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【芸能・社会】

海老蔵、十三代目 團十郎白猿襲名へ 長男・勸玄くんは八代目 新之助

2019年1月15日 紙面から

十三代目「市川團十郎」襲名披露の記者会見で撮影に応じる市川海老蔵(右)と八代目「市川新之助」を名乗る初舞台が決まった堀越勸玄くん=東京・歌舞伎座で(高嶋ちぐさ撮影)

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 市川海老蔵(41)が、歌舞伎の大名跡の市川團十郎を十三代目として襲名することが決まり14日、東京・銀座の歌舞伎座で発表会見を行った。「己の命の限り、懸命に歌舞伎に生きて参りたい」と並々ならない決意と市川團十郎白猿(はくえん)と名乗ることを表明。長男の堀越勸玄くん(5)は同時に八代目市川新之助を襲名する。披露興行は、来年5月から3カ月連続で歌舞伎座で行った後、同年11月の福岡・博多座など2021年にかけて全国を回る。

 父の十二代目團十郎さんが66歳で亡くなって6年。東京五輪・パラリンピックを迎える直前に7年ぶりに大名跡が復活する。

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 襲名会見が歌舞伎座の舞台上で行われたのは初めて。開演前の劇場に、マスコミ関係者約300人が詰め掛けた。

 緞帳(どんちょう)が上がると、紋付きはかま姿で頭を下げた海老蔵と勸玄くんが、姿を見せた。神妙な面持ちの海老蔵。「このたび私、十三代目市川團十郎白猿を襲名させていただく運びとあいなりましてございます。歌舞伎界において大変大きな名跡でございます。このうえは、己の命の限り、懸命に歌舞伎に生きて参りたいと思う所存でございます」と決意を述べた。

 続けて勸玄くんは、「このたび父も名乗っておりました市川新之助の名跡を八代目として相続致します。どうぞよろしくお願いします」とよどみなく元気にあいさつした。 

 海老蔵によると白猿は五代目團十郎の俳名で芸名にも使っていたという。父や祖父の芸にはまだまだ及ばないとの意味が込められていたそうで海老蔵自身も、さらに精進したいとの意気込みを名に表したという。

 「一番伝えたかった」という父と最愛の妻麻央さんには墓参りなどで報告。この日も、「こういう日が来たよ」と麻央さんに手を合わせて来た。

 新之助時代には浅草歌舞伎で「勧進帳」の弁慶を初めて演じるプレッシャーから本番前日に“家出”して、團十郎さんが自ら代役を務める覚悟を決めたその朝に家に戻ったことがある。海老蔵時代は、飲酒の上でのトラブルから暴行を受けて大けがを負う事件もあった。常に矢面に立って守ってくれた父の名を継ぐ。支えてくれた麻央さんへの思いも重なる。

 緊張する素振りを見せない勸玄くんは、遊んでいるときより稽古している方が「楽しい」と屈託がない。海老蔵によると、「(勸玄くんは)襲名する前から新之助だと思っているところがあって、本当は海老蔵を継ぎたかったみたいです」と笑わせた。

 歌舞伎座での3カ月連続の襲名披露興行のうち7月とほかの各劇場でも三部制となる。公演日数を短縮して、長女麗禾ちゃん(7)、勸玄くんと離れ離れになる時間が短くてすむようにとの海老蔵の意向が反映された異例の編成だ。

 会見を生中継したテレビ番組もあって、歌舞伎座にはチケットの売り出しなどについて早くも問い合わせの電話が相次いだ。新元号になって最初の襲名は、時代のさきがけとなる大興行になる。

◆海老蔵☆一問一答

 -海老蔵として平成を振り返ると

 海老蔵 いろんなことがあって大変だったと思います。ですけれど、やはり歌舞伎の家、團十郎という家に生まれて、ゆくゆくは團十郎になるということが、平成の時代に海老蔵であったことが非常に大きな影響を及ぼす新年号の團十郎になればよいなと思います。

 -歌舞伎界で團十郎とはどんな存在

 海老蔵 大変重い名跡だと理解しています。歌舞伎十八番、新歌舞伎十八番、荒事を中心にやっている家でございますけども、いろんなものを背負って、またその時代に責任を持って生きていかないといけないのかなと。父を子どもの時見てましたが、なってみないと分からない、計り知れない重みがあるんだと思うんですね。海老蔵の時代をもうちょっと楽しませていただいて、(襲名の)少し前から勉強しようかなと思います。

 -新團十郎のイメージは

 海老蔵 その時代に影響を与えた人物が團十郎家から出てますので、新しい元号になって襲名させていただくわけですから、そういった意味でも、時代に生きていることを多くの方に感じていただけるような團十郎像を描いていきたい。

 -襲名披露の演目は

 海老蔵 日本の伝統文化を継承するということが第一の目標での襲名披露興行ですので、基本的には古典を中心として参ります。歌舞伎十八番や新歌舞伎十八番、父、祖父が得意としていたものなど。気が早いかもしれませんが、襲名した後、新しいことに挑戦することを忘れてはいけないという気持ちもございます。

<市川團十郎家> 歌舞伎市川一門の宗家。初代は17世紀後半、「荒事」と呼ばれる豪快な演技手法を創始。江戸後期の七代目が初代以来の当たり役を「歌舞伎十八番」としてまとめて公表。明治期に活躍した九代目は「劇聖」と呼ばれた。代々、成田不動尊を参拝していたことから、屋号が「成田屋」になったとされる。

<白猿> 五代目團十郎が、晩年、鰕蔵(えびぞう)と改名した際に用いた俳名で、のちに芸名にもした。江戸時代、猿は人間にきわめてよく似ているが、毛が3本足りないので人間には及ばないと信じられていたのを踏まえて、祖父や父に及ばないとの意をこめた。

 ▽演劇評論家の上村以和於さん 「市川團十郎は歌舞伎を象徴する名前。元号が変わってから東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年という節目の年の襲名は、歌舞伎界が新時代を迎えるシンボリックな意味合いも含まれるだろう。海老蔵さんは人生でもさまざまなことがあり、この20年間、観客が舞台から受けるイメージも変わってきた。襲名を経て演技がどう変化し、飛躍していくか楽しみだ」

◆襲名披露興行予定

 2020年5月(日程未定)、6月1~25日、7月1~20日(三部制) 東京・歌舞伎座

 同11月15~29日(三部制) 福岡・博多座

 21年2月7~21日(三部制) 大阪・松竹座

 同3月 地方巡業

 同4月4~18日(三部制) 名古屋・御園座

 同9月 地方巡業

 同11月7~21日(三部制) 京都・南座

 ※勸玄くんは地方巡業には出演しない

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