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第18回:@ギフトショップ『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解説

  • 2018.12.20 Thursday
  • 18:17

 

 

 

 

 

さて、謎の男が登場するシーンの解説をしようか。

 

 

 

考察は深まったんか?

 

 

ふふふ。バッチリだよ。

 

単刀直入に言っちゃおう…

 

 

あの男には、死んだウィロビーが憑依している。

 

 

 

ええ!?

 

 

やはりそう来たか。

 

 

ええ。間違いありませんね。

 

わざわざウィロビーと全く同じ鮮やかなブルーの目なのですから、もっと早く気付くべきだった…

 

 

それでは詳しく解説していきましょう。

 

まずあの男は、ショーウィンドウに映る影として登場する。

 

それはショーウィンドウに飾られた動物のぬいぐるみをミルドレッドが手に取って眺めている時だった…

 

 

 

よくよく考えたら、登場シーンが「ガラスに映った影から」って怪しいかも。

 

 

せやな。

 

この世ではない「あちら側」から来ましたって言うとるようなもんや。

 

 

しかも影が映るのは「動物のぬいぐるみ」が並んだショーウィンドウのガラスだ。

 

死んだアンジェラは様々な動物に憑依していた。

 

この描写は「憑依」を示す以外の何物でもない…

 

 

クリストファー・ノーランも『インセプション』で、ディカプリオ演じる主人公の死んだ妻モルを、サイト―やアリアドネに「憑依」させていました。

 

そしてその際には「憑依したこと」がわかるように、ちょっとした目印が施されていた…

 

きっと『スリー・ビルボード』の脚本を書いたマーティン・マクドナーも、よく観察すれば「憑依」がわかるようにしたかったんでしょう…

 

 

『インセプション』徹底解説

 

さて、男は店に入って来た。

 

その時の様子は明らかに「おかしな」もの…

 

店員のミルドレッドや店全体を見るのではなく、なぜか壁際の一点を見つめていた…

 

 

 

確かにそうだったな…

 

でもそんなことに深い意味があるとは思えないんだけど…

 

 

それが「ある」んだな…

 

男が見つめていた先にあったのは「ブタ」の置物なんだ…

 

この映画で「ブタ」といえば?

 

 

 

け、警察官…

 

 

ウィロビーは5000ドル寄付の手紙でも、自分たち警察のことを自虐的に「ブタ」と書いていたよな。

 

だから土産物店へ入って真っ先にブタに目が行ったんだ。

 

 

それにムカついてウサギを投げたのか?

 

 

いや、違うよ。

 

あれはミルドレッドが指示したからなんだ。

 

ミルドレッドが「私を脅迫しろ」と言ったから、男はウサギを投げつけたんだね。

 

 

ええ!?

 

 

この場面でも、映画の重要なキーである「聞き間違い」が描かれている。

 

ミルドレッドは、男にこう言った。

 

 

Anything I can help you with, just gimme a holler

何か用があったら、私に声を掛けて

 

 

だが、男にはこう聞こえた…

 

 

Anything I can help you with, just gimme a horror

何か用があったら、私に恐怖を与えて

 

 

だから男は「ミルドレッド・ヘイズに…与える…」と確かめるように呟いてからウサギを投げつけたのだ。

 

「holler(呼び掛け)」と「horror(恐怖)」は、どちらも「ホラー」だからな…

 

 

「L」と「R」が聞き取れないのは日本人だけじゃなかったのか…

 

 

だからこの前のシーンで新署長アバクロンビーが「hard of hearing(聞き取りづらい)」と「言い換え」の話をしたんだね。

 

いろいろ繋がっているんだよ。

 

 

でもなんで投げつけたのがウサギなんや?

 

ブタでええやろ?

 

 

 

ブタではダメだ。ウサギじゃなくちゃね…

 

なぜならこの映画において頻繁に登場するウサギはアンジェラの象徴だった。

 

 

そして復活祭の風物詩イースターラビットとは、春に復活したイエスの象徴…

 

この映画でアンジェラはイエス・キリストの役割を演じており、その「復活劇」はウサギに象徴されている。

 

だから男に憑依したウィロビーは、ウサギを投げつけて破壊したんだ。

 

9ヶ月前にレイプして殺したアンジェラのようにね…

 

 

ウサギがイエス・キリストの象徴とされるのは、「rabbit」と「rabbi」の駄洒落もあるよな。

 

イエスの弟子たちはイエスを「Rabbi(ラビ:師・先生)」と呼んでいた。

 

だから天才コーエン兄弟は『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』でウサギを殺したのだ…

 

via GIPHY

 

 

あんたら矢鱈とコーエン兄弟を推すなあ…

 

ひょっとして…

 

 

その疑いの目はなんだ!?

 

我々は上野と山下の公園兄弟だ!

 

断じてジョエルとイーサンのコーエン兄弟ではない!

 

 

ちなみに、あの「ウェルカム・ミズーリ・ラビット」が「7ドル」だったこともヒントになっていますよね…

 

この映画において「7」とは「秘密」を意味していた…

 

つまり「事件の真相」と「復活の奇跡」は秘密なんだ…

 

そしてミルドレッドは「7ドル」のことを「7bucks」と言っている。

 

「buck」とは「1ドル札」のスラングなんだけど、この映画において「責任」や「鹿」という意味でも使われるキーワード中のキーワード…

 

ちなみに映画の主題歌『Buckskin Stallion Blues(鹿毛の種馬ブルース)』にある歌詞「3+4の答えが7だけならば、1と2はどうすればいい?」を覚えているかな?

 

 

えーと…

 

確か「3」は「女(アンジェラ)」で…

 

「4」は「男(ウィロビー)」だったっけ…?

 

 

そんで「1と2」は「悲しみと喜び」や!

 

歌詞の数字はイギリスの童歌『ONE FOR SORROW』に対応しとった!

 

詳しくは第7回を読めばわかる!

 

 

 

だから男はウサギを破壊したあとに「これでもう7ドルではなくなったな…」と言ったんだよ。

 

つまり「もう《秘密》ではなくなった」という意味だ。

 

死んだあとも霊魂となって誰かに憑依できることをウィロビーは知った。

 

つまり、ウィロビーを犯人だと匂わせる三枚の看板をミルドレッドが出したのは、死んだアンジェラの仕業であったことに気付いたんだ…

 

だからウィロビーはあの男に憑依して土産物屋を訪れたんだね…

 

ミルドレッドがアンジェラのメッセージの「本当の意味」に気付くことがないよう、念を押しに来たんだ…

 

 

念を押しに?

 

 

そう。あの場面ではこんな会話が交わされた…

 

 

男「これでもう7ドルではなくなったな…」

 

ミ「何の目的でここへ来たの?」

 

男「俺がここに来た目的?そうだな…俺とウィロビーはダチだったから、なんてのはどうだ?」

 

ミ「あなたが?」

 

男「もしくは…俺とあんたの娘が特別な関係だったから、ってのはどうだ?」

 

ミ「まさか…」

 

男「それなら…この俺こそが、あんたの娘が死にかけてる最中に犯した男だから、ってのは?」

 

 

 

あっ!「dying」だ!

 

誘導してるじゃんか!

 

 

その通り。

 

ミルドレッドは看板のメッセージ「raped while dying」を「アンジェラは死の淵でレイプされた」と誤読してしまった。

 

だけど死の淵にあったのは、犯人であるウィロビーのほうだったんだよね…

 

アンジェラは「レイプ中に吐血したウィロビー」のことを伝えたかったんだ…

 

かたやウィロビーは、ミルドレッドに勘違いしたままでいてほしかった…

 

だからこの男に憑依して、それを念押しに来たんだね。

 

 

なるほどな…

 

 

だから取り調べシーンと同じアングルのショットが使われるのだ。

 

この男がウィロビーであることを気付かせるために…

 

 

 

ああ、ホントだ…

 

でもミルドレッドも観客も誰も気付かなかった…

 

 

僕は気付いたよ(笑)

 

さて、二人の会話は続く…

 

ミ「犯人はあなたなの?」

 

男「まさか。だがヤってみたかったけどな。新聞に顔写真が出てたが、イイ女だった…」

 

ここで土産物屋に別の客が来たことを知らせるベルが鳴る。

 

 

ウィロビーの未亡人アンだ!

 

男に憑依している夫がスケベ心を露呈させた瞬間に登場とは、なんというタイミング(笑)

 

 

絶妙なタイミングだよな。うまい。

 

 

だけどまだこの時はふたりともアンの方を見ていない。

 

そして最後にこんなやり取りをする…

 

男「ベルに救われたようだな」

 

ミ「あんたは私にウサギを壊した代償として7ドルの借りがある」

 

男「俺が次に通りかかった時にでも請求するんだな」

 

ミ「そうするわ」

 

 

「壊したウサギの代償」は「アンジェラの死の償い」で…

 

「通りかかった時」は「憑依」のことじゃんか…

 

気付けよ、ミルドレッド!

 

 

まだ面白いところはあるよ。「ベルに救われた」だ。

 

男は出口へ向かう途中でアンをジロジロ見ながら歩く。

 

実は「ベル」とはアンジェラのことでもあるんだよね…

 

 

 

なんで?

 

 

「ベル」という言葉には「イイ女」とか「発情した鹿」という意味があるんだ。

 

 

でも入って来たのは死んだウィロビーの妻アンであって、アンジェラではないでしょ!

 

 

あの時のアンはアンジェラなんだよ。

 

アンの中にアンジェラが憑依しているんだ。

 

「ベル」という言葉の別の意味「発情した鹿」と「イイ女」はアンジェラを意味してるんだね…

 

 

 

ええ~~!?

 

じゃあ男に憑依したウィロビーがアンをジロジロ見ていた理由は…

 

 

ウィロビーは妻のアンがここへ来ることは知っていた…

 

ウィロビーはアンにミルドレッド宛ての手紙を託していたからね…

 

だからアンをジロジロ見ていたのは「よしよし、計画通りだ…」という意味だったんだ…

 

 

計画って?

 

 

ウィロビーの手紙には「ミルドレッドへの脅し」が書かれていた…

 

その脅しを効果的にするために、手紙が届けられる前にウィロビーはミルドレッドの前に現れたんだよ…

 

 

ど、どゆこと?

 

 

それは手紙の解説の時に話そう…

 

いっぽうアンジェラも、母ミルドレッドに言いたいことがあった…

 

だから土産物屋に向かったアンに憑依したんだ…

 

ウィロビーとしては、妻のアンにアンジェラが憑依してるとは夢にも思わなかっただろう…

 

 

アンジェラが母に言いたかったことって何だ?

 

 

二人の会話をよく考えればわかるよ…

 

まずミルドレッドがアンジェラを驚かせるんだ…

 

 

ミ「あなたに会えたことを私がどれだけ喜んでいるかわからないでしょうね」

 

ア「何ですって?!」

 

 

 

これはアンジェラが驚くのも無理はない…

 

「ママ!気付いてたの?!」って言わなくて良かったな(笑)

 

 

 

確かに(笑)

 

 

甲殻類は禁止だと言ったはずだ。

 

ちなみに、あの男が「ミルドレッドとウィロビーの構図」を遵守していたように、アンも「ミルドレッドとアンジェラの構図」をきちんと守っている。

 

ウィロビーとアンジェラでは、ミルドレッドに対する立ち位置が左右反対になるんだよな…

 

 

 

ああ!

 

しかも未亡人アンの前髪がアンジェラ・ヘアーに…

 

 

 

笑わせてくれるよね(笑)

 

さて、アンジェラがちょっと焦ったことに気付かなかったミルドレッドは、窓の外を見ながら話を進める…

 

 

ミ「奴は私をビビらせようとした…」

 

ア「あなたがビビることなんてないと思ってた」

 

ミ「そうでもないわ…。で、何の用件?」

 

ア「昨晩自分で自分の頭を撃ち抜いた主人が、この手紙をあなたにって…

 

ミ「申し訳なく思うわ、ミセス・ウィロビー」

 

ア「そんなこと本当に思ってるわけ?!」

 

ミ「もちろん…」

 

 

ここで多くの人は「ウィロビーの妻アンが怒っている」と感じたことだろう。

 

でも違うんだ。

 

怒っていたのはアンジェラだったんだね…

 

 

なんでアンジェラが怒る?

 

 

母ミルドレッドが最後までメッセージを理解してくれなかったからだよ。

 

思い出してほしい…

 

アンジェラの目的は

 

「犯人であるウィロビーが逮捕されること」

 

だった。

 

だから母にメッセージを送って3枚の看板を出させたんだね。

 

「吐血するほど死にそうな体でレイプしたウィロビー署長は、なぜまだ逮捕されないの?」

 

というメッセージだ。

 

でもミルドレッドはそのメッセージを誤読してしまった。

 

「娘はレイプされて死んだ。なぜウィロビー署長は犯人をまだ逮捕できないの?」

 

と解釈してしまったんだね…

 

 

この映画では「犯人を名指ししてはいけない」という縛りがあるからな(笑)

 

詳しくは第5回「ディクソンの鼻唄」の解説で。

 

 

 

これまでアンジェラは様々な形でメッセージを送り続けていた。

 

憑依した動物も、虫、TVレポーター、馬、ペネロープ、鹿、秘書パメラと多彩にわたった。

 

死期が迫っているウィロビーを一日でも早く逮捕したかったからだよね。

 

だけど母ミルドレッドは、ことごとく娘のメッセージを理解できなかった…

 

そしてウィロビーが自ら命を絶ってしまうという事態に…

 

卑劣な強姦殺人犯ではなく「町の英雄」として死んでしまったんだ…

 

アンジェラの胸中、察するに余りある…

 

 

なるほど…

 

これは怒るのも無理はない…

 

 

アンジェラの怒りはさらに激しくなる…

 

ア「あなたにとって最高のエンディングよね!そうでしょ?!あなたが出した3枚の看板が大成功に導いたんだから!警察官の死体という結末でね!それが望みだったんでしょ!」

 

 

そういやミルドレッドは、ウィロビーが訪問してきた時に、こんなことを言うとったな…

 

「どんな手段を使ってでも犯人を探し出して絶対に殺してやる」

 

 

そうなんだよね。

 

ミルドレッドは事件の真相究明よりもレイプ犯を殺すことに囚われていたんだ。

 

自分も元夫に家庭内暴力を受けていたからね…

 

だからラストシーンでもレイプ魔を殺しに行こうとするんだよ。

 

それに対してアンジェラは「そうじゃないでしょ!復讐より真相究明のほうが大事よ!」と言いたかったわけだ。

 

 

そうだよな…

 

ウィロビーにしっかり罪を償わせることで初めてアンジェラは成仏できる…

 

 

ヘイズ家はカトリックだから成仏とは言わん。

 

 

さて、母娘の言い争いは続く…

 

 

ミ「自殺は私の責任だって言いに来たの?」

 

ア「あなたの責任だなんて言っていない。私が来たのは手紙を渡すため。幼い娘二人が車で待ってるから長くはお喋りできないわ」

 

ミルドレッドが外に目をやると、路上に止めてある車の中で二人の少女がこちらを見ていた。

 

 

 

このシーンって要る?

 

 

もちろん。

 

思い出してほしい…

 

アンジェラとミルドレッドの最後の会話では「児童虐待」の話題が上がったよね?

 

夫からのDVに苦しめられていた頃、ミルドレッドは酒を飲んでから幼いアンジェラとロビーを乗せて車を運転したことがあった…

 

そのことを父から聞いたアンジェラは母を強く非難したんだ…

 

そしてアンに憑依したアンジェラは、停車中の車に幼い子を放置したまま土産物屋に入った。

 

どちらも立派な「児童虐待」だね。

 

 

自動車と児童虐待を見て、アンジェラのことを思い出すべきだったな、ミルドレッドは…

 

 

あちこちヒントだらけだったんだ…

 

 

そしてアンジェラはこう言って去っていく。

 

 

ア「これから私たちどうすればいいの?もしあなたの亭主が自殺したら、どうしていいかわからなくなるでしょ?いったいどうすればいいというの…」

 

 

 

なんで元夫のチャーリーの話が出て来るんだ?

 

 

ミルドレッドが「あんな暴力亭主は殺してやりたい」と言ってたからだね。

 

本当はアンジェラはこう言いたかったんだ…

 

「未解決のままレイプ犯ウィロビーが自殺してしまって、これからどうしたらいいの?」

 

だけど犯人を名指しできない縛りがあるから、DVをしていたチャーリーを引き合いに出したんだよ。

 

 

なるほどな…

 

細部まで計算し尽くされた脚本だ…

 

 

そしてミルドレッドはウィロビーの手紙を読む…

 

 

それは次回にたっぷりと解説しましょう。

 

非常に重要な内容ですからね…

 

 

 

 

 

 

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