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【社説】

成人の日に考える 「伝達人」になろう

 新成人、おめでとうございます。大人の境が曖昧(あいまい)になり、今さら何を祝うのかという声も。でも今日は本来、この国の持続を祈る日なのかもしれません。

 愛知県主催の「かがやけ☆あいちサスティナ研究所」は、その名の通り、ユニークな試みです。

 サスティナとはサステナビリティー=持続可能性。企業と現役大学生がお互い対等なパートナーとして、企業側が抱える持続可能性の課題に本気で取り組もうというのです。

 今回が四期生。今はやりのSDGs(国連持続可能な開発目標)のいわば先駆けです。

◆持続可能性が危うい

 温暖化の進行で、化石燃料の時代は終焉(しゅうえん)に向かい、経済の血脈といわれるエネルギーや投資の流れも大きく変わろうとしています。宇宙船地球号のエンジンが変わる時、新しい船を動かせるのは本当に古い水夫ではないのかもしれません。未来のことは未来を生きる人に聞けというのも、至極自然な筋道なのかもしれません。

 今回も、デンソーやトヨタ車体といった地元の看板企業のみならず、イケアのような外資系グローバル企業も名を連ね、県内の大学から応募した四十人の現役学生が、四人一チームで十社・団体に“配属”されました。

 六月に環境問題の基礎講座を受けたあと、八月、九月はパートナー企業・団体の現場を調査、十月は、各チームを担当する専門家のアドバイスを受けながら、プレゼンを練り上げる。そして十二月の成果発表会でプレゼンの審査を受けて、最優秀に選ばれたのは、チーム・スターバックス。ミッション(課題)は<私たちの社会貢献活動に共感し行動できる仲間を増やす企画を検討せよ>でした-。

 チーム・スタバは、愛知県内の別々の大学の二年生と三年生が二人ずつ。女子三人、男子が一人。抽象的なミッションに、当初はひどく戸惑いました。

◆拡散ではなく手渡しで

 プラスチックによる海洋汚染が国際問題になる中で、スタバはすでに、プラスチックストローの廃止を決めている。これをPRするという手もないではない。

 「でも今あるものを宣伝するだけなんて、つまんないよね」。この点で四人はぴったり一致した。

 「カフェって、みんなが集まる場所。双方向のコミュニケーション空間にできないか。PRには一方通行感がある-」

 そこで、唯一の男子が提案したのが「伝達人(でんたつびと)になろう!」というキーワード。ただ伝えるだけでなく、伝えることをその場で促す人になろうよ、と。

 方向性が決まったところで、そのあとは女子力の独壇場。「コミュニケーション カップス」なるものがひらめいて、試作品が出来上がる。

 カウンターで注文した客に、コーヒーカップの形のカードを二枚手渡す。そこには「地球温暖化が進行しています。あなたにできることはなんですか?」などと印刷されている。商品を受け取るまでに自分なりの答えを書いて、スタッフにじかに手渡してもらう。ネットで「拡散」するのではなく、その場で「じかに」が、みそだ。

 後日スタッフが感想や返事を手書きして店内に掲示する。もう一枚は「あなたも、どう」と友達へ。こうやって「伝達人」の仲間を増やす、ついでに客も-。

 スタバ側は「提案にあったカードを早期採用したい」と約束してくれました。

 実は、優勝チームの中の二人が新成人。名古屋市立大二年の清水夏波さんは「正直サスティナをやるまでは、働くことにあまりいいイメージを持っていなかった。夜遅くまで働いて、疲弊して帰宅してって。だけど、企業社会でがんばっていても、目をきらきらさせながら、私たち学生に夢を語ってくれる人がいる。私自身、大人になることに夢が持てるようになりました。こんな大人になりたいと-」。

◆大人の自覚伝えたい

 教えられるもの、与えられるもの、それらをただ受け止めよう、繰り返そうとするだけでなく、自ら、あるいは仲間と考え、見いだし、見つけたものを誰かに伝えてみたいと念じることができる人。いいね!の一言で片付けず、一緒にやろうと促すことができる人、恐らくそれが「伝達人」、伝達人こそ大人なのかもしれません。

 もう一人、名城大二年の仁瓶栞里さんは、地元の成人式で司会の大役を務めます。

 選挙も恐らく多くが経験済みの新成人仲間に、何を「伝達」したいですかと、聞いてみました。

 即座に「自覚」という答え。それも言葉ではなく雰囲気で、と。

 清水さんが働く大人の姿から多くを感じ取ったみたいに。

 

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