オーバーロード<落書き集> 作:焼きプリンにキャラメル水
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『六大神』の話です。
この話の中ではスルシャーナの第一の従者はヨミです。
死が分かつまで
スレイン法国 聖域
「私は十分生きました」
彼女はベッドに横たわっていた。その横にはアンデットでオーバーロードであった男が椅子に座って彼女の細くなった手を握っていた。
「嫌だ。何度も頼むが・・これを食べてくれ」
男がそう言って差し出したのは一つの種。それは『堕落の種』。悪魔に種族を変更する為に必要なアイテムであった。
「私は『生まれたまま』のこの状態で死にたいのです。どうか私の我侭を聞いて下さりませんか?」
彼女のその願いを・・・自身を創造した者たちから与えられた身体のままでいたい・・その気持ちを尊重したい。だがスルシャーナの脳裏にはかつてのことを思い出す。
孤独・・
自身と対等であった五人が死去した。その日、スルシャーナは孤独になった。
「嫌だ。彼らだけじゃなくお前たちまで私を置いて逝くのか・・」
だがまだ残されていた彼女らの存在のおかげでスルシャーナは
「スルシャーナ様・・・最後にお願いがあります」
「何だ?なんでもする。だから言ってくれ」
「我らはあなた様の手で創造されたわけではありません。ですがもし許されるなら・・」
本能が告げる。これ以上は聞くなと。だがスルシャーナの中には聞かないという選択肢は存在しなかった。仲間であった五人が死去した後、生存していた者たちは彼ら・・・後に従属神と呼ばれた彼らだけであった。そんな彼らの大半は人間種であった。そしてそれが意味することは永遠の別れであった。
スルシャーナはアンデッド。だが彼女は人間であった。
「あなた様の手で・・・あなた様の慈悲に満ちた手の中で・・」
それ以上言わなかったのは彼女の優しさであろう。スルシャーナが罪の意識を感じないようにという配慮であったのだろう。
「・・・分かった」
スルシャーナは手を握ったまま、もう片方の手で彼女に・・・
それはまるで労いの意味を込めた花束を渡すように・・
「ヨミ・・・後はお願いします」
女はスルシャーナの第一の従者・・ヨミにそう告げる。
「はい・・・」
ヨミは泣いていた。彼女もまたスルシャーナと同じで不老であった。
「みんなによろしく頼む・・・」
「感謝致します。スルシャーナ様」
スルシャーナはそれを言葉に出した。
「死<デス>」
別れは必ずやってくる。もし別れを体験し続けた場合、別れがトラウマになるだろう。
そんな残された彼らはもしスルシャーナがいなくなったらどうなるのか・・
百歩譲ってスルシャーナが自身で作成したNPCは良い。恐らく問題ないだろう。
だが多くのNPC・・・悪魔や蟲といった者たち・・
彼らはどのような行動に移るのか・・・
それは誰にも想像できないことであった。
無論、スルシャーナもだ。