a katz / shutterstock,com
2019.1.10 Thu
<移民と難民のメカニズム>
米国境を目指す中米移民の窮状、ほか
アメリカ国境を目指す中央アメリカの人々はなぜ故郷を後にし、ワシントンはこれにどのように対処しているのか。ワシントンは、国境地帯の警備を強化し、近隣諸国に移民抑止に向けて協力を依頼し、現地経済支援のための援助を提供することで、その対応策としてきた。しかし、人々が故郷を後にせざるを得ない状況にワシントンがより真剣に対処しない限り、中南米移民は北を目指し続けることになる。(リュータート)
チャベスとマドゥロが、かつては繁栄していたこの国で壊滅的政策をとった結果、かつて移住してきた外国人のほとんどは、その子孫たちとともにすでに国外へ流出している。問題は彼らが近隣諸国で必ずしも歓迎されていないことだ。彼らを難民として認識すれば、そこにあるのがもはや無視できない現実であることが理解できるはずだ。(バハール)
・・・問題は、労働者不足が深刻化しているために、外国人労働者割当を増やさざるを得ないが、彼らに対する法的制約が見直されていないことだ。この状況が続けば、外国人労働者に社会や法律へのアクセスを閉ざした湾岸諸国のような状況に陥り、世界のリベラルな民主国家の一つとしての日本の名声が脅かされることになる。(ティアン)
米国境を目指す中米移民の窮状
―― 貧困と犯罪を逃れて北を目指す人々
2019年1月号 ステファニー・リュータート テキサス大学オースチン校 ロバート・ストラウスセンター ディレクター
アメリカ国境を目指す中央アメリカの人々はなぜ故郷を後にし、ワシントンはこれにどのように対処しているのか。1980年代には内戦を逃れる難民が数多く押し寄せ、その後も、経済的機会を求めて、犯罪組織の社会的暴力から逃れるために北を目指す人の流れは続いている。最近ではアメリカへの入国を求める家族と子供が増えているのが特徴的だ。ワシントンは、国境地帯の警備を強化し、近隣諸国に移民抑止に向けて協力を依頼し、現地経済支援のための援助を提供することで、その対応策としてきた。しかし、これらは結果を出せていない。人々が故郷を後にせざるを得ない状況にワシントンがより真剣に対処しない限り、中南米移民は北を目指し、アメリカでの未来を思い描き続けることになる。
ベネズエラ難民危機とラテンアメリカ
―― 移民ではなく、難民と呼ぶべき理由
2019年1月号 ダニー・バハール ブルッキングス研究所フェロー
歴史的にベネズエラは移民に開放的な国だった。戦後にこの国にやってきた多くはイタリア、スペイン、ポルトガルからの移民だったが、この他にも、ドイツや東欧からの移民、さらには中東からの移民もいた。1970年代半ばにベネズエラ経済がブームに沸き返ると、近隣諸国からの移民も押し寄せた。だが、皮肉にも、チャベスとマドゥロが、かつては繁栄していたこの国で壊滅的政策をとった結果、かつて移住してきた外国人のほとんどは、その子孫たちとともにすでに国外へ流出している。問題は彼らが近隣諸国で必ずしも歓迎されていないことだ。他の難民たちと同様に、ベネズエラから逃れてきた人々が、命を守るために国を逃れてきた難民たちであることを忘れてはいけない。彼らを難民として認識すれば、そこにあるのがもはや無視できない現実であることが理解できるはずだ。
外国人労働者政策と日本の信頼性
―― 労働力確保と移民国家の間
2018年9月号 ユンチェン・ティアン ジョンズ・ホプキンス大学 博士候補生(政治学)、 エリン・アイラン・チャング ジョンズ・ホプキンス大学 准教授(東アジア政治)
人口の高齢化ゆえに日本社会は外国人労働力を必要としている。いまや有効求人倍率は1・6と非常に高く、建設、鉱業、介護、外食、サービス、小売などの部門における人材が特に不足している。こうして、政府は閉鎖的な移民政策を見直すことなく、外国人労働力受け入れのために二つの法的な抜け穴を作った。第1の抜け穴は日系人向けの「定住者」在留資格、もう一つは技能実習制度(TITP)だった。問題は、労働者不足が深刻化しているために、外国人労働者割当を増やさざるを得ないが、彼らに対する法的制約が見直されていないことだ。この状況が続けば、外国人労働者に社会や法律へのアクセスを閉ざした湾岸諸国のような状況に陥り、世界のリベラルな民主国家の一つとしての日本の名声が脅かされることになる。
関連論文のご紹介
-
移民を受け入れるべきか規制すべきか
―― 移民と経済と財政「移民を無制限に受け入れれば、ある時点で受入国と移民出身国の双方にマイナスの影響が出るようになる」と考える研究者もいる。一方、労働市場を移民に開放すると、移民だけでなく受入国の住民の生活水準も改善すると考える研究者もいる。問題は、移民論争がとかく感情的で十分な裏付けが示されないまま、過熱してしまうことだ。
-
移民労働力と経済成長を考える
――移民労働者は脅威か、恩恵かグローバル世界の新たな潮流のなかでも特に重要なのが、世界の労働市場の統合が進んでいることだ。移民の流入がアメリカ経済にとって有益であることがはっきりしている以上、移民を締め出すのではなく、移民流入をより効果的に管理する制度改革を模索すべきである。
-
誰が本当のアメリカ人なのか
―― 移民と人種差別と政治的妄想国家アイデンティティをめぐる対立にこの国の妄想の歴史が重なり合ったために、アメリカはおかしくなってしまった。アメリカのアイデンティティが変わり続けている以上、政治が近い将来に冷静さを取り戻せるとは考えにくい。
-
いかに先進国は知識労働者を移民として魅了できるか
―― ドイツのジレンマ先進国は高度な知識とスキルを持つ外国の人材を必要としているが、各国の市民は外国人が持ち込む異質な文化を受け止められるかどうかを確信できずにいる。ドイツが他の国々よりも早く問題に気づいて対策を検討していることは事実だし、この点を、外国の有能な人材も考慮することになるだろう。
-
ヨルダンの新しい難民対策モデル
―― 人道主義モデルから経済開発モデルへの転換を難民対策の新モデルとは、避難民たちがいつか母国に戻る日がやってくるまで、ホスト国で学び、働き、豊かに暮らせる、持続可能で計測可能な政策のことだ。難民対策を純粋な人道主義的アプローチから、雇用と教育を中心とする経済開発型アプローチへ転換していく必要がある。
-
世界を変える四つの人口メガトレンズ
―― 先進国の衰退と途上国の台頭をどう管理するか21世紀の新しい現実は、世界のどの地域で人口が減少し、どこで増大するのか、どのような国で高齢者が多くなり、どのような国で若者が多くなるか、世界の人口動態の変化が国境を越えた人の移動にどのような影響を与えるかで左右される。こうした21世紀の新しい現実に備えたグローバル構造の構築を今から始めるべきだ。
-
依存人口比率と経済成長
―― 流れは中国からインド、アフリカへ問題は、先進国だけでなく、これまでグローバル経済を牽引してきた中国における人口動態上の追い風が、逆風へと変わりつつあることだ。人口動態トレンドからみれば、今後におけるグローバル経済のエンジンの役目を果たすのはインド、そしてサハラ砂漠以南のアフリカになるだろう。