周囲に田畑が広がっている見通しのよい交差点で、白昼にもかかわらずクルマ同士の出合い頭の衝突事故が起きることがあります。地理的な条件から「田園型交通事故」(田園型事故)、北海道東部の十勝地方で多発したことから「十勝型交通事故」(十勝型事故)などとも呼ばれます。この事故には、「コリジョンコース現象」が深くかかわっていると考えられます。コリジョン(collision)とは英語で「衝突、激突」の意味です。
コリジョンコース現象の特徴は、ドライバーが相手のクルマが近づいていたことに気づかない、あるいは止まって見えてしまうことにあります。たとえば、直角に交わる見通しのよい交差点に、同じ速度で同時に接近する2台のクルマがあったとします。そのとき、相手のクルマは常に斜め45度で進み続けます。するとドライバーは近づいてくるクルマを止まっていると認識し、注意を払わなくなってしまいます。
人間の視野には、物の色や形をはっきり認識できる「中心視野」と、色や形の違いや動かないものは認識しづらい「周辺視野」があります。ドライバーは横から近づくクルマを「周辺視野」でとらえやすいため、交差車両が同じ速度・同じ角度で近づいてくると、クルマが動いていないように見えて、直前まで危険を認識できず衝突してしまうことがあります。
コリジョンコース現象を回避する対策としては、走行中に頭や目線を左右へ向けて、意識的に目線を違う方向に移すことが挙げられます。交差点に向かって相手のクルマが同じ速度、同じ角度で近づいてくる場合は、フロントピラー(フロントウインドウ両端を支える支柱)に相手のクルマが隠れて交差点進入時まで気づかないこともあります。こうした「ピラーの死角」による事故を避けるためにも、交差点に近づいたところで減速して周囲の安全を確認し、視界を変えることが効果的です。
行政の対策も進んでいます。コリジョンコース現象が起こりやすい交差点の手前に「交差点あり」の標識を設置したり、路面に「交差点注意」の文字が書いてあるのもそのひとつです。路面に凸凹を設け、通過するクルマに振動で注意を促す「減速帯」を設置している場所もあります。信号機のない交差点では十分に減速して左右の安全を確認しながら通行することが大切です。
中心部を周回する「円形交差点(ラウンドアバウト)」の設置も有効な対策として注目されています。中心部を周回するクルマが優先で、交差点に進入するクルマは減速または停止したあとに左折して合流するので、出合い頭の衝突を減少させます。
2016年05月現在