サンゴは移植で守られ、汚濁防止対策もぬかりない-。辺野古新基地建設のための埋め立て工事を巡り、政府側の事実に背く説明が目に余る。辺野古に基地を造る妥当性がさらに大きく揺らいでいる。
「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移している」
安倍晋三首相は六日のNHK番組でこう述べた。誰もが埋め立ての前に、辺野古の海のサンゴを全面的に救っていると思うだろう。
しかし、防衛省沖縄防衛局が移植したのは現在の土砂投入区域外にある希少サンゴ。埋め立て海域全体で七万四千群体に上る移植対象のうち、九群体のみだ。
移植は昨夏に行われ、その後沖縄県は辺野古の埋め立て承認を撤回。移植のための採捕も許可しておらず作業は全く進んでいない。
現在の埋め立て区域には移植対象はないというものの、護岸外の直近には希少サンゴが残る。これに関しては移植はせず、土砂がかからない措置をしているのみだ。
そもそも移植対象は、希少種のほかは大きさや群生度合いで防衛局が選んだ。また移植をすればサンゴが守られるわけでもない。
繊細な環境下で育つサンゴは水流や光の強さが少し変わるだけで死ぬとされる。移植対象や移植先の選定が不適切であるなど、環境保全措置の不備が県の承認撤回の大きな理由にもなっている。
さらに、埋め立て土砂の質の「偽装」問題も浮上した。埋め立て申請時、防衛局は県に県産の黒石を砕いた岩や石を使用し、細かな砂状の成分は10%前後に抑えるとしていた。実際には40%以下で業者発注し、赤土を含む土砂が投入された疑いがある。
護岸で囲っても細かな砂は外に流出しやすく、海を濁らせる原因になる。先月の投入開始時から土砂が赤茶色なのを地元の土木技術者らが指摘。野党も防衛省に聞き取り調査をしたが、省側は「調達現場に防衛局職員が立ち会い基準を保っている」と強弁を続けた。
環境保護へのずさんな認識、約束破りには猛省を促したい。
辺野古の埋め立て中止を求める米政権への請願サイトには先月来、二十万筆余の電子署名が寄せられた。辺野古の海は「沖縄の生態系の重要な一部」との訴えが共感を呼んだ。
新たな怒りは県民のみならず、世界に広がろう。それでなくとも民意を押しのけて進められる工事だ。うそやごまかしがあっては、もはや何の支持も得られまい。
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