どうやったらこの駄女神に知性を与えられるかについて 作:コヘヘ
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だが、『女神』エリスにその野望を潰された。
彼は、恐怖しつつも、客観的に見れば女神エリスに喧嘩を売っていた。
彼からしたらお茶目程度でも、世界からすればかなり恐ろしい手段になり得た。
彼の悪の才能は確かに凄まじかった。制限されてもなお。
だが、今や完全に馬鹿だった。彼以外からすればだが。
宴から翌日。
冒険者ギルドで、緊急クエスト。キャベツ収穫が発生した。
…キャベツが空を飛ぶ光景は、彼からしたらシュールだ。
最も、園芸用野菜の一覧表にサンマを発見した時点で彼のその辺りの常識ははじけ飛んだ。
だが、彼は前世で空飛ぶカエルを目撃していた。
あれは科学的にはただ単に嵐で飛ばされただけだと彼は推測していた。
キャベツが人間に襲い掛かることなぞ、
非常識さで言えば彼からしたらギリギリ許容範囲内だった。
前世も大概おかしかったことを彼は悟った。
今更ながら。科学で完全には、証明できないことを彼は何度か経験していた。そういった文献などもあった。
彼にとって前世は、中々教科書通りいかない世界だった。
しかし、やはり彼からしたら空飛ぶキャベツなど非常識極まりない。
冒険者が総出でかからないといけないくらいには、キャベツは脅威だった。
ボーリング並みの大きさのキャベツがその生ける全てを懸けて襲い掛かってくる。
馬鹿らしい文字列だが、事実だ。彼は知らなければアクアに馬鹿にされたと思った。
アクアは知っていることとやっていることのギャップがやや大きい。
神の才能を活かしきれていないと彼は感じていた。
それは兎も角としてキャベツは、冒険者じゃないと収穫は難しい。
彼は手慰みで例年のキャベツ被害とかいう、
頭のおかしい冒険者負傷率の統計比較表を作成した彼は確信した。
それは、本来、彼が女神エリスに接触するつもりの時期だった。
…キャベツ収穫の際、女神エリスは彼を誘いにやってきた。
「キャベツの収穫が終わったら、約束していたアレお願いね」
彼は、この日のために用意していた。『手土産』をそのまま渡すことにした。
今は忙しいから、クリスに関わる時間があまりなかったからだ。
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魔王軍幹部ベルディア討伐からキャベツ収穫前の間の期間。
彼は、『仲間』をアクセルに溶け込めるようにあらゆる印象操作を行っていた。
例えば、狩猟組合などからめぐみんの爆裂魔法のクレームが来ていた。
狩りができない。騒音被害というごもっともな意見もあった。
爆裂魔法を打ち込んだ後、めぐみんを狙うロリコン三名への処罰等。
彼は、めぐみんの行動予測や思考誘導などを行い、クレーム処理を熟していた。
ついでに犯罪者はダストに押し付けた。何か知り合いらしかった。
ダスト曰く、
「ギリギリ犯罪を犯さない変態だから見逃してやってくれ」
だそうだ。
彼は、変態は理解できない。
故に、ダストに任せた。
…変態三人は、普通に警察に突き出されていた。
ダストと同様に、彼でも普通にそうした。
ダストが変態共を庇うから何事かと思った。
何か変態共にやるのかと彼は思っていた。
変態を、何かに活かす手口を彼はダストから学ぶつもりだった。
彼は変態を理解しきれないから。
彼はこの一連の流れから、
彼はどうもダストから『誤解』されていると察した。
故に、とある男色貴族のダストへの愛を唆してやった。
これは、完全に彼の悪意だ。
その貴族を、アクシズ教徒にしてやった。
彼はこの世界の宗教の『経典』を暗記していた。
その貴族をアクシズ教徒にするのは容易だった。
彼の話術をもってすれば、他人の欲望を引き出すなど容易だ。
彼はあの自称美人プリーストの語り口を思い出し、
アクシズ教徒の男性信者を演じ切った。
あの自称美人は彼の宗教観をぶち壊す程度には印象に残っていた。
アクシズ教徒では恐らくないが、極めて近い精神性の持ち主だった。
彼はあの乞食、アクアと彼の晩御飯を奪い取った挙句に、
有り金全部奪おうとした自称美人に感謝した。
アクアがいたらきっと全部奪われていたくらいに不幸な日を思い出した。
その日、彼はアクシズ教の『闇』に一人の誠実な貴族を落とし込んだ。
このダストへの嫌がらせ行為を行った理由はただ一つ。
彼がイラッと来たからだ。
彼はかなり個人的なことで手の込んだことをした。
なお、ダストにこれは気づかれない。
彼は完全にダストをおもちゃにしていた。
性質の悪いことにこの件でも彼はダストに恩を売る気だった。
というかダストの仲間のリーンが応援し始めた。その男色貴族を。
ダストを積極的に売り始めた。
…リーンは気が付いていないが彼からすれば腐女子だ。
リーンはダストをどう思っているのか不明だ。
リーンは本当にわからない。ダストが気にかけるのもわかる。
彼はリーンについて本気でわからない。
無邪気な子どもに近いがダストにやっていることは彼からすれば外道だった。
彼は完全に自分を棚にあげていた。彼はリーンに謝罪すべきことを考えていた。
どうやら、新しく来ることになる予定のセナとかいう女検事も腐女子らしい。
彼は警察の内部資料を入手済みだった。
彼は警察機関を支配するための行動を、ダストを罠にかける作業と並行にしていた。
日々馬鹿を演じつつ、彼はいずれ国を支配する気だった。
彼からすれば世界征服しないからセーフだ。
クリスが封印せずにこの神器を渡してきたからセーフだと彼は考えていた。
彼が女神エリスの立場で策を練るなら、この凄まじい神器を取引に使うなら、
性能をまず見せて勘違いさせる。
アクアとめぐみんのジャイアントトード討伐からその推察に彼は至っていた。
ただ単に想定内に収まるように不幸を除去する神器だと彼は誤認していた。
次に、自分にある程度これを餌に協力させる。
この神器を封印処理しグレードを落とすか別の神器を彼に渡す。
…この神器はチート過ぎる。
彼の知っている神器でありながら、持ち主を失ってもなお、絶大な効果を残していた。
幸福の権能を最大限に利用した常識的な取引。
彼が最初に思い描いたエリス像を元にした女神エリスが行うであろう策だった。
だが、どう考えても時期が早すぎた。
エリス神がポンコツやお人よしでなければ、
彼にもう少し絶望の期間を設けると推測していた。
故に、キャベツ収穫まで彼は徹底的にクリスを煽るつもりだった。
その時期を早めさせて神器を手に入れるのが彼の計画だった。
最低限の幸福を彼は手に入れたかった。
ベルディアも、当初は最低限の幸運で最悪を無くすことを計画していた。
廃城で押し流し、有力な冒険者たちでタコ殴りにする計画だった。
この神器の幸運のお陰で彼は『死の宣告』という手段まで手に入れた。手に入れてしまった。
…だが、完全に彼は騙され、この神器と引き換えにあらゆる行為を制限させられてしまった。
世界征服や水爆等の最大限悪意を活かしたあらゆる手段だ。
さらにアクアからの監視網まで女神エリスは作成した。
現に彼は、行動をこれでも制限されていた。
国を裏から数か月かけて支配しないといけなくなった。
水爆はともかく、裏からの世界征服が彼に取っては、
一番魔王討伐に手っ取り早く、さらに言えばある意味で理想だった。
彼が死んだ後に仲間を、世界の悪意から守るための最大の手段だった。
魔王討伐した勇者を拒絶しないか。彼が最も恐れていた事態だった。
だから、世界に彼の遺志をばら撒くつもりだった。
死した後も、後世に悪影響の出ない範囲で。
女神エリスは彼の最大の利点を、行動を、
劣化しても凄まじい幸福を持つことができる恐ろしい神器で、
彼の最大の才能を活かした手段を封じ、脅しに来た。
…世界征服路線を放棄してもこの神器なら可能だった。
魔王討伐も死した後の仲間のフォローも。
彼の才能ではなく、頭脳だけで。
見事な作戦だと彼は思った。
彼の幸運の誤認を、女神エリスの権能で察したであろう見事な悪辣な手口だった。
…彼はそう思っていた。
これはほぼ全部彼の勘違いだ。女神エリスは邪悪ではない。善人だ。
アクアの言う事を、残忍で狡猾な女神エリス像を、真に受ける時点で彼は馬鹿だった。
最も、彼の推測は途中まではあっていた。
…これが彼と女神エリスの、最大のすれ違いであり幸運であり『奇跡』だった。
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どうも彼の調べた限り、セナは、アクシズ教最高司祭ゼスタに喧嘩売って負けたらしい。
流石にアルカンレティアで何があったかまでは彼には掴めなかった。
彼は、アクシズ教に関わること自体には敬意を抱いた。
完全に出世コースから外れる行為だ。セナは真面目過ぎる女性なのだろうと思った。
だが、そのセナとかいう検察官は、もういっそアクシズ教の信者になった方が良いと思った。
検察官セナは、お見合い等をその腐女子趣味で何度もぶち壊していた。
彼はセナの個人情報を完全に把握していた。
アクセルにいずれ赴任する検察官というだけで。
彼は、他人の弱みを握るため、珍しく善人の弱みまで握り始めていた。
セナが知ったら、文字通り、矯正逮捕間違いなしの情報を彼は持っていた。
アクセルは彼がいなくとも変態都市だった。彼はそう結論に至りかけていた。
…変態を探せば、段々アクセルに善人の変態が何人もいた。彼は気が付いた。
アクセルでは、悪人の方がまともだった。彼は気が付いた。
…女神エリスの神器のお陰で。
彼は悪のアプローチでほぼ二週間使っていたため、
裏からの世界征服の為に気が付かなかった。
彼はようやく悟った。
正直、彼のやった仲間のために、アクセル中で戯言を吐く行為は、完全に無駄かもしれなかった。
だから、彼はダストに八つ当たりしていた。それは、彼も気が付いていないが。
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彼は変態を裏で始末するような人間だとダストに思われていた。
それが彼に取ってイラッときた。
彼は、その気があるならダストにすら察せないように、
女神エリスにすら足が付かないようにやる。
仲間が死に瀕するような状況にあれば、だ。
それ以外では、彼はそんなことはやらない。
ダストの『誤解』は彼に取って極めて不服だった。
だから、借金返済のために全力でキャベツ収穫に臨もうとするダストはその日、
絶対にキャベツ収穫に参加できないようにした。してやった。
彼はその日に、ダストを嵌める気だった。
男色貴族と鉢合わせにしてやる策を練った。
貴族とダストを互いに誤解させて、両方に恩を売る計画を立てた。
貴族やダストに勘付かれるようなヘマを彼はしない。
…女神エリスの神器のお陰だ。
彼は、ダストの借金返済は、三流勇者を嵌める作戦でさせるつもりだった。
彼は、魔剣グラムをダストに売る気満々だった。手向けと評した計画の一環で。
この魔剣グラムを売るという発想。ダストとミツルギへの彼なりの善意だった。
彼は『外道』だった。悪魔以上の悪魔だった。
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なお、ダクネス関係は、ダスト等を通して印象操作を行っている。
いずれ、ララティーナお嬢様としてアクセルに受け入れられるように仕向けた。
ドMなんぞ、彼の、正確に言えばアクアが広めた変態性からすれば隠蔽等はできた。
だが、ダクネスは多分彼の想定を超えている。
既に、庇えないくらいダクネスは、マゾヒストっぷりを発揮している。
故に、彼は、ダクネスの性癖の隠蔽は諦めていた。
彼がアクセルで放置していても広がると察した。
彼は、アクセルの中心地でクリスに石を投げられたり、めぐみんに殴り殺されそうになったり、
時には、ダストがダクネスにぶっ殺されそうになりながらも日々演説していた。
…アクアに関してはアクセルに受け入れられていた。
もう評価が確定していたからある意味、全く問題なかった。
彼としては、ここからアクアを、
宴会芸の神様から慈愛溢れる女神様への評価を上げることは不可能と確信した。
故に、アクアに関しては買い物という名の散財を止めたり、付き合ったり、
エリス神の弱点を聞き出したりしていた。キャベツ収穫における『手土産』のために。
アクアが、平然と彼が乗っ取った闇金を脅していたのには驚いた。
アクアは他人への嫌がらせに関しては、彼以上の才能があると思った。
彼視点のアクアの行動は彼以上に躊躇がなかった。
アクシズ教徒に金を貸し出さないと、
アクアは帰らないという脅しは完全に闇金で対処できない。
闇金ではどうあがいてもアクアに勝てないからだ。
女神がアークプリーストをやっている。アクアには呪いなぞ効かない。
呪いなど使った瞬間バレるアクアがゴッドブローを食らわし、闇金は捕まる。
彼の手間隙懸けて支配した闇金はアクア一人に屈していた。彼が出るまでもなく。
彼はアクアがこれを計算してやっているなら、
女神エリスを超えられる逸材と判断したかもしれなかった。
彼はアクアをよく知っているのでそんな馬鹿な勘違いをしなかった。
そう、アクアに関しては。
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彼はここ数日、魔王軍幹部ベルディア討伐からずっと
変態と勇者を、つまり仲間達をアクセルに受け入れらせるために全力で戯言をほざいていた。
昼間は全力でふざけているようにしか第三者には見えない。
モンスター討伐も平行していたが、彼はアクセルに爆裂魔法を馴染ませたり、ドMを馴染ませようと必死だった。
夜は、魔王軍幹部ベルディア討伐印象操作及び隠蔽工作の二重生活だ。
彼は、ダスト『で』遊ばないとやっていられないストレスを感じていた。
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彼の昼間、例えばこんな感じだ。
アクセルの中心街。一日で最も人が集まる時間帯及び場所に彼は陣取っていた。
「爆裂魔法は体に有益な波動を放つ!!
それは、女神エリスすら認めるヒーリング効果だ!!」
彼は全力でクリスに石を投げられた。
だが、彼はあの邪神エリスすらも恐れない。
仲間をアクセルに受け入れさせるために彼なりに本当に必死だった。
彼は演説の邪魔をされたくないので、善意の第三者、つまり他人のダストを嗾けて、
彼はさりげなく、クリスを追い払おうとした。
「やい、ドM騎士を押し付けた銀髪盗賊!!
俺の金のために大人しくお縄につきやがれ!!」
ダストもクリスから、石を投げられた。
さらに、ダクネスは何故かダストを全力で殴り飛ばした。
彼は、何故ダストが『真実』を公言してダクネスが怒るのか不思議だった。
彼が何か言うと、ダクネスは、
「いいぞ!寧ろ、もっと罵れ!!」
と言ってくるのだから、セーフだと彼は考えていた。
なお、これは日常会話だ。
彼にダクネスを罵っている自覚はない。
彼は素でダクネスを罵倒し出すような感性の持ち主だった。
自覚はないが、彼はアクア以外に対して、
正確には、子供や『まともな女性』などを除いて、
ダクネスが言うように彼は完全にドSだった。
ルナ女史も彼と関わる機会が多いので、
ルナ女史の婚期が迫っていようが、
その対象から彼を除外する程度には、彼はサディストだった。
ルナ女史曰く、
「普段は紳士的だが、一定を超えるとサディストに急変する。
躁鬱の気が激しく、気難しい。
同年代より下或いは年配に対しては非常に優しいが、
それ以外は大概サディストそのもの」
彼のおおよそを知る第三者視点の感想である。
彼はルナ女史に関しては悪魔への手土産でもあるので、
敢えて自分を除外するように思考を誘導しているのも大きい。
つまり、ルナ女史は準変態枠扱い。
彼は少なくともルナ女史を『まともな女性』に含めていない。
どうやら、ダクネスには羞恥心があるらしい。彼は発見した。
ダクネスは、ダストを襤褸雑巾にしていた。
彼は、仲間の、意外な新しい一面を知った。彼は嬉しかった。
襤褸雑巾と化すダストを彼は完全に無視して喜んでいた。
彼は、ダストにさらなる恩を売るためダクネスを止めにようやく入った。
そして、彼が何をしても喜ぶダクネスへの、
彼がアクアと同等に手を焼かせる存在への、
復讐の手段を数十パターン彼は、その瞬間の数秒で、思いついた。
ダクネスの父親にも教えてやろうかと彼は一瞬だけ思った。
その程度には、彼はダクネスの父親と親しくなっていた。
だが、彼はそれをやったら、ダクネスが彼を殺しにかかる可能性を思いつき辞めた。
流石に、羞恥心が常人の感性ならダクネスが普通に傷つくと彼は察した。
彼は仲間の性癖を、
ギリギリ許容範囲内に教育できればそれで済むのならば、
それに超したことはないと思っていた。
…だが、彼個人ではいつかやろうと決意した。
制御できない、理解できないダクネスの、つまり変態の弱点を知った彼の本質は『外道』だ。
ダクネスの羞恥心を利用しないわけがなかった。
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またある日、彼は、こんなことをほざいてみた。
「そうだ!爆裂魔法による癒し効果だ!!
毎日聞いていれば、いずれないと一日のリズムが狂う程に癒しの効果がある!!」
彼はマイナスイオン論法で、アクセルの住民を洗脳しかけていた。
何となく効きそうな気がする。
そう思考を誘導できるほどアクセルの住民は彼に取って、馬…純粋だった。
彼は大よそアクセル住民を洗脳していった。馬鹿な振りを通して。
彼にとって、これを利用しない手はなかった。
計画の一手段、アクセルの最後の『防衛手段』として組み込んだ。
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なお、彼の最大の戯言は、何と後一歩でクリスを洗脳できるところだった。
彼が真剣にクリスの脳内を心配する程、クリスは容易く引っかかった。
彼は、想定外の成果に思わず笑みがこぼれそうになった。
だが、彼はめぐみんに爆裂魔法を撃ち込まれそうになり、クリス洗脳は頓挫した。
めぐみんは本気だった。彼に全力で爆裂魔法を撃ち込む気だった。
彼は、流石にそれ以上その手口を使うのを辞めた。
仲間が、めぐみんが、嫌がる以上彼は控えた。
だが、
「13歳なのだから、気にするのはおかしいのでは?」
彼の本心からの言葉だった。
そんなこと気にしなくとも彼からしたら美人だから。めぐみんは。
だが、めぐみんは彼に、にっこり笑った後に完全にキレた。
「おう、もう一度言ってみろ。
…ゆんゆんを誑かしたあなたが行った、邪悪なる手口を私は知っているのですよ?
…やはり、一回死んでください。ゆんゆんの仇!!」
彼はめぐみんの新調した杖でぶん殴られた。
彼は、ゆんゆんは死んでいないだろうとめぐみんにぶん殴られながら思った。
彼にはそもそも、その邪悪なる手口等知らない。心当たりがなかった。
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何度も言うが、彼は神罰等最早恐れはしない。
致命的な弱点があるなら、それを利用しようとする悪魔以上の悪魔。『外道』だ。
…その手口の発想は、アクアから提供された女神エリスの情報の応用だった。
彼もあの世に行った際に察した。流石にあからさま過ぎた。
あの狡猾な女神エリスだが、
普通にダストがあの世に行ったなら指摘しそうなほどそれはウィークポイントだった。
だが、成長しないはずの女神エリスが食いつくとは、相当気にしていたのだろうと彼は思った。
彼は流石に女性の身体的特徴をあげつらうのは酷いと認識した。
彼の普段の行いを見ている者からすれば、何故そこだけ治すのか不明なレベルで彼はサディストだった。
…めぐみんは世界を救った。
めぐみんは、間違いなく功績だけみれば、世界を救った勇者になった。
…物凄く下らないことで。誰も知らないし、気が付かない。
だが、偉大な功績だった。
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話は、キャベツ収穫に戻る。
めぐみんが爆裂魔法でキャベツと冒険者に引き寄せられたモンスターを一網打尽にしたり、
アクアが花鳥風月で皆を癒しの水で癒したり、
ドMがキャベツの体当たりを一心に受け止めているのを彼は確認した。
彼は、仕方がなく、潜伏スキルでキャベツに気取られないように、
敵感知スキルでダクネスの周囲のキャベツを把握、
スティールでダクネスを襲うキャベツたちを収穫した。
彼は、本来の幸運値ならこれくらいの収穫は、
頑張れば可能だと判断する位の量は確保できた。
ダクネスを守った分のキャベツでその量の確保は容易だった。
彼は、見た限りレタスしか取れていないのに喜ぶアクアを後でどう慰めるか考えつつも、
クリスへの接触を決意した。女神エリスへの接触を彼は決意した。
クリスに完全にアドバンテージを譲った場だった。
彼に勝ち目はほぼない。彼は覚悟した。
この『手土産』。悪徳貴族のエリス教狂信者計画。
恐らく、あの女神エリスなら喜んでくれると彼は確信していた。
…なお、何故か計画の詳細を聞いた女神エリスから彼は激怒された。
彼は、これ以上を求めるのかと恐怖した。
流石に、彼も悪徳貴族に劇場型犯罪を誘発させて女神エリスを讃える行為はしたくなかったから。