新たな情報源を発見
Wikipediaや新聞記事などから大量のコピペをしていて話題となっている百田尚樹『日本国紀』。
なんと「NAVERまとめ」からも転載している疑惑が浮上しました。
costarica氏が次のようにツイートしています。
コピペの経緯
指摘されたコピペ経緯がやや複雑なので、これをまとめれば以下のようになります。
- 『日本国紀』(p. 445)では、「バー・モウの言葉」が『ビルマの夜明け』から引用したと記されている。
- しかし『ビルマの夜明け』のなかに、そのような「バー・モウの言葉」は載せられていない。
- このような錯誤が起きた原因を調べた結果、「NAVERまとめ」において、『ビルマの夜明け』のカバー写真が挙げられ、その下に当該の「バー・モウの言葉」が引用されている。
- ゆえに、百田氏はこの「NAVERまとめ」を見て、この「バー・モウの言葉」が『ビルマの夜明け』に収載されていると誤解してコピペしてしまった。
ということです。非常に説得力のある説だと思います。というのも少し調べれば、日本会議系のサイトに、この「バー・モウの言葉」とされる言葉が、実は「ブン・トモ元情報相の言葉」として載っているからです。
つまり「NAVERまとめ」で発言の主を間違えてたまま記載されたものを、『日本国紀』はそのままコピペしてしまったため、二重の間違いを犯してしまったのだと予想されます。
お世話になっている日本会議の情報よりも、お手軽なNAVERまとめを利用してしまったところに、『日本国紀』の内容の軽さまで反映しているように思えます。
比較テーブル
蛇足ですが、比較テーブルをあげておきます。
『日本国紀』p. 445(第5刷) | NAVERまとめ(魚拓) |
「日本軍が米・英・蘭・仏をわれわれの面前で徹底的に打ちのめしてくれた。われわれは白人の弱体と醜態ぶりを見て、アジア人全部が自信を持ち、独立は近いと知った。一度持った自信は決して崩壊しない。日本が敗北した時、『これからの独立戦争は自力で遂行しなければならない。独力でやれば五十年はかかる』と思っていたが、独立は意外にも早く勝ち取ることができた。そもそも大東亜戦争はわれわれの戦争であり、われわれがやらねばならなかった。そして実はわれわれの力でやりたかった。それなのに日本にだけ担当させ、少ししかお手伝いできず、誠に申し訳なかった」(『ビルマの夜明け』バー・モウ著) | 日本軍が米・英・蘭・仏をわれわれの面前で徹底的に打ちのめしてくれた。われわれは白人の弱体と醜態ぶりを見て、アジア人全部が自信を持ち、独立は近いと知った。一度持った自信は決して崩壊しない。日本が敗北した時、『これからの独立戦争は自力で遂行しなければならない。独力でやれば五十年はかかる』と思っていたが、独立は以外にも早く勝ち取ることができた。 そもそも大東亜戦争はわれわれの戦争であり、われわれがやらねばならなかった。そして実はわれわれの力でやりたかった。それなのに日本にだけ担当させ、少ししかお手伝いできず、誠に申し訳なかった。 (昭和三十二年の来日時) |
なお余談ですが、makoto氏の指摘によれば、バー・モウ『ビルマの夜明け』には次のようにあるそうです。
冷酷で短気な日本軍人が残虐な振舞いをしたこと、そして、もっと残酷なやり方でビルマとビルマ人及びその資源を日本の戦いのために利用したことについては、疑う余地がない。……これらの軍人はビルマ人の知っているすべての者よりはるかに残虐であったこれらの人々の残虐性、横柄さ、民族的自負はビルマ人の心に戦時中の記憶として深く残っている。東南アジアの非常に多くの人々にとっては、それらのみが戦争の記憶のすべてである。
バー・モウ『ビルマの夜明け』太陽出版, 1995, p. 195.
言っていることが全く逆なのですが…。
このような発言が残されている以上、本当にバー・モウが、日本に感謝してたのか疑わなければならないでしょう。
まとめ
どんどん明らかになっていく『日本国紀』の粗雑なつくり。
自説に都合の良いところをネットから適当にコピペし、それを継ぎ接ぎしてつくったことがよく解ります。
今回のように出典元が明示さている箇所でも、実際には出典元を参照していないケースというのは他にもあるでしょう。恐ろしい責任放棄の構造が見て取れます。
なお本記事で説明したように、この「バー・モウの言葉」は存在しない筈なのですが、何故か現地では誰ても知っているという信者さんの発言が…。謎です。
そういえばNAVERって韓国の会社じゃ…
そういえばよく考えたらNAVERって韓国の会社ですよね(汗)
そんなNAVERまとめからコピペしていた百田尚樹氏なのですが、過去には韓国のコピー商品を「犯罪」と非難していたんですよね……。
すごいブーメラン!
だから、百田尚樹「日本国紀」は、「学術論文」としては失格ということなんでしょうね。
それが、世間一般に大量に拡散することで、「何が問題になっている」のですか?
たとえば、「デマが拡散する」とか、「政治的プロパガンダに利用される」とか、等。
物書きのモラルハザードだから。
nigeatさん
全く問題になっていません。
「デマが拡散する」と書いておられますが、拡散されてwikipediaに載っているデマを再拡散しているだけなので、デジタルデバイドな人には影響したかもしれないけれど、まあ大した問題じゃない。
「政治的プロパガンダに利用される」と書いておられますが、百田自身が歩く政治的プロパガンダなので、通常運転といったところ。
五島勉氏の「ノストラダムスの大予言」シリーズは、軽く1000万部超えなので、百田本なんか足元にも及びません。ノストラ本の方が影響力があったかもしれない。
私としては、百田よ、お前も一応は物書きなんだろう、その矜持はどこに行ったのか、という点が大問題なのですよ。ネットに書いてあることをコピペで継ぎはぎして、井沢元彦に感化されたことをそのまま書いて、なお謝りもせず、開き直っている。
作家が言葉を紡ぐというのは、すごい作業なわけですよ。日々、呻吟しながら、場合によっては出版社の指示で缶詰になって、ワンフレーズ、ワンパラグラフを書くんだ。あるフレーズを見つけるために、何時間も固まってしまうことがあるわけでですよ。そして間違いがあってはいけないから、自分でも出典にもう一度当たって、再度チェックして、それでも校閲の指摘が入って、構成を練り直したりとかね。
そんな汗をかいたのか、百田や有本は。問題は起きていない、読者が喜んでいるんだからそれでいいってんなら、スカッとジャパンの構成作家でもやってりゃいい。万人が楽しめる通俗本を書いていればいいんですよ。
所詮は物書きの倫理観の無い、分量だけ書けるつもりの屑ってところですね。物書きの端くれとしてマジで筆を折れって思いますね。櫻井だの有本だのも同じ。
わたしもpipisanの見解を支持します。
そもそもバーモウは日本に担ぎ上げられて政治犯から傀儡政権の長になった人やしそいつに褒められた記述があるからなんやって感じですわ
これを通史として売った出版社も全て事実を言った作者も市中引き回しの上貼り付けの上打首の刑っすよ
「比較テーブル」で不一致箇所を黒字化し忘れているようです。
>意外/以外
× 『ビルマの夜明け』から引用されと記されている。
○ 『ビルマの夜明け』から引用したと記されている。
ありがとうございます。感謝いたします。
惜しい!もう一押し(修正)を。
比較テーブルの引用文中で 【文字色】 を 「赤→黒」 に変えるべき箇所があります。
左(日本国紀)側の 「意外」
右(NAVERまとめ)側の 「以外」
うおおおお、まじですか。。。すんませんっ!
昔いくつかNAVERまとめを編集したことのある身として、百田尚樹氏がNAVERまとめを『日本国紀』の参考文献にするにあたって二重にミスしていることを指摘しておきたいですね。
まず第一に、バー・モウの「ビルマの夜明け」の書影画像は別に「この書籍からの引用した文章です」と伝えたいわけではなく、単にバー・モウの写真を使いたいから、書籍の画像を貼った、というだけです。NAVERまとめはAmazon画像を簡単に引用できるようになってますので。それを、百田尚樹氏は、「ビルマの夜明け」の画像の下にある引用文は「ビルマの夜明け」からの引用だと勝手に勘違いしてしまった、というわけです。引用文には、まとめ編集者によるURLや注釈が書かれているので、それを辿れば元引用先の書籍が分かるはずなのに。
そして二つ目のミスは、NAVERまとめを見て「日本軍が米・英・蘭・仏をわれわれの面前で徹底的に打ちのめしてくれた~」の文章の発言者がバー・モウであると勘違いしてしまったことです。この発言は、バー・モウの発言ではなく、インドネシア元情報宣伝相だったブン・トモがしたとされるものです。ネットで検索してみればわかりますが、多くのネトウヨ系記事でこの発言が引用されていますが、これをバー・モウの発言として掲載してるのはありません。全てでブン・トモの発言として元引用先が「ASEANセンター編『アジアに生きる大東亜戦争』」などと提示した上で転載しています。だから、バー・モウの発言として取り上げてるのは世界で唯一、百田尚樹氏の「日本国紀」だけです(笑)。
なぜ百田尚樹氏がこんな致命的なミスをしたかといえば、NAVERまとめの記事を確かめずに転載したからですが、別にこの記事をまとめたNAVERまとめ編集者も、この発言をバー・モウのものだとして掲載していたわけではないのです。ここでその解説をしたいと思います。
このNAVERまとめ記事を見るだけで分かりますが、基本的に「偉人の写真1枚 + 発言の引用1つ」の連続という構成になっています。ところがバー・モウの項だけ、「バー・モウの写真1枚(ビルマの夜明けの書影)+ 発言の引用2つ(バー・モウの発言の引用とブン・トモの発言の引用)」という構成になっています。だからこそ百田尚樹氏はブン・トモの発言の引用文章をバー・モウのものと思ってしまったわけですが、変ですよね? 「画像、引用、画像、引用…」と順番に来てたのに、どうしてここだけ引用文が連続して続いているのか。
これはNAVERまとめでまとめ編集したことのある人なら、すぐにピンとくることなのですが、本当は、バー・モウの引用文とブン・トモの引用文の間に、ブン・トモの写真画像があったはずなんです。それが権利者から依頼されて運営が削除してしまってるんですね。運営はわざわざ「ここにあった画像を削除しました」なんて表示しませんから、まとめ編集者が再編集をして注釈しない限り、そこに何が書かれていたかは閲覧者からはわかりません。
それをブン・トモの画像が削除されてからNAVERまとめを読んでしまった百田尚樹氏が、バー・モウ画像の下にある2番目の引用文もバー・モウの発言だな、と勘違いして本に書いてしまった、というのが真相です。
逆にいえば、百田尚樹氏がNAVERまとめ「だけを」読んで、あの一節を書いていたというのは確定です。
素晴らしい推理ありがとうございます。その通りだと思います。
論理的かつ ものすごく説得力のある推論ですね。
アーカイブを確認してきましたところ全くその通り ブン・トモの写真が確かに掲載されていました。
・ 現在のまとめにはブン・トモの画像は無い
・ しかしアーカイブの2017年3月11日版まではブン・トモ画像あり
https://web.archive.org/web/20170311164050/https://matome.naver.jp/odai/2134615487596995101
>百田尚樹氏がNAVERまとめ「だけを」読んで、あの一節を書いていた
このご指摘は もはや動かしようがなさそうですね。ネットを参照すること自体は構わないにせよ、この安易さ・杜撰さは、歴史書を綴らんとする者の姿勢だとはとても信じられない。
日本人は自虐史観に毒されてるとかWGIP洗脳とか言う前に、まず百田氏自身の事実認識を根本から疑ってほしい。そしてそういう人が著した本だと信者さんたちにも気づいてほしい。
素晴らしすぎます。衷心より感謝申し上げます!早速記事にします!
いつも管理人さんの誤字ばかり修正されるのズルイです私のも直して(笑)
(自己校正)
× WIGP
○ WGIP
それにしても面白いですね。百田氏のミス箇所を辿ることでどこからコピペったか迫れるというのは。ぜんぜん次元は違いますが、聖書の編纂・成立過程を追った研究や、宮沢賢治の原稿に残された推敲・改訂跡から作品分析する研究だとか、そういうのに似た感じ……いや、並列させるのは失礼でした(笑)
OKです!(笑)
>2018年12月26日 11:52 AMの 管理人様へ
修正ありがとうございました。でもコメント欄まで直してたらいくら時間があっても足りなくなるでしょうから修正依頼は今回限りとします(笑)
(元発言にぶら下がれるコメント数に限りがあるのか返信ボタンが表示されないのでこちらでお伝えしました。)
ありがとうございます。コメント数が増えてきたので、レイアウト変更を希望中です。
私はタイポ王で皆様からあたたかいご指摘を頂き感謝しています。
ですから遠慮なくお申し付けください(笑)
スゲーな。もうなんも言えねぇ…
〔校正〕
× 実は「プン・トモ元情報相の言葉」(Pu)
○ 実は「ブン・トモ元情報相の言葉」(Bu)
ありがとうございます!
あの本は歴史書じゃなくて小説ってはっきり分かんだね