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【首都スポ】

[女子サッカー]なでしこジャパン期待のCB国武愛美 ノジマステラ神奈川相模原

2019年1月9日 紙面から

ノジマステラ神奈川相模原のDF国武愛美

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 2018年夏にサッカー女子日本代表、なでしこジャパンに初選出された期待の若手センターバックがいる。同年8月のジャカルタ・アジア大会で2大会ぶり2度目の優勝を飾ったメンバーの1人、国武愛美(21)=ノジマステラ神奈川相模原=だ。熊本出身で、中学時代にFWからDFに転向。15歳から兵庫、埼玉、神奈川で競技生活を送ってきた。今年6~7月の女子W杯フランス大会、20年東京五輪出場を視野に入れる、ロングヘアのキュートな21歳の本音に迫った。 (フリージャーナリスト・辛仁夏)

 昨年7月の米国遠征で、なでしこジャパン初選出を聞いたとき、国武は戸惑った。「選ばれた時は正直、『えっ!?』『自分?』という感じでした」。そのときを思い出し、くすっと苦笑いする。それでも、遠征中のブラジル戦でデビューし、少しの自信をつかんだ。続く8月のアジア大会でも代表入り。日本は中国を下して2大会ぶり2度目の優勝を飾った。

 「アジア大会は実際に試合に出たのは1試合半くらい。ついていくのに必死でした。だから今後は、もっとチームに貢献できるような選手になって、なでしこジャパンでやりたいなと思うようになっています」。代表入り後は自覚が出てきて、筋力トレーニングにも精を出すようになった。

 小1でサッカーを始めたきっかけは、5歳上の兄と3歳上の姉がやっていたからだ。幼稚園児の頃から一緒に練習場について行ったり、迎えに行ったりしているうちにボールで遊ぶようになった。「クラブに入る前からコーチや監督と遊んでもらい、小さい時から楽しくやれたことが私のサッカーの原点です」

 小学生時代は「点を取るのが好きだった」というFWだった。当時は男子と一緒に走り回っていた。「最初からサッカーボールが好きで、絶対にやろうと決めていました。他にも習い事はしたけど、中学校からサッカー1本です」

 中2で転機が訪れる。点取り屋がスランプに陥った。「DFの気持ちを分かれば、不振から抜け出せる」と考えた当時の監督に、DFにコンバートされた。「点を取るのが好きだったので、最初は絶対にFWに戻ると思っていた。それがゴールを守ったり、相手からボールを奪ったりするのが点を取るよりも楽しくなって、やりがいを感じるようになった」と守備に魅了されることに。その後、監督から「FWに戻す」と言われたが、そのまま中3からDFを続けることになった。

 高校は強豪の日ノ本学園高(兵庫)に進み、高2~3時には全国高校総体(インターハイ)と全日本女子選手権で2年連続2冠を達成する。熊本から兵庫へと移った理由は、クラブの仲良しだったチームメートたちについていったから。「最初は熊本を出る気はなかったんですけど、仲がいい同期10人中5人が一緒に同じ高校に行くことになって、みんながいるから怖くない感じで、チャレンジしてみようと思って行きました」。この選択がのちに、武蔵丘短大(埼玉)への進学に大きな影響を与えた。

 「高校が厳しかったので、大学は楽しさを求めました。4年制の大学は長いし、飽きちゃうかなと感じて、ムサタン(武蔵丘短大)は楽しそうで、サッカーもつないで足元の技術とかも学べ、当時の監督の河合(一武)先生に誘われて行きましたが、正解でした!」

 短大卒業後の17年春に1部昇格したノジマステラに加入し、現在はセンターバックとして活躍。足元の技術と走力を持ち、失点のピンチを何度となく救うプレーが光る。この2シーズンのリーグ戦では途中交代した2試合を除き、先発フル出場してきた。

 そんなホープの持ち味は「インターセプトから自分が上がっていくというプレースタイル。スピードもあり、体が強いので、当たり負けしないようにしています。うふふ(笑)」。FW経験者としての血が騒ぐのだろう。負けず嫌い魂が出てくるという。

 ノジマステラで18年になでしこジャパンで活動したのは、国武とDF高木ひかり(25)の2人だけ。だからこそ、自分がけん引役としてチームに還元していきたい。「代表で学んだことを、もっとノジマのチームのためにしっかり出していかないといけない」と意気込む。

 「小さい時からずっとサッカーばかりなので、サッカーがない人生は考えられないし、サッカーは自分の中心」と全てを懸ける国武の目標は、なでしこジャパンの一員として常に試合に出ること。「小さい頃から憧れてきた大会」という今年のW杯経由で、来年に迫る東京五輪出場もつかみ取るつもりでいる。

ウオーミングアップで、FW大野忍(左)にボールを触らせないようにする国武=相模原市のノジマフットボールパークで(北田美和子撮影)

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◇愛美のアラカルト

 ●おしゃれ好き「最近、ネイルセットを買って、自宅でセルフでネイルをしています! 基本的にオシャレしたいし、ちょっと外出するときも格好いい系のかわいい服を絶対に着ますね」。ファンレターやファンクラブがあるだろうと思ったが「ないです!(笑)」と即答だった。

 ●好きな男性のタイプ「面白い人で、一緒にいて飽きない人が好きです。(芸能人では)山崎賢人と竹内涼真とか…。会えますかね~(照れ笑い)」

 ●いま、やりたいこと「イルカの調教師になりたい。めっちゃ好きで、癒やされます。イルカに触れる八景島シーパラダイスにたまに行きます。でも、魚は触れないんですよ(笑)」

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◆菅野ノジマステラ前監督 絶賛

 12年の創部からチームを率い、18年限りで退任したノジマステラの菅野将晃前監督(58)はこんな理由から国武をスカウトした。「彼女は動きの一つ前を感じて、そこへの反応がすごく速かった。気付きと行動の速さに、DFとしての魅力を感じた」。攻撃の起点となる後ろからしっかりつなぐプレーが、ノジマステラに必要な人材だと考えたという。

 今後の国武に「まさにこれから活躍できる選手。代表に選ばれたことで強い意識を持って、代表不動のセンターバックとして東京五輪の素晴らしい舞台をつかんでほしい」と期待を寄せた。

<ノジマステラ神奈川相模原> 神奈川県内初のなでしこリーグ1部昇格チームとなることを目指して2012年創部。チーム名の「ステラ」(イタリア語で星)には、女子サッカーにおける普及・発展に貢献し「神奈川の星」となるという願いが込められている。13年に現在の2部に当たるチャレンジリーグに参入。16年2部で優勝し、悲願の1部初昇格。17年8位、18年3位と躍進した。17年皇后杯準優勝。

<国武愛美(くにたけ・あいみ)> 1997(平成9)年1月10日生まれの21歳。熊本県上益城郡出身。162センチ、53キロ。ノジマステラ神奈川相模原(なでしこ1部リーグ)所属のDF。小1で地元の矢部FCジュニアに入り、サッカーを始める。日ノ本学園高1時のインターハイは初代王者、高2~3時にはインターハイと全日本高校女子選手権で2年連続2冠を達成。武蔵丘短大では、2年時に全日本大学女子選手権4位。両親と兄、姉との5人家族。

<ムサタン出身のなでしこジャパン> 17年以前は、11年女子W杯優勝メンバーのFW上尾野辺めぐみ(新潟)のほか、DF柴田里美(引退)、GK久野吹雪(ノジマステラ)、MF佐々木繭(浦和)が代表入り。昨年は国武とMF阪口萌乃(新潟)が選ばれた。

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