国家公務員と利害関係者とのゴルフを解禁しようとする動きが再び活発化している。しかし、ゴルフ禁止は旧大蔵省の接待汚職などを契機に決められた経緯がある。禁止の継続こそ妥当ではないか。
国家公務員とて一人の人間であり、ゴルフに限らずスポーツをすることは人権の一つである。しかし、公権力を行使する立場にある者には、高い倫理観が求められることもまた、当然であろう。
国家公務員倫理規程は、国に許認可や補助金の申請をしたり、契約関係にある事業者らを利害関係者と定め、それらとの禁止行為として金銭や物品、不動産の贈与や貸し付け、供応接待を受けることと並び、ゴルフや遊技(マージャンを想定)を挙げている。
国家公務員と利害関係者とのゴルフ禁止は、二〇〇〇年に制定された倫理規程に盛り込まれた。旧大蔵省接待汚職など一九九〇年代に国家公務員の不祥事が相次ぎ、接待ゴルフが官民癒着の温床と指摘されたからだ。
この禁止行為からゴルフを除外しようと以前から働き掛けているのが、自民党を中心とした「超党派ゴルフ議員連盟」や、ゴルフやスポーツの関連団体である。
ゴルフは二〇二〇年東京五輪の正式種目であり、ゴルフだけ禁止対象とされるのは不当な扱いだ、ということなのだろう。スポーツの機会平等を定めた五輪憲章に反する、との主張もある。
議連は「利害関係者の負担によらない」割り勘の場合、ゴルフを認める内容の国家公務員倫理法改正案を通常国会に提出し、成立後に規程の見直しを迫るという。
公正さやマナーが重視されるゴルフが素晴らしいスポーツであることに、もちろん異論はない。
しかし、そのゴルフが、国家公務員と業界との癒着に利用されたのも否定できない事実だ。規程が設けられた経緯を考えれば、引き続き禁止が妥当ではないのか。
人事院の国家公務員倫理審査会が一六年に国民や民間企業、有識者らを対象に実施したアンケートでも、七割程度が現行の禁止規定を「妥当」と答えている。
高い公務員倫理を維持するために設けた規程を、なぜ強引に変える必要があるのか。国会議員による立法権の乱用ではないのか。
ゴルフを通じた癒着を排する倫理規程は「スポーツと選手を政治的または商業的に不適切に利用することに反対する」ことも盛り込んだ五輪憲章にも合致する。
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