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【社説】

レーダー照射 対話重ね、矛を収めよ

 これ以上の応酬は、どちらの得にもならない。日本の哨戒機が韓国側から危険なレーダーの照射を受けた問題は、再発防止と信頼回復を優先し、防衛当局間で対話を重ねて解決を図るべきだ。

 P1哨戒機が、韓国の駆逐艦から火器管制レーダーを照射されたと日本側が発表したのは、昨年十二月二十一日のことだった。

 その後、防衛省と韓国国防省の間で、映像の公開を交えた反論が繰り返されている。

 照射を否定する韓国側に対し、日本側は関連する映像を公開した。慎重な防衛省に、安倍晋三首相が直接指示したという。

 日本側が英語版の映像も同時に公表したことを受け、韓国側は日本語を含め八カ国語による反論映像を作成し、対抗した。

 映像公開は、事実関係に自信があったからだろうが、相手を追い詰め、結果的に問題をこじらせたことも否定できまい。

 一方、韓国側の説明は、日本の発表を否定することに焦点が当てられており、納得しがたい。

 人道的な救助作業中に、軍用機が威圧的な低空接近をしたと主張するのなら、状況について、より丁寧な説明をすべきだ。

 双方とも、自国の正当性を国際社会に向けてアピールすることに力を入れているようにも見える。

 この問題を契機に、政治家を含め、相手国の謝罪や関係者の処分を求めるなど感情的な議論が起きているのは、残念でならない。

 火器レーダーは、武器使用直前に照射するものであり、安易に見過ごすべきではない。

 ただ、軍事機密が絡み、情報は限定的で、対立を激化させている。また米国の仲裁がなく、双方が歩み寄りのきっかけをつかめないでいる、との見方もある。

 日本と韓国は、米国を軸にして協力関係にある。八日には、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が訪中したが、北朝鮮の非核化には日韓の緊密な連携が欠かせない。

 日本側も、懸案の拉致問題の解決には、北朝鮮首脳とパイプを持つ韓国からの支援が必要だ。

 それでなくても、日韓間には課題が多く、難しい関係になっている。韓国人元徴用工訴訟判決を巡っては、被告の日本企業の資産が差し押さえられる可能性も出ている。これ以上、対立を深刻化させるべきではない。

 日韓の防衛当局は、それぞれ対話を行うと表明している。世論に過度に流されず、テーブルを挟んで冷静に向き合ってほしい。

 

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