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第25回:WALK AWAY RENÉE(いとしのルネ)『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解説

  • 2018.12.27 Thursday
  • 22:26

 

 

 

 

 

さて、スリービルボードが修復された次のシーンは、回心して退院したディクソンがバーで恫喝男と遭遇する場面だ。

 

 

 

《貼り付け》シーンの解説はコチラ

 

 

 

バーではフォートップスの歌『Walk Away Renee』が流れとったな。

 

 

 

うわあ!エルビスが歌ってる!

 

「エルビス・プレスリーは生きていた」って、やっぱり本当だったんだね!

 

 

子供は純真でいいな。

 

どこかの大統領みたいに踏みにじってはいけないな。

 

 

バーで流れるフォートップスといえば、コーエン兄弟のデビュー作『ブラッド・シンプル』ですよね。

 

 

 

マーティン・マクドナーめ…

 

どんだけ俺たち…いやコーエン兄弟が大好きなんだ…

 

 

今「俺たち」って言った?

 

 

ほ、翻訳ミスだ。

 

「ass」を間違って「us」で訳してしまった。

 

 

おかしいなあ…

 

 

さて『ブラッド・シンプル』の主題歌『It's the same old song』とは「旧約聖書」のことだったよね。

 

だからバーテンダーのモーリスはバーカウンターの上に立ち、人波を割って歩いてジュークボックスのところへ行ったんだ。

 

「海を割って渡り、シナイ山へ辿り着き、神の歌声を聞いたモーゼス」のようにね…

 

『ブラッド・シンプル』徹底解説「バーテンダーのモーリス」

 

以前解説したように映画『ブラッド・シンプル』とは「旧約聖書」を元ネタした物語だ。

 

御存じの通りコーエン兄弟はユダヤ系で、この映画の制作資金を提供したも「在米ユダヤ人女性協会ハダッサ」の女性会員たちだった。

 

だから主要登場人物4人のうち、男性3人が死んで、フランシス・マクドーマンド演じる女性1人だけが生き残るんだったね…

 

 

「旧約」と呼ぶな。このケースでは「ヘブライ聖書」と言え。

 

映画の出資者はユダヤ教徒だ。

 

 

失礼しました。

 

さて、『スリー・ビルボード』の脚本を書いたマーティン・マクドナーは、『ブラッド・シンプル』と同じようにフォートップスの歌を効果的に映画に用いようと考えた。

 

心酔するコーエン兄弟のデビュー作に敬意を表してね。

 

そうして選ばれたのが『Walk Away Renee(邦題:愛しのルネ)』なんだ。

 

 

邦題があるってことは有名な曲なの?

 

 

もちろん。

 

あのピンクレディーもカバーした。

 

 

「ルネ」っちゅうたら「ルネ・クレマン」やな。

 

『太陽がいっぱい』の次は『禁じられた遊び』を解説するって言うたまま放置しとるで、オッサン。

 

ルネ・クレマン徹底解説

 

 

ところでお前ら「Renee(ルネ)」という名前の意味を知ってるのか?

 

 

Reneeの意味?

 

知らねー(笑)

 

 

「Renee」とは「生まれ変わる」という意味なんだよ。

 

 

ええ!?

 

 

そしてプロテスタントの世界、特に福音派やバプティスト教会では「洗礼」を「REBORN(生まれ変わり)」と呼ぶ。

 

それまでの自分は「目の見えなかった人間」だったけど、洗礼後は「目の開いた人間」に生まれ変わると考えるんだ。

 

失明したサウロが回心して洗礼を受けた時に目からウロコが落ちたみたいにね。

 

まさに映画『スリー・ビルボード』のテーマだ。

 

死んだアンジェラは「生まれ変わって」様々な動物や人になり、ディクソンは迫害者サウロのように回心しオレンジジュースで「洗礼」を受けた。

 

脚本・監督のマーティン・マクドナーは「この映画はそういう物語なんですよ」って伝えるために、予告編でこの曲を大々的に使ったんだろうな。

 

まるで主題歌みたいだよね。本編では少ししか流れないのに(笑)

 

 

 

確かにこの予告編は変だなって思ってた…

 

映画の主題歌は『Buckskin Stallion Blues』だもんな…

 

 

サビの「歩いて行くんだ、ルネ」という歌詞もミルドレッドがアンジェラに言ったセリフそのものだ。

 

「私があなたを家まで送ることはないだろう」も、そのまんまだな(笑)

 

 

 

出だしの歌詞「私は一方通行のサインに気付いた。毎日のように通っていた道で」とか、映画冒頭でアンジェラのサインを運転中にキャッチしたミルドレッドやんけ…

 

 

 

そのまんま過ぎる…

 

でもなんで色んな歌の歌詞が同じ映画にピッタリ当てはまるんだろう?

 

他に使われてる歌も全部そうだった…

 

 

だって、すべて同じものが元ネタだからね。

 

同じように聖書を元ネタにしてるから、歌と物語がすんなりフィットするんだよ。

 

 

なるほど。そうゆうことか。

 

 

『Walk Away Renee』という歌はカップルが別れる話なんだけど、これって「イエスの死」の話になっているんだ。

 

ちょっと面白いんで歌詞を解説しておこうかな。

 

 

誰が書いたんや?

 

フォートップスといえばモータウンやさかい、ベリー・ゴーディとかスモーキー・ロビンソンか?

 

 

『Walk Away Renee』は白人のバンド「THE LEFT BANKE(レフト・バンク)」の歌なんだよ。

 

それを黒人グループのフォートップスがカバーして大ヒットさせたんだね。

 

 

レフト・バンクって聞いたことないな。

 

しかも変な名前。左銀行?

 

 

ソフトバンクのレフトといえば、中村かグラシアルやろ。

 

 

頼むからお前らは黙っててくれ。

 

「The Left Banke」とは「ヨルダン川左岸」という意味だ。

 

つまり聖書の舞台になっている「The West Bank of Jordan River(ヨルダン川西岸地区)」のことだな。

 

 

じょじょじょ!またか!

 

 

ちなみに『Walk Away Renee』をカバーした「FOUR TOPS(フォー・トップス)」というのは「四福音書」という意味だ。

 

新約聖書は「マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネ」の4つの福音書が上に立って、その下に『使徒行伝(使徒言行録)』や書簡・黙示録が連なる構造だからね。

 

 

 

マジですか!?

 

 

黒人コーラスグループは、ほとんどがゴスペル出身だ。

 

だからグループ名にも宗教色の強い名前をつける。

 

「The Miracles(ミラクルズ)」は「奇跡

「The Temptations(テンプテーションズ)」は「荒野の誘惑」

「The Supremes(シュープリームス)」は「至高・神」

 

などなど…

 

 

レフト・バンクもバロック・ロックのバンドだから、歌詞もキリスト教色が強かったんですね。

 

「バロック」とはカトリックの教えを広めるための芸術表現のことですから。

 

そのへんを意識して歌詞を訳してみましょう。

 

 

ソングライター: Bob Calilli / Mike Brown / Tony Sansone

超訳:おかえもん

 

And when I see the sign that points one way

The lot we used to pass by every day

 

運命づけられていたサインを私が見たのは

毎日のように私たちが歩いていた場所だった

 

 

 

じょっと!じょっと、じょっと!

 

いきなりこれですか!

 

『ユダの接吻』ジョット・ディ・ボンドーネ

 

 

その通りだ。

 

「ひとつの方向へ導くサイン」とはユダがイエス逮捕の合図にしていた接吻のことだな。

 

その場所となったゲッセマネの園とは、イエスと弟子たちが毎日のように語らいながら散歩していた場所であった。

 

 

出だしからパンチが効いてますよね。

 

いきなりイエス逮捕の場面から入るのですから…

 

そして歌詞はこう続く。

 

Just walk away Renee
You won't see me follow you back home
The empty sidewalks on my block are not the same
You're not to blame

 

地上を去る時が来た、レネよ

お前には私の姿が見えないだろうが

天に帰って来るのを私はずっと見守っている

私が独占していた席の右隣にお前の席を用意した

そのことでお前を責めるつもりはない

 

 

 

ああ…これは天の父だ…

 

「The empty sidewalks on my block」は「神の玉座」のことだったのか…

 

 

旧約時代は父が玉座を独り占めしてたけど、新約時代は父と子が並んで座ることになったんだよね。

 

それを「not the same」と歌ったんだ。

 

 

そしてそれはイエスのせいではない。父の一身上の都合だ。

 

 

ここからも面白い。

 

英詩の駄洒落の定番「tears」が登場だ。

 

「涙」と「裂かれたもの(分身)」のダブルミーニングだね…

 

From deep inside the tears that I'm forced to cry
From deep inside the pain that I chose to hide

Just walk away Renee
You won't see me follow you back home
Now as the rain beats down upon my weary eyes
For me it cries

 

私の奥深くから分かれたお前を

辛い目に遭わせてしまった

私の心にポッカリ開いた穴の痛みを

私はずっと隠し続けていた

地上を立ち去るのだ、ルネよ

私が見守っていることをお前は知らないだろうが

お前同様に苦しむ私の目からこぼれ落ちた涙が今

雨となって地上を打ちつける

 

 

 

ああ、イエスが死に絶えた時に降ったとされる雨は、天の父が流した涙だったのか…

 

 

歌詞を書いた奴、詩人やな。

 

当たり前か。

 

 

そしてこんな歌詞もある。

 

ポイントは「inside a house on a wall」だ。

 

Your name and mine inside a house on a wall

Still finds a way to haunt me, though they're so small

 

お前の名と私の名が

いと高きところにある神の家に並ぶ

そのことだけが私にはまだ気掛かりだ

些細なことなのかもしれないが

 

 

 

別れたカップルの歌では「家の中の壁に」っちゅう意味やったのに、イエスの歌では「高い壁の上の家」か…

 

確かに「inside a house on a wall」はどっちにも取れる…

 

 

絶対無比の存在だった父が、子を哀れと思いつつも、並ばれたことをめっちゃ気にしてるというオチなんだ…

 

 

「三位一体」を題材にしたジョークだな。

 

 

この映画を作った人、本当に歌の性質をよく知ってる…

 

フィオ、感動しちゃった…

 

 

こいつはな…

 

 

豚はやめろ。

 

ハレンチで怠惰な罪で逮捕するぞ。

 

 

すみません…この人たち悪気はないんです…

 

ただちょっと精神年齢に問題があって…

 

 

さて、バーでディクソンが飲んでいると、二人組の男が入って来て、ディクソンの後ろのボックス席に座る。

 

片方の男はあの恫喝男だ。

 

 

そしてバーのシーンと並行して、レストランの「ダブルデート」も描かれる。

 

まずは「J. ARTHUR'S」というレストランの看板が大きく映し出された…

 

 

 

そういえば、何で看板をあそこまでアピールしたんだろう?

 

何か意味があるのかな?

 

 

撮影期間中にスタッフや出演者たちが毎晩のようにお世話になったんとちゃうか?

 

そのお礼や。映画あるある話やろ。

 

 

ご当地ものの日本映画じゃないんだから(笑)

 

そうじゃないんだな。ちゃんとした理由があったんだよ。

 

監督のマーティン・マクドナーは、ロケハンでこのレストランを見つけた時に、こう叫んだはず…

 

「なんという奇遇!まさに奇跡だ!」

 

 

奇遇?奇跡?

 

何が?

 

 

このレストランの名前と同姓同名なのだ…

 

イギリス映画界のゴッドファーザーと呼ばれた人物の名前が…

 

 

イギリス映画界のゴッドファーザー?

 

なにそれ?

 

 

あのレストランシーンとも関係があるんだよね、そのゴッドファーザーは…

 

次回たっぷり解説するとしようか。

 

 

ちょ~気になる!

 

 

 

 

 

 

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