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最終回:ディクソンの訪問『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解説

  • 2018.12.30 Sunday
  • 19:50

 

 

 

 

映画『スリー・ビルボード』最大の山場である「レストランでのダブルデート」も無事に終わった。

 

あの「ダブルデート」とは、死んだアンジェラが父と母それぞれと「同時にデートする」という意味だったわけだ。

 

恐れ入り谷の鬼子母神だね。

 

 

詳しくはコチラをどうぞ!

 

 

 

とんでもなく計算し尽くされたシーンやったな。

 

セリフひとつひとつから視線まで…

 

 

さあ、残りもサッサと片付けようぜ。我々もそこまで暇じゃないんだ。

 

 

では始めましょう。

 

まずはバーでのディクソンから。

 

恫喝男のレイプ自慢話を盗み聞きしたディクソンは、彼の顔を引っ掻いて、皮膚ごとDNAをゲットします。

 

そして激怒した恫喝男にボコボコにされた…

 

 

警察バッジを無くしてなかったら恫喝男もビビったのにね。

 

 

「ディクソンが落とした警察バッジ」とは「サウロ(パウロ)が目から落としたウロコ」の喩えなんだよ。

 

そしてディクソンがボコボコにされたのは、『使徒行伝(使徒言行録)』でサウロが回心後に、権力側の人々から迫害されるなど受難続きだったことの再現なんだね。

 

あの恫喝男も実は軍人だったし。

 

 

 

なるほど。

 

 

家に帰ったディクソンは、恫喝男のDNA鑑定をしてもらうために、皮膚片をサンプルケースに入れる。

 

そして恫喝男の車のナンバー「H5T371 IDAHO」を書き入れた。

 

 

 

ちなみにお前ら「IDAHO」の意味を知ってるか?

 

地元インディアン部族の言葉で「注意せよ!山から燃える太陽が降りて来る!」という意味なんだぞ。

 

 

ええ!?

 

 

 

それはワイオミング。

 

まあ趣旨として間違ってはいないが、正確にはこっちだな。

 

 

 

イエスを殺したのは他でもない「父」ですからね。

 

映画『スリー・ビルボード』では、殺されたアンジェラが「イエス」の役割を担っていました。

 

そして早くに父を亡くしたディクソンにとって、ウィロビー署長は「父」のような存在だった…

 

さて、翌日にディクソンはDNAサンプルを警察へ届けたあと、ミルドレッド宅を訪れた。

 

その時なぜかミルドレッドは、グラスに入った白ワインを眺めながら考えごとをしていた…

 

 

 

レストランでも白ワインを飲んどったな。

 

たぶん昨日の夜のこと思い出して考えとるんやろ。

 

「なんか引っ掛かるわ…。でも、なんやろ?」っちゅう感じで…

 

 

そうだろうね。

 

ミルドレッドは前にも同じような「違和感」を感じたことがあった。

 

ウィロビー署長の吐血事件の翌朝のシーンだ。

 

前日アンジェラは、いつも以上にメッセージを送った。犯人ウィロビーが自分にした時と同じように母ミルドレッドの顔面に吐血したので、事件の真相を気付かせる最大のチャンスと考えたんだ。

 

レイプされて殺されたアンジェラの死体が徹底的に焼かれたのは、証拠となる血がついてしまったからだったよね。

 

いくら水で洗い流しても、皮膚の小さな穴や頭皮に入りこんだものは絶対に取れない。だから燃やすしかなかったんだ。

 

 

だからウィロビーは救急車に担ぎ込まれる時に「彼女を家に帰せ!すぐに帰すんだ!」とムキになって何度も命令していたんだな(笑)

 

 

 

イグザクトリー。警察には鑑識官がいるからな。

 

もしミルドレッドが何かに気付いてウィロビーの血液をDNA鑑定に回していたら、あそこでジ・エンドだった。

 

 

あそこで気付かなかったのは本当に残念でした。

 

だからあの日アンジェラは必死でメッセージを送ったんですね。「お願い!気付いて!」と。

 

まず弟のロビー君が何かを感じて「鳥は癌になるのかな?」と呟いた。

 

 

彼はアンジェラが送ったイメージ「犯人は警察署にいる癌患者」をキャッチしたんです。

 

だけど「警察署」を「鳥」と間違えた。

 

なぜなら警察署には大きく鳥の絵が描かれていたから…

 

 

そしてミルドレッドも「何か」を感じ取っていた。

 

きっと夜の間もアンジェラはメッセージを送り続けていたのでしょう。

 

だから翌朝ミルドレッドは鳥の鳴き真似をし、ロビーの顔面にシリアルをかけたんです。

 

「鳥」と「顔に何かがかかる」というイメージが気になっていたから…

 

 

 

そして今度はレストランでの出来事が気になっていたというわけか…

 

何か違和感を感じるところまではいいんだけど、決定的な「何か」には気付けない…

 

 

気付いたら映画は別モノになってしまうからな。

 

 

いきなり陶芸とかおっぱじめたらエライこっちゃ。

 

 

 

さて、ノックの音で我に返ったミルドレッドは、玄関ドアの覗き窓から外を見る。

 

そこには帽子を手にしたディクソンがいた。

 

 

 

「帽子を手にした」って大事?

 

 

だって脚本にも「帽子を手に持たせてウィロビーの訪問シーンに重ね合わせる」と書かれているんだもん。

 

これがどういう意味かわかる?

 

 

 

ええ?

 

二つの訪問シーンはシンクロしてるってこと…?

 

 

そういうことだな。

 

 

 

だからディクソンとミルドレッドの会話も意味深なんだ…

 

 

ディ「あんたに期待だけさせようってわけじゃない。ある男がいた。奴こそが犯人だと思う。奴のDNAも手に入れたんだ」

 

ミ「今そいつは檻の中?」

 

ディ「いいや。だが見つけ出すのは難しいことじゃない」

 

 

 

このためにウィロビーの時と逆に座っとったんか…

 

「ウィロビーになったつもりで考えてみい!」っちゅうことや…

 

 

「檻の中」じゃなくて「墓の中」だよ、ミルドレッド!

 

真犯人のDNAは「墓の中」から簡単に手に入るんだよ!

 

 

超笑える会話だよね。

 

二人の会話はこう続く…

 

ミ「なぜ奴が犯人だと思うの?」

 

ディ「奴が話しているのを聞いたんだ。去年の中頃に少女をやったと。話を全部聞いたわけじゃないが、内容がアンジェラの件と似通ってた」

 

 

経緯を一通り説明してからディクソンは「だから望みを捨てるな」と言う。

 

そしてここからが面白い。

 

難しい文章を言おうとして言い間違えるんだ…

 

 

ディ「トライし続けろってママも言ってたな。挑戦についてよりむしろ願望については……。あれ?俺は学校の英語のクラスで出来のいい生徒じゃなかったんだよ。だから《お前に出来ることはトライし続けること。英語で失敗しないために》って言われてた。警察官が目標だったら英語力が必要だろ?いや実際、何をやるにしても必要なんだが…」

 

 

 

臭うな。

 

 

またアンジェラ臭か!?

 

 

どうも不自然なんだよね…

 

この重要な局面でディクソンが「英語力」について、ここまで語るのが…

 

「英語で失敗したくないならトライしろ」とか「警察官が目標なら英語力が必要」とか、わざわざ自分語りをする場面だろうか…?

 

 

確かにどうでもいい話やな…

 

ミルドレッドに話す必要性は微塵もあらへん…

 

 

まさか…

 

これってスリー・ビルボードのメッセージのことじゃ…


 

他に何がある?

 

何のためにスリー・ビルボードが見える丘のブランコに座ったと思うんだ?

 

 

 

ああ、やっぱりそうだよね…

 

 

しかもこの映画のタイトルは『スリー・ビルボード』だぞ。

 

最後にこのネタを回収しないまま終わるわけがないだろ。

 

 

アンジェラが霊感として母ミルドレッドに送ったメッセージは、

 

HOW COME CHIEF WILLOUGHBY

AND STILL NO ARRESTS

RAPED WHILE DYING

なぜウィロビー署長は

まだ逮捕されないの?

死の病に侵されながらレイプした

 

というものだった。

 

でもミルドレッドはメッセージを誤読してしまい、文章の順序を逆さにしてしまったんだ。

 

それを伝えるためにアンジェラはディクソンに入って文章を言い間違えたんだね。

 

たぶんこの日が地上にいれる最後の日だったんだと思う。

 

 

じゃあこれが母との本当の別れってこと!?

 

 

そうだね。

 

ディクソンは普段から喋る時に変な間があるんだけど、この日はいつも以上に間が長かった。

 

そして最後にこう言ったよね。

 

 

ディ「もしあんたがメキシコとかに住むんだったら英語力は要らないけど、そんなの嫌だろ?」

 

 

 

これが最後の言葉って…

 

しかもミルドレッドの英語読解力の無さを上から目線で…

 

 

ちなみにこれは使徒パウロとペテロのジョークでもある。

 

この映画でディクソンが演じる使徒パウロは、ヘブライ語・アラム語の他にギリシャ語・ラテン語などが話せるエリートだった。

 

しかし漁民あがりの使徒ペテロは外国語が出来なかった。

 

 

 

さて、ディクソンは何かを思いながら「よしよし」と頷き、ブランコから立ち上がって車の方へ向かっていく。

 

そこでミルドレッドは呼び止めた。

 

 

ミ「ディクソン!」

 

ディ「?」

 

ミ「…ありがとう」

 

ディ「!?」

 

 

 

 

あれ?

 

なんでディクソンはあんなリアクションをしたんだろう?

 

容疑者の報告をしに来たんだから、お礼を言われても驚く必要はないよね…

 

 

やっぱりアンジェラか…?

 

 

だと思うよ。

 

昨夜のレストランでミルドレッドは、アンジェラの入ったペネロープに感謝の言葉はかけなかった。

 

元夫チャーリーに「この子は大切にしてあげて」と言っただけだったんだよね。

 

元はと言えばアンジェラがミルドレッドに「怒りはより大きな怒りを生む」という言葉を教えてあげたのに。

 

このように、これまでミルドレッドはアンジェラに対して一度も「ありがとう」の言葉を言ってなかった。

 

ペネロープだけじゃなく、秘書パメラやジェームズなどアンジェラが憑依していた人物すべてにね。

 

だからアンジェラは驚いたんだ。

 

最後の最後で、母から感謝の言葉を投げかけられたから…

 

 

感動の瞬間だな。

 

これでアンジェラも成仏…いや昇天できたはずだ…

 

 

 

おそらく『ゴースト ニューヨークの幻』を想起させるため、ディクソン役にサム・ロックウェルを起用したのでしょう…

 

あの映画でパトリック・スウェイジ演じる幽霊は「サム」という名前でしたから…

 

 

それはさすがに深読みし過ぎでしょ!

 

 

いや、わからんぞ…

 

『ゴースト』でもキーワードが「イタリア語」で、最後に交わした言葉がイタリア語の「ditto」だった…

 

それを踏まえてアンジェラの最後の言葉が「メキシコ」だったのかもしれん…

 

 

ああ!公園兄弟まで深読みゾンビに!

 

 

グルルルル…

 

さあ、お前たちも我々の仲間になるんだ…

 

 

うわ~助けて~!

 

でもこれで夢オチとか絶対ダメだからな!

 

 

やっぱりダメ?

 

 

夢オチだめ。ぜったい。

 

 

じゃあ最後までちゃんと解説しなきゃな…

 

というわけで次回は最終回後篇です。

 

フルで流れる主題歌『Buckskin Stallion Blues』とラストのオチの意味を解説しちゃうからね。

 

乞うご期待。

 

 

 

 

 

 

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