沖縄タイムスと法政大学藤代裕之研究室は2018年11月、沖縄県内の大学生と専門学校生525人を対象に「沖縄県知事選挙のニュース接触に関するアンケート」を実施した。それによると9月の県知事選挙に関する「フェイクニュースを見た」と回答した学生は60人で全体の11・4%にとどまった。「見ていない」と回答した学生は451人で85・9%だった。無回答は14人(2・7%)。県知事選ではフェイクニュースが多くの若者の投票行動に影響を与えたとされていたが、異なる実態が浮かび上がった。(「幻想のメディア」取材班・與那覇里子、石川亮太)

フェイクニュースを見た学生の割合

フェイク見ない学生、メディア接触機会が少ない

 アンケートは、若者のフェイクニュースへの接触状況を調べるため昨年11月、県内の大学2校、専門学校3校の協力を得て実施した。

 ニュースを扱うメディアのうちSNS(会員制交流サイト)への接触率をみると、ツイッターに「毎日接している」と回答したのは、フェイクニュースを見た学生が65・5%(38人)で、見なかった学生の37・7%(168人)に比べて27・8ポイント高かった。

 フェイクニュースを見た学生のうち、逆に、ツイッターに「全く接していない」と回答したのは13・8%(8人)で、見なかった学生29・1%(130人)に比べ15・3ポイント低くなった。

 メディア別では、フェイクニュースを見た学生のうち「テレビのニュース番組を毎日視聴している」と回答したのは52・2%(31人)。見なかった学生は41%(183人)だった。「県内新聞社のニュースサイトを毎日見ている」としたのはフェイクニュースを見た学生の9%(6人)で、見なかった学生は4・4%(21人)だった。

 フェイクニュースを見た学生は、普段からテレビや新聞、SNSなど多数のメディアに接触する傾向にあった。一方、見なかった学生は、メディアそのものに触れる機会が少なかった。

 アンケートを実施した藤代准教授は「フェイクニュースを見てもうそに気付いてないという可能性もある。民主主義を揺るがしかねない選挙時のフェイクニュースを誰がどのように発信し、受け止められているか、さらに詳しい調査が必要だ」と話した。

 【調査方法】アンケートは県内の大学2校、専門学校3校の協力を得て2018年11月に実施。学生525人にアンケート用紙を配布、回収した。回答したのは主に18歳~20代前半の学生で30、40代も計3人いた。男性309人、女性180人、性別不明・無回答が36人だった。

ネットのデマ 影響探る

 2018年9月の県知事選で、若者の多くがフェイクニュースに影響を受けたと思われていたが、今回の調査では「フェイクニュースを見た」学生は約1割にとどまった。誰がフェイクニュースに触れ、どんな影響があるのか、メディアも実態をつかめていない。

 誰もが発信者となれるSNSの普及により、各種選挙でもSNSによる発信力が高まっている。だが、そこにはデマも紛れ、そうした情報に基づいた投票では民主主義の根幹が揺らいでしまう。

 私たち有権者は有用な情報を得るため、どう向き合えばいいか。2月24日にある「名護市辺野古の新基地建設に必要な埋め立ての賛否を問う県民投票」に向け、インターネット上のニュースの流れをひもときながら読者と一緒に考える。