『連続テレビ小説「まんぷく」総集編(前編)』のテキストマイニング結果(キーワード出現数BEST10&ワードクラウド)
- 福子
- 萬平
- ダネイホン
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- 世良
- 大阪
- 社長
- 栄養食品
- 咲姉
『連続テレビ小説「まんぷく」総集編(前編)』の解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)&EPG情報(出典)
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2018年下期の連続テレビ小説「まんぷく」の総集編。第1週「結婚はまだまだ先!」から第13週「生きてさえいれば」までの内容をダイジェストでお届けする。
詳細情報
番組内容
連続テレビ小説「まんぷく」総集編(前編)。舞台は戦前の大阪から始まります。三人姉妹の末っ子で、おおらかに育ったヒロイン・福ちゃん(安藤サクラ)。バイタリティーあふれる青年実業家・萬平さん(長谷川博己)と出会い、結婚。母・鈴さん(松坂慶子)も一緒に三人の生活が始まります。世の中の役に立つという理想のため前進し続ける萬平さんと、安定を求める鈴さんの間で、究極のマネージメント能力を培っていきます!
出演者
【出演】安藤サクラ,長谷川博己,内田有紀,松下奈緒,要潤,大谷亮平,桐谷健太,瀬戸康史,菅田将暉,岸井ゆきの,中尾明慶,松井玲奈,片岡愛之助,橋爪功,松坂慶子,【語り】芦田愛菜
原作・脚本
【作】福田靖
1938年 昭和13年の大阪です。
この前の年に日中戦争が始まり
世の中は 軍需景気に沸いていました。
(咲)これも ええわね。
きっと福子に似合うわ。
すてき。 でも これも…。
この福ちゃんが この物語の主人公です。
こっちの方がええかな。
安いのでええからね 咲姉ちゃん。
そんなこと気にせえへんの。
私が買うてあげるんやから。
優しいお姉様ですね。
咲が 30前にお嫁入りできて
ホッとしたわ。
(鈴の音)
(克子)咲姉のお相手が
大きな会社の勤め人やということも
お父さんに報告しないと。
とっくにしました。
あなたの旦那さんとは違うって。
やめてよ 子どもの前で。
あの人は 芸術家なんやから。
(鈴)芸術家やなんて
絵で食べられるようになってから
言いなさい。
福子 あなたの結婚相手は
お見合いで決めますからね。
私は 武士の娘です。
だらしのないことは許しません。
いいわね 福子!
私の結婚は まだまだ先!
♬「恥じだって一緒に」
♬「あなたとならトゥラッタッタ♪」
<この年 女学校を卒業した福子は
大阪一のホテルの電話交換手として
働き始めました>
大阪東洋ホテルでございます。
あっ もしもし。 そちらにお泊まりの
大平商会の大平さんをお願いします。
お待ち下さいませ。
毎度! たちばな工房の立花でございます。
えっ? 相手が違いますよ。
はっ?
あなたが間違ったんです。
申し訳ありませんでした!
(竹ノ原)立花さん。 お客さんです。
(加地谷)ポジフィルムを使わんと
紙焼き写真をそのまま投影できる
幻灯機があるいうんは
知ってたけどな。
それを国内で作ってる人間がいるいうのを
聞いて驚いたんや。
アメリカ製のものより
優れているという自信はあります。
立花君は どこの人や?
大阪やないんやろ?
子どもの頃に両親を亡くして
あちこち転々としてまして
大阪に来たのは3年前です。
そうか。 君は経営に疎いようや。
俺が手伝おう。
会社を作って 共同経営するんや。
俺が営業担当やったるわ。
営業やって下さるんですか? おおきに!
咲姉ちゃんの結婚のお祝い
何かしたいねん。
私のお父さんが…。
敏ちゃんのお父さんは ええから。
面白い機械 見たんやって
中之島の見本市で。
そやから…。
<そこで 福子が訪れたのが…>
たちばな工房。
わあ~!
写真があれば そのまま映せるんです。
映画みたい!
この幻灯機
結婚式で使わせてもらえませんか?
結婚式?
<そして 咲の結婚式の日>
自分のことは後回しにして
家族を支えてくれた咲姉ちゃんに
やっと幸せが来たと思いました。
真一さん…
咲姉ちゃんを幸せにして下さい。
咲姉ちゃんも
真一さんを しっかり支えてあげてね。
それが 私の心からの願いです。
それでは あちらをご覧下さい。
私? 何これ。
(タカ)すごい!
(泣き声)
今日のお礼です。
いえ 結構です。
えっ?
自分が作った幻灯機が役立ってくれて
皆さんが
あんなに感激して下さって
僕は 胸がいっぱいです。
立花さん…。
ありがとうございました。
咲姉ちゃんの結婚式から
3年がたちました。
(恵)そうや 伝票整理しとかな。
あっ もう私がやっておきました。
ありがとう。
もう どっちが先輩か分からへんわね。
何言うてるんですか 保科さん。
理創工作社の加地谷です。
立花です。
ここ大阪から
お国をもり立てるんやと
そういう気概で
頑張っていこうではありませんか。
あっ…。
ああ! 申し訳ない!
大丈夫ですか お客様。
こちらへ どうぞ。
すぐ乾かします。
今井さんですよね。
あっ!
幻灯機で写真を。
立花さん!
そうです!
ご立派になられましたね。
今は 根菜切断機の製造販売を。
発明家なんですね 立花さんは。
ただ考えることが好きなだけです。
福子さんは
結婚はされてるんですか?
まだです。
そう。
失礼します。
立花君。 世良商事の世良です。
前から知ってるんやで 君のこと。
2年前まで 僕も技術屋やったんや。
幻灯機を作ってた。
でも 君の幻灯機を見て
やめたんや…。
あれは 実によく出来てた。
今は 根菜切断機を作っています。
戦場で重宝しそうやな。
ええとこに目ぇつけたな。
はい。
高平社長! ご無沙汰しております
世良でございます。
<その数日後 偶然2人は再会>
こんな所で
福子さんにお会いできるなんて。
お茶でも どうですか?
えっ…。
(おなかが鳴る音)
お昼 まだなんですか?
はい。
私 大好きなんです ラーメン!
おつゆも飲んでみて下さい。
ああ うまい!
んん!
確か 前に
大阪東洋ホテルに電話した時
間違えて外国人につながれたことが
ありました。
(せきこみ)
あっ…。
私です。
福子さんが?
ごめんなさい。 あ~。
こういうのを… 縁っていうんですかね。
ハハハ…。
ハハハハ…。
この年の12月 ついに日本は
アメリカ イギリス各国を敵に回した
大きな戦争に突入しました。
立花さん。
アメリカと
戦争が始まってしまいましたね。
でも… 僕と付き合って頂けませんか?
へっ!?
僕は あなたのことを もっと…。
何を言ってるんだ 僕は。
今の忘れて下さい。
あっ…。
あ~…。
この前のパーティーで
ズボンぬらした人?
この前 偶然お会いして
一緒にラーメンを。
ラーメン?
ラーメン。
それだけです!
はあ 嫌われた。
(世良)お~ 寒い寒い。 熱かん おくれ。
いやいや いやいや 奇遇やな。
縁があるんやな 僕らは。
はあ…。
(世良)
なあ 僕と組んだ方が うまくいくて。
冒険せえよ。 独り身やろ。
結婚したいと思てる相手は おらんのか?
そういう人ができたら
どうしたらいいんでしょうね。
押して 押して 押しまくれや。
福子さん。
立花さん。
やっぱり あれは… 本気です。
へっ? 僕と付き合って下さい。
結婚を前提に。
結婚!?
お願いします!
はい。
えっ!
分かりました。
本当ですか?
フフフ。
<萬平は 福子を仕事場へ案内します>
自分に何ができるのか
まだ分からないけれど
とにかく僕は
世の中の役に立つ仕事がしたい。
みんなが喜んでくれるような仕事を。
ご案内します。
ごゆっくりお過ごし下さいませ。
こちらにお泊まりの小山茂幸先生に
牧 善之介が来たと
お伝え願いたいんですが。
牧さん!
あなたは…。
姉の知り合いの歯医者様で。
あっ。
お姉さんが救急車で運ばれたのに
どうして行かないんです?
救急車?
咲姉ちゃん…。
ゆうべ 血を吐いてね。
えっ?
結核だ。
(小宮山)ここまで進んでると
必ず助かるとは…。
とにかく 療養が第一です。
こんばんは。
立花さん。
結核の専門病院を見つけました。
是非 お姉さんを
転院させてあげて下さい。
余計な おせっかいかも
しれないけど
早くお姉さんに
よくなってもらいたくて。
ご厚意は
ありがたくお受けいたしますが
福子と関わるのは
もう やめて頂けないでしょうか。
福子は しっかりした会社に
勤めている方に嫁がせます。
申し訳ありません。 それはできません。
はっ?
お姉様がお元気になられたら
僕は 福子さんに
結婚を申し込むつもりです。
では 改めて。
<咲は 萬平が薦めた病院に転院しました>
(咲)克子。
(鈴)珍しい 忠彦さんも一緒やなんて。
忠彦さんがね
咲姉のために絵を描いたんよ。
(咲)わあ…。
(鈴)きれい!
(忠彦)ここは 桜が見えへんから。
ありがとうございます 忠彦さん。
いえ。
(せきこみ)
咲。 夏までには 絶対治るから。
きっと退院できるよ。
お姉さんの具合は どう?
夏には退院できるんでしょ。
そしたら もうすぐ
立花さんと会えるようになるわね。
はい。
<ところが…>
お母さん。
咲!
何で急に?
もう肺が限界なんです。
駄目よ咲姉。 死んだら駄目!
うそや うそ。 咲姉ちゃん…。
(鈴)目を開けなさい! 咲!
お母さん…。
ありがとう…。
咲…!
咲姉ちゃん!
咲姉ちゃん! 咲姉ちゃん…。
(鈴)咲…!
姉が亡くなりました。
本当に お世話になりました。
失礼します。
<そして 戦争の影は福子の周りにも>
実は おととい 赤紙が来てね。
きっと 咲姉ちゃんが
真一さんを守ってくれます。
立花さんには
お礼を伝えてくれた?
病院を紹介してくれたこと。
会うてないんです。
どうして。
今は 誰かとお付き合いするとか結婚とか
考えられません。
立花さんは 福ちゃんにとって
大事な人ではないの?
大事な人がいるなら
生きて そこにいるなら…
簡単に手放してはいけない。
いけないよ。
≪立花さん。
お久しぶりです。
あっ ちょっと お茶を…。
すいませんでした 連絡しなくて。
母の世話と仕事のこと以外
何にも考えられなかったんです。
立花さんにも
もう会わない方がええって…。
でも やっぱり私は…。
私は…。
(原)立花萬平は お前か?
軍需物資横領の容疑で逮捕する。
逮捕!?
(村城)どけ。
お前が横流ししたのは分かってるんだ。
何のこと言ってるんですか 横流しって!
口答えするな!
立花さん!
何かの間違いです 福子さん!
離して下さいよ!
待って! 待って! 立花さん!
福子さん!
横流しなんて やってない!
<萬平は
憲兵隊に逮捕されてしまいました>
知りませんよ!
軍需物資の横領は重罪だぞ!
ああっ!
立花さんが何をしたっていうんですか?
ジュラルミンは
うちが軍に納めてる根菜切断機の材料や。
それを俺に黙って
闇業者に売り飛ばしてたんや あいつは!
そんなこと
あの人がするわけありません!
もう そんなこと言うてる場合やないんや。
こっちかてな
会社立て直すのに大変やねん!
飯だ。
いらんのか。 わいが もらうで。
立花さんは ここにいるんですよね。
何の用だ お前たち。
何やってるんや?
憲兵に にらまれてるで。
立花さんを返して下さい!
あの人が 悪いことなんて
するはずありません!
お願いします!
お願いします!
立花さんは 絶対に無実や!
いい加減にせんか!
(2人)福ちゃん!
(戸が開く音)
福子。
こんな時間まで どこ…。
どうしたの 福子。
福ちゃんが好きになった人が
悪い人なわけがない!
立花さんは 私の掛けがえのない人に。
福子。
(恵)分かってあげて下さい お母様!
娘さんの気持ち。
分かりませ~ん!
お母さん!
あんた… 家族はおるんか?
いません。
でも… 大切な人はいます。
ほな 生きて ここを出なな。
生きて大事な女に会いたかったら
食わんとあかん。
<萬平を救いたい一心の福子は
大阪経済界の重鎮
三田村に相談を持ちかけます>
立花萬平は
いずれ大阪経済を背負って立つ逸材だと。
ほう~ そこまで。 頼もしいな。
その立花さんが 今
憲兵に捕まってるんです。
でも 立花さん そんな
悪事を働くような人ではありません。
どうか会長のお力で
立花さんを助けて頂けないでしょうか?
大体 何で そんなこと
君が私に頼むんや?
それは…。 (ノック)
はい。
ご無沙汰しております 三田村会長。
世良商事の世良でございます。
(三田村)ああ 君か。
どうや 商売の方は。
いやいや それは もう
三田村会長のおかげで…。
それは 大阪のためです!
立花さんは 将来 大阪を担う人です。
会長も先ほど
「ほ~う それは頼もしいな」って
おっしゃいました。
憲兵に捕まってる人間を
助けることなど…。
無理やぞ。
憲兵隊だって
大阪経済界の総大将に物申されて
知らんぷりできるはずありません!
ああ 分かった分かった。
なんとかしてみようか。
えっ!
えっ!
誰か交渉のうまい人間に
やってもらおうか。
その役目は 私めにお任せ下さい。
え~!
原材料の仕入れや在庫管理は
全部 社長がやってました。
加地谷社長が気付かんわけないんです。
誰にも気付かれんと横流しできるんは
加地谷さんしかおらんっちゅうことに
なるやないか。
あの人に罪を着せるやなんて…
許せない!
自分がやったと言え。
僕は 認めません。
貴様~!
死んでしまったら元も子もない!
(加地谷)立花が無罪放免になったら
俺らが疑われるんですよ 村城さん。
分かってる!
立花に罪をかぶせたからには
もう後戻りはでけへん。
あいつを殺すしかないんですよ。
あの村城という男は 間違いなく憲兵です。
そうなると もう我々の手には負えません。
私に どうしろと?
立花萬平という男は
非常に優秀な男です。
助けて下されば
閣下にとっても利益が…。
こんなになって…。
生きて会えるとは思いませんでした。
(泣き声)
あの時 何を言おうとしていたんですか。
えっ?
立花さんにも
もう会わない方がええって…。
でも やっぱり私は…。
あれは 何を…。
私は やっぱり 立花さんが好きですって。
福子さん。
でも やっぱり母の許しをもらわないと。
福子さんと
結婚させ… さ… させて下さい。
私が 駄目だと言ったら
諦めて下さるんですか。
いえ お許しを下さるまで諦めません。
反対されても結婚する。
でも 反対してほしくない。
僕は 憲兵隊の牢の中で
何が何でも生き抜いてやると誓いました。
生き抜いて
福子さんと共に人生を歩むんだと。
ふつつかな娘ですが
よろしくお願いします。
ありがとうございます お母さん!
ありがとうございます!
萬平さんと福ちゃんは 晴れて
結婚式を迎えることができたのです。
昭和19年 春。
福ちゃんと萬平さんが結婚して
1年がたちました。
うまい。
福子が いろいろと工夫してくれるから
毎日 食事が楽しみだ。
人にとって 何より大事なのは
食べることでしょ。
人間 食わなければ終わりだ。
<この夏 戦況が悪化。
忠彦も戦地に赴き 残された克子たちは
疎開することになりました>
(克子)私たち行くから。
お母さんの言うこと よう聞くのよ。
(4人)はい!
行きましょ。
<そして とうとう 大阪も爆撃を受け…>
(たま代)あれは 天王寺の辺りや。
怖いな…。
<福子たちは 兵庫の上郡に
疎開することになりました。
それから しばらくたった
ある日のこと…>
召集令状です。
役場の人が言うてました。
今 戦場に駆り出される兵隊さんは
生きて帰れないって。
爆弾を抱えて
敵の戦車に突っ込むんやて!
行けと言われれば 行かなきゃ。
<ところが その翌朝>
(うめき声)
萬平さん?
腹が…!
すいません。 萬平さん!
福子…。
(斎藤)奥さんから聞きましたよ。
憲兵に捕まって
だいぶ どつかれたって。
これは 痛みよってか?
うわあ~っ!
腹膜炎かぁしらんなあ。
薬で治ったってんを願うしかねぇでえ。
山ぁ越えたなあ。
もう大丈夫でしょう。
萬平さん。
今が一年で 一番ええ季節ですね。
日本が戦争してるのが
うそみたい。
(権三)あっ! あれ!
みんな隠れろ~!
(銃声)
今のは何!? 福子!
米軍の戦闘機が!
うわあ~っ!
えっ?
うわあ~っ!
撃たれたんですか?
クソ! クソ! クソ! クソ~!
ああ~っ!
萬平さん…。
(泣き声)
僕は 何もできない…。
みんな お国のために働いてるのに
それなのに僕は…!
クソ~ッ!
そんなこと考えんといて!
戦争に行かなくとも
お国の役に立てることは
きっとあります!
誰に何と言われようと
あなたには 生きていてほしいの!
僕に できること…。
私が見つけてあげます。
昭和20年8月15日。
長く続いた戦争が やっと終わりました。
よかった~
克子姉ちゃんの家は無事で。
<疎開先から戻ってきた福子たちは
克子の家に居候することになりました。
萬平の会社も 福子たちの家も
空襲で焼け落ちてしまったのです>
(タカ)今日も おんなじ。
(重之)すいとん。
(学)もう飽きた。
文句言わへんの。
明日 上郡に行ってくるよ。
私も一緒に。
食べ物と交換できそうな着物
出しとかないと。
お金がないなら私も働く。
そんなこと考えなくていい。
勉強してなさい。
(権三)根菜切断機?
ここに野菜を入れて
ハンドルを回せば…。
(八重)いや~。
便利ですよ 八重さん。
てぇしたもんだ。
分かった。 八重 米持ってきたり。
ありがたい。
僕が もう少し要領よければ
お前に こんな苦労はかけないのにな。
萬平さんには
人にはない才覚があります。
そのうち
突拍子もないことを始めて
私たちみんなを
幸せにしてくれるんです。
あれは…。
へい お待ち。
ラーメンの屋台に こんな行列が…。
前に お前と一緒に
ラーメン食べたな。
僕たちが夫婦になった きっかけだ。
麺だけ。
そやけど ええ匂い。
じゃあ 頂きます。
うまい!
う~ん おいしい!
萬平さんが
いつも言うてるとおりですね。
ん?
人にとって 何より大事なのは
食べること。
ああ。
幸せになる一番手っとり早い方法は
おいしいもんを食べることかも。
そうだな。
う~ん…。
いくらで買うてくれますか?
150円やな。
150円!?
そんな安物やありませんよ。
そのとおりや。 これは 結城やな。
(鈴)そうです。
世良さん?
おお 福ちゃん! 生きとったんか!
世良さん!
久しぶりやな! 君も無事やったか!
世良さんこそ
よくぞご無事で!
世良さんは 今 何をされてるんですか?
違法に ものを仕入れて売りさばく。
金のないやつから安う買いたたいたものを
金のあるやつに高う売る。
そしたら 私から買うた着物は…。
3倍の値つけて誰かに売ります。
3倍!?
不公平です。
今は不公平の時代ですわ。
僕は 残念やで。
立花君が不公平の負け組で
くすぶってんのが。
はよ出てこい 発明家の立花君。
世良さんみたいに 自信を持って
自分はこうだと言える人間になりたい。
そんな人 なかなか いませんよ。
<ある夜のことです>
♬~
何をしているの!
(神部)うわっ!
皆の者 出合え 出合え~!
待って下さい! やめて!
何で泥棒なんかしたの?
戦争から帰ってきたら
空襲で家は焼けて 天涯孤独に。
金も尽きて 追い詰められて…。
そんな人は たくさんいます。
え?
どうした?
うまい…。
そんなに おなかがすいてたの?
あ~。
本当に 申し訳ありませんでした。
行く当てはあるのかい?
ありませんけど…。
そしたら どうするの?
分かりません。
せやけど もう泥棒はしません。
ほんまに ああいう人は
たくさんいるんでしょうね。
<そして 事件は再び起こりました>
また あんたか! 性懲りもなく!
僕です。 忠彦です。
えっ!
(克子)どうしたん?
克子姉ちゃん。
克子…。
生きてた!
子どもらは 無事か?
みんな元気です。
(忠彦)よかった。
お父さん?
(吉乃)お父さん? お父さんや!
(吉乃)お父さんが帰ってきた!
みんな ええ子や。
(3人)万歳!
よそに聞こえる。
(一同)万歳!
やめなさい。
(一同)万歳! 万歳!
神部君!
何で あんたがいてるの!
俺も手伝います。
あなたは 出ていけ。
お母さん。
はんこの棒が なくなってしもた。
することがない。
(克子)勉強しといて。
俺が教えます。
君は 泥棒やったよね。
でも 大阪帝大を卒業しました。
ええっ!
そう。 分かってきたね 重ちゃん。
うん。
なかなか いいやつじゃないですか。
掘り出し物かも。
そうそう そうそうそう。
君は発明家や。 食いぶちを稼ぐにしても
何か おもろいことをするべきや。
だから今 それを考えているんです。
戦争で負けて
すさんでしまった世の中だからこそ
みんなが喜ぶようなことが
できないかって。
このラーメンみたいに。
ほな ええ情報教えたろ。
実は ある場所に
軍の倉庫が残っててな。
僕の知り合いの不動産屋が
誰かに貸したいと言うてんねや。
せやけど 中に何があるかは分からへん。
もしかしたら
鉄くずしかないかもしれへんけどな。
泉大津?
本当に鉄くずだけだったら…。
萬平さんなら
きっと何か面白いこと思いつきます。
海だ。
海だ~!
<福子たちは
大阪の泉大津に住むことになりました>
何ですか これ。
これか…。
海が見えるやなんて すてきやわ。
潮風で 洗濯物が しょっぱくなりそう。
鉄板は 80枚以上か。
何のためのものだったんだろうなあ。
(まさの)お待ち遠さん。
はい。
おいしそう。
うまいです。
(鈴)ちょっと塩気が足りないわね。
確かに 大阪でよく行った
屋台のラーメンよりも薄味だな。
塩が手に入らへんでな。
塩?
なかなか配給がないんですよ。
戦争で足りんようになったって。
そうだ!
目の前は海だ。
あの鉄板で塩を作れないか。
塩作り?
81枚の鉄板を 碁盤の目のように
砂浜に並べるんです。
これだけの鉄板で塩を作っていけば
相当な量が出来ます。
お塩を勝手に作って
売ってもいいんですか?
必要な条件を満たせば
認めてもらえるんです。
塩の品質とか
設備が整っているかとかだな。
男手が必要だ。
戦争から帰ってきて
職を探してるやつらは
ぎょうさんいます。
大阪に行って探してきますよ。
おお 頼む。
男の人たちが
ここに来るってことですか。
食事は 誰が作るのよ。
それは 私たちでしょ。
塩屋の飯炊きなんて。
じゃあ そういうことで。
福子!
えっ いや…。
私たちが
暮らしていくだけでも大変やのに
住み込みで人を雇うなんて
食費は どうするの。
お金がないのは分かってます。
そやけど それを言うたら
萬平さんは何にもできません。
ああ…。
萬平さんが本気なら
それを支えるのは私の役目です。
ぶしつけなお願いとは
重々承知しております。
<福子は 泉大津の地主の家に嫁いだ
ハナを訪ねました>
お金は 将来 必ずお返しします。
萬平さん。
ああ 福子 出来たぞ。
81枚の鉄板を使って
塩を作る工程が完成した。
そしたら これを役所に持っていきます。
ああ。
萬平さ~ん! 集めてきました!
おお そうか。
みんな こっち こっち。
(岡)ほんまや。
(神部)こっちや こっち。 はよう来い。
(長久保)腹減った~。
(野村)わいもや。
(佐久間)何か食わしてくれ。
こんなに!?
頑張って集めてきました!
<翌日から 塩作りの準備が始まりました>
あんな萬平さん初めて見た。
お母さん 味付け早く。
今 やってます。
もう~。
<家事で大忙しの福子たちのために
タカが手伝いに来てくれることに
なりました>
タカちゃん!
神部さん!
えっ?
私の姪っ子の タカちゃんよ。
(一同)よろしく。
<そして いよいよ
本格的な塩作りが始まったのです>
(高木)これは なかなか大変や。
水が足りなくなったら
すぐに くみに行け。 もたもたするな!
よし いいだろう。
(小松原)出来たんですか。
出来た。
みんなで作った塩よ。
どうした。 うれしくないのか。
これだけ?
(森本)丸一日かけて
これだけしか出来んのか。
慣れてくれば もっと出来るようになる。
そんなに簡単に言うていいの 萬平さん。
塩作りは やめるのよ。
商売にならないものに手を出したって
しかたないでしょう。
そうですね。 お母さんの言うとおりかも。
えっ。
(鈴)まあ。
よし。 もう やりたくない人は
大阪に帰ってもええわ。
今日までのお給料は
お支払いしますから。
(神部)俺は 諦めませんよ。
諦めるわけないやないですか!
せっかく
ここまで頑張ってきたんやから!
やりますよ わしも。
俺も続けます。 俺も やります。
俺も やります。
やります。
わいも やるぞ。
このお塩 清香軒さんに差し上げませんか。
おおきに。 ありがたいわ。
ラーメン作ってあげたら?
そうや 食べてってぇな。
これが 清香軒のラーメンや!
(一同)頂きます。
食べて 食べて。
(神部)うまいです。
(竹春)そうか。
今までと 全然違うわ。
うれしいなあ!
あんた…。
こんな ええ塩
作ってもらえるやなんてな。
おおきに!
ほんま おおきに!
お塩作りは大変やけど
こんな おいしいラーメンが出来て
こんなに喜んでくれる人がいるんよ。
皆さんは
世の中の役に立つ仕事をしてるの。
そやから 頑張ってお塩を作って下さい。
私も 一生懸命
皆さんのお世話をしますから。
やってやろやないか!
(竹春)何杯でも いったって…。
(世良)鉄板で塩作るやなんて
初めて聞いた。
まめに さびを拭き取らないと
塩が茶色くなってしまいますから
大変ですよ。
もう どのくらいの塩が出来てるんや。
かます22個だから
大体 880キロですね。
今から僕の車で
専売局まで運んだる。
ありがとうございます。
たちばな塩業の初出荷や! 万歳!
(一同)万歳!
(鈴)あの量で いくらになるの?
萬平さんは
3, 000円くらいで売れるやろうって。
3, 000円!? 万歳!
3, 000! 塩は こないに金になんのか…。
1, 500円…。
どうしてよ。 半額やない。
(世良)茶色い塩が混じってたからなあ。
それで評価が下がったんやろう。
(佐久間)申し訳ありません。
茶色い塩が あったんです。
そのまま出してしまいました。
あれほど言ったじゃないか!
申し訳ありません!
(泣き声)
悪いなあ。 僕も金に困ってるんや。
これからは 一切 手抜きをするな。
一回 海水を流すごとに
必ず鉄板をよく拭いて
絶対に鉄分の茶色が
混じらないようにしてくれ。
純度の高い塩にする。
生産量が落ちますよ。
手間暇かけろってことやもんな。
そうであっても
質の高い塩を作ることの方が大事だ。
(一同)はい。
<その日から 仕事は
ますます大変になっていきました>
(鈴)手間暇かけて
出来る塩の量が少なかったら
会社は やっていけません。
ええ塩を作ればええんやから大丈夫。
うちには もう お金がないのよ!
ああ…。
今度の塩は
間違いなく最上級です。
大した自信や。
かます20個か。 金になるで 立花君。
(中島)これは ええ塩や。
おお。
(恵子)取り決めどおり
満額をお支払いします。
満額! さすが立花君や。
<ところが…>
これや。
(大西)ええ塩や。
なんぼで買うてくれるんや。
63 64。
何回数えても気持ちええなあ。
塩は いくらで売れたんですか。
4, 000円だ。
難波の闇市で
世良さんを見たんです。
(世良)そんな値段やと売れまへんな。
ぼったくりやろ。
(小松原)世良さん?
うちの塩を ちゃんと
専売局に納めてくれたんでしょうか。
どういう意味だ。
闇市に流したとか。
ええっ。
まさか。
ほんまは 闇業者に もっと高く売って
正規の値段分だけ社長に渡したとか。
ああ 4日前ですね。
かます8個 買い取り。
8個… 20個やないんですか!?
☎(恵子)8個で1, 600円
お支払いしましたよ。
ごまかしてる?
残りの12個は
闇業者に売ったのよ 世良さん。
闇業者!?
<翌日 福子は闇市に向かいました>
ええ塩があるんで
お金に換えたいんです。
うちで買うたるわ。
こないだも最上級の塩を買うたったわ!
見つけました。
かます12個分を 6, 400円で買ったって。
専売局の買い取り額は
かます8個で 1, 600円。
合わせて 8, 000!
うちに半分渡して
残りをかすめ取ったのね 世良あ!
もう当たって砕けろ。
私 本人と会うてきます。
君のことやから
要領よう立ち回ってんのやろ。
いえいえ。
愚直に仕事をさせて頂いております。
ハハハ。
どうぞ 会長。
おお 君は…。
ご無沙汰しております。
今 実は 泉大津に家を持ちまして。
お塩を作っております。
なかなか ええとこ 目つけたな。
いつまで この会社が続くかは
分かりません。
主人は 塩作りだけで収まる人間では
ないからです。
いずれ また
何かやりたいことを見つけるでしょう。
今は その時のための資金作りやと
思っております。
それやったら
質にこだわったら あかんな。
それは無理です。
ん? 何でや。
主人は 最上級の塩しか作りません。
品質だけは 絶対に譲らないんです。
あと 闇業者に売るようなことも
絶対にしません。
意固地なんですね。
世の中の役に立つ仕事がしたいんです。
正しいやり方で。
なるほど。 彼が これから どうなるのか
実に興味深いな。
立花萬平に 投資してみよ。
えっ。
投資額は 3万や。
3万!?
あくまでも 投資やで。
倍にして返してもらうぞ。
はいっ。 ありがとうございます!
ハハハハハ。
え~!
僕も立花君に投資する。
5, 500円。 倍にして返してもらうで。
三田村会長からの投資で十分です。
分かった。
これは 立花君との友情の証しや。
持っていけ。
5, 500円…。
そのかわり 末永い付き合いを頼むで。
1, 500円で結構です。
この4, 000円を受け取ったら
うちも闇業者と取り引きしたことと
同じになりますから。
何で知っとるんや。
よかった~!
3万円!?
萬平さんの将来に期待して
投資して下さるって。
僕の将来?
ありがたや ありがたや。
せやけど! もっと うれしいことが。
もっと?
何?
妊娠3か月ですって。
ええ~!
このおなかに 僕たちの…。
私の孫が。
うれしいなあ! ハハハハハハ!
よくやったな。
昭和22年 季節は春になりました。
ええ出来ですね。
ああ。
萬平さんの製塩業は順調でした。
そして
福ちゃんは 臨月を迎えていました。
萬平さん。
ん? ああ。
三田村会長から
投資して頂いたお金ですね。
3万円で 今よりも たちばな塩業を
大きくするというのは どうもな…。
新しい仕事を始めた方が
ええと思います。
塩作りは たまたま鉄板があって
思いついただけで
萬平さんが最初から ほんまにやりたくて
始めたわけやありませんよね。
いや でも…。
でも?
不安じゃないのか 福子は。
たちばな塩業は
うまく回ってるっていうのに
別のことに手を出すというのは
言ってみれば 冒険だぞ。
その萬平さんの冒険を
私は見たいです。
やりたいことが見つかったら
それが何であろうと
私は応援しますから。
ありがとう 福子。
<そんな ある日…>
(堀)社長! 奥様が!
えっ!
(けい)息んで。
ん~!
福子!
頑張って!
(けい)もう一回!
ん~!
≪(赤ちゃんの泣き声)
えっ。
(歓声)
(鈴)男の子よ。
(けい)ほら お母さんやで。
男の子…。
(克子)萬平さん。
産まれた!
私たちの赤ちゃんよ。
ああ。 よくやった 福子。
<しかし…>
つらいの 福子。
<産後の肥立ちが悪く
1週間たっても福子の体調は戻りません>
力が出ないだけです。
お産婆さんは何て。
体を冷やさないようにして
栄養のあるものを食べさせなさいって。
栄養のあるもの…。
(タカ)小松菜 切り終わりました。
<栄養バランスのよい食事を
とるようになった福子が回復したのは
3か月後のことでした>
栄養食品?
産後の肥立ちが悪いというのは
要するに栄養失調のことなんだ。
でも 今の日本には
妊婦でなくても
栄養失調で困っている人が たくさんいる。
はい。
みんな貧しいし
そもそも食い物がないからだ。
つまり 誰でも手軽に栄養がとれる
食品を作ろうと。
新規事業として やってみようと思う。
(近江谷)奥さんは
脂溶性ビタミン欠乏症だったんでしょう。
これは ビタミンA D E Kが
欠乏する症状です。
特に妊婦は 胎児に栄養を奪われて
これになりやすい。
脂溶性ビタミン欠乏症になると
夜盲症といって 夜 暗くなると
目が見えにくくなることがあり…。
あっ!
それ 福子も一緒でした。
最悪の場合 失明します。
そんな かわいそうな妊婦さんが
たくさんいるんですよ。
作るんだよ。
タンパク質 ビタミン ミネラル
全部が入って
しかも安い 栄養食品を。
三田村会長から
投資して頂いた3万円で
それを作るんですね。
<早速 萬平は
新しい仕事の準備に取りかかりました>
せっかく たちばな塩業が
うまくいってるのに。
ああ 絶対 失敗する…。
私は 萬平さんを信じてますから。
きっと みんなが喜ぶようなものを
作ってくれます。
わざわざ おいで頂きまして
ありがとうございます 近江谷先生。
ここにいる4人を
たちばな栄養食品研究室に
配属することに決めました。
助言を頂きながら
新しい栄養食品を開発するんだ。
(4人)はい。
小学校で給食が始まったそうです。
出てくるのは パンやて。
米の飯じゃないのか。
GHQの指導で そうなったって。
パンに塗るようなものは どうでしょう。
手軽やないですか。
確かに。
パンに塗るということは
ペースト状ということですね。
いい考えだと思います。
それでは そういうものを作るとして
まずは 動物性タンパク質を何からとるか。
値段を抑えたいので
高い材料は使えませんよ。
(大和田)牛肉や豚肉は無理やな。
あ~!
何してるの 萬平さん。
動物性タンパク質の材料を
探してるんですよ。
捕まえました!
わしもや!
うわあ~っ!
(鈴)煮込んでる?
(タカ)ガマガエルを?
(赤津)そう。
やめて やめ… やめて~!
そろそろ いいんじゃないですかね 先生。
そうですね。
≪(爆発音)
何か爆発しませんでした。
(騒ぐ声)
水かけてくれ~!
ガマガエルが爆発した!?
やめてちょうだい。
こんな あほなこと。
いや 僕は やめません。
こんな失敗 何てことはない。
何度も失敗して
その先にこそ 成功があるんだ。
栄養失調で苦しんでいる人たちのために
必ず新しい食品を作る!
はい!
ダネイホン?
ドイツ語で
栄養って意味やって。
ガマガエルをお鍋で煮込んで大失敗。
ガマガエルは駄目だ。
栄養食品の原料としては
まるで役に立たない。
牛の骨を使うというのは
どうでしょう。
牛の骨?
骨髄には タンパク質だけでなく
ビタミンAとビタミンDも
含まれていますよ。
それはいい!
骨なら タダで手に入るど。
(大和田)さすが近江谷先生や。
(笑い声)
<しかし その一方で…>
(舌打ち)
楽しそうやなあ。
(堺)社長は もう あっちばっかりですな。
うちは 塩屋じゃないんか。
(高木)足りへん?
もっと ぎょうさん釣ってきてくれ。
僕ら 塩作りで
毎日疲れてますねん。
神部たちに やらせて下さいよ。
ダネイホン作ってる連中に。
そうや。
あいつら 楽してるんやから!
言われへんがな。 ダネイホンは
社長が肝煎りで作ってはるんやから。
分かりました。
魚とってきたらええんでしょ。
高木さん?
ええねん どけ。
(堺)何で わいらが。
はい ありがとうございます。
赤津さん。
塩作り組の鬱憤は
めちゃくちゃ たまってます。
えっ?
(神部)出来ましたね。
(岡)ダネイホンの完成や。
試食してみよう。
これは…。
(岡)あんまり…。
(倉永)おいしないです。
(大和田)まずいです。 そんなことはない!
まずいです。
(岡)売れませんで。
やってみなきゃ分かんないだろ!
ダネイホンが
うまく出来なかったんですか。
萬平さん 仕事に一生懸命になるのは
分かりますけど
周りの人たちのことも
考えてあげて下さい。
えっ?
お塩を作ってる人たちが
不満をためてるそうです。
不満?
社長は ダネイホンに熱中して
自分たちのことを忘れてるって。
そんな どうでもいいこと
いちいち僕に言うな!
重いのう これ。
いっぺんに ぎょうさんの魚をとる
とっておきの方法があるんや。
昨日 ここの掃除した時に
見つけたんや。
おっ!
し… 手りゅう…。
ここやったら バレへんやろ。
はい。
(爆発音)
あっ!
(高木)作戦大成功や! 行くぞ!
(森本)岡 ぶちくそまずいんじゃっての
ダネイホン。
わしらは クソ暑い中
塩作りやっとるんじゃ。
そっちは楽しとるくせに
売れそうもないもん作りやがって。
俺らかて 毎日 汗だくで
ダネイホン作ってるんや。
(岡)お前ら ひがんでるだけやろ。
男らしゅうないのお。
≪(騒ぐ声)
何!? 何だあ。
おい! 何やってんだ お前たち!
岡!
いい加減にしなさ~い!
うちの社員は 対立してるわけですか。
これは 社長のせいですよ 萬平さん!
森本さんや小松原君たちも
ちゃんと仲間に入れてあげないと。
みんな 萬平さんと一緒に
仕事がしたいんやと思います。
神部さんや岡さんたちと同じように。
やっぱり 僕は 社長に向いてないんだ。
いいえ。
あなたに代わる人はいません。
みんな あなたを尊敬してるの。
あなたに助けられたと思ってるんです。
大事なことは
あなたの口から言わないと。
誰も知らん新しいもんを
俺たちが世の中に送り出すんや。
(岡)まずは手売りやな。
(神部)そやな。
社長。
(岡)わしら 今 ダネイホンを
どうやって売るか 話してたんです。
(倉永)最初は やっぱり 僕らが…。
みんな聞いてくれ。
僕は 新しい仕事に
夢中になってしまって
君たちに負担をかけてることに
気が付かなかった。
本当に申し訳ない。
明日からは 全員が交代で研究室に入って
ダネイホン作りを手伝ってくれ。
うちは 大きな会社じゃない。
みんなが一つになって
同じ熱意を持って頑張ってくれないと
やっていけないんだ。
社長…。
売り始めるまで1週間だ。
それまでに
全員に仕事を覚えてもらうぞ。
(一同)はい!
みんなで頑張りましょうね。
<そして…>
(神部)栄養満点ダネイホンです。
<ついに
ダネイホンが売り出されました。
ところが…>
おいしないわ これ。
味より栄養ですから。
20円!? 高すぎるわ!
それだけの価値がありますって。
売れない。
えっ。 ええっ…。
やっぱり みんな 味と値段を気にして…。
ビタミンAやタンパク質が
入ってるっていっても
普通の人には分からないんだよな。
(足音)
萬平君。
今日は ダネイホンの発売日やろ。
売れてないんか。
中身のよさが
お客さんに伝わらないんです。
どうしたらいいんでしょうね。
僕と一緒やな。
僕は いい絵を描くことだけを
考えていたい。
せやけど 売るのは苦手や。
萬平君も
いいものを作るが商売人やない。
そうですね。
誰か信用できる人に
任せた方がええんやないか 商売は。
そうや 真一さんがいる。
真一さん?
失業?
財閥解体のあおりを受けて
真一さんの会社も
倒産してしまったんだそうだ。
証券会社に勤めてたんだから
数字に強いのは間違いないし
営業もできるんじゃないかって。
営業も!?
萬平さんを助けて下さい。
萬平さんは 世の中の人を喜ばせたいと
もう それだけを思て仕事してるんです。
証券会社は
損得だけを考えていかないといけない。
正直 うんざりしてた。
羨ましいと思ったよ。
いろいろなことに挑戦している
萬平君や福ちゃんを。
え…。
萬平君の会社で働かせてくれ。
ありがとうございます!
そんな かしこまったお礼は
ええから。 ねっ。
ありがとう 咲姉ちゃん。
[ 回想 ] きれい!
忠彦さんが これを?
そう。
病院に?
入院してる人は
誰よりも栄養が必要やし
病院食なら そんなに
味には こだわらないでしょう。
いい考えかもしれない。
はい。
ダネイホンは 栄養もとれて消化もいいと
病院関係者に知られるようになり
みるみる注文が増えてきました。
(一同)おはようございます。
背広でいらっしゃったんですか。
やっぱり ちゃんとしないと
落ち着かないから。
みんな まだ朝ごはんの途中で。
張り切って早く来すぎてしまったようだ。
≪(物音)
えっ?
(源の泣き声)
な… 何ですか。
進駐軍の捜査である。
(メイ)海で 爆発音があったという
通報があった。
どこに武器を隠している。
そんなものはありません。
ダウン!
捜査を始める。
進駐軍に対して
反乱を企てているという疑いだ。
うちは普通の 健全な会社です!
社長…。
どうしたの 高木さん。
えっ…。
黙っとって すんませんでした。
ゴー ゴー ゴー!
(鈴)どうして手榴弾があったのよ!
私かて分からへん。
福子! ダネイホンを出荷してくれ。
塩も専売局に! 分かったな 福子!
萬平さん!
福子!
(神部)魚?
(堺)そうです。
(岡)手榴弾で魚とってたんか。
(堺)僕ら3人で 毎日毎日
みんなが食える分だけの魚
釣れるわけないでしょう!
進駐軍は 今 日本に残っている
武器や弾薬を徹底的に回収してるんや。
全員が連行されたんです。
勾留が長引けば
この会社は潰れてしまう。
今は 萬平さんの
言いつけどおりにするしか…。
うん 会社を守ることしかできへんわ。
えっ! 逮捕て…。
☎(世良)この記事は一体どういうことや!
真っ赤なうそです。
萬平さんが反乱なんて
考えるわけないやないですか。
ほな 進駐軍が
立花君を悪者やと決めつけてんのか。
マンペイ・タチバナに倉庫を教えたのは
お前だな。
はあ? 何や いきなり!
おかしいやろ!
福ちゃん! 僕は関係ない!
☎(世良)助けてくれ!
世良さん!
そら 不動産屋から
紹介料はもろたで 僕は。
せやけど 微々たるもんや。
罪になるほどの額やない。
こんな しょうもないことで
立花君を潰したら日本の損失や。
立花君は悪いやつやない。
手榴弾で魚とってた言うんやったら
それ ほんまや。
うそや思うんやったら 実際行って
やって 確かめたらええやないか。
その前に僕を帰してくれ。
何でやねん! こんな話あるかあ!
(タナカ)また おかしなやつが
入ってきたな。 何や お前 誰や!
そいつは チャーリーです。
わしらの監視役や。
どう見ても コテコテの大阪人やんけ。
チャーリーに逆らったら
懲罰房に入れられますよ。
うそやん。
お前の運命は 俺の腹一つや。
今日は このくらいにしたる。
そんなに優秀な発明家なのか 君は。
だったら 我々を攻撃する新型兵器も
作れそうだな。
僕は 兵器は作りません。
戦争で大勢の人間が死にました。
今も栄養失調で苦しんでる人たちが
街に あふれています。
誰かが その人たちを
救わなければならないんです!
あなたたちと
またケンカをしようなんて
そんな くだらないことを
考えてる暇はない!
<それから しばらくして…>
何しに来たんや。
奥様!
(野村)ここから投げました。
何するつもり?
(爆発音と叫び声)
んな あほな!
いつもは
ぎょうさん浮かんでくるんです!
(世良)魚が浮かんでこんかったあ!?
(岡)お前ら うそついとったんか。
うそやない!
ほな 何で浮かんでこんかったんや。
そんなん知るか!
今は 何もかもが裏目に出ているが
仕事でも そんなことあっただろう。
僕たちは それを乗り越えてきたんだ。
僕たちは仲間だ。
一つになって戦う仲間なんだ。
そのとおりや。
あれは違うんです。
進駐軍の人は 誤解してるんです。
うちも役所ですから
そういう問題のある会社とは。
専売局が何を言うてきたの?
取り引きを停止するかもしれないって。
えっ!
そういうことがあるかもしれないと
覚悟はしておいて下さい。
そんな…。
もっぺん 手榴弾 投げてみてくれ。
魚にもな
生活習慣いうもんがあんねや。
あの時 魚が浮かんでこんかったんは
あの時間には魚がおらんかったからや。
日が暮れる頃に
ぎょうさん集まってくるはずや。
もし それで魚が浮いてきたら
立花君たちは うそをついてない
いうことになる。 僕は釈放や。
<そして ついに…>
悪い知らせ?
事情聴取やて。
<福子が進駐軍に呼び出されたのです>
立花萬平が無実というなら
証拠を示してほしい。
証拠は… ありません。 でも…。
萬平さんは とても忙しい人です。
子どもを産んで
体調を崩した私を見て
世の中には 栄養失調で苦しんでる人が
たくさんいるって…。
それで 栄養食品を作ろうと考えました。
それも簡単に出来たわけではありません。
悩んで 悩んで…
悩んでダネイホンを作ったんです。
みんなで。 せやから…。
(ビンガム)人間には裏と表がある。
私を納得させる証拠が
出てこない限り
君たちは
軍事裁判にかけられることになる。
僕は 構いません。
そのかわり 世良さんと うちの社員は
釈放して頂きたい。
君は 自分が かわいくないのか。
もちろん 自分が一番大事です。
でも 好きなことを仕事にして
一緒に仕事をする仲間を幸せにして
それが人様の役に立つことなら
こんなに幸せなことはありません。
つらい思いをするのは
僕一人で十分です。
手榴弾を投げていたのは この時間か。
時間?
(爆発音と叫び声)
あっ! 福子!
魚や。 ほら ほら ほら!
魚や!
(真一)釈放?
釈放や。
≪(話し声)
えっ 帰ってきた。
福子。
皆さん ほんまにお帰りなさい。
ごはんの支度ができてますよ。
ほんまか。
おおっ!
今日は 朝から ごっつぉや!
卵焼きもついとる。
☎
はい たちばな塩業です。
あっ 専売局さん。
えっ? 取り引きを控える!?
やはり しばらくは
たちばな塩業さんの塩は扱えません。
どうして うちの塩は
買ってもらえないんですか。
信用の問題です。
☎新聞沙汰になって
世間を騒がせましたよね。
とにかく 取り引きは控えさせて下さい。
いや… もしもし?
(電話が切れる音)
(ため息)
やめる!?
どっちみち 今は お塩を作っても
納められないわけだし。
だから ダネイホンの販売を 大阪から
全国に広げればいいって言うんだ。
お塩を作ってる会社は たくさんあるけど
ダネイホンは うちだけでしょ。
(真一)確かに…。
ダネイホンの製造販売に専念する。
ダネイホンに専念?
社名も たちばな栄養食品に変更する。
(世良)ダネイホンを
全国に売り出そういうんはええ。
全国の誰に売るつもりや。
全国の病院に。
(世良)それが あかんのや。
これからは 一般人にも売っていくんや。
そやけど 前に
ダネイホン作った時…。
不評だったんやろ 一般人には。
そんなもん 味を改良して おいしい
ダネイホンにしたらええやないか。
おいしいダネイホン…。
ダネイホンの味を変えるなんて
失敗したら どうするんよ。
(ため息)
今日のお出汁は どうしようかしら。
かつお節か 煮干しか そうか…。
あっ!
萬平さん! 昆布!
ああ? 昆布?
ワカメを昆布に替えましょう。
昆布は 出汁に使われてるんですよ。
料理をおいしくするのが昆布です。
どうして僕は 今まで こんな
簡単なことに気が付かなかったんだ。
昆布です。
これでダネイホンを?
<ワカメを昆布に替えたダネイホンの
試食会を行うと…>
うん! おいしくなった!
ですやろ。
そしたら このダネイホンを
日本中に売っていこう。
日本中?
そのためには
まずは東京進出やで 立花君。
東京進出?
日本の中心に
販売と宣伝のための子会社を作るんや。
<そこで
宣伝用のレコード制作が企画され
福子が ナレーションを
担当することになりました>
「美味しい美味しいダネイホン。
萬平印のダネイホン」。
すばらしい! 一発合格や!
<こうして 東京支社が開業>
とにかく頼み込んで できるだけ
目立つとこに取り付けるんやぞ。
はい!
分かりました。
「萬平印のダネイホン」?
(倉永)大阪では
誰でも知ってる栄養食品です。
これ うちの社長。
<街頭で試食販売を始めると…>
これで いくらなんだ。
(堺)60円です。
1つ もらおう。
(堺)ありがとうございます!
あっ え~と 120円頂きます。
ダネイホンの試食販売が大好評で
すぐに10ケースが売れたそうです。
(一同)おお~!
本当か。
いい知らせは まだありますよ。
白松屋さんが
ダネイホンを扱ってくれるそうです。
東京のデパートや。
老舗の でっかいデパートじゃろ。
でも デパートだと
格式が高いと思う人もいるだろう。
ダネイホンは 町の総菜屋でも
米屋でも買えるようにしなきゃ。
萬平さんの夢が
かなってきましたね。
世の中の役に立つ仕事がしたい
っていう夢が。
僕の夢じゃない。
えっ?
僕と福子の夢だ。
はい。
報告があるんです。
東京支社にいる 一番若い5人に
奨学金を出して
夜学に通わせてやるんです。
あの人たちは
戦争で勉強できなかったから。
それは いいことやわ。
<会社の将来を考え 若手社員を
夜間学校に通わせることにしました>
みんな張り切って勉強してるよ。
やっぱり学校に行きたかったんですね。
<ダネイホンは売れ続け
3か月が過ぎた ある日のこと>
ダネイボン!?
☎(真一)
バッタもんが出てきたいうことや。
萬平君が あんなに苦労して作ったもんが
そう簡単にできるわけあらへん!
粗悪品に決まってる!
そら 客が間違うて買うんを
狙とるだけや。
今から東京行って その偽物 作りやがった
会社に乗り込んだる。
坂下食品。
(真一)ここに間違いない。
こらあっ! 社長は どこや!
(坂下)何事だ。
お前か。 しょうもない
バッタもん作りやがったんは!
ん? 何や これ。
なめとったら あかんぞ。
あれだけ脅したら もう大丈夫や。
僕にケンカは向いてない。
せやけど ダネイホンのバッタもんは
これからも どんどん出てくるど。
東京の大学病院が
ダネイホンを買うてくれたんやろ。
京泉大学病院です。
ああ。 ほな そこに頼んで
ダネイホンのラベルに
京泉大学病院推薦って載せてもらうんや。
ほな どんなバッタもんが出てきても
うちが本家本元や言えるやろ。
なるほど。
☎そのためには
社長が じきじきに出向いて
お願いせんとあかん。
分かりました。
ただいま。
福子。
萬平さん。
東京に行くことになった。
赤ちゃんが できました。
ダネイホンのラベルに こう
京泉大学病院推薦って書… えっ?
赤ちゃんが できたの。
福子! ハハハハハハ! 萬平さん。
よくやったぞ 福子!
福子!
みんな よく頑張ってくれた。
おかげさまで ダネイホンは
予想を超えた売り上げだ。
大学病院のお墨付きが もらえれば
どんな偽物が出ても心配ない。
早速 明日 出向いてもらうで。
<ところが その翌朝>
☎
☎(神部)社長が また…。
進駐軍に逮捕されました。
逮捕!?
脱税やそうです。
えっ!?
萬平君が 堺君たちに渡してた奨学金が
給料にあたる言われてな。
その分の税金を納めてないいうて
所得税法違反に問われたんや。
あれは みんなを
夜学に行かせてあげるためのお金です!
それが駄目やの!?
(机をたたく音)
<萬平は 軍事裁判にかけられ
実刑判決が下されました>
こんな ばかげた話があるか!
有罪…。
(真一)4年間 刑務所に入らんとあかん。
しかも 罰金7万円なんて
とても支払えん額や。
何で いっつも
こんなことなんねん!
クソッ クソッ クソッ!
萬平さん。
福子…。
どうして こんなことになったのか
まるで分からないんだ。
東京の会社を売却して
金を作るしかないだろう。
もしかしたら 大阪の会社も…。
そんな…。
弁護士を探してくれないか。
会社の資産整理に詳しい
信頼できる先生だ。
分かりました。
申し訳ない 福子。
萬平さんが元気でいて下されば
私は それ以上 望みません。
福子…。
せやけど この子が産まれてきた時に
お父さんに だっこしてもらいたいです。
すまない…。
<福子は ある弁護士を紹介されます>
(東)立花萬平さんの事件については
新聞で読みました。
(多江)東先生は ちょっと
人見知りなところがあるんですけど
優秀な弁護士ですよ。
東京帝大の法科を
首席で卒業してるんですから。
えっ!
首席? 多江さん。
(多江)ごめんなさい。
先生は 今まで資産整理は?
いえ 今回が初めてです。
でも やらせて下さい。
僕が 引き受けます。
教えて下さい 東先生。
僕は どうして罪に問われなければ
いけなかったんでしょうか。
立花さんは 5人の学費1年分を
一括で支払ってらっしゃいましたよね。
これが 高額すぎて
見過ごすことはできないと
判断されたということです。
いや でも 奨学金ですよ。
今は まだ戦後の混乱期で
脱税が横行しています。
立花さんは
見せしめに されたのかも。
えっ…。
立花さんは 今や有名人です。
そういう人を捕まえて
重い刑罰を加えることで
脱税は絶対に許さないと。
今からでも それは おかしいと
訴えることはできないんですか。
アメリカの憲兵裁判所の判決に対して
不服申し立ては 一切できません。
じゃあ 僕は ずっと… ここに4年間も…。
でも 希望は捨てないで下さい!
お二人の力になれるよう
全力を尽くします。
だから 諦めないで下さい。
諦めません。
まずは 東京の子会社
たちばな栄養食品販売有限会社は
売却せざるをえないでしょう。
ダネイホンを全国に販売することは
もう できないと?
いえ! ダネイホンは 既に
日本中の人に恩恵を与えています。
そこから撤退するわけにはいきません。
ですから ダネイホンを販売する権利も
一緒に売るんです。
たちばな栄養食品は
ダネイホンを作ることのみに専念して
販売は ほかの会社に任せる。
大阪の たちばな栄養食品は
守ることができる。
分かりました。
東先生は たちばな栄養食品販売会社と
ダネイホンの販売権を
少しでも高く売ろうと
交渉を続けてくれました。
罰金7万円 全額支払いました。
豊村商会という会社が
買って下さいました。
萬平印のダネイホンという売り文句は
そのまま残ることに。
えっ?
世間には それが浸透しているからと。
みんな分かってるんです。
萬平さんは悪くないって。
社員への奨学金が
税金逃れの手段だったとは
誰も思っていません。
<東京支社を閉めた福子たちが
帰ってきました>
会社は
すっかり引き払ってきたんですか。
ああ。 そやけど 新しい会社が
ダネイホンを売ってくれる。
私たちは ここで
萬平印のダネイホンを作り続けるの。
社長が帰ってくるまで 頑張ろう。
(一同)はい!
<ところが そのやさき…>
☎
はい たちばな栄養食品でございます。
☎(増岡)東京財務局です。
立花社長が
脱税で有罪判決を受けましたね。
その脱税分に追徴課税させて頂きます。
追徴課税?
☎課税額は 10万円です。
10万円払えと おっしゃってるんですか。
10万円!?
どういうこと 福子!
これは どう考えても不当な課税だ。
支払う必要ありません。
でも 何もせずにいたら
泉大津の会社も工場も
差し押さえられてしまうかもしれません。
差し押さえ!?
たちばな栄養食品を 解散するんです。
ダネイホンの商標と製造方法を
どこかに売って 会社を畳むんですよ。
会社がなくなってしまえば
財務局は どうすることもできない。
つらい決断だということは
分かっています。
でも また新しいことを始めれば…。
簡単に言わないで下さい。
簡単に言うな!
社員たちは どうなるっていうんですか。
僕も協力して再就職先は探します。
先生は しょせん
ひと事だと思ってるんでしょ。
思ってません!
僕が戦争から帰ってきた時
妹は死にかけていました。
栄養失調です。
腹には子どももいるのに
もう駄目だと…。
妹を助けてくれたのは
ダネイホンです。
僕は あなたに感謝しています。
だから 僕だって悔しいです!
東先生…。
泉大津の会社も
ダネイホンという立派な商品も
この世から
なくなってしまうかもしれないんです。
お願いします 立花さん。
僕を信じて下さい。
分かりました。
あなたを信じます。
解散?
東京財務局に対抗する手段は
それしかありません。
ここは 私たちの家でもあるんです。
出ていかないといけないんですか。
そういうことになります。
萬平さんは 納得したんですか。
僕を信じて下さると。
そしたら 私も 東先生を信じます。
萬平さんと私は 一心同体ですから。
(加瀬沢)たちばな栄養食品から
連絡はありませんね。
やっぱり 追徴課税を納める気は
ないんですよ。
差し押さえの準備に入れ。
北浜食品さんが
12万円で買ってくれました。
このお金を元手に
新しいことを始めて下さい。
ここにいては 僕は何もできない。
僕は まだ諦めていません。
戦いは終わっていないと
思ってますから。
<社員たちは 3つの会社に分かれて
再就職することになりました>
みんな
バラバラになってしまうんでしょ。
そんなん嫌や。
今まで頑張ってきたからこそ
それを無駄にしてはいけません。
これからの人生に 生かして下さい。
はい。
はい。 はい。
そしたら 今日をもって
たちばな栄養食品は 解散します。
(泣き声)
<2日後 財務局がやって来ました>
何だ これは。
たちばな栄養食品は 解散しました。
会社は負債を抱えていましてね。
しかたなかったんです。
(加瀬沢)やりやがったな…!
会社を売ったということか。
その金は どこにある。
黙秘します。
(増岡)今のままじゃ 目標額に届かない。
(加瀬沢)GHQの押しつけですよ。
(ため息)
<会社と家を売り払った福子たちは
克子の家に居候することになりました>
また ここで
暮らすようになるやなんて。
それは こっちのセリフです。
もう東京に着いたかな
福子おばちゃん。
もう臨月か。
予定どおりやったら
来週末には産まれてきます。
名前を決めてあるんだ。
男の子だったら 太。
女の子やったら?
幸。
さち?
幸せの「幸」。
福子さんと合わせて 幸福ですね。
2人一緒になって
幸福になってもらいたい。
ありがとう 萬平さん。
<大阪に戻った福子は 三田村を訪ねます>
生きてさえいれば
希望はあるということや。
最後まで立花君を支えてあげられるのは
福ちゃんだけや。
(2人)12万!?
たちばな栄養食品の設備が3万円。
ダネイホンの製造方法が9万円。
合わせて12万。
福子さんの口座に
入れておきました。
このお金は 萬平さんが
新しい仕事を始めるための軍資金やから。
3年半も
待たないといけないのよ。
もっと早く出してくれるんでしょ
東先生。
まだ その方法を思いついてなくて。
東先生を追い詰めたら いけませんよ。
ねえ 福ちゃん。
ああ~…。
ああ~ 産まれる~!
(鈴)か… 克子!
お産婆さんを呼んで!
≪(赤ちゃんの泣き声)
<福子は
無事 女の子を出産。
幸と名付けられました>
女の子! ハハハハハハ!
産まれた時の幸ちゃんと福子さんです。
列車の中で描きました。
本当は かわいいんですよね。
えっ?
すごく かわいいです! かわいいです!
ああ… なら よかった。
よく頑張った 福子。
<そのころ 大阪では…>
財務局です。
立花萬平さんのご家族が
こちらに いらっしゃいますよね。
は?
(鈴)な… 何なんですか!
ちょっと! やめてって!
あなたの個人資産も
差し押さえの対象になります。
会社とダネイホンを売却した金が
そこに入ってるかもしれませんので。
ありました。 12万あります。
ちょっと待って下さい。
そのお金は 萬平さんの…。
我々は 進駐軍の命令に従って動いてます。
抗議しても 無駄ですよ。
何で…。
たちばな栄養食品販売の税金を
個人から取り立てるというのは
本来 ありえないことです。
どうすることもできないんですか。
国を 訴えましょう。
国を訴える?
訴えてきた?
源泉所得税徴収決定処分の取り消しが
東京地裁に請求されました。
<財務局の動きを不審に思った東が
調べてみると…>
大蔵省主税局から各税務署へ
通達が出ていたって。
奨学金は 非課税である。
奨学金は課税の対象にならないという
通達です。
そしたら 萬平さんが捕まったのは…。
完全な不当逮捕です。
そういう通達があるにもかかわらず
有罪判決を受けた。
そんな記事が出れば きっと
みんな味方についてくれますよ。
世間が味方してくれたら
萬平さんは あそこから出られるんですか。
向こうは
訴えを取り下げてもらいたがっている。
そのかわり 条件を出す。
萬平君を釈放しろ。
そういうことです。
(神部)それは ええ考えや。
(克子)いけるわ。
ただし 訴えを取り下げるということは
今回の税金を払うということです。
そんなの嫌よ。
萬平さんと10万円 どっちが大事なの!
それは…。
悩むとこやないでしょ!
(加瀬沢)ほかにも
同様の記事を出している新聞が…。
東京でも
徴税反対デモが起きているようです。
訴えを取り下げれば
進駐軍は 立花さんを釈放するそうです。
やりましたよ 立花さん!
それは この税金を払えば
負けを認めるということですよね。
えっ?
僕は 訴えを取り下げません。
立花さん!
あの金は 僕だけのものじゃない。
泉大津で塩を作り ダネイホンを作った
みんなの汗の結晶なんです。
ここで僕が折れたら
彼らに対して申し訳が立ちません。
(剛田)ばかじゃないのか あんた。
どうして 僕が ばかなんですか。
ここから出られるなら
俺は どんな条件でも のむよ。
僕は のみません。 自分は
何も悪いことはしてないんですから。
うんざりだよ
おんなじこと おんなじこと!
自分を捨てろ!
どうして
萬平さんは釈放されないんですか。
訴えを取り下げるのは嫌だと。
そういう人なんです あの人は。
えっ…。
☎そうやないと
ダネイホンなんて作れません。
私が ちゃんと話をしないと。
福子。
萬平さん。
幸か。
三田村さんが お亡くなりになりました。
私を励ましてくれたんです。
生きてさえいれば 希望はあるって。
萬平さんは発明家です。
みんなを幸せにする何かを
世の中に送り出すことが
あなたが一番
ほんまにやりたいことやないんですか。
これから先のことを考えて下さい。
源や幸が成長していく これからのことを。
幸。
あなたが付けてくれた名前ですよ。
私の名前と合わせて 幸福。
分かったよ 福子。
東先生 僕は訴えを取り下げます。
立花さん…。
福子と 子どもたちと 新しい人生を。
よかったね 幸。
萬平さん。
お父さんよ 源。
おお 源。 重くなったな 源。
萬平おじちゃん。
やっと家族みんなが そろった。
ああ。
本当よ もう。
ウフフフ。