2019.01.10放送
そもそも超音波を使ったアルツハイマー治療ってどのようなもの?
血管を新たに作る働きを持った「超音波」
今回お話を伺った研究者「東北大学大学院 医学系研究科」下川宏明教授、進藤智彦助教
※紹介した「アルツハイマー型認知症の超音波治療」はまだ治験の段階であり、実用化はされていません。
※紹介した「アルツハイマー型認知症の超音波治療」はまだ治験の段階であり、実用化はされていません。
近年は“死因”としても注目されている「アルツハイマー型認知症」。いまだ決定的な治療法は見つかっておらず、フランスでは昨年「既存の治療薬4種が保険の適用対象外になった」といいます。それはつまり「保険適用にするほどの効果が認められない」と国が判断したことを意味します。そんな中、「東北大学が“薬を使わないアルツハイマー治療”を研究している」との話を聞き、玉川徹さんは取材をさせていただきました。
お話を伺った「東北大学大学院 医学系研究科」の下川宏明(しもかわ・ひろあき)教授、進藤智彦(しんどう・ともひこ)助教らが研究されているのは、「超音波治療法」というもの。下川教授の本来の専門領域は「循環器内科」で、心臓治療を行う中で20年ほど前から「音波を使った治療法」に注目しはじめたのだそうです。音波にも色々な種類が存在するのですが、そのひとつである「低出力の衝撃波」には「血管を新たに作る」という効果があるのだとか。下川教授はそこに着目し、「狭心症」の治療への応用を研究していたそうです。
その後、「更に安全な治療法」として注目するようになったのが「超音波」でした。低出力の特殊な超音波にも、低出力衝撃波と同じ「血管を新たに作る効果」があることが、動物実験によって証明されているといいます。
お話を伺った「東北大学大学院 医学系研究科」の下川宏明(しもかわ・ひろあき)教授、進藤智彦(しんどう・ともひこ)助教らが研究されているのは、「超音波治療法」というもの。下川教授の本来の専門領域は「循環器内科」で、心臓治療を行う中で20年ほど前から「音波を使った治療法」に注目しはじめたのだそうです。音波にも色々な種類が存在するのですが、そのひとつである「低出力の衝撃波」には「血管を新たに作る」という効果があるのだとか。下川教授はそこに着目し、「狭心症」の治療への応用を研究していたそうです。
その後、「更に安全な治療法」として注目するようになったのが「超音波」でした。低出力の特殊な超音波にも、低出力衝撃波と同じ「血管を新たに作る効果」があることが、動物実験によって証明されているといいます。
「アミロイドβが溜まりやすい脳内環境」を改善する超音波治療
最近のいくつかの論文で「認知症は脳の血流不全が原因で起こっているらしい」と知った下川教授は、「ならば自分たちの超音波治療法が有効なのではないか?」と考え、2013年からマウスを使っての研究を始めたのだそうです。その結果は「予想を超えて劇的に効いた」といいます。アルツハイマー型認知症との関連性が高いとされている「アミロイドβ」という脳内のタンパク質が、超音波を当てると、記憶を司る部位である「海馬」ではほとんど無くなり、「認知機能の低下が抑制された」のだそうです。
動物実験では、「アルツハイマー型認知症の進行を『完全に止められる』かは分からないが、『遅らせる』ことは可能」と証明された超音波治療法。下川教授によると、「特殊な超音波を当てることで脳内の血流が良くなり、血管内の細胞がNO(一酸化窒素)を多く出すようになる。NOが増加すると新しい血管が作られるようになり、血流が増加して、脳内の炎症が抑えられる。それによって、アミロイドβを作る酵素の発生が抑えられ、アミロイドβの蓄積も大きく抑制される」というのが、そのメカニズムであるといいます。
問題の根本は「アミロイドβそのもの」ではなく、「アミロイドβが溜まりやすい脳内環境」であると指摘する下川教授は、「アミロイドβが溜まってしまうのは“脳の循環不全”のせいなので、自分たちはその原因となる“循環障害”を超音波で治療する。すると、その結果として『アミロイドβの蓄積が減る』のです」とおっしゃいます。
マウスに対しては高い治癒効果が認められた超音波治療ですが、人体への効果や実用化の方はどうなっているのでしょう? 下川教授によれば「安全性を確かめる治験はもう終わっている」といいます。
今後は40名の患者さんを20名ずつに分け、一方には実治療(本当の治療)、もう一方にはプラセボ治療(偽の治療)を行って、超音波の有効性を確認するそうです。この治験は1年半(3カ月おきに6回)にわたって行われるといいます。その後、更に大人数による治験を行うかどうかは国と相談しながら決めるそうですが、実用化の時期を、下川教授は「個人的な期待を込めて言うなら3~4年後」とおっしゃいました。
今回の取材を通じて玉川さんは「改善はできなくとも、進行を止める治療法ができれば福音」という感想を抱いたそうです。
動物実験では、「アルツハイマー型認知症の進行を『完全に止められる』かは分からないが、『遅らせる』ことは可能」と証明された超音波治療法。下川教授によると、「特殊な超音波を当てることで脳内の血流が良くなり、血管内の細胞がNO(一酸化窒素)を多く出すようになる。NOが増加すると新しい血管が作られるようになり、血流が増加して、脳内の炎症が抑えられる。それによって、アミロイドβを作る酵素の発生が抑えられ、アミロイドβの蓄積も大きく抑制される」というのが、そのメカニズムであるといいます。
問題の根本は「アミロイドβそのもの」ではなく、「アミロイドβが溜まりやすい脳内環境」であると指摘する下川教授は、「アミロイドβが溜まってしまうのは“脳の循環不全”のせいなので、自分たちはその原因となる“循環障害”を超音波で治療する。すると、その結果として『アミロイドβの蓄積が減る』のです」とおっしゃいます。
マウスに対しては高い治癒効果が認められた超音波治療ですが、人体への効果や実用化の方はどうなっているのでしょう? 下川教授によれば「安全性を確かめる治験はもう終わっている」といいます。
今後は40名の患者さんを20名ずつに分け、一方には実治療(本当の治療)、もう一方にはプラセボ治療(偽の治療)を行って、超音波の有効性を確認するそうです。この治験は1年半(3カ月おきに6回)にわたって行われるといいます。その後、更に大人数による治験を行うかどうかは国と相談しながら決めるそうですが、実用化の時期を、下川教授は「個人的な期待を込めて言うなら3~4年後」とおっしゃいました。
今回の取材を通じて玉川さんは「改善はできなくとも、進行を止める治療法ができれば福音」という感想を抱いたそうです。