私の親は最近物忘れがひどくなってきています。まだ認知症ではないですが、この先認知症になる可能性もあります。
認知症になると銀行から預金を引き出すことがとても難しくなります。
生活費、病院代など日々のお金は基本的に親本人に年金などから負担してもらいたいですが、何も対策をしていないと親の口座が凍結されて全く引き出せないという事もありえます。
そのような事にならないためにも親が元気なうちに対策をしていく予定ですが、同じような状況も人も多いと思いますので、失敗事例を交えてしておくべき対策について考えていきたいと思います。
知人の失敗例
私の知人で親が認知症になっている人がいるのですが、親の年金の入金されるメインで使用している口座のキャッシュカードの番号も印鑑もわからなくて、引き出すことが全くできなくなってしまいました。再発行などは当然本人でないと出来ない為です。年金は入金されるが、老人ホーム代や病院代はそこから払えないので自分が負担しているそうで、返してもらえるのは親が死んでからと言っていました。
その口座は年金が入金されて残高が積みあがっていくだけです。
認知症になってからも長生きする人はしますので、自分の親とはいえいつ返してもらえるかわからない費用を払い続けるのは精神的にもきついと思います。
この知人は二人兄弟で弟がいます。その弟がその事をきちんと理解して親が亡くなったあとに、残った財産から老人ホーム代などを差し引いて円滑に分割協議が行えたらよいのですが、入金された年金が積みあがった口座の半分の権利を主張したとすれば相続が争族になってしまいます。そのようにならない事を祈るばかりです。
元気なうちにしておくべきこと
財産や収入、キャッシュカードの暗証番号や印鑑などの現状把握
これは基本中の基本です。財産状況や収入がわからないと何も出来ません。
現在の収入の範囲で今後老人ホームに入居できるのか、財産を取崩しながらであればどのくらいのペースで何年くらい分あるのか、不足分はいくらか子供はいくらずつ負担すれば老人ホームに入居できるのか、などを考える材料の基本になる為です。
また、印鑑の確認、キャッシュカードの暗証番号の確認もきっちりしておく必要があります。実際に出金する時や口座振替の手続きをするときに印鑑やキャッシュカードが使えないとなると何の意味もありません。
私の親は先日、老人ホーム(サービス付高齢者住宅)に入居しまして、それを機会に通帳とキャッシュカードを預かりました。
まず、キャッシュカードが使える事を確認して、残高と収支の確認を行いました。
生活費の口座を一つにまとめる
複数の入金があって別々の口座に入金されているとか、支払が複数の口座にわかれているような状況はあまり良くないです。
全体としてはお金に余裕があっても、口座ごと支払が分かれており残高が足りなければその口座にお金を移す必要が出てきます。年金の入金と光熱費の支払いはA銀行、電話代の支払はB銀行といった場合、時々A銀行からB銀行にお金を移す必要があります。
本人がお金の出し入れをする場合は問題ないですが、子供が管理をする場合は、出来るだけ口座の入金や出金や資金移動などを少なくした方が良いでしょう。
支払は口座引き落としにする
請求書から支払うという事は預貯金からお金を出金してから支払う必要がありますが、口座引落しであればわざわざお金を出金する必要はありません。
出来るだけ口座振替やクレジットカード払いなどにして現金を利用するのを少なくした方がよいです。
私の場合は親の老人ホームの費用も口座振替で手続き中です。親からこの印鑑と聞いたものを押印しましたが、もし間違っていれば印鑑間違いで返ってきます。何も問題なければその印鑑であっていたという事です。
病院代は口座振替というのはあまり聞いたことがないので、入院となると現金などで支払う必要がでてくるでしょう。
キャッシュカードで出金できるようにする
私が親の通帳を預かって残高や収支を確認した時に気になったのが定期の預貯金が多くて普通預金や通常貯金の残高が少なかったことです。
収入の範囲で老人ホームの支払や病院代などの生活費をまかなえるのであれば、普通預金や通常貯金の残高が少なかったとしても何の問題ないですが、ほとんど人は収入だけでは支払いをすることが難しいため預貯金を取崩すことになると思います。
その時に普通預金や通常貯金の残高が少なく定期ばかりであれば、すぐに定期を取崩す必要が出てきます。一定額以上の定期を解約する時はキャッシュカードでは出来ずに印鑑が必要ですし、場合によっては本人でないとダメと言われる可能性もありますので、出来れば流動性の高い普通預金や通常貯金で資金を保有していた方が安全です。
実際に親が認知症になった時にキャッシュカードで出金できないのであれば、亡くなるまで使えない凍結された財産と同じです。
兄弟姉妹との調整
子供が一人の場合は揉め事というのはないですが、兄弟姉妹がいる場合は後からお金を使い込んだなどと言われる可能性があります。
そのようにならないためにも、事前や事後に報告する、収入と支出の収支をきっちりつけておくなどの事は最低限必要でしょう。
それ以外の対策
成年後見制度
認知症にんちしょう,知的障害ちてきしょうがい,精神障害せいしんしょうがいなどの理由で判断能力はんだんのうりょくの不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約けいやくを結んだり,遺産分割いさんぶんかつの協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約けいやくであってもよく判断ができずに契約けいやくを結んでしまい,悪徳商法あくとくしょうほうの被害にあうおそれもあります。このような判断能力はんだんのうりょくの不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度せいねんこうけんせいどです。
但し、この制度は問題点はたくさんあります。私個人的にはあまりおすすめはできません。
専門家に依頼することになりますので費用がかかりますし、一旦成年後見制度を利用すると余程の理由がない限りやめることはできません。その後見人に問題があって契約解除することとなっても別の後見人が選ばれますので、その人が亡くなるまで一生費用が発生することになります。
また、この制度を利用すると裁判所の監督を受ける事になり、本人の財産状況や生活状況などを裁判所に開示する必要があります。
それ以外にも、本人以外の子供や孫のためにお金を使うという事は原則として認められません。あくまで本人の財産の保護という観点でこの制度があるためです。元気なうちにこのお金は子や孫が大学入学や結婚した時や家を購入した時に渡すつもりで貯めていたとしても、成年後見制度を利用するとそのようなお金の使い方は認められません。
家族信託
家族信託について、一般社団法人家族信託普及協会からの引用です。
「家族信託」とは、一言でいうと『財産管理の一手法』です。
資産を持つ方が、特定の目的(例えば「自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理及び給付」等)に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。いわば、「家族の家族による家族のための信託(財産管理)」と言えます。
家族・親族に管理を託すので、高額な報酬は発生しません。したがって、資産家のためのものでなく、誰にでも気軽に利用できる仕組みです。
一番大きなデメリットは、信託財産の名義は受託者名義になることです。
まとめ
認知症になった本人の財産の利用についてはこれからの日本でも益々問題が大きくなっていくでしょう。
成年後見制度や家族信託など国は対策を一応とっていますが、十分とはいえません。
出来の悪い子供が親の財産を使い込むということは日常茶飯事ですし、金融機関は他の兄弟などからの訴訟を回避するため、子供だからといって簡単に預貯金の引出しに応じるわけにはいきません。
結局最後は自分の身を守るのは自分ということですので、自分で対策をするしかないです。
親が認知症になってからでは遅いですので、出来るだけ元気なうちに親兄弟とよく話し合い準備をしておく事が大切です。
家族信託については私も勉強不足で詳しく知りませんので、この本を購入しました。これから読んで勉強します。
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