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【サッカー】

狙うは全勝V! なでしこ高倉監督、W杯フランス大会に意気込み

2019年1月7日 紙面から

W杯で「頂(優勝)」を狙う高倉麻子監督=東京都文京区のJFAハウスで(福永忠敬撮影)

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 サッカーの女子日本代表「なでしこジャパン」は今夏、W杯フランス大会に臨む。前々回の2011年ドイツ大会で初優勝、前回の15年カナダ大会では準優勝と2大会連続で決勝に進出し、今大会でも上位進出の期待がかかるが、チームを率いる高倉麻子監督(50)は「もう一度、カップを掲げるために一丸でやってきた。目標は優勝。(1次リーグから決勝までの)7つ勝ちたい。最高の結果を勝ち取りたい」と2大会ぶり2度目の戴冠に向け、意気込でいる。 (構成・内田修一)

目指すは優勝、再びカップを掲げるために…=2011年7月17日、ドイツ・フランクフルトで

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◆最後まで競争

 -1次リーグではアルゼンチン、スコットランド、イングランドと同じD組になった

 高倉監督「ポット2(1次リーグの抽選で2巡目グループ)に入って、どこに入るのかな、どこに入っても嫌だなというのがあったが、ポット1(同1巡目グループ)から見れば、『日本は(同じ組に)来てくれるな』というのがあったそうで。そういう意味では自分たちの力を過信するわけではないが、下に見る必要もないのかなと。前回大会はファイナリスト(決勝進出)、その前は世界一を取ったということで、誇りを持って堂々と、フランスに乗り込んでいければと思う」

 -どちらかと言えば、恵まれた組に入った

 「対戦順もまずはアルゼンチン、スコットランド、イングランドの順。アルゼンチンはプレーオフからの勝ち上がりで、スコットランドは新鋭。そこでしっかり勝って、(D組で唯一ランキングで格上の)イングランド戦に臨める点ではそう言えるかもしれない。ただ、最初の2試合で確実に勝ち点を取れるという感覚になっても駄目なので、常にチャレンジャーのつもりで戦う」

 -メンバーは固まりつつある

 「積み重ねた貴重な時間、そこで結果を残してきた中でつかんだ選手間の絆やコンビネーションはあるので、そこはベースに考える。ただ、国内リーグの中で埋もれていたり、なかなかチャンスがなかった選手の中にも、すごくいいものを持って、意欲にあふれている選手もいる。(そのベースの中に)少し組み込んでいけるかなと思っている。そういう意味では、選手はしんどいかもしれないが、最後までいい競争をしてもらって、最後まで誰が選ばれるのか分からない状態になっていくと思う」

回復が待たれる阪口夢穂(中)

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 -昨春、膝に大けがを負った背番号10、大黒柱のMF阪口夢穂(日テレ)が空き番のまま

 「このチームで動きだしたときに、彼女に10番を(託す)という思いもあった。私自身、背番号でサッカーをやる感覚はないが、どうしても代表の10番となると…。あまりコロコロ変えるのもどうかと思う。彼女のことは常に頭の中にある。空けて、回復を待っている。実際、だいぶ回復はしてきていると聞いているが、(W杯では)世界のトップと対戦するので、そこは彼女のコンディションが上がってこないと。(メンバー入りするかどうかは)彼女のパフォーマンス次第」

◆大きな責任

 -狙うはもちろん優勝

 「(1次リーグから決勝までの)7つ勝ちたい。7つ勝つことを目標にやる」

 -そのためには前回女王で過去最多優勝を誇る米国も倒さないといけない

 「米国に限らず、(ランクが上で言うと)ドイツ、フランスなどの本当の強豪に勝つのは、一発勝負で戦術、メンタルなど全ての面で研ぎ澄まされたとき。力的に言ったら、日本が勝つとは思っていない試合をこっちに(勝利を)持ってくる方法というのは常に考えている。それを選手に伝える、共有する、形にしていくという、すごい細かな作業を丁寧に積み上げていくしか、勝つ方法はないと思っている。昨年7月に米国に2-4で負けたときも、そんなにやられたなという感じはない。勝つのは簡単ではないが、不可能でもないと思う。光は見えている」

 -16年4月に就任して以降、チームづくりは順調に進んでいる

 「(チーム力が)少しずつ上がってきているなという感覚はある。今の選手は『前の偉大なチームを越えていきたい。越えていこう』と頑張ってくれている。ただ、このままじゃいけない、もっとできると思うし、伸びる余地もある。引き出してあげたいという思いは強い」

 -昨年2月のアルガルベ杯初戦ではオランダに2-6で大敗。チームが揺らいだ時期もあった

 「高い授業料だったが、あれはあれで勉強になった。あんなに悔しい試合は二度としたくないという共通意識もある。ちょうどアジア杯前で、『これじゃいけない』ってみんなに火がついた点では、あれはあれで『通る道』だったのかなとも思う」

 -改めてW杯ではどんなサッカーを見せるか

 「日本にしかできない、みんながまねできない唯一のサッカー。フィジカル面では欧米諸国に劣るが、力とスピードだけに頼るのではなく、技術と賢さとコンビネーションとか、チーム全体が常につながっている繊細なサッカーをしたい。見ている人が『すごく規律があり、一人一人も輝いている』と思ってくれたらいい」

 -そして結果も伴うサッカー

 「日本の女子サッカーが今まで世界で築いてきたもの(評価)を下げるわけにはいかない。勝つことで、まだ整っているとは言えない、国内での競技環境も変わってくいく。これからの発展という意味でも、引き継いでいる私たちには大きな責任がある。やりがいも感じつつ戦いたい」

<高倉麻子(たかくら・あさこ)> 1968(昭和43)年4月19日生まれ、福島市出身の50歳。163センチ、51キロ(96年アトランタ五輪出場時)、MF。72年誕生の日本で初の女子クラブチーム「FCジンナン」、読売(現日テレ)ベレーザなどでプレーし、2004年に現役引退。主将も務めた代表では出場79試合30得点(歴代7位)。指導者に転じてからは、ナショナルトレセンコーチ、U-16~20の各ユースカテゴリー監督などを歴任。14年のU-17女子W杯コスタリカ大会では現なでしこジャパンのMFの長谷川(日テレ)長野(仁川現代=韓国)DF市瀬(仙台)らを擁し、優勝した。16年4月から前任の佐々木則夫監督(60)からバトンを受けて現職に就任。

<女子W杯> 国際サッカー連盟(FIFA)の第7代会長、ジョアン・アベランジェ(ブラジル)の発案で1991年、12チームが参加して第1回大会が中国で開かれた。大会名は当時「世界選手権」だった。その後も男子のW杯同様、4年ごとに開催され、2003年の第4回米国大会から「女子W杯」に大会名が変わった。日本は第1回から連続出場。11年ドイツ大会ではMFの澤(当時INAC神戸)宮間(同岡山湯郷)らの活躍で悲願の初優勝。前回15年カナダ大会でも準優勝と2大会連続で決勝に進出している。最多優勝は米国の3回(1991、99、2015年)。

 

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