プログラミング教育を機に学校IT化を

社説
2019/1/13付
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2020年度から小学校でプログラミング教育が必修になるのをにらみ、IT(情報技術)を活用した教材が相次ぎ登場している。一方で、多くの学校ではいまだに無線LANすら使えない。学校のIT化を急ぎ、理数系の素養をもつ若い人材の育成に役立てたい。

教育に最新のITを利用する「エドテック」が世界的に広がっている。人工知能(AI)や仮想現実(VR)などを使って子どもの学習意欲を引き出し、効率よく学べるようになってきた。

なかでも注目されるのがAIを活用したタブレット教材だ。日本でもスタートアップのアタマプラス(東京・中央)やコンパス(同・品川)が数学や英語などの教材を開発し、学習塾のほか公立校でも導入例が出始めた。

生徒は画面上で学び、テストで間違えるとAIがつまずきの原因を特定する。理解が曖昧な点まで遡って学べるので、知識が確実に身につく。導入した学校では授業時間の短縮や生徒の成績向上などで成果を上げており、もっと利用を広げたい。

小学校で始まるプログラミング教育は、論理的な思考能力を養うのが狙いだ。幼いころからITやAIなどに触れ、科学や技術、数学などの基礎学力を身につけさせる教育は、多くの先進国や新興国が力を入れている。

だが、日本の学校にはIT教材の導入を阻む壁がある。タブレットやパソコンをインターネットに接続できないことだ。文部科学省の18年3月の調査によれば、日本の公立小中高校の普通教室で無線LANが使えるのは35%、パソコンなどと連動した電子黒板の整備率も27%にとどまっている。

情報機器をクラウドサービスに接続することを条例で禁じている自治体もある。まず自治体が意識を変え、学校の通信環境の整備を急ぐべきだ。文科省も機器の導入などを支援してもよい。

タブレット教材などを学校が用意するのでなく、生徒が家庭で使っている端末を持ち込む方法もある。東京都などが試行的に始めており、ウイルス対策など最小限の技術的対策を施せば、もっと活用できるはずだ。

教師のIT知識を高めることも欠かせない。エドテックを上手に使えば、教師が授業にかける手間や負担を減らせる。そこで生まれた時間を教師が研修に使えるような好循環をつくりたい。

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