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乳がん検診 さくらさん死去後に予約急増

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 人気漫画家さくらももこさんが乳がんのため五十三歳で亡くなり、十五日で一カ月。県内の医療機関に検診の問い合わせがあるなど、乳がんへの関心が高まっている。その半面、検診受診率は半分に満たない。医師は「乳がんは早く見つけてきちんと治療すれば、治る確率が高い」と受診を呼び掛けている。

 さくらさんの訃報が伝えられた翌日の先月二十八日、浜松、静岡両市内に四つの健診センターを持つ聖隷グループには千件を超える予約電話があった。関係者は「通常この時期は一日六百~八百件。千件超えはまずない数字」と反響の大きさに驚く。静岡、富士、伊東の三市内を検診車で回る県結核予防会も報道後、来月以降の予約が増えたという。

 乳がんは日本人女性の十一人に一人が生涯にかかるとされるほど、身近な病気だ。患者は三十代から増え始め、四十代後半~五十代前半が最も多い。二〇一七年は、罹患(りかん)数が女性のがん全体の20%を占める一方、死亡数は9%(約一万四千人)だった。

 厚生労働省は、四十代以上の女性に受診を勧めている。浜松市が四十歳(四月一日時点)の女性を対象に無料クーポン券を配布するなど、各自治体でも受診を後押ししているが、受診率は伸び悩んでいる。国立がん研究センターがん情報サービスによると、一六年の乳がん検診受診率(四十~六十九歳)は、一〇年より5・8ポイント増の44・9%。都道府県別に見ると、最も高い山形県で61・2%。静岡県は45・4%と、わずかに全国値を上回る程度だ。

 県結核予防会の鈴木浩治総務課長は「胸を見せるのが恥ずかしくて受けづらいという人もいるのでは」と推測する。

 女性だけの受診日「レディスデー」や子どもの帰宅時間までに受けられる「ファースト・ママ検診」などを企画する聖隷予防検診センター(浜松市北区)の諏訪香医師は、胸の違和感に気づいても恐怖心や不安から、医療機関への受診が遅れるケースがあると指摘する。

 諏訪医師は「早く見つかれば、周りに気づかれずに治療が終わるケースもある。自分の健康を管理する意味でも、検診を定期的に受けてほしい」と、早期発見の大切さを強調した。

◆検査は15分程度 32歳記者体験

 女性のがんの中で最も多い乳がん。三十二歳の記者が十三日、浜松市北区の聖隷予防検診センターで検査を受けてみた。

 乳がん検診には、超音波を利用する乳房エコー検査と乳房エックス線検査(マンモグラフィー)の二つの検査方法がある。まずは保健師の問診。マンモでは、乳腺が多いとしこりが見にくいという。「検査の精度を高めるには、年齢にあった方法を」と担当者。若いほど乳腺が多く、エコー検査を勧められたが、マンモも体験した。

 マンモを受けるのは初めて。左右の乳房をそれぞれ、上下、左右の二方向から撮影した。板に挟まれ、ギューッと薄く平らにされる乳房。少し痛かったが、個人差があるそう。四月に導入された3Dマンモグラフィー「トモシンセシス」で断層撮影もしてもらう。より正確な診断ができるといい、挟まれた状態で十秒ほどじっと待った。

 乳房エコー検査はベッドに寝そべるだけ。乳房や脇下部分にゼリーを塗られ、超音波を出す器具が滑っていった。

 検査当日は食事制限もなく、各検査は十五分程度で終わる。結果は二、三週間後に届くそうだ。

 乳がんは自分で発見できる数少ないがん。自分でできる検診方法を教わった。片方の腕を上げ、もう一方の手にせっけんやローションをつけ、乳房から脇下にかけて円を描くように優しくなでる。しこりがないか月に一回、チェックすると良いという。

(飯田樹与)

 

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