UNISON SQUARE GARDEN
●取材:西沢八月  ●撮影:東京神父


UNISON SQUARE GARDEN結成のいきさつ
――まずは、UNISON SQUARE GARDEN結成のいきさつを教えてください。

斎藤:もともとは僕とベースの田淵が高校が一緒で、音楽が好きだったんです。それで「バンドやろう」って話になって。当時は、僕がギターを弾いて、田淵がベースで、ヴォーカルがいて、ドラムはどうしようかってなった時に、鈴木が田淵の小学校の同級生で、ちょうどドラムをやっていたので誘いました。けっきょく、そのバンドは2年くらいでダメになったんだけど、しばらくして、僕は自分で歌うバンドがやりたくなって、田淵と鈴木に声を掛けたんです。

――バンドを始めた時は、どんな音楽が好きだったのですか?

斎藤:当時はBRAHMANのコピーバンドからスタートして、THE BACK HORNとかも聴いていました。

田淵:そもそもBRAHMANのコピーをしようって集まったメンバーだったので、特に今の音楽性と関係があるわけではないんですよ。UNISON SQUARE GARDENを始めた頃はパンク少年だったんだけど、そこから、もっと緩やかなギターロックが好きになっていったんです。グレイプバインとか、そういった系統のバンドに影響を受けましたね。

左:Vocal&Guiter 斎藤宏介 右:Bass 田淵智也


UNISON SQUARE GARDENの個性的な楽曲群
――1stミニアルバム『新世界ノート』(2006年8月)を作る時にコンセプトみたいなものはあったのですか?


斎藤:以前から、ライヴをやっていく中で、名刺代わりじゃないけど、CDっていう武器は必要だなって思っていたんです。『新世界ノート』は半年以上前の作品だけど、当時の自分たちが演っていたことを全部詰め込んだ感じなんです。ライヴを観て、「良いバンドだったな」って思ってくれた人がCDを買ってくれればいいなって。それで、「またライヴに来たいな」って思わせたい。

――レコーディングという作業は、自分たちを振り返ることにもなるじゃないですか? その前後で何か意識が変わりました?

斎藤:レコーディングをして、“(お客さんには)こういう風に聴こえているのか”というのは確認できましたね。

――田淵君はほとんどの楽曲を手がけているわけだけど、最初に作った曲は?

田淵:「星追い達の祈り」という曲なんですけど、もうライヴでも演っていないし、音源にもなっていないんです。

――どんな感じの曲ですか?

斎藤:ミディアムテンポの、切ない感じ……。

田淵:ちょうどギターロックが好きになった時にグレイプバインのベストアルバムを聴いていたんです。そのアルバムがミディアムテンポの曲ばかりだったので、当時はミディアムテンポの曲ばかり作っていましたね。ちょうどパンクからそういった音楽がいいなって思っていた時だったので。

――曲作りはどのように行っているんですか?

田淵:アコギで作りますね。メロディがふと降りてきて、それをストックしておき、広げていく感じです。

――田淵くんが最初に触った楽器はアコギ?

田淵:そうです。弾き語りとかよくしていました。僕が作曲でいちばん影響を受けたのは「ゆず」なんです。ゆずのコードが載っている歌本があって、そこからコードや曲の構成、キーの使い方なんかを覚えていきました。

――UNISON SQUARE GARDENの曲って、わりとコードの響きが特徴的ですよね? それも、ゆずからの影響?

田淵:いや、ゆずってそんなに難しいコードは使っていないんですよ。僕自身もマイナーと7thしか知らないし。僕がアコギで作った原曲を斎藤が違うコードに置き換えていくんです。だから曲の骨組みの段階では、わりとシンプルなコード進行で、歌謡曲っぽくもあるんですよ。コードの響きは編曲の段階で変わっていくんです。

斎藤:先輩からもらった、ブ厚い、教科書みたいな和音の本を読みながら、自分の中で、「この響きいいなぁ」って、どんどん探していったんです。

――UNISON SQUARE GARDENの曲って、ベースラインがすごく印象ですよね?

田淵:曲が出来た時にベースラインのイメージがあるものと、編曲している時にいろいろ試していくものと、2種類の方法があるんです。やっぱり、他のバンドを聴いている時でも、歌のメロディに対して、ベースのアプローチが面白いバンドについつい耳がいってしまうんですよね。といっても、意図的に複雑なベースラインにしようと思っているわけではなくて、「このメロディに、こうベースラインが重なったら面白いな」と考えています。でも3ピースなので、やり過ぎるとアンサンブルが台無しになってしまうので、バランスを見つつ、といった感じですね。

――ヴォーカルに対して、裏メロを作っていくといった感じでベースラインを作っているんですか?

田淵:音がぶつかる、ぶつからないといった理論的なことはわからないけど、歌を殺さないということが絶対ですね。歌のラインを邪魔しないところでおいしいラインを打ち出せれば幸いかなって思っています。個人的には、狙っているというよりは曲を作っている中で自然に出てくる感じなんです。


内から外へ進化するライヴパフォーマンス
――最近、イベントなどでの評判がかなりいいと聞きますよ。なんでも、名古屋E.L.L.の30周年イベント(出演:堂島孝平・ミドリカワ書房・ズボンドズボン/オープニングアクトで出演)で、『新世界ノート』が70枚以上売れたとか。

斎藤:単純に嬉しいですね。『新世界ノート』を作ったのが半年以上前なので、実際にライヴでこのアルバムの曲を演奏する機会も減ってきているんですけど、今はそれもいいかなって思っています。

田淵:『新世界ノート』はあえて流通をかけていないんですけど、その意味がやっと出てきたかなって思います。ライヴを観て、「わあ~すげぇ! CDも聴いてみたい!!」って思われるバンドに、だんだんなれてきているのかなって。それは自信にも繋がるし。

鈴木:僕は、認められたり、ちやほやされるのが好きなんで(笑)、嬉しいです。僕は作詞をしているわけではないけど、UNISON SQUARE GARDENの曲を聴いて、歌詞から何かを感じてくれる人もいると思うので、とても責任を感じますね。

Drums 鈴木貴雄

――へんな言い方だけど、発売から半年経って、やっとじわじわと効果が出てきたって感じじゃないですか? 『新世界ノート』を出したばかりの頃は、けっこう焦ることもあったのではないですか?

田淵:もしかすると、当時は自分たちのやりたいことが伝わっていなかったのかもしれないですね。

斎藤:最初、このアルバムを500枚プレスしようか、1000枚プレスしようか悩んだんですよ。結果1000枚にしたんですけど、自分たちへのプレッシャーじゃないけど、「売り切らなきゃライヴバンドじゃないだろう」っていう気持ちはありましたね。まだ売り切ってはいないんですけど。

――少しずつ認知度も上がってきていますが、以前と比べてお客さんの反応は変わってきましたか?

斎藤:名古屋で堂島孝平さんと一緒にやらせていただいた時、堂島さんとセッションをしたんですけど、ライヴのあり方やステージと客席のあり方っていうのが、今まで自分が考えていたものとは違うって思って、その日のライヴを境に意識が変わったんです。自分が変わってきたから、お客さんも変わってくれたように思います。

――それは具体的に、どのように変わったのですか?

斎藤:昔のライヴの映像を観ることがあったんですけど、すごく暗いトーンで話しているんですよ。「楽しみにしてきました」っていう言葉も全然楽しそうじゃない。けっきょく、自分が楽しまなかったら伝わらないし、ひとりだけじゃなくて、会場全体でライヴを作り上げていこうって気持ちになりましたね。

――以前ライヴを観た時は、もっと演奏に集中して、内に向かっている感じを受けたんです。それは緊迫感という面ではよかった。でも、先日観たライヴは外に向かっているエネルギーを感じたんですよ。UNISON SQUARE GARDENは、まずはライヴバンドでありたい?

斎藤:そうですね、ライヴを観てCDを買ってもらいたい。バンドが大きくなると、CDが先にくることが多くなると思うんです。CDが良かったからライヴに行ってみよう、みたいな。でも、ライヴに来てもらった時に、期待はずれだったりガッカリした気持ちにさせたくないんです。


ギターの選択が及ぼす曲作りへの影響
――『新世界ノート』の曲もライヴでやらなくなってきているという話だから、そろそろ新しい音源なんかも……。

田淵:アルバムを作って『新世界ノート』が売れなくなるよりも、簡単なデモ的なものでいいから、今ライヴで演っている曲の中から2~3曲入れたものを作りたいですね。

斎藤:とりあえずは、3月21日に出る5バンドのオムニバス(DiGGiN’UPレーベルより発売の『DiGGiN’UP BLUE/5A×2S』に「水と雨について」「夕凪、アンサンブル」で参加)がなかなかいい出来なので、その反応が楽しみですね。

――ライヴとレコーディングとでは、どちらが好きですか?

田淵:僕らはホント、レコーディングが苦手なバンドなんです。なかなか上手くいかない。ミキシングの知識なんかもないので、思い通りの音で録れないというか、イメージをエンジニアさんに伝えられないんですよ。『新世界ノート』の時もそうで、ジレンマがあった。でも、レコーディングを重ねてきて、最近ようやくわかってきた感じなんです。

――そういえば、「LIVESTAR’s FES」(11月22日@Shibuya O-WEST)では斎藤くんはギブソンのレスポールを使っていましたよね? でも、先日の下北沢MOSAiCでのライヴ(2月17日)では、アトリエZのストラト・タイプを使っていましたが?

斎藤:ストラトは最近買ったんですよ。これからは、こっちを使っていこうかなって思っているんです。

――ストラトの方がバンドの世界観に合っているような気がしますよ。

田淵:じつは、何人かの人から「ギターのサウンドが課題だ」って言われていたんです。考えてみると、レスポールの音が僕らにとって、ロックな感じじゃなかった。

斎藤:それに、音がぶつかることがあったし、ストラトの方が歌いやすいですね。

――ストラトの方が荒さも含めてですけど、ニュアンス的なものも表現しやすいんじゃないですか?

斎藤:弾いている感じも違いますし、レスポールの時には弾かなかったようなフレーズが出てきたりもして。それは最近の曲作りにも影響は出ていますね。

――さて、これからどんなバンドになっていきたいですか?

斎藤:とにかく客席を沸かせたいですね。ライヴが終わったら、みんな汗だく、みたいな(笑)。

田淵:結成当初から思っているのは、CDを聴いて感動して、ライヴに行って感動して、また行きたいって思われるようなバンドになりたいっていうこと。ライヴハウスやお客さんから、「UNISON SQUARE GARDENにライヴをやらせれば、間違いない」って言われるようになりたいですね。とはいえ、ライヴだけ見ればいいっていうバンドにはなりたくないんです。僕は歌メロをすごく大切にしているから、「家でCDも聴いてみたい」って思わせたいです。

鈴木:ライヴバンドとして、すごくなりたいです。僕はライヴで、ひとりでも体を揺らしてくれれば嬉しいんです。どんどんライヴバンドとして成長して、そういう人たちを増やしたい。あと、この3人でなくてはできないものを作っていきたいですね。


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