超低金利下の運用難を背景に多くの生命保険会社が外貨建て生命保険の取り扱いに力を入れている。提携先の銀行経由の販売が中心だ。円建てより高い運用利回りが魅力となり人気を集めている。
利回りをあらかじめ約束する「定額」が売れ筋だが、あくまで外貨建てなので相場が円高に振れれば、円換算した受取額は目減りする。運用利回りの表示方法にも統一ルールがない。生保と銀行は、収益を優先して売れ行きを競うのではなく、商品が抱えるリスクの説明を徹底するなど外貨保険の「見える化」に取り組むべきだ。
2017年度の外貨建て終身保険や年金保険の販売件数は前年比3割増の62万件に膨らんだ。払込保険料は初めて3兆円を超え、今年度も件数・保険料ともに2割増のペースで増えている。
件数の急増に伴い、契約者からの苦情も目立ってきた。米ドルや豪ドル建てで受け取った返戻金を、円に戻す際の元本割れリスクの説明などが不十分な例が多い。
さらに問題なのは運用利回りの見せ方だ。手数料や管理費を差し引いたあとの積立金の利回りを強調した説明資料が少なくない。これだと利回りが実態よりも高く映り、各社の商品を比べたり購入したりする際に誤解を招く。販売手数料の水準を含め、早急な情報開示ルールの整備が必要だ。
銀行を通じた資産運用型保険の販売は02年に解禁した。銀行の都合などで販売件数が大きく変動してきたのがこれまでの経緯だ。
売りやすい商品がほしい、という銀行の求めに応じて08年のリーマン危機前に生保が開発、投入した「元本確保型変額年金」という特殊な商品が典型例だ。直後の金融混乱で生保が損失を被り、経営が行き詰まるケースもあった。
最近の外貨保険ブームでは契約者に為替リスクを転嫁するので生保が損失を被る可能性は小さい。分散投資の観点から外貨運用の有効性は否定できない。だからこそ、契約者の利益に寄り添う情報提供は生保と銀行の連帯責任だ。
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