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» 2018年04月25日 05時00分 公開

B2Bマーケティングのソートリーダー対談:「ABMは営業視点のマーケティング」の真意とは?――庭山一郎氏×佐久間 衡氏 (1/2)

日本のB2Bマーケティングをけん引する論客2人が、ABMで成果を出すための本質的な考え方について語り合った。

[野本纏花ITmedia マーケティング]

 「FORCAS」は、ユーザベースが企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA」で培ったデータの生成・加工・分析にまつわる知見やテクノロジーを生かし、営業がターゲットとすべき確度の高い企業を導き出してくれるABM(Account Based Marketing)支援ツールだ。2016年9月にSPEEDAの一機能として法人向け「自動ターゲティング」を提供し、2017年5月に独立したサービスをスタート、10月には事業を分社化している。

 2018年2月にB2Bマーケティングをリードする6社と協業を発表し、ABM支援をさらに加速させている。このパートナーの1社には、日本のB2Bマーケティングの父としてITmedia マーケティングでもおなじみの庭山一郎氏率いるシンフォニーマーケティングも名を連ねている(その他のパートナーは、アイ・エム・ジェイ、ウフル、サンブリッジ、toBeマーケティング、ワンマーケティング)。

 マーケターはFORCASのようなツールを使ってデータとどのように向き合い、営業との関係性をどう構築していけばいいのか。FORCAS代表取締役の佐久間 衝氏と庭山一郎氏が語り合った。

佐久間 衝氏と庭山一郎氏 佐久間 衝氏と庭山一郎氏

営業部門の感性で欲しいリストを作るならマーケティング部門はいらないか

庭山 僕は自著(注)の中でも説いている通り、ABMとは日本的に解釈すると、「営業の視座で再設計されたマーケティング」と考えています。ABMの話題で必ず挙がってくるのが「営業部門の感性で欲しいリストを作るなら、マーケティング部門はいらないのか」という議論なんですね。日本のB2B企業は、往々にして営業が強くマーケティングは弱い。だから安直に「ABMで営業の視点を取り入れるなら、営業のトップがマーケティングも見ればいい」という話になりがちです。しかし、ABMはあくまでアカウントベースド"マーケティング"です。営業だけではABMはできません。なぜなら営業部門とマーケティング部門ではマインドセットが違うからです。営業は「hunter(狩猟民族)」だけど、マーケティングは「farmer(農耕民族)」です。もちろん、共通言語とか評価軸はそろえておく必要がありますが、あくまでも前行程と後行程で両者の役割は分けるべきものだと考えています。文化や思想が全く異なる二者を物理的に近くに置いたり、組織的に統合したりして一緒にやらせようとしたとしても、なかなか難しいのではないでしょうか。少なくとも、一緒にして、うまくいっている例を私は見たことがありません。

注:『究極のBtoBマーケティングABM アカウントベースドマーケティング』(日経BP社)

佐久間 営業とマーケティングでは役割が全然違いますからね。ただ、庭山さんもおっしゃる通り、両者が目線を同じにすることは、すごく大事だと思います。われわれのプロジェクトでも、マーケティングゴールを定義して、ターゲットアカウントを決めていく際に、営業担当の役員やリーダークラスの方が入っていないと、巻き戻ったり、実行につながらなかったりして、結局どこかで行き詰まってしまう。ターゲットの決め方1つをとっても、営業の経験則に基づいて、属人的に決めるのではなく、社内の情報や企業情報を統合して、きちんとしたデータ分析によって決めていく必要があります。そういった部分でFORCASが役立つ可能性はあるのかなと思っています。

庭山 ABMが盛んなアメリカでは、営業とマーケティングのアラインメント(連携)は既に終わっていて、次はプロダクトまでアライメントしなければ意味がないといわれています。FORCASが提供するデータは、営業とマーケティングだけでなく社内のさまざまな人が興味を持つものになり得るでしょうね。

佐久間 だからFORCASは、経営者や開発者にもぜひ使ってもらいたいと考えています。FORCASの価値の1つは現在アプローチできているマーケットと、未来の攻めるべきマーケットの両方を可視化することで、これは経営者や開発者にとって最重要な情報ともいえます。その情報を基に、製品開発の優先度を決めたり、新たな市場開拓に向けた、開発を含めた全社リソースの配分が適切にできたりするようにもなります。

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