農家と農業に貢献する農協に変わろう

社説
2019/1/10付
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全国農業協同組合中央会(JA全中)が9月末までに一般社団法人に移行するなど、農協の改革はことし節目を迎える。2016年に施行された改正農協法が「農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならない」と明記した存在目的に沿い、農家と農業に貢献する組織に変わってもらいたい。

全中を農協法に基づく特別な組織でなくするのは、これまでのトップダウンのやり方を改め、権限を縮小して組合員による自主的な組織に戻すためだ。

全中が担っていた地域農協に対する監査は、一定の規模以上の農協を対象に19年度から公認会計士や監査法人による外部監査へと移行する。農協の経営は透明性や信頼性が高いものでなければならず、当然の改革といえる。

農協の理事の過半数を自治体が認めた将来性の高い農家や販売や経営のプロで構成するルールも、19年度から適用される。農家支援の目的を徹底する狙いだ。

農林水産省の調査では、農産物の販売で改善を始めたと答えた農協は18年時点で93%に達した。ただ、農家に聞くとその答えは38%にとどまる。農家が使う肥料や農薬、農機などの購買事業も、改革できていると感じる農家は42%と農協の自己評価の半分以下だ。

農協が自分では改革したつもりでも、まだ農家が実感できるものになっていない。

農協が農家に対し事業の利用を強制することは許されない。それぞれの農協がマーケティング力や資材の調達力を強め、農家に選ばれる農協になるべきだ。

宮崎県の西都農協は農薬や肥料の調達に競争入札などの手法を導入し、価格引き下げを実現した。系統と呼ばれる農協の上部組織を含め、もっとも安い値段を提示したところから調達する。

こうした取り組みを全国に広げ、資材購買や農産物販売を束ねる全国農協連合会(JA全農)の改革を後押ししてもらいたい。

農協が担う信用(金融)事業を上部組織である農林中央金庫や都道府県単位の連合会(信連)に譲渡し、地域農協はその窓口となることも、改革は促している。しかし18年4月末時点で実際に譲渡した農協は3つにすぎない。

運用収益の悪化が農協の経営を直撃するリスクを軽減し、農産物販売などの中核事業を強化するため、信用事業を前向きに見直していかなくてはならない。

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