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【大相撲】

稀勢の里、初日から3連敗で先々場所から横綱単独ワーストの8連敗

2019年1月16日 紙面から

栃煌山(左)に寄り切りで敗れた稀勢の里=両国国技館で(神代雅夫撮影)

写真

◇初場所<3日目>

(15日・両国国技館)

 横綱稀勢の里(32)=田子ノ浦=が平幕栃煌山(31)=春日野=に寄り切られ、初日から3連敗と極めて厳しい状況へ追い込まれた。稀勢の里は昨年9月の秋場所千秋楽から8連敗(不戦敗を除く)を喫し、1場所15日制が定着した1949年夏場所以降の横綱では貴乃花を抜いて単独ワースト記録となった。昨年11月の九州場所では初日から4連敗した後で途中休場した。

     ◇

 平成最後の東京場所、3度目の正直もまたまたまた無残だった。稀勢の里が寄り切られ、栃煌山に2場所連続で金星を配給し、ガックリと立ち尽くした。3場所をまたぐ連敗街道は、横綱として不戦敗を除き、ワーストの「8」まで伸びてしまった。横綱が2場所連続で初日から3連敗を喫するのは1930年10月、翌31年1月場所の宮城山以来88年ぶりとなる不名誉な記録だ。

 立ち合いは力強かった。左から踏み込んで頭からぶつかり、腰の位置は相手より低かった。だが、それだけ。すぐに防戦一方に追い込まれた。

 あっさりもろ差しを許すと左でおっつけの動きを見せたが、相手はびくともしない。右はバンザイ、左は抱え込んでまわしを与えないようにするのがやっと。下手投げを何とか耐えたが、土俵際で万事休す。万全の寄りをこらえる力は残っていなかった。土俵を割り、ため息と悲鳴の中でかすかにうなずいた。観念したのか切り替えか…。

 支度部屋では「はぁ~っ」とため息をついただけ。相撲内容や連敗の認識などの質問に答えることはなかった。まして土俵上でうなずいた胸中を明かすことはなかった。この日は父・貞彦さんの73歳の誕生日だったが、巻き返すことはできず、連敗の出口は見いだせなかった。

 八角理事長(元横綱北勝海)は「気持ちだよね。今さら上手とかおっつけとかじゃない」と、内容はもはや二の次と言わんばかり。「体を動かすのは気持ちだから」と2度、力を込めて繰り返した。

 初日の取組後は支度部屋で囲んだ報道陣を遠ざけ、攻めの動きを確かめるような動きを見せてから、付け人と話す場面もあった。この日は淡々と着替えただけ。少なくとも表面上は、気迫もしぼみつつある。

 稀勢の里は午後6時59分、東京都江戸川区の田子ノ浦部屋に車で戻った。待ち受ける師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)と今後について話し合ったとみられる。稀勢の里は約1時間半後に部屋から出てきたが、部屋に横付けされた迎えの車に無言で乗り込んだ。

 この日は意思表明を見送った。「引退」の2文字がすぐそこに迫るのは事実。それでも、屈辱の記録に終止符を打つため、結びの一番に気力を振り絞るのか。4日目、稀勢の里の決断から目が離せない。 (志村拓)

 

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