LORD Meets LORD(更新凍結) 作:まつもり
次の話 >>
プロローグ
「うーん、次はこんな感じの王がいいかな・・・、いや、それとも」
ここは
世界に満ち全ての生命、あらゆる自然現象を生み出している大いなる存在ルフを管理する場所だ。
望めば世界を如何様にも変えることが出来るこの場所でアルマトランのマギ、ウラルトゥーゴは聖宮の番人として黙々と作業に没頭していた。
今、部屋にはウーゴがボードと画面を備える魔法装置を操作する音だけが響いている。
かつてウラルトゥーゴはアルマトランと呼ばれる世界で、多種多様な種族を統べる王ソロモンの補佐の賢者マギを務めていた。
だがアルマトランはソロモンの意思に従わない
辛うじて滅亡から逃れ、生き残った民を纏める存在となったウーゴは五年の歳月をかけて、全ての民を別世界へと移住させる方法を見つけ出した。
アルマトランでは、かつて種族の違いから起こる争いが後を絶たなかった経験から、その別世界では誰もが同じ種族、人間としての姿を取るようにしたものの、それだけで人々が一つになって、協力しながら生きることが出来るとはウーゴも考えていなかった。
そこで、考案されたのがマギシステムである。
世界が混沌に包まれたとき、民たちは新たな王を求める、そして高い志と能力を持つ、王となるべき者がいる。
マギシステムとは、王となるべき者に、それに相応しき力を与える仕組み。
そして時代の変わり目ごとに、王に相応しい者を選ぶ使命を帯びて生まれる、三人の賢者こそがマギであった。
今の世界の様子を見るにとりあえず大きな戦乱は起こっていない。
だが、進歩を止めてかつての遺産を少しずつ食いつぶしながら永らえている国が目立つ、といったところか。
経験上この状態が後三十年も続けば多くの国の屋台骨がぐらつきだし、戦乱の時代へと突入するだろう。
ウーゴはもうすぐ時代の変わり目、すなわちマギシステムの出番が来ることを見越して準備を重ねていた。
「この国は、まだ当分持ちそうだからマギはこっちの地方に生まれさせるのがいいか。
ああ、そうだ。
一つの迷宮につき、一人のジンが管理する。
王に相応しい人間を選別するための、試練の場だ。
迷宮を出現させる権限はマギに与えられており、マギは自らが王と見込んだ人間の為に迷宮を出現させ、その中で試練を受けさせる。
その結果次第で、王たる力を得られることもあれば、ジンの試練を乗り越えられず死んでしまうこともある。
すなわち、マギは有力な王候補を見つけチャンスを与えることが出来るが、最終的にジンが王たる力を与えるか否かはジンの裁量に任されるということだ。
マギが見込んだ候補であっても選ばれないことは往々にしてあるし、マギが全く意図していない人間が迷宮を攻略することもある。
ウーゴが手元のボードに触れると、目の前の画面に真っ赤な惑星が姿を現した。
ここは全部で七十二ある迷宮が存在する惑星。
先程マギが迷宮を出現させる、といったが正確には少し違う。
マギが出現させることが出来るのは、迷宮本体があるこの惑星へのゲート。
大抵の迷宮は、非常に広い面積を有する為、人が住む星に直接出現させることは難しい。
なので、別の惑星一つを丸々使い七十二の迷宮を配置しているのだ。
ウーゴは、指をボードに滑らせながら各迷宮の状態を確認していく。
「問題なし、問題なし、・・・ここは少し迷宮生物のバランスが悪いかな、まあ許容範囲内か。 問題な、おっと!」
確認作業の最中、ウーゴの肘がどこかに当たってしまった。
「んっ、なんかボタンを押したような気がしたけど。うーんと、多分当たったのはこの辺りの筈、・・・ってまさか⁉」
ウーゴが慌てて画面を見ると先程まで確認していた迷宮が表示されていない。
詳しく状況を確認している内に、彼はかなり厄介な事態になってしまったと悟った。
実はこの世界には、かつてアルマトランを滅ぼした魔導士達の組織『アル・サーメン』が潜伏し、ウーゴとは敵対している。
ウーゴは彼らが迷宮が存在する惑星を攻撃してきた場合に備え、惑星を一時的にこの世界ともアルマトランとも違う、異次元に移動させるシステムを作っていた。
だが、今回はアクシデントにより正規の手順を踏まずに次元移動をさせてしまった為、無数にある次元の内、惑星がどの次元に移動したかウーゴにさえ分からなくなってしまった。
一応、
ウーゴはその途方もない作業を思い、大きくため息を吐くと再び装置に向き合った。
(次元を移動したことが、迷宮にどんな作用をもたらすかは僕にも予想できないな。 前例もないし。 あまり変な事にならなければいいけど)