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【大相撲】

稀勢、引退土俵際 昨秋からの7連敗

2019年1月15日 紙面から

昨年の秋場所から7連敗となり、土俵下で肩を落とす=両国国技館で(武藤健一撮影)

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◇初場所<2日目>

 (14日・両国国技館)

 横綱稀勢の里(32)=田子ノ浦=が引退の土俵際に追い込まれた。平幕逸ノ城に敗れて2連敗。皆勤して10勝を挙げた昨年秋場所の千秋楽から7連敗(不戦敗は除く)となった。師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)は3日目の出場を示唆したが、予断を許さない状況となった。 

    ◇

 刀折れ矢尽きたように、土俵下に転がっていった。押し込まれて一度は踏ん張った稀勢の里が、逸ノ城のはたき込みに屈して無残な連敗。土俵に手をついて、うつむいたまま5秒近く動けなかった。

 支度部屋に戻っても、生気を失ったままだった。うつろな表情で、報道陣の問いかけにもひたすら無言を貫いた。

 原点回帰も実らなかった。初日は左差しにこだわり、封じられていた。立ち合い、3度の待ったの末、4度目にようやく立った。まわしには目もくれず、押し相撲に徹した。復活を期した場所前は「良い時を思い出して。若い時もそうですし」と、稽古でも突き押しに徹する姿が目立った。

 兄弟子の西岩親方(元関脇若の里)は、稀勢の里の若い頃を振り返り、こう話していた。「元々、押し相撲だから。先代師匠(元横綱隆の里の鳴戸親方)から『最初は押ししか教えるな』と。関取衆になる頃に左を差すことを覚えてきた。一番の良さは押し」。そんな言葉に背中を押されるように、関取で最も重い226キロを誇る相手を荒々しく攻めたのだが…。

 不戦敗を除き、横綱としてワーストタイの7連敗となった。昨年秋場所の千秋楽で豪栄道に敗れたのを起点に、九州では横綱として87年ぶりの初日から4連敗で途中休場。そして今場所2連敗。1999年の名古屋から九州まで、同じく計3場所で記録した貴乃花に並んでしまった。

 史上初めて、横綱審議委員会から「激励」を決議された身としては、致命傷にも等しい記録を刻んだ。それでも前を向かねばならない。師匠の田子ノ浦親方は東京都江戸川区の部屋に戻った後、取材に応じ、3日目の出場について「もちろんそのつもりで。明日(3日目)に向けて治療している。まだ明日もあるんで」と話した。左胸、右膝などの古傷とも闘いながら、過去26勝16敗と決して得意とは言えない3日目の栃煌山戦に向かう。

 平成最後の国技館開催場所。稀勢の里の取組前の館内には、復活を願う歓声が響いた。八角理事長(元横綱北勝海)は「気持ちだよ、気持ち。ここまできたら気持ちしかないから」と連呼。土俵下で見守った藤島審判長(元大関武双山)も「いろんなプレッシャーに打ち勝って横綱まで来ている。まだまだ2日目だから」と踏ん張りに期待を掛けた。

 日本中の注目を集めながら、近づくのは「引退」の2文字ばかり。ボロボロでも、わずかな光明を求め、土俵に上がることになりそうだ。 (志村拓)

 

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