけなんです。 二人だけでは、村で生活していくことは出来ないので、この街で仕事を探そうと思って・・・」

 

「村が盗賊に・・・」

 

兵士の胸中に苦いものが走る。

近頃、国内の経済の悪化から、食い詰めた者たちが野盗と化した案件が多発しており、エ・ランテル周辺でも荷馬車が襲われるなどの事件が頻発していた。

 

「ちょっと待ってくれ、一応台帳で確認してみる」

 

兵士は同僚に目配せして、詰所にある台帳を確認してもらう。

リ・エスティーゼ王国の都市には、都市及び周辺地域で生まれたものの名前や生年月日など、簡単な記録をつけた台帳が存在する。

スレイン法国の戸籍のように、国民の犯罪歴やタレントまで記録した精度の高いものでは無いが、それでも兵士の徴用や人口の把握などの目安程度にはなる。

 

その結果、確かにカルネ村に生まれたエンリとネムという娘の名前が見つかった。

 

「どうやら、本当のことのようだな・・・」

 

しかし、と彼は考えてしまう。

エ・ランテルには、この娘のように仕事を求めて流れて来るものは珍しくはない。

だが昨日まで畑を耕していたような人間が、いい条件の職業につくのは難しい。

 

安い給料の過酷な仕事でも、働き先を見つけられるなら幸運な方。

最悪、犯罪者に身を落としたり騙されて借金を背負わされ奴隷として売られた、などという話も聞く。

若い娘なら、覚悟さえ決めれば働き口はあるだろうが・・・、目の前の純朴そうな娘が、悪所で春を売るようなことになるのは忍びなかった。

 

「働く当てはあるのか? 特に、特殊な技能も持っていないなら難しいと思うが」

 

「あっ、この街のバレアレ薬品店っていう店でおばあさんと働いているンフィーレアって子と友人なんです。 仕事探しを手伝ってもらえないか頼んでみようと思ってます」

 

「ほう・・・」

 

バレアレ薬品店なら兵士も知っている。

この街、いや王国でも最高の薬師と言われるリィジー・バレアレが孫と共に経営している店で、軍との関わりも深い。

 

(ンフィーレアと言うのは、そこの孫のことか。 ならば、店の雑用係の仕事くらいは紹介してくれるだろうな。 楽では無いだろうが、生活はしていける)

 

「よし、お前たちは通っていい。 それで、えーと・・・、そっちの三人は何者なんだ?」

 

彼が気になっていたのは、二人の少女よりも彼らだ。

問いかけに、仮面の男が答えた。

 

「私達は、最近このあたりに来た旅人です。 私はマジックキャスターのアインズ・ウール・ゴウン。 そしてアルベドとセバスです」

 

「旅人? マジックキャスターってことは流れの冒険者か?」

 

確かに腕のいい冒険者ならば、あのような馬を買えたとしても不思議はない。

それに、この三人の風体は明らかに戦闘を生業とする者たちに見えた。

 

「いえ、私達のいた国では冒険者という職業はありませんでした。しかし、我々もモンスターを退治して路銀を稼いで来ましてね。この国では、冒険者組合、というものに登録してみようと思っています」

 

冒険者がいない、ということはリ・エスティーゼ王国やバハルス帝国ではない。

そういえば、スレイン法国や、その更に南方の国には冒険者組合が置かれていないと聞いたことがあるが・・・。

 

「じゃあ、その仮面をとってくれないか? 一応顔は確認しておかないとならないからな。そっちの鎧のあんたも頼む」

 

「・・・ええ、実は私は直射日光に弱くて仮面をしているのですが、短時間なら大丈夫でしょう」

 

男が、仮面を取り外すと、怪しげな外見に反し、中からは意外と地味な顔が現れた。

恐らく年齢は三十代前半くらいか。 予想通り、髪は南方出身の人間に見られるという黒髪だ。

もしかしたら、仮面の中から人間離れした顔が出てくるのではないか、と警戒していた兵士は、心の中で胸をなでおろす。

 

「じゃあ、後は鎧のアンタだな。 もしかして、同じように肌が弱いのか?」

 

「いえ、私の信仰する宗教では、戦士たるもの常に装備を外すべからず、という教義があるのです」

 

そう言って、取り外された鎧兜の中から現れた顔を見て、担当の兵士のみならず、近くで歩哨に立っていた兵士や、別の列に並んでいた者たちまでもが、息を飲んだ。

 

絶世の美女。

使い古された言葉かも知れないが、彼女を表すのには、これしかないだろう。

絹のような滑らかな黒髪に、慈愛に満ち溢れるような穏やかな瞳。

禍々しい重そうな甲冑に覆われていた肌は、白磁のようなシミ一つない美しさを湛えていた。

 

「あ・・・」

 

彼女は思わず言葉を忘れてしまった兵士に軽く微笑み、薄紅色の唇で言葉を紡いだ。

 

「顔は確認していただけました? もう、兜をかぶってもいいかしら」

 

「は、はい、どうぞ! ありがとうございました」

 

思わず直立不動になり、上ずった声で兵士は答えた。

 

――――勿論これはモモンガの幻術によるものである。

アルベドは比較的人間に近い容姿をしているため、偽装はそう難しいものではない。

角と瞳の形を透明化と幻術の魔法で誤魔化せば、それで事が足りた。

 

「それじゃ、マジックキャスターがいるということだから、最後に魔術師の調査を受けてくれ。

あなた達を疑っているわけではないが魔法や、マジックアイテムを使って危険物を持ち込まれるというケースが報告されていてな。 規則なんだ」

 

男が近くの兵士に事情を説明すると、その兵士は魔術師ギルドから派遣された、魔術師を呼ぶ為に走っていった。

それを待つ間、モモンガの心の中に緊張が走る。

 

(この世界に来て初めての魔法か・・・。 いきなり正体がばれることには、ならなければいいが)

 

やってきた魔術師は、黒いローブに怪しげな三角帽をかぶった鷲鼻の男だ。

まるで、私は魔術師だ、と喧伝しているような服装の彼は、モモンガを興味深げに見る。

 

「異国からやってきた魔術師らしいな。 ふむ・・・、そなたは何位階まで使えるのだ?」

 

「位階・・・」

 

(ユグドラシルでは、十位階までの魔法と、超位魔法があるけど、この世界ではどうなんだ?

それに、この世界の魔術師の強さとかも、分からないし・・・)

 

モモンガは悩んだ末に、カルネ村で全身が焼け焦げた遺体を見かけたとき、第三位階の《ファイヤーボール/火球》によるものではないかという仮説を立てたことを思い出した。

 

(こうなったら一か八かだ・・・。 もし不審に思われたら、自分の故郷では位階の数え方が違うとでもいって、ごまかそう)

 

「だ、第三位階まで使用できる」

 

「おおっ、なんと!」

 

魔術師は、目を見開き驚きを露にする。

 

(まずい、何か間違えたか? やはり、もう少し高く言うべきだったか) 

 

モモンガは危惧するが、その魔術師は興奮して話を続けた。

 

「第三位階か・・・。 その歳になるまで相当努力したのだろうな。 エ・ランテルにそなたのような優秀な魔術師が訪れたことは、幸運と言うべきか」

 

「ち、ちなみに、あなたは何位階まで使えるんだ?」

 

「私は、昨年、二十五歳で第二位階に到達した。 勿論、これで満足したわけではないぞ。 この先、更に上を目指したいと思っている」

 

魔術師は誇らしげに胸を反らせた。

 

(二十五歳で第二位階って・・・。 えっ、もしかして、これで強いほうなのか? ユグドラシルなら、ゲームを始めて一日も経てば覚えられるぞ。 いや、しかし彼のいう魔法は、ユグドラシルとは違う可能性が高いだろうし・・・)

 

「おお、そうだ。 本題を忘れていたな。 魔法のアイテムなどを所持していないか調べさせてもらう」

 

魔術師は魔法を詠唱した。

 

「《ディテクト・マジック/魔法探知》」

 

魔法使いが目を細め、モモンガ達三人を眺めるが、やがて目元を緩めた。

 

「うむ。 特に、魔法を使用したり、マジックアイテムを所持していたりはないようだな。

第三位階の魔法詠唱者なのにマジックアイテムの一つもないとは珍しいが・・・」

 

「えっ?」

 

モモンガは思わず間の抜けた声を出してしまった。

 

「どうかしたか?」

 

「い、いえ。 別になんでもない」

 

《ディテクト・マジック/魔法探知》はモモンガもよく知るユグドラシルの魔法だった。

モモンガは、魔術師の詠唱を聞いた後、この世界の魔法がユグドラシルのものと同じであることに確かに驚いた。

しかし、モモンガが声を上げてしまったのは、それが理由ではない。

身体検査が、たった一つの魔法で終わってしまったためだ。

 

(幾ら第二位階までしか使えないと言っても、《ディテクト・マジック/魔法探知》だけで終了は有り得ないだろ。 マジックアイテムを一つも所持していないことを不審に思ったなら、せめて探知妨害の可能性を視野に入れて、確実に作用するであろう探知魔法、《ディテクト・ライフ/生命探知》とかを使って、探知魔法自体が妨害されていないか確認くらいするのが常識だと思うが・・・。リスクは高いけど《ドミネイト・パースン/人間種支配》を使う可能性も視野に入れていたのにな)

 

モモンガは、魔法による調査のあまりの緩さに愕然としてしまう。

 

しかし、それも仕方ないだろう。 情報系魔法というのは、それだけは敵を倒したり、味方を強化したりといったことが出来ない為、一生に習得できる魔法が限られているこの世界では率先して取るものが少ない。

 

ユグドラシルには、今のモモンガ達が行っているような隠蔽工作など、簡単に突破してしまうような、情報系魔法に特化したプレイヤーも多くいたが、そのように偏ったビルドが出来るのは、ゲーム内に限った話。

 

現実に、今後の人生のことまで考えて習得する魔法を選ばなければならない、この世界の魔術師にしてみれば使いどころが多い攻撃魔法や補助魔法を優先するのが当然だろう。

 

「よし。 じゃあ、通っていいぞ」

 

兵の許可が出て、エンリに一旦足税を立て替えてもらい、門を潜ろうとしたモモンガを魔術師が呼び止めた。

 

「ちょっと待ってくれ。 もし良かったらなんだが、魔法を使ってみてくれないか? この街に新しく優秀なマジックキャスターが来たなら魔術師ギルドに話を通しておきたいのだが、やはり実際に見てみないとな・・・。

そなたにとっても、早めに魔術師ギルドと顔を繋いでおいたほうが動きやすいだろうし、悪い話では無いと思うのだが」

 

(魔術師ギルド、ね。 また新しい単語が出たな。 まあ、魔術師達の組織といったところか。 この世界の魔法についてもう少し詳しく調べてみたいからな・・・、確かに話は通してもらった方がいいか)

 

「分かった。 では、第三位階の魔法を使って見せよう。 私はネクロマンサーでね。 アンデッドを召喚させて貰うぞ」

 

モモンガは、人のいない方角を向くと、手を突き出し詠唱した。

 

「《サモン・アンデッド・3th/第3位階死者召喚》」

 

地面から黒い靄が吹き出し、次第に形をとっていく。

そして現れたのは、大きさ三メートル近くはあろうかという真っ赤な肌の巨体から、血のように赤い粘液を垂らすアンデッドだった。 そのぜい肉が揺れるたびに、周囲に粘液が飛び散る。

このアンデッドの名は血肉の大男(ブラッドミート・ハルク)

殴るしか攻撃手段を持たないレベルにして十五のアンデッドだが、高い体力に加え、再生能力を有しているため同レベル帯ならば倒すのには時間がかかるだろう。

モモンガもユグドラシルを始めてすぐの頃は壁役としてよく使っていた。

 

「おお、これは本で見たことがある! 

 難度約45のアンデッド、ブラッドミート・ハルクだな!?」

 

魔術師は感嘆の声を上げたが、その他の周囲の人々は、恐怖でざわついた。

 

「な、難度45、だって」

 

兵士の一人が思わずつぶやく。

ここにいる兵士達は、冒険者のランクで言うと鉄くらいの強さしか持っていない。

彼の記憶では、難度四十五といえば、最低でも金級の冒険者のチームが必要となり、もしここでこのアンデッドが暴れだせば、詰所にいる兵士達全員で掛かっても押さえ込めないだろう。

 

近くの列に並んでいた民達の動揺はもっと顕著だ。

彼らの中にも、ゴブリンなどの弱いモンスターを見たことがある者は少なくないが、難度45というのはこの世界ではかなり強い部類に入る。その姿から伝わって来る、自分を容易く殺し得るであろう力に震えるものもいた。

 

だが、その心配とは裏腹に、ブラッドミート・ハルクは出てきたときと同じように、あっという間に黒い靄となって地面に吸い込まれた。

 

「これで分かって貰えたかな?」

 

「ああ。 そなたのことは、私から魔術師ギルドに話しておく。 優秀な魔術師は大歓迎だ、いつでも寄ってくれ」

 

「そうだな・・・。 時間が出来たら是非寄らせて貰うとしよう」

 

モモンガは魔術師に後ろ手で軽く手を振ると、他の四人と共に、エ・ランテルの中へ入っていった。

 

それを見送った兵士が、小声で話し合う。

 

「凄そうな奴らが来たな・・・」

 

「まあ、優れた冒険者はいつでも歓迎だ。 彼らは、すぐに有名になるだろうな」

 

 

 

 






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