状況確認1
俺の初期ポイントは『家』らしい。
何となくそう感じただけだが、光のよく差し込む南向きの窓から入ってくる光が照らす部屋の中は、生活感溢れる質素な内装で、いかにも村人Aの家という感じだ。
白い壁紙のないむき出しの木の壁。
飾りはなく、絵や花瓶といった装飾品もない。あるのは、俺がいるベッド、ベッド横の明り取りの窓、同じ並びの部屋の角に化粧台、ベッドの右手側、部屋のドアの横にタンスらしき大きな家具。
見えるだけでこれだけらしい。
「初期装備…は家具?」
RPGとやらでは、なんでも簡単な盾と剣が与えられ、極弱い魔物を倒してレベルを上げ、初期装備にありつける、といった流れらしいことは聞いたことがあった。
だが自分の手を見下ろしても、少年らしいしなやかな手のひらを拝めるだけで、盾のたの字もない。
手を見下ろして眉をひそめていると、部屋のドアが開き、第一家人と対面した。
「おはようレイヴン、寝坊助ね」
飴色の長い髪の毛を後ろで束ね、頭部を頭巾で覆っている。山吹色の長いスカートに腰巻エプロンをした、いわゆるエプロンドレス姿の綺麗な女性だった。
「レイヴン、顔を洗ってらっしゃい」
黙りこくっている俺に不審気な素振りは見せず、可愛らしい笑顔でそれだけ言って出ていった。
まじ。
あんな可愛い子と同棲なのか。
まあでも、プログラミングされている言葉を機械的に再生しているだけと考えると興ざめた。
だから俺はゲームはあまりハマったことがない。
取り敢えず、このゲームの趣旨を確認するためにも行動を起こさねばとベッドを下りた。
絨毯も何も無い、直の床に裸足で立ってみても、床の温度は感じられなかった。
ゲームを過大評価しすぎるのもつまらない。
基本できないことを想定して何事も臨もうと決めた。