ルパンとは非常に難しいキャラクターである。アニメ評論家の藤津亮太は、ルパンは「ドラマを担うような複雑な内面を持っていない」と指摘している(「藤津亮太のアニメの門V」)。スリルや刺激的なことのために盗みを働く大泥棒。あるいは事件に巻き込まれたり、誰かを助けたりするために活躍する稀代のアクションスター。しかし、ルパン自身が成長したり、大きく変化したりすることはない。だからドラマが生まれにくいのだ。
もう一つ、ルパンがアクションを起こす動機になるのが「プライド」である。たとえば、『カリオストロの城』では偽札をつかまされたルパンがカリオストロ公国に乗り込むことを決意するが、これは偽札の原盤を奪いに行くためではなく、偽札をつかまされたことでプライドを傷つけられたことがルパンの動機になっているのだ(若い頃、カリオストロ公国に忍び込んで返り討ちに遭ったことも関係している)。
以前、『BSアニメ夜話』という番組で、評論家の唐沢俊一が「『カリオストロの城』はストーリーに整合性がない」と述べていた。冒頭で盛大に偽札を捨てたのに、ルパンにとって何の価値もないはずの偽札をカリオストロ公国に奪いに行くのはおかしい、という論旨だったが、ここにはルパンがプライドで動くという視点が抜け落ちている。
『ルパンVS複製人間』に話を戻そう。専門誌『アニメスタイル』編集長の小黒祐一郎は、不二子をさらったマモーの行動が「ルパンの自信を打ち砕く」ためのものだと指摘している(WEBアニメスタイル「アニメ様の七転八倒」)。...続きを読む