アプリの利用制限がある「S モード」
Windows 10の一部エディションには「S モード」というモードが存在する。マイクロソフトの2-in-1パソコン「Surface Laptop」や「Surface Go」など、一部の機種が採用している。S モードは2018年4月にリリースされたWindows 10 April 2018 Updateから登場したものだ。以前は「Windows 10 S」と呼ばれていたが、改名されて現在の名前になった。
マイクロソフトは、Sモードの特徴としてセキュリティーとパフォーマンスの高さを挙げている。これらが必要になり将来S モードを利用することになるかもしれないので、通常のWindows 10との違いを押さえておこう。
S モードでは、デスクトップアプリのインストールや起動、Webブラウザーの変更などが制限されている。通常のWindows 10であれば、従来のWindows用ソフトと言われてきたデスクトップアプリと、Microsoft Storeからインストールするストアアプリの両方が利用できる。だがS モードでは、ストアアプリしか利用できない。Microsoft OfficeやiTunesといった一部の有名ソフトのストアアプリ版はあるものの、デスクトップアプリの数と比べると圧倒的に少ない。
このように、S モードでは動作するアプリがかなり限られるため、用途によっては不便さを感じるだろう。しかし裏を返せば、マイクロソフトが検証してMicrosoft Storeに登録されたストアアプリのみが動作するため、危険なプログラムの実行を未然に防げる。そのため、セキュリティーのレベルを高められる。
利用できるWebブラウザーにも制限がある。Windows 10(S モード)で起動するWebブラウザーは、Windows 10が標準で搭載するMicrosoft Edgeのみ。かつ、Edgeに設定できる既定の検索エンジンは、マイクロソフトのBingに限定される。マイクロソフトは、Microsoft Storeで入手できるWebブラウザーならインストールと利用は可能としている。ただし2018年12月初旬時点で、Google ChromeやMozilla Firefoxといった、有名どころのWebブラウザーはMicrosoft Storeに登録されていない。
S モードのあるエディションは、Windows 10 HomeとPro、Enterprise。それぞれのエディションをベースに一部の機能を制限している。例えばWindows 10 Pro(S モード)では、上記の制限に加えてドメイン参加やBitLocker、リモートデスクトップなども利用できない。
Sモードによる制限は、Microsoft Storeから無料で解除できる。解除するとWindows 10 Home(S モード)はWindows 10 Homeへ、Windows 10 Pro(S モード)はWindows 10 Proなど、それぞれベースとなったエディションに切り替わる。ただし一度S モードを解除したら、再びS モードに戻すことはできない。企業などでWindows 10(S モード)の運用を考えているのであれば、解除の扱いに注意が必要だ。
Windows 10(S モード)を搭載するパソコンの中には、モバイル向けプロセッサーのQualcomm Snapdragonで動作するものもある。この場合、さらに注意が必要だ。例えば、Qualcomm Snapdragon向けのWindows 10(S モード)も、Microsoft Storeに登録されたストアアプリしか使えない。しかも、Snapdragonのアーキテクチャーは従来のx86/x64ではなく、ARM32/64だ。そのため、ストアアプリの中でARM32/64に非対応のデバイスドライバーを使用するソフトは利用できない。具体的には、ウイルス対策およびマルウエア対策、印刷、PDF、CDやDVDのユーティリティー、仮想化アプリなどが該当する可能性がある。
S モードの解除も可能だ。しかし、解除してもデスクトップアプリとして利用できるのは32ビット版だけとなる。64ビット版のデスクトップアプリは利用できない。しかも、32ビット版のデスクトップアプリはエミュレーションモードで実行されるので、マイクロソフトは実行速度が遅くなる可能性があるとしている。このように、Qualcomm Snapdragonを搭載したパソコンを使う場合、利用できるソフトが限られる、あるいは動作が遅くなるといった可能性がある。