日本原子力産業協会「原子力新年の集い」今井会長年頭挨拶
2019年1月11日
日時:2019年1月8日(火)11:30~
場所:東京プリンスホテル「鳳凰の間」
皆様、明けましておめでとうございます。新年にあたり原子力関係の所感を述べたいと思います。
福島の事故からこの3月で丸8年が経つところでございます。昨年は4基の再稼働がございました。現在9基が稼働しておりますけれども、8年間で9基ですから若干寂しい思いが致します。現在は東海第二発電所が40年以降の運転期間延長も含めて規制当局から認可を得たところですが、これは初めてのBWR(沸騰水型炉)で、是非ともこれを進めなければならないと思っております。政府は原子力規制委員会が認めたものについては全力を挙げて支援するとし、実行して頂いております。この東海第二発電所は、先ほど申しましたようにBWRで、実現までにはまだ時間がかかると思いますけれども、是非再稼働させなければならないというのが、私どもの願いでございます。
私どもがこの原子力発電について力を入れております理由は、世界的な気候変動問題でございます。昨年暮のCOP24において、パリ協定の細則について合意を得たようですが、中心になるのはCOP21のパリ協定でございます。ここで日本は2013年度に比べて2030年度までに温室効果ガスを26%減らすという約束をしております。2017年度までの4年間で8.2%減ったということですが、あと13年間で残りの18%を減らすというのは大変なことでございます。昨年、経済産業省がエネルギー基本計画を見直しましたが、原子力については20~22%という位置付けでございました。これを換算しますと、大体30基が動かなければなりません。しかし、その中の3分の1は2030年までに40年の稼働を迎えてしまうわけで、この延長問題も含めて30基ということでございます。大変な問題ですけれども、日本はCOP21で世界に約束しております。現在の自然災害が増えていることも、環境問題が影響しているのではないかと言われております。従いまして、これをやはり最優先に取り上げないといけません。この観点が日本には欠けていると思います。現在の世論では、原子力反対という空気が強いわけですけれども、環境問題をベースにして原子力の賛成者を増やしていかなければならないと思っているところでございます。
次に廃棄物の問題について触れたいと思いますが、これには六ヶ所再処理工場の稼働問題が絡みます。なぜ再処理が必要かということは明らかで、日本は自給率が低いためプルトニウムを取り出して、エネルギーに使う、そしてプルトニウムを取り出すことによって廃棄物の量が大幅に減少し、また放射性物質も大きく減ります。再処理はこのような点で貢献するので、是非進めなければなりません。政府の方針も同じようでございますが、原子力規制委員会の検討も進んでおりまして、日本原燃も2021年の上期には必ず稼働させると言っておりますので、これは是非稼働させて頂きたいと思います。
昨年、日米原子力協定の自動延長がございましたが、現在日本が保有している47~48トンのプルトニウム、六ヶ所再処理工場を稼働させることによって毎年発生する数トンのプルトニウム、これらをどうするかということが問題でございます。もちろん兵器には使わず、従って原子炉で使用する訳ですが、現在、プルサーマル以外には使用する所が無い訳でございます。プルサーマルを実施しているのは4基しかないので、大幅に増やしていかなければなりません。それから「もんじゅ」も停止致しましたので、MOX燃料を使った新しい炉を考えなければなりません。非常に問題でございますが、これを是非進めなければならないと思います。
高レベル放射性廃棄物の最終処分場の立地については、平成12年に原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立され、取り組んできたわけですけれども、なかなかうまくいっておりません。そこで、現役世代の問題は、現役世代で解決しなければならないということで、政府が前面に出て、NUMOと一緒になって進めているわけですが、日本全国で処分場の適地を選んで、これをどう進めていくかという、いま入り口に立っているところでございます。是非、今年、何がしかの進展があればと期待しているわけでございます。
原子力の中長期問題としては人材の確保・育成の問題がございます。再稼働の問題、あるいは新設の問題、それから新型炉開発の問題、そして廃炉処理の問題について、原子力に関する人材がそれぞれ必要ですが、不足しております。若い人に原子力の魅力を感じてもらうためには、やはり新しい炉、小型モジュール炉(SMR)が世界で話題になっておりますが、日本もこうしたものに取り組んで、若い人に原子力に対する関心を深めてもらえればと思っております。
昨年、原子力エネルギー協議会(ATENA)が設立されました。これまで原子炉を再稼働する時には、炉を持つ電力会社と原子力規制委員会が、一件一件安全審査をしてきましたけれども、それに対する知見、あるいはリソースが沢山あるわけでございます。それらを原子力業界が一体となって、つまり電力会社、メーカー、あるいは学者の先生方が一緒になって、安全に対する共通の認識を持って、安全性を高めていく。米国では既に実施されているわけですけれども、ATENAが原子力規制委員会と安全について話をすることになれば、再稼働のテンポも早まるのではないかと大いに期待しております。今年は、実効ある稼働にもっていくように、ご努力願えればと思っております。
最後になりますが、私ども原産協会といたしましては、会員の皆様、会場の皆様のご支援を得ながら、次の三点を進めてまいりたいと思います。
一番目は、地域・国民理解の促進でございます。やはり環境問題から原子力は必要だということ、それから原子力は原子力規制委員会において安全性を厳しく審査されているということで、原子力に対して国民の理解を深めていくよう努力をしていきたいと思っております。
二番目は、先ほど申しました人材の確保と育成でございます。
三番目は、様々な国際機関や諸外国と協力して原子力の発展に尽くしてまいりたいと思います。
この三点を進めることによって、原子力の再稼働、ならびに原子力産業の発展に尽くしていく覚悟でございますので、どうぞよろしくお願い致します。
以上をもちまして私の新年の挨拶と致します。ご清聴どうもありがとうございました。
以 上
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