［大学ラグビー］明大、北島初代監督に届けた「前へ」の22大会ぶりＶ

　明大、２２大会ぶりの日本一！！　ラグビーの第５５回全国大学選手権は１２日、東京・秩父宮ラグビー場で平成最後の決勝を行い、明大（関東対抗戦３位、４位扱い）が２２－１７で天理大（関西１位）に勝ち、１９９６年度以来２２大会ぶり１３度目の優勝を飾った。明大は９６年５月に９５歳で亡くなった名将、北島忠治元監督の遺訓「前へ」を守備や勝負どころのスクラムで実践し、パワフルな天理大の突進を封じた。初優勝を狙った天理大は終盤に追い上げたが、届かなかった。

　紫紺の１５人が両手を突き上げた。跳び上がって抱き合った。２万人を飲み込んだスタンドが揺れる。かつて、頂点をほしいままにした明大が、２２年という長い眠りを経て、大学ラグビーの王座に帰ってきた。

　勝負はスクラムだ。試合開始直後のファーストスクラムは天理大が押して反則を奪い、先制トライをあげた。明大は７分に山崎、２２分に高橋の両ＷＴＢがトライをあげて１２－５と逆転するが、スクラムは天理大が優勢のまま時間が過ぎた。「スクラムはメイジの看板。僕らも譲れない」。副将のフランカー井上は振り返った。スクラムは明大ラグビーの歴史を貫く背骨だ。相手が強かろうが何だろうが、愚直に前に出る－。９５歳で亡くなるまで指揮を執り続けた北島忠治初代監督の遺訓「前へ」の精神は、２１世紀の学生たちにも受け継がれていた。

　その思いが後半、爆発する。１６分、天理大陣２２メートル線付近で組まれたスクラムで、明大は突き上げてくる相手の押しを受け止め、逆に押し返して相手反則を勝ち取りＦＢ山沢がＰＧ。続く２１分には、ＦＷが相手ゴール前で連続攻撃をかけ、フッカー武井がトライ。「アタックでもディフェンスでも『前へ』という意識は全員にしみついています」と胸を張った。

　試合前のロッカー。田中澄憲監督は「メンバー外の部員に、勝ち負けじゃなく誇りに思ってもらえる試合をしよう」と選手に語りかけた。試合が始まると、高校日本代表経験者が居並ぶ才能集団は、結果を恐れずチャレンジャーとして愚直に体を張り続け、足を動かした。５点差に迫られて迎えた終了直前も、逆転を狙う相手のスクラムを押してコントロールを狂わせ落球させた。そしてノーサイドの笛。

　「２２年ぶりという実感はないです。優勝した実感も、まだない」。福田主将は笑った。現在の４年生は、前回の優勝のシーズンに生まれた。強いメイジを知らない世代が、無心で「前へ」進み続けたその先に、再びの頂点は待っていた。　（大友信彦）

　打倒天理のためのスペシャルプレーで、明大がグイッと流れを引き寄せた。その名も「タンクＸ」。５－５の前半２２分、敵陣２２メートル付近のラインアウト。モールから外へ展開すると見せ掛けたＳＨ福田から「Ｘ」の形で走り込んだＷＴＢ高橋へとパスが渡り、ゲインラインを鮮やかに突破する。背番号１１は全身に大歓声を浴びながら、勝ち越しトライを挙げた。

　「気持ちよかった。準決勝（２日）の後に考えた、天理に向けたスペシャルプレー。モールを押す振りをして、ＦＷの後ろに隠れた」。非公開練習で積み重ねてきた秘策がここぞで決まり笑みが絶えなかった。

　悔し涙を流した前回大会の準優勝から、学生ラストマッチでつかんだ日本一。試合後、メンバー外だった同期も一緒に喜びを分かち合ったときには、涙が込み上げてきた。「（明大での）４年間は、宝物です」。神戸製鋼でプレーした晃仁（こうじ）さんを父に持つ高橋は卒業後、トヨタ自動車へ進み、今度はトップリーグの頂点を目指す。　（関陽一郎）

　７大会ぶり２度目の決勝の天理大は、またも涙をのんだ。前後半８０分終了のホーンのあとも続いたラストプレー。敵陣２２メートル付近でＣＴＢフィフィアが明大ＣＴＢ森のタックルを浴び、ボールを落として、ノーサイドの笛…。前半３分に先制トライを挙げたフッカー島根主将は「（先制した後）明大ボールになった時に、いつもの守備ができなかった。下級生が多く残るので、また日本一を目指してやってくれると思う」と、後輩に思いを託した。

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