農林水産業の生産現場では、農業生産工程管理(GAP)などの国際認証の取得が欧米などと比べ遅れている。生産者の競争力や持続可能性を高めるため、政府や関係団体は国内での認証取得を加速させてもらいたい。
東京五輪の選手村などで提供する食材や施設に使う木材製品について、大会の組織委員会は生産過程で環境や人権への配慮を求める調達コードを決めている。その調達要件でも利用されるのが国際認証だ。海外はもちろん、国内企業でも調達にあたって認証を求める企業は増えてきた。
認証の重要性を知ってもらい、取得を広げるためには現場に密着した生産者団体の努力が重要だ。農業では大分県農業協同組合(JAおおいた)のように、高齢の生産者でもGAP認証を取得できるよう支援する農協が出てきた。こうした動きを他の農協や漁業協同組合にも広げる必要がある。
認証取得を教育の一環として取り入れる農業高校が増えてきたことは、若い世代の意識を変える意味で評価できる。
国内で生まれた認証制度を、海外でも通用する「国際認証」に格上げする対応も急ぐべきだ。国内の認証制度はコメなど日本の農水産物に対応しやすい。その意味で、日本GAP協会の認証が昨年、ネスレやダノンなどの有力企業で構成する世界食品安全イニシアチブ(GFSI)から承認されたことは前進と言える。
すでに木材の森林認証では、国内で生まれた緑の循環認証会議(SGEC)の制度が国際的な認証制度との相互認証を認められている。残る水産分野でも国内のマリン・エコラベル・ジャパン(MEL)協議会の制度を世界で通用するようにしてもらいたい。
認証取得の過程で、生産者が自らの作業工程をきちんと管理するようになれば経営の効率化にもつながる。環境や現場で働く人への配慮は、農林水産業を持続させるうえでも重要だ。生産者も前向きに取り組んでほしい。
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